ふっくらフードの魔法

あやてぃ

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心のバリアと、勇気の出し方

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家に帰り着くなり、綾菜はお母さんの姿を見つけると、そのままキッチンへ駆け込んでしがみつきました。ミルクティー色のフリルスカートが、不安な足取りに合わせて力なく揺れていました。

「お母さん……あのね、バスで、怖いことがあったの」

震える声で話す綾菜を、お母さんは夕食の準備をすぐに止めて、優しく、でも力強く抱きしめました。綾菜がバスでの出来事を最後まで話し終えると、お母さんは彼女の目をじっと見つめました。

「怖かったわね、綾菜。よく頑張って逃げてきたわ。本当に偉かったわよ」

お母さんは綾菜をソファに座らせると、彼女が着ているパーカーの袖をそっと撫でました。

「このパーカーが守ってくれたって言ったわね。それはね、あなたが自分を大切にしようとしたから、服も味方してくれたのよ。でもね、これから同じようなことがあった時、どうすればいいか、お母さんと約束してほしいことがあるの」

お母さんのアドバイスは、具体的で、かつ綾菜の心に寄り添うものでした。

• 「心のバリア」を信じること

「このパーカーのボアみたいに、あなたには自分を守る権利があるの。嫌だと思ったら、すぐにその場を離れていいし、大きな声が出せなくても、周りの大人に足を踏んだり、カバンをぶつけたりして『気づいて』って合図を送ってもいいのよ」

• 「逃げる」のは負けじゃない

「逃げるのは、あなたが自分を一番大切にできている証拠。今日みたいに、すぐにバスを降りたのは大正解だったわ。自分を守るための行動は、いつだって正しいの」

• 「一人で抱えない」こと

「何があっても、すぐにお母さんに話して。話すことで、心の中の『怖い』を半分にできるからね。あなたは一人じゃないわ」

お母さんはそう言うと、立ち上がって、少し乱れていた綾菜のフードをいつものように整えました。

「はい、仕上げの……ポンッ。これでまた、あなたの『幸せの形』は元通り。怖い思いをしたからって、あなたの価値は一ミリも変わらないし、この可愛いスカートもパーカーも、明日からまた堂々と着ていいのよ」

お母さんの温かい手つきでフードがふっくらと膨らむと、綾菜の心の中にあった冷たい塊が、すーっと消えていくようでした。

「うん……お母さん、ありがとう。私、このパーカーを着て、明日もちゃんと学校に行くよ。私には、お母さんがくれた魔法のバリアがあるもんね」

綾菜は涙を拭き、少しだけ強くなった瞳でお母さんに微笑み返しました。
お母さんのアドバイスは、パーカーの裏ボアよりもずっと温かく、綾菜の心を優しく包み込んでいました。
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