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「神西暦シリーズ GAME/SAME」

「SAME」Ⅱ

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と、このように、風田哲也かぜたてつやの能力は、手足から炎を出す事で、それを活かして飛行することもできた。
まあ、風田の方だけ説明しておいて、もう1人の主人公の赤井隆あかいたかしの能力を説明しておかないわけにもいかないだろう。
赤井隆は、狼のように優れた嗅覚と人並み外れた筋力…さらに、「鬼火」の赤井義朝あかいよしとも同様の大剣を持つ。
これらは、赤井という名字からわかる通り、「鬼火」の赤井義経あかいよしつねの子孫にしようとしたからである。
まあ、キャラクターとしては、赤井隆の登場が「GAME」終盤であり、赤井義経の初出が「鬼火」のため、赤井隆の方が早いわけだが…
赤井隆の大剣は、義経の持つものと異なり、SDの持つ技術で作られた仕掛けが豊富に装備されている。ボタン1つで、魔物を弱らせる銀の弾丸が発射されたり、新種などにも備えて網やドリルなど、様々な用途により変化できる。

***

「こんなに天使が集まるなんて…何も知らない状況なら、ここを天国とでも言うのかな…」
風田は両手両足から火を出しながら飛行すると、天使たちの背後に行ってはそれを落としていった。
「一丁あがりっと…でも、キリがないな…ウッ!」
鳥などの能力を持つ空の天使たちを落とし、象などの能力を持つ陸の天使たちを倒していくが、イカやクラゲなどの能力を持つ海の天使たちに背後から捕まり海に落とされた。
「こいつ…」
イカの天使に、手から火を放つも、水中のため能力は半減してしまう。
クラゲの天使は、風田の首をチョークスリーパーのように締め上げると、他の足で手足を縛り上げた。
いつものように1体1だったら倒せたかもしれない…が、イカの天使に導かれ、泳げる天使たちも海に潜り風田を攻撃したため、かなり不利な状況に陥っていた。
「息が…まずは…こいつらを…茹でる!」
風田が、手足から最大火力を放出した。イカもクラゲも熱には弱い…その特性を持つ天使も同じ…料理人である風田もそれは熟知していた。
熱さに堪らずクラゲの天使は陸へと上がっていった。
イカの天使が呼び戻そうとしたが、風田によって焼かれてしまう。
そのまま海面で息継ぎをしようとした風田だったが、イカの天使が呼び寄せていた有象無象の天使たちが、風田の足を引っ張る…さらに上から象の天使が落ちてくる。
風田が、海中で意識を失い沈んでいった。

***

風田が目覚めると、陸の上にいた。
風田が意識を失った頃、バットポートの悲鳴に気付いた赤井隆が駆けつけ、大剣のギミックの1つであるネットにより引き上げてくれていた。
「貴方が、天使たちを?ありがとうございます!」
風田が意識を取り戻したとき、ほとんどの天使は赤井隆によって倒されていた。
風田は立ち上がり、握手を求めた。
「いや、礼を言うのはこっちの方だ。あんたが天使をある程度倒してくれていたおかげで全滅できた。」
赤井隆が、風田の手を握った。これが初期の赤井隆であれば「民間人と馴れ合う気は無い。」とか言っていたかもしれない。仲間の死や師匠の教え、上司の裏切りなどの経験を経て、赤井隆も変化したのだろう。
まあ、この時点でも風田に対して完全に心を開いたわけではなかったのだが…
「そんなあんたに聞きたい事がある。」
赤井隆は、逃げられないように、握手した風田の手を強く握った。
「この国に、悪しき魔物や天使と戦う料理人がいるらしいが、あんたのことか?」
風田からすれば、その手を燃やすこともできたが、正体を隠すつもりもない風田は…
「はい!そうですよ。ま、「あんまり出しゃばるな」と、刑事さんに怒られることもありますけど…人によっては炎の料理人なんて言う人もいるみたいですけど、恥ずかしいので自分では言いません。あ!自己紹介がまだでしたね、ボクは風田哲也です。よろしくお願いします!」
笑顔であっけらかんと正体を明かした。
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