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58.やっとあなたに会えた
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……ここはどこだろう。
何だか……フワフワしている。
目を開けたいのに、どうしても開けられない。
私はどうなってしまったのだろう……。
『ここは……する部屋じゃ』
テスラ語……。この声は……どこかで聞いたような……。
『本来は男子禁制じゃが、うわ言で何度もお前の名を呼ぶので仕方ない。特別に許可する』
『ありがとうございます』
ユウ……? ユウの声だ……。
そう言えば……さっき隣にいた……気がするのに……。
『とりあえず峠は越えた。五分だけ許可する』
『はい……』
あれ……。何だろう……温かい……?
「……朝日……」
ユウだ……。顔……ユウの手の……感触がする……。
顔が見たいのに……。どうしても……瞼が重い……。どんな表情してるの……。
「……ほんとに朝日って俺の言うこと……聞かないよね……」
そうだ……ね……。ごめんね……。
でも……もう、二度と……会えなくなる気がして……。
「……っ……」
頬に……雫……。 ユウ……? 泣いてる……?
そうだ……こと……ば……伝え……なきゃ……。
「ユ……ご……あ……」
駄目……まだ……無理……。
また……意識が……遠ざかる……。
『……で、今はどのような状態じゃ』
また……この声……。
そうだ……エルトラの女王だ……。
『多分、1か月を過ぎたぐらいかと……』
『おかしいのう……ユウディエンの話と食い違うではないか』
そうか……ここは……エルトラ……。
じゃあ……ユウが連れてきてくれ……て……。
『三家間の婚姻は、原則禁じられておりましたので例がなく、よくわかりません。古文書を拝見する許可を頂きたいのですが』
『許可する』
三家間……婚姻……。
ユウとのことを……反対しているのかな……。
女王が……? どうして……。
「ユ……あ……」
目が……開けられそう……。
『……起きたか』
「……あ……」
まだうっすらとしか開けられない……けれど……。
確かに……女王……。
「ユ……は……」
ユウはどこにいるんだろう……。ちゃんと……元気で……。
『ユウディエンならサチュバの村の防衛に行っている。帰ってきたら、呼んでやろうぞ』
「……あり……」
声にならないので……精一杯笑ってみた……つもりだったけど……駄目みたい。
また……意識が引っ張られて……しまう……。
「朝日……」
ユウ……。ユウの声がする。
ユウが……私の手を握ってくれている……。
……安心する。
『今、どういう状態なのでしょうか?』
『治療師が古文書を調べたところによると……神子が娘のフェルティガを吸収してかなり早く成長している、という話だな。そしてそれに合わせ、娘の身体も急激に変化させている』
あ……女王の声だ……。女王……結構そばにいて……くれてる……。
『だからフィラの三家間の婚姻は禁忌となっておるのじゃな。ただの慣例かと思っておったが……。この娘でなければとっくに死んでおったぞ』
『……すみません』
ユウは……何を謝っているんだろう……。
私と……恋をしたこと……?
そう……なの……?
『謝る必要はない。託宣の神子じゃ。……そういう運命であったのであろうの』
さっきから言っている……みこってなんだろう……?
運命……?
『今は娘から享受されている状態だが、もう三週間もすれば神子自身が自分のフェルティガを使うようになるはずじゃ。そうすれば、目を覚ますであろう』
目……覚ましてるけど……。
体がどうしても動かない……。
私……今……どうなってるんだろう……?
* * *
――私はかなり長い間、夢と現実の間を彷徨っていて……きちんと目が開けられるようになるまでにかなりの時間がかかった。
初めてちゃんと目覚めた日、最初に見たのはフレイヤ女王の顔だった。
似ても似つかないのに、一瞬ママの顔とダブって見えて……。
『……もう大丈夫なようじゃの』
「……あ……れ?」
『われの言葉はわかるかの。ユウディエンが聞き取りはできると言っておったが』
「……」
私は黙って頷いた。
でも、女王がかなり心を配ってくれたのはわかってたし……。やっぱりちゃんと、お礼を言わないと。
えっと……確か……。
『あり……がとござ、ます。い……ま、どれ……くりゃ……』
『……拙いのう。無理せずともよい。われの問いに肯定なら頷けばよい』
「……」
フレイヤ女王はちょっと溜息をついた。
『お前はおそらく何もわかってはおらんから……われが直々に説明する』
はい。お願いします。
『お前がさっき聞こうとしていたのは、どれくらい臥せっていたのか、ということかの』
そうです。ずっと寝ていたような気もするし……。あっという間のような気もするし……。
時間感覚が何だかおかしくなっていて……。
『今日は7月15日じゃ。お前がテスラに来てから……1か月余りじゃの』
えっ、そんなに経ったの?
何で私そんなに寝ていたんだろう……。
確か、すごく体がだるくて……。
そうだ、テスラに来て……闘った直後から、寝るというより意識が遠ざかる感覚がしたっけ。
『お前がなぜそんなに長い間臥せっていたのかと言うと……お前の腹に子がいるからじゃ』
「……え?」
腹に子……。
えっ? えっ?
『ユウディエンの子で間違いはないか』
……はい。そうです。
……私は力強く頷いた。
ユウとの赤ちゃんが、私のお腹の中に、いる……。
ほんとに? 夢じゃなくて?
すごく驚きで……だけど、何だかすごく嬉しい。
『……嬉しそうじゃの。じゃが、フィラの三家間の婚姻は長い間、禁忌だった。われも、理由は知らなかったのじゃがの』
え……。どうして?
『子の力が強いため……母体が負けてしまう。そして、子はフェルティガを吸収し、通常よりかなり早く成長するのだそうだ。そして母体をどんどん作り変えてしまう。ただし、最初のうちは母体のフェルティガを吸収するため、それまでに母体がもたない場合が殆ど。フェルティガが枯渇し……死に至る』
「え……」
だから、禁忌……。
強すぎる力は身を滅ぼす……そういうこと?
家が途絶える危険が高いから……。
『お前はフェルティガを蓄える性質ゆえ、十分に子に与えられたはずなのじゃがの。おそらく、かなり無理をしたのではないか? お前は子に負けそうになり、危篤状態に陥ったのじゃ』
そうなんだ……。
そう言えば、ゲートを越えるまでは全然何ともなかった。
ゲートを越えて……崖を登って……少年たちと闘って……それからだっけ。
急に具合が悪くなってきたのは。
「ユウ……は……」
もう知ってるよね。私が妊娠したこと……。
どう思っただろう……。
『ユウディエンに……会いたいか』
はい! とっても。
私は力強く頷いた。
『まぁ、もう安定期に入っておるから大丈夫かの』
安定期……? 1か月半で?
私が首を傾げていると、女王が立ち上がって言った。
『通常より早いと言ったであろう。治療師の見立てだと、あと1か月ほどで臨月じゃ』
「えーっ!」
『……元気じゃの』
女王が溜息をつきながら部屋を出て行った。
部屋に一人残されてから、辺りを見回してみた。
結構大きい部屋で三十畳ぐらいはありそう。私が寝ているベッドもすごく大きい。キングサイズかな。
布団はすごくふかふかで、体がずぶずぶと沈み込んでいくような感じがする。
上は、天蓋っていうんだっけ? あの、貴族のお姫様が寝るベッドみたいな、ああいう感じのがついている。
色はすべて白かベージュで、刺繍がすごく細かくて奇麗。
とにかく、何だかすごく落ち着く空間になっていた。
これ、すごく特別な部屋なんじゃないかな……。
しばらくして、女王とユウが現れた。
『あまり長い時間は駄目だぞ。時間になったら神官をよこす』
『はい』
ユウ……ユウだ。
どうしよう……すごく嬉しい。
あ、ずっと寝てたから……頭ぐしゃぐしゃになってないかな? 顔腫れてないかな?
鏡……鏡ないかな?
「朝日!」
顔を上げると、ユウがもう目の前にいて、ものすごい勢いで抱きしめられた。
「もう……心配した。生きた心地がしなかった。俺……」
「ごめん……」
ユウの背中に手を回そうと思ったけど、全然力が入らなかった。
かろうじて動く右腕でユウの服を引っ張る。
「もう、会えなくなる気がして……どうしても、追いかけたくなって。そしたら、ゲートが開いたの。だから……」
ユウは私から離れると、傍の椅子に座った。私の右手を握る。
「そうだね。それは、俺たちの判断ミスだ。朝日はゲートを開けられないから、ミュービュリにいれば安全だと思ってた」
ユウは溜息をついた。
「それに子供のこととか全然考えてなかった。……無責任だったよね。ごめん」
「えっ……」
ドキリと、心臓が嫌な音を立てた。
「……迷惑……だった……?」
ユウは、後悔しているの?
私は……やっとユウと気持ちがつながったことが実感できて……すごく嬉しかったのに。
「違うよ! その、いろいろ、知らなかったから……。そのせいで朝日の命が危なくなって。俺が勝手に朝日の前から消えて、だから、その、何ていうか……」
ユウの手に力が入る。
「朝日が死ぬかもしれない……そう思ったら、すごく怖かった」
「ユウ……」
ユウは両手で私の手をとると、にっこり笑った。
「でも、今はホッとしてる。それで……すごく嬉しい。早く戦争を終わらせて、朝日と……それと子供と一緒に帰りたい」
「……うん」
ユウが私にキスしようとしたとき……神官が『時間ですが』と無表情で現れた。
ユウは
「もう少し気を利かせてくれても……」
と愚痴りながら、名残惜しそうに部屋を出て行った。
そう……そうだね。
やっと、ユウに会えた。そしてお腹には……私たちの赤ちゃんがいる。
急に幸せがこみ上げてきて……私は思わず「ふふふっ」と声に出して笑ってしまった。
何だか……フワフワしている。
目を開けたいのに、どうしても開けられない。
私はどうなってしまったのだろう……。
『ここは……する部屋じゃ』
テスラ語……。この声は……どこかで聞いたような……。
『本来は男子禁制じゃが、うわ言で何度もお前の名を呼ぶので仕方ない。特別に許可する』
『ありがとうございます』
ユウ……? ユウの声だ……。
そう言えば……さっき隣にいた……気がするのに……。
『とりあえず峠は越えた。五分だけ許可する』
『はい……』
あれ……。何だろう……温かい……?
「……朝日……」
ユウだ……。顔……ユウの手の……感触がする……。
顔が見たいのに……。どうしても……瞼が重い……。どんな表情してるの……。
「……ほんとに朝日って俺の言うこと……聞かないよね……」
そうだ……ね……。ごめんね……。
でも……もう、二度と……会えなくなる気がして……。
「……っ……」
頬に……雫……。 ユウ……? 泣いてる……?
そうだ……こと……ば……伝え……なきゃ……。
「ユ……ご……あ……」
駄目……まだ……無理……。
また……意識が……遠ざかる……。
『……で、今はどのような状態じゃ』
また……この声……。
そうだ……エルトラの女王だ……。
『多分、1か月を過ぎたぐらいかと……』
『おかしいのう……ユウディエンの話と食い違うではないか』
そうか……ここは……エルトラ……。
じゃあ……ユウが連れてきてくれ……て……。
『三家間の婚姻は、原則禁じられておりましたので例がなく、よくわかりません。古文書を拝見する許可を頂きたいのですが』
『許可する』
三家間……婚姻……。
ユウとのことを……反対しているのかな……。
女王が……? どうして……。
「ユ……あ……」
目が……開けられそう……。
『……起きたか』
「……あ……」
まだうっすらとしか開けられない……けれど……。
確かに……女王……。
「ユ……は……」
ユウはどこにいるんだろう……。ちゃんと……元気で……。
『ユウディエンならサチュバの村の防衛に行っている。帰ってきたら、呼んでやろうぞ』
「……あり……」
声にならないので……精一杯笑ってみた……つもりだったけど……駄目みたい。
また……意識が引っ張られて……しまう……。
「朝日……」
ユウ……。ユウの声がする。
ユウが……私の手を握ってくれている……。
……安心する。
『今、どういう状態なのでしょうか?』
『治療師が古文書を調べたところによると……神子が娘のフェルティガを吸収してかなり早く成長している、という話だな。そしてそれに合わせ、娘の身体も急激に変化させている』
あ……女王の声だ……。女王……結構そばにいて……くれてる……。
『だからフィラの三家間の婚姻は禁忌となっておるのじゃな。ただの慣例かと思っておったが……。この娘でなければとっくに死んでおったぞ』
『……すみません』
ユウは……何を謝っているんだろう……。
私と……恋をしたこと……?
そう……なの……?
『謝る必要はない。託宣の神子じゃ。……そういう運命であったのであろうの』
さっきから言っている……みこってなんだろう……?
運命……?
『今は娘から享受されている状態だが、もう三週間もすれば神子自身が自分のフェルティガを使うようになるはずじゃ。そうすれば、目を覚ますであろう』
目……覚ましてるけど……。
体がどうしても動かない……。
私……今……どうなってるんだろう……?
* * *
――私はかなり長い間、夢と現実の間を彷徨っていて……きちんと目が開けられるようになるまでにかなりの時間がかかった。
初めてちゃんと目覚めた日、最初に見たのはフレイヤ女王の顔だった。
似ても似つかないのに、一瞬ママの顔とダブって見えて……。
『……もう大丈夫なようじゃの』
「……あ……れ?」
『われの言葉はわかるかの。ユウディエンが聞き取りはできると言っておったが』
「……」
私は黙って頷いた。
でも、女王がかなり心を配ってくれたのはわかってたし……。やっぱりちゃんと、お礼を言わないと。
えっと……確か……。
『あり……がとござ、ます。い……ま、どれ……くりゃ……』
『……拙いのう。無理せずともよい。われの問いに肯定なら頷けばよい』
「……」
フレイヤ女王はちょっと溜息をついた。
『お前はおそらく何もわかってはおらんから……われが直々に説明する』
はい。お願いします。
『お前がさっき聞こうとしていたのは、どれくらい臥せっていたのか、ということかの』
そうです。ずっと寝ていたような気もするし……。あっという間のような気もするし……。
時間感覚が何だかおかしくなっていて……。
『今日は7月15日じゃ。お前がテスラに来てから……1か月余りじゃの』
えっ、そんなに経ったの?
何で私そんなに寝ていたんだろう……。
確か、すごく体がだるくて……。
そうだ、テスラに来て……闘った直後から、寝るというより意識が遠ざかる感覚がしたっけ。
『お前がなぜそんなに長い間臥せっていたのかと言うと……お前の腹に子がいるからじゃ』
「……え?」
腹に子……。
えっ? えっ?
『ユウディエンの子で間違いはないか』
……はい。そうです。
……私は力強く頷いた。
ユウとの赤ちゃんが、私のお腹の中に、いる……。
ほんとに? 夢じゃなくて?
すごく驚きで……だけど、何だかすごく嬉しい。
『……嬉しそうじゃの。じゃが、フィラの三家間の婚姻は長い間、禁忌だった。われも、理由は知らなかったのじゃがの』
え……。どうして?
『子の力が強いため……母体が負けてしまう。そして、子はフェルティガを吸収し、通常よりかなり早く成長するのだそうだ。そして母体をどんどん作り変えてしまう。ただし、最初のうちは母体のフェルティガを吸収するため、それまでに母体がもたない場合が殆ど。フェルティガが枯渇し……死に至る』
「え……」
だから、禁忌……。
強すぎる力は身を滅ぼす……そういうこと?
家が途絶える危険が高いから……。
『お前はフェルティガを蓄える性質ゆえ、十分に子に与えられたはずなのじゃがの。おそらく、かなり無理をしたのではないか? お前は子に負けそうになり、危篤状態に陥ったのじゃ』
そうなんだ……。
そう言えば、ゲートを越えるまでは全然何ともなかった。
ゲートを越えて……崖を登って……少年たちと闘って……それからだっけ。
急に具合が悪くなってきたのは。
「ユウ……は……」
もう知ってるよね。私が妊娠したこと……。
どう思っただろう……。
『ユウディエンに……会いたいか』
はい! とっても。
私は力強く頷いた。
『まぁ、もう安定期に入っておるから大丈夫かの』
安定期……? 1か月半で?
私が首を傾げていると、女王が立ち上がって言った。
『通常より早いと言ったであろう。治療師の見立てだと、あと1か月ほどで臨月じゃ』
「えーっ!」
『……元気じゃの』
女王が溜息をつきながら部屋を出て行った。
部屋に一人残されてから、辺りを見回してみた。
結構大きい部屋で三十畳ぐらいはありそう。私が寝ているベッドもすごく大きい。キングサイズかな。
布団はすごくふかふかで、体がずぶずぶと沈み込んでいくような感じがする。
上は、天蓋っていうんだっけ? あの、貴族のお姫様が寝るベッドみたいな、ああいう感じのがついている。
色はすべて白かベージュで、刺繍がすごく細かくて奇麗。
とにかく、何だかすごく落ち着く空間になっていた。
これ、すごく特別な部屋なんじゃないかな……。
しばらくして、女王とユウが現れた。
『あまり長い時間は駄目だぞ。時間になったら神官をよこす』
『はい』
ユウ……ユウだ。
どうしよう……すごく嬉しい。
あ、ずっと寝てたから……頭ぐしゃぐしゃになってないかな? 顔腫れてないかな?
鏡……鏡ないかな?
「朝日!」
顔を上げると、ユウがもう目の前にいて、ものすごい勢いで抱きしめられた。
「もう……心配した。生きた心地がしなかった。俺……」
「ごめん……」
ユウの背中に手を回そうと思ったけど、全然力が入らなかった。
かろうじて動く右腕でユウの服を引っ張る。
「もう、会えなくなる気がして……どうしても、追いかけたくなって。そしたら、ゲートが開いたの。だから……」
ユウは私から離れると、傍の椅子に座った。私の右手を握る。
「そうだね。それは、俺たちの判断ミスだ。朝日はゲートを開けられないから、ミュービュリにいれば安全だと思ってた」
ユウは溜息をついた。
「それに子供のこととか全然考えてなかった。……無責任だったよね。ごめん」
「えっ……」
ドキリと、心臓が嫌な音を立てた。
「……迷惑……だった……?」
ユウは、後悔しているの?
私は……やっとユウと気持ちがつながったことが実感できて……すごく嬉しかったのに。
「違うよ! その、いろいろ、知らなかったから……。そのせいで朝日の命が危なくなって。俺が勝手に朝日の前から消えて、だから、その、何ていうか……」
ユウの手に力が入る。
「朝日が死ぬかもしれない……そう思ったら、すごく怖かった」
「ユウ……」
ユウは両手で私の手をとると、にっこり笑った。
「でも、今はホッとしてる。それで……すごく嬉しい。早く戦争を終わらせて、朝日と……それと子供と一緒に帰りたい」
「……うん」
ユウが私にキスしようとしたとき……神官が『時間ですが』と無表情で現れた。
ユウは
「もう少し気を利かせてくれても……」
と愚痴りながら、名残惜しそうに部屋を出て行った。
そう……そうだね。
やっと、ユウに会えた。そしてお腹には……私たちの赤ちゃんがいる。
急に幸せがこみ上げてきて……私は思わず「ふふふっ」と声に出して笑ってしまった。
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