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2-3 魔法ってなんだ
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「魔法っていうものについてなんだけど――」
「いやいや、同じことを二度も言わなくていい。ワシが聞き返したのは、聞こえなかったからでも理解できなかったからでもなくってね、マサキくん、キミの方からまさか、こんな話題を振られるとは思っていなかったという、それだけのことだ。なんと言うかね、ほら、驚いたのだよ」
黒佐沢は、おれの言葉を制した手のひらを自分の顔の横まで持っていくと、ヘラヘラと笑った。
よし、かかった。おれは心の中でガッツポーズをした。高校生にして一人称がワシのイレギュラーなこの男は、やっぱり魔法に食いついたのだ。
「つまり、魔法があるかないか、ワシに意見を求めに来たわけだね」
ふふふ、と発音しながら黒佐沢はゆっくりとおれに顔を近づけると、突然その表情を険しくしてみせた。
「魔法って、なんだね」
すぐ目の前で、眼鏡がぎらりと睨みつけてくる。
「はぁ?」
厄介な質問だ。そもそも、こんな質問をされるとは思ってもみなかった。おれは「魔法」という言葉が誰よりも通じるであろう人物として黒佐沢を選んだというのに、これじゃあ欠片も伝わっていないということじゃないか。
「おっと、そんなに間の抜けた顔をされると、ワシのほうが困ってしまうではないか」
「おれのほうが困るって。おまえは魔法も知らんのか知ってるよなぁ知ってるだろう知らないわけがないっていうか顔を離せよ顔を。おまえのウブゲなんて見たくないんだよ」
「あまり喚かないでくれたまえツバが飛ぶではないかツバが。ワシだって魔法ぐらい知っておるさ。キミは勘違いをしているようだけれどね、なにもワシは、魔法について辞書で調べてくれと言っているわけではないのだよ」
黒佐沢は、恋人にしか許したくないような距離を散々に蹂躙した挙句、かっかっかと発音しながらクモのような俊敏さで遠ざかった。
黒佐沢のせいで生じた風が、鼻先を少しだけ涼しくした。
「いやいや、同じことを二度も言わなくていい。ワシが聞き返したのは、聞こえなかったからでも理解できなかったからでもなくってね、マサキくん、キミの方からまさか、こんな話題を振られるとは思っていなかったという、それだけのことだ。なんと言うかね、ほら、驚いたのだよ」
黒佐沢は、おれの言葉を制した手のひらを自分の顔の横まで持っていくと、ヘラヘラと笑った。
よし、かかった。おれは心の中でガッツポーズをした。高校生にして一人称がワシのイレギュラーなこの男は、やっぱり魔法に食いついたのだ。
「つまり、魔法があるかないか、ワシに意見を求めに来たわけだね」
ふふふ、と発音しながら黒佐沢はゆっくりとおれに顔を近づけると、突然その表情を険しくしてみせた。
「魔法って、なんだね」
すぐ目の前で、眼鏡がぎらりと睨みつけてくる。
「はぁ?」
厄介な質問だ。そもそも、こんな質問をされるとは思ってもみなかった。おれは「魔法」という言葉が誰よりも通じるであろう人物として黒佐沢を選んだというのに、これじゃあ欠片も伝わっていないということじゃないか。
「おっと、そんなに間の抜けた顔をされると、ワシのほうが困ってしまうではないか」
「おれのほうが困るって。おまえは魔法も知らんのか知ってるよなぁ知ってるだろう知らないわけがないっていうか顔を離せよ顔を。おまえのウブゲなんて見たくないんだよ」
「あまり喚かないでくれたまえツバが飛ぶではないかツバが。ワシだって魔法ぐらい知っておるさ。キミは勘違いをしているようだけれどね、なにもワシは、魔法について辞書で調べてくれと言っているわけではないのだよ」
黒佐沢は、恋人にしか許したくないような距離を散々に蹂躙した挙句、かっかっかと発音しながらクモのような俊敏さで遠ざかった。
黒佐沢のせいで生じた風が、鼻先を少しだけ涼しくした。
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