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第28話「お姉様と初デート」
しおりを挟む今詩音は上機嫌である。
何故かと言うと今日はレオナとの初デートであるからだ。
無論メディナには内緒だ。
記念すべき初デートに付いてこられたらたまったもんじゃない、そう詩音は考えていた。
そんなこんなで待ち合わせの場所で待ち合わせている・・・がレオナはまだ来ない。
それもそのはず、詩音は30分も前に着いていたからだ。
「この服で大丈夫かしら・・・」
詩音は清楚な白いワンピースを着用している。
この時代にミニスカートなんて履いていたら痴女扱いされてしまうだろうし、
制服で行くのも子供っぽくて嫌だ。
この服は転生後の実家から持ち出したお気に入りの一着、お姉様も喜んでくれる筈。
詩音はそう考えた挙句この服を選んだ。
詩音がアレコレ考えているとレオナがやってきた。
約束の時間10分前である。
早めに来てよかったと安堵する詩音であった。
「待たせたかしら?」
「待ってません!全然待ってませんよ!」
「そ、そう」
詩音のはりきりぶりに驚くレオナ。
レオナも清楚路線の衣服で、水色のワンピースを着ている。
詩音との違いは簡素ではあるがネックレスや指輪と言ったアクセサリーを身に付けているという所。
その美しさはまるで女神の様だった。
「お姉様、お洋服とても似合っています!」
「ありがとう、あなたも似合っていてよシオン」
互いの服装を褒め合う二人。
その笑顔は学園の物とは違う爽やかな笑顔だった。
「じゃあそろそろ行きましょうか」
「確か王都に行くんでしたよね?」
「お洋服とかお菓子とか色々買う予定なのだけど・・・今日は行きつけの店が休みなのよね」
「そこは大丈夫です。優秀なガイドを知ってますから」
「そう、なら安心だわ」
レオナ達は会話を続けながら馬車に乗り王都へ向かった。
―
「ふぅ、到着~。お尻が痛いですねお姉様」
「はしたないわよシオン」
長時間馬車に座っていて疲れた詩音をなだめるレオナ。
レオナは馬車に乗り慣れてるからか乱れが全くない。
いそいそとお尻を抑えながら馬車を降りる詩音。
一方のレオナは優雅に馬車から一歩ずつ降りて行った。
自分もああいう風になりたいと思う詩音であった。
「じゃあさっそくガイドを呼びますね。マリー!」
「遅れて申し訳ないっす、姉御」
「いいのよ今来たところだから」
詩音が呼び出したマリーという少女はかつて捕まえたスリの少女であり、
今は詩音の舎弟である。
加えて現在は詩音の紹介でかつて助けた商人の洋服店で働かせて貰っている。
マリーは以前のみすぼらしいボロ服から可愛いメイド服に身を包んでいた。
「いやー、照れますねこの服装」
「仕事着なんだから我慢なさい。後汚しちゃだめよ」
「はーい」
「シオン・・・このメイドの少女が今日のガイドなの?」
「そうです、この子王都に詳しいんですよ」
それは王都中でスリをしていたからだがそれがレオナにばれたらやばいと思い詩音が秘密にさしている。
レオナがマリーの方を見るとへへっと鼻の下をこすって余裕をみせる。
少し心配になるレオナであった。
「じゃあ行きましょうか、姉御とええと」
「レオナよ」
「分かりました、レオナ嬢!」
―
レオナは心配していた。
このメイド?のガイドで大丈夫かと。
しかしその心配は杞憂であった。
詩音の両手には両手いっぱいの袋がある。
全てレオナが買った服や宝飾品だ。
お気に入りのお店が増えたと喜んでいるレオナを見て、大変だが苦労した甲斐があったと喜ぶ詩音。
ぐ~
そんな気持ちを打ち消すかの様に詩音の腹の音が鳴る。
はりきりすぎて朝ごはんを抜いてきたせいだ。
「大丈夫ですよ姉御。食べ物屋も調べてありやす」
「ありがとう。それと語尾には気を付けてね」
「は、はい・・・」
詩音の紹介した洋服店は格式高い所なのだ。
町人の訛りがあると品を損なう。
下手すると首にされる可能性もあるので詩音は厳しく言い付けている。
「じゃあ姉御、レオナ嬢、こちらへ」
詩音達が案内されたのは路地裏近くにある屋台村だった。
そこには色々な料理があり、おいしそうな香りが鼻孔をくすぐる。
「おすすめはコレですよ、姉御」
「これは・・・(ドネルケバブのサンドね)」
ケバブとは薄い肉を何枚も重ねて塊にしたものを、回転させながら焼いた物で、
それを切りトルティーヤに具を広げ、それを巻いたものがケバブサンドである。
異世界だから名前や材料は違うだろうが見た目はまさにケバブサンドだった。
「これどうやって食べるの?ナイフやフォークは?」
「そんな物は要りませんよレオナ嬢。直接かぶり付けばいいんです」
「そんなお下品な事・・・できないわ」
「大丈夫ですお姉様。ナイフとフォークはここに。」
「あらありがとう、シオン」
こんな事もあろうかとナイフとフォークを用意しておいたのだ。
レオナはそばにあった椅子に座り机の上にケバブサンド?を置くと、まるで高級ステーキを食べるかのように優雅にナイフとフォークで食べだした。
詩音も真似してナイフとフォークを使って食べる。
直接かぶりついてもよかったのだがレオナの目がある以上そうもいかない。
貴族様は変わった食べ方をするんだなーと怪訝な顔をするマリーであった。
―路地裏
「ふぅ、食べた食べた」
「あらシオン、お口にソースが付いていてよ」
「あ」
レオナが詩音の口の周りをハンカチで拭く。
レオナの顔が近付き少し恥ずかしくなった詩音。
そんな時詩音の高揚した気分を一気に冷え込ませる連中が乱入してきた。
路地裏おなじみのチンピラ達である。
「見た所いいとこのお嬢ちゃんじゃないか。金目のもん置いてきな!」
「ここは任せて」
「お姉様・・・!?」
先程までにこやかだったレオナの表情が一瞬にして重力の魔女の冷徹なものに変わる。
せっかくの妹とのデートを邪魔されたのだ、当然である。
レオナがチンピラ連中に手をかざすと、
チンピラ達は辛そうに膝を地面についた。
「どう、40倍の重力の気分は・・・」
「うぐ・・・降参だ!助けてくれ!」
「これに懲りたらもうこんな事しないのよ?」
「わ、わかりましたー!」
速攻で視界から消え去るチンピラ達。
詩音とマリーはその光景を唖然と見ていた。
―王都入口
「じゃあね。今日は色々助かったわマリー」
今日一日ガイドしてくれたマリーにお礼を言う詩音。
その顔は満足しきった喜びに満ちていた。
「いえこちらこそ。面倒を起こしてしまい申し訳ないっす」
「あなたのせいじゃないのだから気にする事じゃないわ」
「ありがとうございます、レオナ嬢」
馬車に乗り込む詩音とレオナ。
こうして楽しい姉妹のデートは幕を閉じたのであった。
―馬車の中
「くーっ」
「あらこの子寝ちゃって・・・」
レオナは自分の膝の上に詩音の頭をのせると、そのまま学園寮に着くまで、その幸せそうな眠り顔を見守った。
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