この異世界は、かつて私が創造した世界

時雨竜

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「ポーン(兵士)」

「SPAWN」4

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カステル・デル・モンテの西側…
火の神と金の神の力を手に入れたフリードリヒ2世は、両手の大砲を渡房太郎わたりぼうたろうとゲルに向ける。
発射された砲弾を避けようとするが、金の神のときと異なり、火の神の火力を利用したため初速が違う。さらに砲弾自体が炎を纏い、超高温となっている。
渡房太郎がホワイトベーンでゲルを救ったが、周辺の木々が焼け、たった2発で地面はえぐられた。
「これこそが神の力だ!」
「あ~あ。あの子、はしゃいぢゃって…アタシが言うのも何だけど、あの子も不遇だったからね。「ルーク」本編では、神と主人公の間の決着を濁すためのピエロにされちゃって…まあ、確かに知識欲とか強い子ではあったけど…力を求める事なんて、形さえ決めなければほとんどの人間に当てはまることなのにね。」
彼女は、口元こそ笑っていたが、どこか悲しそうな目をしていた。
フリードリヒ2世が再び渡房太郎とゲルに、大砲を向けた。

***

カステル・デル・モンテの南側…
木の神と水の神の力を手に入れた攻雲こううんが、赤井義経あかいよしつね赤井隆あかいたかしの周辺の時間を止めた。
それでも斬りかかる体勢に入っていた二人は流石ではあるが…
通常なら…水の神であったとしても、自分ごと時間を止めない限り時間制限がある時間停止であるが、今の攻雲は脚に帯びた雷からの回復エネルギーにより永遠に時間を止めることも可能であった。
「こっちは決着早かったかな。攻雲も可哀想よね~。読み切りのインパクトのために、最後の最後で悲劇的にされたぢゃない?あれさ、無くても「攻雲のおかげでバット・ズーは助かりました。チャンチャン!」でも物語としては終われたぢゃない。まあ、インパクト必要だとしても、まだせめて人の裏切りで死ぬとかでもよかったぢゃない。魔物にして終わるって…当時の作品としては確かにインパクトあったけどね。」
彼女は口元が笑いながらも、私に哀しみに近い目を向けていた。
彼女の言う通り、時間を止めた時点で勝負はついていた。
ただし、赤井義経と赤井隆だけが相手であればの話だ…

***

彼女の言葉に私の思考は停止していた。彼女がフリードリヒ2世と攻雲の戦いについて話していたが、思考が止まり反応すらできなかった。
死んでいた…いや、死にかけていた?
「そんなに驚かないでよ。先生さ、死にかけたの初めてじゃないでしょ?」
まあ、確かに「SAME」「キング」「鬼火」の同時連載で体調を崩して入退院を繰り返した事があった。
「そうそう。そのとき、アタシが木の神ちゃんの力を先生に、ちょっと注いだの。でも、それだけぢゃない。飾薫って子亡くなったとき、後追い自殺しようとしたでしょ?」
昔の私は、デビュー前から私の漫画を手伝ってくれていた飾薫の死がショックであった…「空白」も当初は、最初の読者である彼女に見せる事が全てだった。
飾薫の死により漫画を描く意味も生きる意味さえ忘れていた私の前に現れたのが彼女だった。「編集社がアシスタントとして寄越した」と言っていたが…「先生さ、自殺しようと考えてるでしょ?時間って大きな分岐ポイントがあると思うんだよね?先生は今がそう…筆を折ってしまう道…メディアミックスを目指す道…アニメ化は狙わず好きなものを描く道…自分の作品を大事にしたいなら4つの道の未来のうち、この道がオススメかな…どれを選ぶのも先生の自由ではあるけど、自殺だけは絶対ダメ…先生の読者は今や、その子一人ぢゃないんでしょ?アンケートで一位は取れないままだけど、長時間連載続けてるぢゃない?自分の未来を自分で閉ざしちゃダメ!」と説得してくれた…
「そのときと、入院中に木の神ちゃんの力渡したのと、川に落ちたときに水の神ちゃんの力渡したときの計3回も救ってるのよ!アタシに感謝してよね。」
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