E.フォース

恵明

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私の居場所

ここはどこ?

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「ちょっと待って!」

私は、最近巷を賑わせていた通り魔にあった。
何を思ったのか通り魔に対し放った言葉がこの言葉である。
通り魔・・・と、言うよりは愉快犯だろうか、20歳以下の女性を川やため池などに突き落とすという
迷惑行為を働いていたのだ。
間違いなく突き落とされる前に自らの意思で飛び込んだ。
「はぁ・・・何やってるんだろうか・・・」
(何!?ちょっと待ってって何よ!しかも自分から行くってもう意味わからない!)

パニックになってた。
しかしそれでも自ら川へ飛び込むなど訳の分からない行動をとるとは、
恥ずかしくもあり情けなくもあった。

「ごほゴホッ!・・・え?ここは・・・どこ?」
そう。いつも見慣れた帰り道。家の近くで襲われたのだから
間違いなく見覚えのある風景でないとおかしいのだ。
しかし、ずぶ濡れになっている場所は噴水の中である。
手入れの行き届いた庭園。
立派な城。
何もかもが見覚えのない場所なのである。
しかもその場所は不自然だった。
左を見れば扉が、右を見れば城壁が、よくよく見れば空は絵である。
そう、ここは一種の部屋だったのだ。
訳の分からない空間に、訳の分からない現象。
全てが私を混乱させる。
「びしょびしょになるし、噴水の水は飲んじゃうし最悪なんだけど!」
携帯は水没、訳の分からない空間。一度冷静にならなくては
そう思え始めた時。扉が開きメイド服の女性が現れた。
「この場所は儀式に使われる神聖な場所。どうやって入ったか知らないですが・・・え?」
「あ、あの!すみません!私もよくわからないんです!気付いたらここにいたんです!」
「ちょっと!あなた!じゃない!」
「そうなんです。川に飛び込んだと思ったらここにいるし・・・あ、なんで川に飛び込んじゃったかは聞かないでくださいね!自分でも意味不明な行動だったと思ってますし、それに」
「はいはい、ストップ。その水はただの水じゃなくて普通の人だと触ることすらできない水なんです。
全身濡らすことができるなんて何者ですか?」

「水井瑠璃です。」
「ミーナ・ミラルダです。」
一度冷静になった二人は軽い自己紹介をした。
わかったことが幾つかある。

・ここは元いた世界ではない
・異世界人は稀に現れることがある世界である
・この世界には4つの国があり戦争中であること

「元いた世界ではどうかわかりませんが、この世界ではフォースが使えます。こんな風に」
ミーナは手のひらから水を生み出し、それを操った。
「ほえぇ・・・魔法が使えるってことですね?」
「そうですね、この国の住民は水の加護を。他の国ではそれぞれ、火・木・雷の加護があります。」
「そんな4つの国で戦争が・・・」
「私たちの国、ミズガルズ王国では我々から攻め入るようなことはしません。しかし近年カルーバス帝国と雷の国が
同盟を結び、ミズガルズ王国とキールーニの森を侵略しようとしているのです。」
「カルーバス帝国?雷の国?というか、森は国なんですか?」
「カルーバスは鍛冶が主に栄えてますね。火の加護があるからでしょう。
雷の国は言わば忘られた地。知らないうちに栄えており国の名前はないのですが時折眩く光るのです。恐らく古代書の通りだと、雷の加護があるからでしょう。」
「なんだかそんな国からの侵略に対抗できているこの国がすごく感じてきました・・・」
「ミズガルズは医療が発達しているので、怪我をした兵士たちの戦線復帰が早いのです。
それに森は国なのかと言っていましたが、大多数の人間が暮らしているので国と言ってしまった方が何かと都合がいいのです。」
「さて、急ぎ足で話していきましたが・・・まず噴水から出ていただいてもいいですか?」
「あ、確かに・・・本当に何やってるんだろう・・・」
噴水から出た瞬間。濡れていたはずの衣服や体は乾いていた。
「その噴水の水は魔法が使えるかどうかの判断をするための水でして、普通の人は触ることすらできないと言いましたが、利き足の太ももの一部は全員この水で濡らすことができるのです。濡れる範囲が広くなればなるほど水の加護を強く受けることができます。」
「加護を受けているとフォース?でしたかね?それが使えるようになる。と?」
「そうです。数千年前、土の加護というのがあったそうなのですが今は失われています。そこで4つの力でフォースと名付けられたのです。」
「ちなみに、私ってどれぐらいすごいのですか?」
「国王様はこの水を操ることが唯一できるお方。間違いなく1番でしょう。
私は首から上以外は濡らすことができ、2番手だったのですが・・・」
「・・・つまり?」
「この瞬間あなたがこの国のナンバー2です。」
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