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3-10 暴力反対
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「なんでいきなり怒るんですかぁっ。あたしはただ、カバンって」
「あー、もう。これ以上喋るなよな。また痛い目見るぞ」
「や、やるんですか。やめた方がいいですよ。あたしは魔法が使えるんですよ」
ファイティングポーズの魔女に、引け腰のおれ。おいおい待て待て。何だっておれが引け腰なんだよ。なんでおれが気圧されてんだよ。相手は女の子なんだぜ?
「魔法が何だっていう――」
あれ、なんだっけ。何かが頭に引っかかってるな。
ええっと、魔法って――。
言われた。
「あっ、おじさん」
おれが頭を抱えるのと、金髪碧眼の声がしたのとでは、どっちが先だったのだろう。
「やあ、えっちゃんじゃないか」
おれがうずくまるのと、聞き覚えのある男の声がしたのとでは、いったいどっちが先だったのだろう。
「早かったね。待たせちゃったかな。家に上がっていればよかったのに」
「だっておじさん、引っ越したって」
「はっはっは、誰がそんなことを……ん、そこにいるのは雅樹か?」
立ち上がる気力もなく顔を上げると、スーツ姿のエビがいた。今は茹でられていない。
脱力感と絶望のせいで意識が遠くなっていくのを、おれはおそらく人生ではじめて感じた。こういう最悪の状況は、いったいどうすればなかった事にできるのだろう。
ああ、そうだ。こんな時こそ魔法があったらいいのに。
「あー、もう。これ以上喋るなよな。また痛い目見るぞ」
「や、やるんですか。やめた方がいいですよ。あたしは魔法が使えるんですよ」
ファイティングポーズの魔女に、引け腰のおれ。おいおい待て待て。何だっておれが引け腰なんだよ。なんでおれが気圧されてんだよ。相手は女の子なんだぜ?
「魔法が何だっていう――」
あれ、なんだっけ。何かが頭に引っかかってるな。
ええっと、魔法って――。
言われた。
「あっ、おじさん」
おれが頭を抱えるのと、金髪碧眼の声がしたのとでは、どっちが先だったのだろう。
「やあ、えっちゃんじゃないか」
おれがうずくまるのと、聞き覚えのある男の声がしたのとでは、いったいどっちが先だったのだろう。
「早かったね。待たせちゃったかな。家に上がっていればよかったのに」
「だっておじさん、引っ越したって」
「はっはっは、誰がそんなことを……ん、そこにいるのは雅樹か?」
立ち上がる気力もなく顔を上げると、スーツ姿のエビがいた。今は茹でられていない。
脱力感と絶望のせいで意識が遠くなっていくのを、おれはおそらく人生ではじめて感じた。こういう最悪の状況は、いったいどうすればなかった事にできるのだろう。
ああ、そうだ。こんな時こそ魔法があったらいいのに。
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