想い紡ぐ旅人

加瀬優妃

文字の大きさ
38 / 68

37.大事なことが隠されている

しおりを挟む
「うまくいったね!」

 フィラの民が全員エルトラ領に入ったのを見届けて、私たちは南へ向かった。
 グッと拳を突き出して元気に笑う私とは対照的に、ユウと夜斗はかなり疲労していた。サンの背中でグッタリと横たわっている。

「でも……ユウ、大丈夫?」
「あんまり大丈夫じゃない……。朝日、膝枕」
「はい。ちゃんと休んでね」

 ユウに膝を貸す。

「ずりぃ……」

 夜斗がゼイゼイ言いながらユウを睨む。

「百人分のバリアって……どれだけ大変だと思ってんだ……」
「生身の人間をフェルティガで運ぶのは危険だし、俺のだと完全防御クイヴェリュンに弾かれる可能性があったからね……。夜斗じゃないと……」

 ユウがちょっとボーッとしながら言う。
 エルトラ王宮に侵入したり、理央と闘った後だから、かなり堪えたみたいだ。

「そうやって朝日からもらって、今まで回復してたんだな」
「……もらう? 何を?」
「フェルティガだよ! 決まってんだろ!」
「……?」

 ユウはよくわからないみたいだった。
 私はちょっと笑って、夜斗に手を差し出した。

「夜斗、とりあえず手を貸してあげるから落ち着いて。ちゃんと休んで」
「……」

 夜斗は不満そうにゴロンと転がると、私の手をおでこにあてた。

「一応、頑張れー、回復しろーと祈ってるんだけど……どう?」
「……さっきほどの効果はない……」
「やっぱり必死にならないと無理みたいだね……。コントロールできない……」

 そんな会話を夜斗としていると、ユウが

「……さっきからいったい何の話? 説明して」

とむくれた。

「まず、二人とも休もう。それからにしようよ」

 どうも二人とも頭が回っていないみたいだし。
 一回休んで、それからお互いの情報をちゃんと擦り合わせた方がいい。

「でも……」
「だってよ……」

 二人が同時に不服そうに言うので、ちょっとイラッとしてしまい

「【黙って寝なさい・・・・・・・】」

と強く命令する。
 途端に、二人は静かになった。

「……?」

 膝の上のユウの顔と、手をあてていた夜斗の顔を交互に覗き見る。
 ひょっとして気絶してしまったのかと思ったけど、二人とも顔色が少し悪いだけで、苦しそうな感じではなかった。
 テスラの民は眠らないって言ってたのに、二人とも明らかに寝ていた。
 ユウに至っては、寝息までたてている。

「……??」

 まあ、いいか。スキー合宿の時も、ユウは次の日、かなり元気になってたものね。
 テスラの人は眠らなくても活動できるっていうだけのことで、寝ることはできるみたいだし。むしろ、よくリフレッシュできるみたいだし。
 このままそっとしておこう……。

「キュィィ……」

 サンも何かを察したのか、飛ぶ速度が少しゆっくりになり……その分高度を上げた。
 テスラの昼の光が、私たちを暖かく照らしている。

 私は後ろを振り返った。

 エミール川……その東には、黄色い大地の中に黒い岩がゴロゴロした、いわゆる死の大地が広がっている。
 ポツンとある黒い建物……あれが、キエラの要塞なのだろう。
 そのさらに奥には、白い崩れかけた城のようなものが見える。
 西側には……女王の完全防御クイヴェリュン。王宮を中心に、ドーム型になっているのがわかる。
 その中は……もう、よく見えない。
 だけど完全防御クイヴェリュンのまわりにもいくつか小さな村があるのがわかった。
 これらが見る見るうちに遠ざかる。

 私は前に向き直った。

 テスラは……その周囲すべてが海に囲まれていた。三百六十度、水平線が見える。
 多分、とても小さい……日本の四国よりもずっと小さい、島国のようだ。今はゆっくり飛んでいるけれど、さっきのサンの飛ぶ速さなら半日もあれば一回りできるだろう。
 それほど小さいこの国で……もとは同じ民が戦争をしているんだ……。

 
 雪が所々残る平原を越え、高い崖を越えた。南の海が見える。
 サンはどこまで行くんだろう……と思っていたら、急に下降し始めた。
 下を覗くと、崖の麓に浜辺が見える。

 サンは砂浜にゆっくりと降り立つと、足をかがめて「気をつけて降りてね」という風に腰を下ろした。
 私はそーっとユウを膝からどかすと、まず自分が降りた。
 まわりを見回すと、狭い岩穴に布や木、タライみたいなものが散らばっていた。

「……ここがユウが言っていたダイダル岬……。ひょっとして、ユウとサンはここに隠れていたの?」
「キュゥゥ……」

 ユウの意識がないと私の言葉も届かないらしい。海を見て小さく鳴くだけだった。
 とりあえず、ユウと夜斗をサンから下ろし、砂浜に寝かせた。

 サンは私たちをちょっと見てから、海の方に飛んで行った。何か食料でも採ってくるんだろうか。
 これから、どうしたらいいんだろう。

 とりあえず、散らかっていた岩穴を片付けることにした。ごつごつした石が剥き出しになっている。当然、布団なんてものはない。

 ユウは、こんなところにずっといたの? 私を助ける機会を窺いながら?
 きっと、身体はボロボロに違いない。
 ……ごめんね。本当に、ありがとう。

 せめてここを綺麗にしよう、と投げられていた布を拾った。
 だいぶんくたびれている。とりあえず埃を落としたけど、汚れたままだ。
 
 洗えないかな、と思いながら海の水を覗くと、透明でとても奇麗だった。
 ちょっと怖かったけど舐めてみると、何も味がしない。地球とは違って、塩水ではないみたいだ。
 タライに水を汲んで布を洗う。……よし、だいぶんきれいになった。
 私は布をぎゅーっと絞って水気をとった。

「……ん?」

 そのとき、ユウがむっくりと起き上がった。

「ユウ、目が覚めた?」
「……サンは……?」
「海の方に飛んで行ったけど……」
「……食事かな……」

 ユウがボーっとしたまま呟く。

「朝日……髪、短い……」
「あ、うん」

 夜斗に揃えてもらった髪を、ちょっと触る。

「女王の託宣……とかに必要で、切られちゃって。夜斗に揃えてもらったんだ」
「……」

 ユウは隣に寝ている夜斗を見ると、ポカリと頭を小突いた。すると夜斗が急に驚いたように跳ね起きた。

「うわっ! 気を失ってた!」
「違うよ、寝てたんだよ」

 とりあえずユウが小突いたことは黙っていよう……。元気になったみたいだし、ちょっとホッとした。
 布をパンパンしながら私が言うと、夜斗は訝しげな顔をした。

「寝る?」
「そう。テスラの人も寝れるんだね」

 近くの岩に布を広げる。

「……お前の強制執行カンイグジェって気まぐれに出るんだな……」

 夜斗は立ち上がると背伸びをした。だいぶん疲れは取れたみたいだ。

「おお、でも凄いな。体がめちゃくちゃ軽いぞ」
強制執行カンイグジェ……?」

 ユウが不思議そうな顔をする。

「そうか、知らないんだな。女王の託宣によると、朝日はチェルヴィケンの血を引いているフェルティガエで、フェルティガを吸収する能力があるんだとさ」
「チェルヴィケン!?」
「で、お前はユウディエン=フィラ=ファルヴィケンなんだな」
「そうだけど……」
「ちょ、ちょっと待って! そんないっぺんにいろいろ言ってもわからなくなっちゃうよ。ちゃんと順序立てて話をしよう?」

 私は慌てて二人の間に入った。

「ねえ、ユウ。どうしてここ……ダイダル岬にきたの?」
「ここならエルトラの遠視も効かないから……ヤジュ様に言われて、ここでサンを育てたんだよ。とりあえずここなら、エルトラの追手も来ないから落ち着けるって言われて。後でヤジュ様のところに連れていくけど……」
「ヤジュ様?」

 夜斗が訳がわからん、という顔をしたので、ユウは、自分の生い立ちとどういう経緯で私のもとに来たかを簡単に説明した。

 ヤジュ様と二人きりで山奥に隠れ住んでいたこと。
 夢鏡ミラーで私を見ていたこと。
 ガードが使命だと言われていたこと。
 ヤジュ様にフェルをかけてもらい、容姿を女の子に見えるようにしていたこと。
 キエラのディゲと戦ったこと。
 私が誘拐されたあと、ヤジュ様と会い、術を解いてもらって卵を託されたこと。
 ヤジュ様は今、ガラスの棺で眠っていること。

「……で、真実を話さなければならないから、朝日を連れて来いって言われてる」
「……」

 夜斗はじっと考え込むと

「じゃあ、エルトラに長く住んでる者として、疑問点をいくつか言うぞ」

と右手を上げた。
 私とユウは黙って頷いた。

「まず1つ目。フィラの消滅は今から21年前。お前の話が本当なら、お前は21歳のはず。3年のズレがある」

 夜斗が指を折る。

「2つ目。キエラに囚われずに済んだ人間はみなエルトラに保護されたはずだ。だったらお前もエルトラに来るはずなのに、ヤジュ様って人が……エルトラからもキエラからも身を隠して一人でお前を育てていた。なぜそうしなければならなかったのか」

 確かに……。ユウから話を聞いたとき、私も違和感を感じたところだ。何か都合が良すぎるっていうか……。
 その辺がやっぱり、ちょっとおかしいよね。

「3つ目。お前は当然のようにミュービュリの世界を覗いていたようだが、テスラでは極秘中の極秘だ。実際俺は、今回の任務で女王から聞かされて初めて知った。ミュービュリを知らなければ、夢鏡ミラーで覗くことはできない。……ということは、ヤジュ様って人はミュービュリを確実に知っている……恐らく、ミュービュリで生活したことがあるということだ」

 そうか……そうよね。だって、ユウは最初にお金まで持たされていたものね。ユウ自身はあまりわかっていなかったのに……。

「最後……4つ目。お前がミュービュリに行くときに託された箱と、ガラスの棺。これは、キエラの技術だ。エルトラにもフィラにもない」
「!」

 私とユウは顔を見合わせた。

「ヤジュ様って人は、俺と同じ幻惑の使い手なんだろ? しかも、幻覚に関しては、俺より高位だ。俺は、ユウにかけられている幻覚が見抜けなかった。それとミュービュリに行ったことがあるということも踏まえると、朝日の母親にかけてあった謎の霧。アレをかけたのは、そのヤジュ様って人だと思う」
「……やっぱり……」

 ユウと夜斗の両方の話を聞いていた私は、思わず呟いた。
 だって、二人の話を聞く限りそんなことができそうな人は他にいないし……。
 それにヤジュ様は、ひたすら、私たち母娘おやこのために動いている感じがする。

「以上のことから、ヤジュ様って人は自分の目的のためにたった一人で行動をしていたということだな。戒めを解き、真実を話すっていうのは……この辺のことを話してくれるんだと思う」
「……」

 ユウはじっと考え込んでいた。何か思い当たる節があるのかもしれない。

「勿論、最大の疑問はヤジュ様って人と朝日の関係だけどな。その辺りも、ヤジュ様って人の話が聞ければわかることだ」

 夜斗はそう言うと、砂浜にゴロンと横になった。

「……じゃあ、こっちの話をするか」

 そして夜斗は、私に話してくれたように、エルトラのことやどういう経緯で私達のもとに来たかを説明した。

 エルトラから見たキエラとの歴史のこと。
 理央と夜斗の血筋のこと。
 私に対する女王の託宣のこと。

「訓練次第で吸収したフェルティガを放出することも思いのままになるはず……ということで、ずっと俺が訓練したけど、今のところは駄目だな。できることと言えば、攻撃に上乗せできることと、ちょっとした防御ガード、気まぐれに出る強制執行カンイグジェぐらいだ」
強制執行カンイグジェ……?」

 それ、さっきも言ってた気がする。

「暗示よりもう少し上位の術で、相手の意思を無視してこちらの望む行動をとらせることができる。お前は全く無意識だけどな」
「そんなことしたっけ……」

 全然、そんな覚えはないけどな。

「リオと戦っていたとき、来るなって叫んだらリオの足が止まっただろ。あれだ」
「……でも、すぐ我に返ってたよ」
「まだまだコントロール不足っていうことと、リオとの関係が希薄だからだ。あとは、俺に助けろ、と命じた時。それと、俺たち二人を強引に寝かしつけたやつ」
「あ……」

 あのときか。寝なさいって言ったら急に寝ちゃったから、びっくりしたけど。

「なるほどね……」

 ユウが私を見ながら呟いた。

「じゃあ、夜斗が理央と敵対してまで私を守ってくれたのは、私の強制執行カンイグジェが効いたからってことなの?」
「……ま、そういうことだな」
「ふうん……?」

 ユウが何か言いたそうに夜斗を見ていた。
 夜斗はちょっと照れくさそうに目を逸らすと
「ああ、朝日のことだけど、自分のフェルティガを相手に渡すことも、場合によってはできるみたいだぞ」
と、早口に言った。

「場合によっては……?」
「ユウとリオが闘ってたとき、膝枕してくれただろ。あのときかなり回復した」
「そうなんだ……」

 もともとはユウのリクエストで始めた膝枕だけど、疲れてるときに少しでも癒されればいいなっていう気持ちでやってたっけ。
 それでできるようなったのかもしれないな……。

 ふとユウを見ると、何だか不機嫌そうになっていた。夜斗も察したのか
「で、話は変わるけど」
と急いで言った。

「女王の託宣によれば、朝日は、チェルヴィケンの直系の血を引く者だということだ。チェルヴィケンの当代は……もし生きていれば四十歳ぐらい。だから、女王は朝日はヒールヴェン=フィラ=チェルヴィケンの娘じゃないかって言ってた。俺もそう思う」

 夜斗がそう言うと、ユウは首を傾げた。

「朝日は父親のこと、何も知らないんだよね」
「うん。全く聞かされてないよ」
「……」
「……」

 私の言葉に、ユウと夜斗は共に黙り込んでしまった。二人とも、難しい顔をしている。
 私がチェルヴィケンの直系だということは、フィラの人間にとってかなり重大なことらしい。私の想像より、ずっと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

背徳の恋のあとで

ひかり芽衣
恋愛
『愛人を作ることは、家族を維持するために必要なことなのかもしれない』 恋愛小説が好きで純愛を夢見ていた男爵家の一人娘アリーナは、いつの間にかそう考えるようになっていた。 自分が子供を産むまでは…… 物心ついた時から愛人に現を抜かす父にかわり、父の仕事までこなす母。母のことを尊敬し真っ直ぐに育ったアリーナは、完璧な母にも唯一弱音を吐ける人物がいることを知る。 母の恋に衝撃を受ける中、予期せぬ相手とのアリーナの初恋。 そして、ずっとアリーナのよき相談相手である図書館管理者との距離も次第に近づいていき…… 不倫が身近な存在の今、結婚を、夫婦を、子どもの存在を……あなたはどう考えていますか? ※アリーナの幸せを一緒に見届けて下さると嬉しいです。

白い結婚の行方

宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」 そう告げられたのは、まだ十二歳だった。 名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。 愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。 この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。 冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。 誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。 結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。 これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。 偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。 交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。 真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。 ──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?  

処理中です...