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「神西暦シリーズ VANE」

「VANE」Ⅰ

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未だに信用できない部分はあるといった赤井隆あかいたかしだったが、赤井隆の部下から各国で、現代のプロメテウスとして魔物や天使が復活したという報告を受け、私たちを信用した。
私たちが事前に伝えていた事や、木の神の根を断った事で主要都市の破壊を防いだ事、さらに、エネルギー不足により少数しか復活できなかった事などにより、事態は速やかに収束された。
「あんたたちが、未来を知る事は信じよう。」
「ええ。おかげで、助かりました。」
風田哲也かぜたてつやが笑顔でみんなに握手をしていた。
赤井隆は、未だに水本耕二みずもとこうじに大剣を向けたまま、風田に対してしかめっ面をしていた。
「それで?さっき言っていた未来に飛ぶのか?それともここで倒すのか?」
「未来行っても荒廃しているだけなら、荒廃する前にここで木の神や火の神を倒した方がいいのでは?」
風田は、握手をしつつも、笑顔を引き締め、少しキリッとして話した。
「いや、先ほどの戦いで事態は好転したはず…」
木の神との対決、本来の「GAME」「SAME」では途中でやっと、根の存在に気付き、赤井隆がその雷を自らに当てさせ、その間に風田哲也がダメージを与えていた。その後で木の神が一度ダメージを癒すために空に消えていった点などは同じながら、「VANE」の未来はかなり変わっているはずであった。
さらに、「VANE」では記憶を失い年も重ねた状態だった風田哲也と赤井隆が、「GAME」「SAME」最終決戦の状態で戦う事ができる上に…こちらには水本耕二も赤井義経あかいよしつねもソラもいる。
「VANE」では傷付けるだけで終わった木の神と火の神にも勝てる…と考えていた。

***

水本耕二が、バットポートSD-G-RL-SETU近くの港で捕れた貝を使ってサクリファイスを行い、時間移動をした先は神西暦799年…
これは神との対決を着けやすいという点や、「VANE」主人公の渡房太郎わたりぼうたろうの全盛期という理由もあったが、単純に私が見てみたいというのもあった。
神西暦772年の時点で、神や天使に対立するためや、魔族の力などにより、実際の西暦1999年より発展していた。いや、私のいた2027年以上だった。
あれが当時の私の思い描いた近未来であったが、今、改めて2027年より先の近未来を想像しろと言われても、当時の近未来像を超えるものは見えてこない。現実的になりすぎては漫画としての面白味に欠けるし、突飛しすぎると読者から引かれてしまう事はもちろん、それでは近未来ではなく遠い未来になってしまうのだ…
あの近未来神西暦772年より先の未来…それの答えがそこにあるというだけで心が踊った。

***

たどり着いたのは、神西暦799年7月3日…「VANE」だと第1話で、荒廃した街で新たな神兵と渡房太郎が戦う時点である…
未来が大きく変わった事で房太郎がどこにいるのかもわからないため、ゆっくり探そうとこの時点にした。
が…
近未来の先を見に行こうという私のささやかな願いは見事に打ち砕かれた。
どこもかしこもクレーターのようになった大地…たまにビルが斜めに倒れていたが、それも数えるほど…
海が枯れ果て、草木は一切見当たらない…見渡し限りの地平線…
そんな中だからこそ、HYUGとBUGOの間の上空で、新たな神兵と戦う渡房太郎を見つける事ができた。
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