夢物語〜わたしがみた夢の話集〜

常に眠い猫

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神の定め

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視点:12~13の少年の姿。短髪の少し癖っ毛。何万年も生きる世界創造の神アラミア。人の世に干渉することはできるが、その定めを捻じ曲げることは許されていない。捻じ曲げるには、莫大な対価を払う必要がある。

14歳の女の子。精霊と本来見ることはできない神をその目に映すことができる。神にも勝る力をその身に宿しているからできる芸等だが、その力は人の体にはあまりにも重いため、やがてその力に体が侵されて死んでしまう。

生命と緑の神レフリア。見た目は成人男性の神。植物を統べる神であり、その形状を変えたり、いかしたり、死なせることもできる。





私は、何万年も存在する神だ。
長らく、私は人の子を見守り続けた。
長く、見守るだけの日々に飽きが来ていた日のこと。この世に、1人の愛子が産み落とされた。
この世で特別な可愛い人の子。多くに愛され、多くを失い、多くの運命を背負ったかわいそうな子。
守らねばなるまい。
多くの神と精霊に愛された子は長くは生きられない。
莫大な力に愛されたその子は、その力に体を侵食され、いずれ命を落とす。
なんて仕方のない子だ。

寿命が刻一刻と近づく中、私はある決断をした。
自らの命を分け与え、人間としての寿命分を愛子に与えようと。
長く生きられる方法を隠してあの子に伝えたが、あの子の見方をする精霊と神が、どうやら私の命を大火にしていることを伝えてしまったらしい。
あの心優しい子はそれを聞いて私に怒鳴り込みにきた。
「アラミア様、私はそんなことを望んではいません。あなたの命を削ってまで、私は生きたいとは思わない」
真っ直ぐ舐めて、心の底から怒っているその子をなんとか諭そうとしたがうまくいかず、そっぽを剥かれて逃げられてしまった。
もう時間がないというのに。
慌ててその跡を追いかけるが、あの子は自陣の力を使ってとんでもない速さで逃げる。
最上神である私でも追いつけないとはどう言うことか。
走り去るあの子の後ろ姿を見ながら追いかけていると、ふっとその姿が消えた。
どうやらこの小道の先は中級神の力で別世界に繋がっているらしい。
私は歩みを緩め、その中に足を踏み入れる。
その世界は茂みで高い塔がいくつも積み上がり、中は巨大な迷路と化していた。
そうしてその茂みは絶えず動き回り、形を常に変えていく。
「してくれたな。クソガキ」
そうして後ろに出現した気配に半分笑いながら吐き捨てると、気配が動いた。
「申し開きもございません。しかし、私目は一切後悔しておりません。あの子の望むようにしてあげているだけです」
未だ千年も存在していない小童がよく言ってくれる。
私はわずかに体を浮かせ、あの子の気配をたどりながら茂みの中を進み、その中にある巨大な像の穴の中にうずくまるその子を見つけた。
何度見ても、心の綺麗な子だ。
水と平和と秩序を司るチルラド神の、右腕に抱えられたツボの中で、その子は体を丸めて啜り泣いていた。
「何を泣くことがある」
そっと近づいて声をかけると、しばらくの沈黙の後に返答があった。
「わたしは、あなたを犠牲にしてまで長生きはしたくありません」
「犠牲などとは思っていないよ。それに私が死ぬわけでもあるまい」
「あなたの命をもらうなんて。アラミア様、私は聞きました。アラミア様がやろうとしている『命光の儀』は、この世とあなたを結ぶ力を対価にするって……それほどのことをしないと、神であるあなたが人間の定めを変えることはできないって。それってもう、会えないってことじゃないですか」
「何を言っているんだ。もとより、世に生きる人の子は我らのことなど見えてはおらなんだ。お前は周りの人間と同じになるだけ」
「嫌です!いやですいやですいやです!アラミア様と会えなくなるのは、嫌です……!」
そうして顔を覆って泣き始めてしまう。
どこまでも可愛い子だ。純粋で、まっすぐで、どこまでも人を思いやれる。この世に生きる我が子たちの中では、珍しく心の清い、愛しい子。
私はふわりとツボの近くまで浮き上がり、顔を煽って啜り泣くその子の頬を、優しく撫でた。
「いいか。愛しい子。私はお前に生きて欲しい。誰よりもまっすぐで、綺麗なお前を、こんな短い命で終わらせていいはずがないんだ。何より、お前が死んだら悲しむ者がどれほどいよう?」
驚いたような顔で私を見るその瞳は、ずいぶん濡れていた。
「心配は不要だ。お前から私は見えなくなるだろうが、いなくなるわけではない。言葉が交わせずとも、姿が見えずとも、私は常にお前のそばにいる」
その頬を優しく撫で、溢れる涙を拭いてやり、私は優しく微笑んで続けた。
「それに、何万年と生きてきた中で、私は初めて、この世のためでも、人の子のためでもなく、私のわがままでお前に生きて欲しいと思ってしまったんだ」

驚き、大きく見開かれるその瞳を見ながら、私は返答を待つことなく、命光の儀式を展開した。

眩く光る世界と、力が抜けていく感覚。
その抜けた力があの子に流れて、即座に馴染んでいくのも感じる。
これでいい、と、少し目を閉じたその先で「待って。お願い待って」と泣きながら叫ぶあの子の声を、私はその耳にしかと焼き付けて、しばしの眠りについた
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