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第11話 知らねぇよ、そんなの
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カメちゃん、ごめんね。
カメちゃんが死んだの、私のせいなの。
私がお父さんに余計なことを言ったから。
携帯でずっと誰かと話してて、全然構ってくれなくて。
「バイクに抜かれちゃったよ、ダサーイ!」
……なんて言ったから。
緑の背中の金色の鳥が、本当に夜空を飛んでいった。
とんでもないことしてしまった、って思った。
後は……もう、よく覚えてない。
気が付いたら、外を自由に飛べるようになってた。
だから探したんだよ。あのあとどうなったんだろうって。何が起こったんだろうって。
あちこち潜り込んで、一生懸命に探したの。
でも……私は生きてて、カメちゃんは死んじゃってた。
あのときね。あの、初めて会ったとき。
カメちゃん、死んだはずなのに、って驚いた。
でも生きてた、良かったって思ったの。
だけど、死神だって。死神バイトだって。
やっぱり死んじゃってた。私のせいで。
ショックだった。
あやまりたかったの。でも、カメちゃん、何も覚えてないって言ったから、言えなかったの。
自分のことも、言えなかったの。
だからせめて、私の魂はあげたかったの。
いろいろ嘘ついて……ごめんなさい。
◆ ◆ ◆
淡く光る魂になってしまったチカの、最期の想い。
あのあと、シャチョーが伝えてくれた。
幽界にある事務所に連れ戻されたあと、俺は外出禁止となり、そのまま謹慎処分を食らった。
下界の人間に情報を漏らした罪、幽界道具を使わせた罪……その他もろもろ、とにかく問題だらけ。よーく反省しろ、だって。
だけど……俺が凹んでるのも分かってて、「ちょっと休んでおけ」ということかもしれない。
そしてシャチョーは、『オーモノ』についても説明してくれた。
「『オーモノ』は、正しくは『負う者』、正式には『因業を負う者』。つまり――自分が死んだ原因に関わる者だ」
「大きい物じゃなかったのか……」
「間違いじゃねぇが、まぁ隠語みたいなものだ。大っぴらに言えねぇからな」
自分の『負う者』に接触すると、必然的に忘れた記憶を蘇らせることになる。
だけど思い出すのは、自分の最期のときの記憶だ。死神バイトなんてしている連中はロクな死に方をしていないことも多いから、精神的にかなりのダメージを食らってしまう。
だけどそれを乗り越えられたら、それが一番の罪滅ぼしに……つまり『徳』の獲得に繋がる。
つまり、俺にとっての『オーモノ』はチカだったのだ。
一部の死神バイトに下される、最初で最後の試練。
タナトさんは、その最後の記憶が辛すぎて途中で放棄したそうだ。
確か、パワハラで自殺したって言ってたもんな。もう一回それを味わうなんて、しんどすぎるよ。
そういう理由で逃げるのは、別に悪くないと思う。
「酷い目に遭って何も覚えてない」
と言っていたのは本当にその通りなんだな、と思った。
「その性質上、『負う者』に関する一切のことは対象者……今の場合なら、カメだな。対象者には知らされねぇ。自ら接し、乗り越えることに意味があるからな」
「ふうん……」
これらの試練はあくまで死神バイト側の話であって、『負う者』には全く関係ないらしい。
だけど今回は、チカが生霊だったことが事態を混乱させた。
幽界の人間に限りなく近い状態だったこと――そして、チカにとっての『負う者』が俺だったこと。
「……あの事故のときのガキが、チカだったのか」
「そーいうこったな」
「じゃあ……俺はチカを二度殺したようなもんじゃねぇか……」
チカの身体は確かに生きていたけど、チカにとってはあのとき死んだも同然だった。
チカにとっての『因業を負う者』が俺……ってのは、そういうことだろ?
そう思ってうなだれていると、
「こんの、バカが!」
という声と共にシャチョーの例のゲンコツが飛んできた。
「いっ……痛ってぇな!」
「そうじゃねぇって言ってんだろ! 頭悪いな!」
「こんだけボコボコ殴られりゃ、バカにもなるってーの!」
「そう意味じゃねぇ、このアホンダラが!」
顔を真っ赤にして怒鳴るシャチョーの背後で、タナトさんが
「それだけ暴言が吐ければ大丈夫かな」
と小さく呟いている。
だって……だってよぉ……。
どう聞いてもそういう風にしか聞こえねぇんだけど?
「いいか、耳の穴かっぽじってよく聞け! カメと『敦見知佳』の『因業を負う者』は、かなり特殊なんだよ」
凹んでいる俺を少しは気にしてくれたのか、シャチョーの声が少しだけ和らぐ。
「特殊?」
「言うなれば、逆なんだ。『こいつのせいで自分は死んだ』じゃなくて『自分のせいで相手まで死んだ』。……お互いが、そう思ってた」
「だろ?」と言い、シャチョーが横目で俺を見る。
「そうじゃねぇってのか?」
「因果関係ってのはそんな単純なもんじゃねぇんだ。とにかく、もうその辛気臭いツラはやめろ」
そう言い残すと、シャチョーは事件の後始末のために慌ただしく事務所を出て行った。
結局……俺は、試練はこなしたが魂は得られなかった。チカの魂は、オカシな事態になっちまったために社長に保護されたからだ。
でも、今となってはそんなことはどうでも良かった。もう俺にできることは何もなくて……事務所でおとなしく掃除するぐらいしかなかったし。
そうして俺が腐っているうちに……下界時間に換算すると、二週間の時が流れた。
カメちゃんが死んだの、私のせいなの。
私がお父さんに余計なことを言ったから。
携帯でずっと誰かと話してて、全然構ってくれなくて。
「バイクに抜かれちゃったよ、ダサーイ!」
……なんて言ったから。
緑の背中の金色の鳥が、本当に夜空を飛んでいった。
とんでもないことしてしまった、って思った。
後は……もう、よく覚えてない。
気が付いたら、外を自由に飛べるようになってた。
だから探したんだよ。あのあとどうなったんだろうって。何が起こったんだろうって。
あちこち潜り込んで、一生懸命に探したの。
でも……私は生きてて、カメちゃんは死んじゃってた。
あのときね。あの、初めて会ったとき。
カメちゃん、死んだはずなのに、って驚いた。
でも生きてた、良かったって思ったの。
だけど、死神だって。死神バイトだって。
やっぱり死んじゃってた。私のせいで。
ショックだった。
あやまりたかったの。でも、カメちゃん、何も覚えてないって言ったから、言えなかったの。
自分のことも、言えなかったの。
だからせめて、私の魂はあげたかったの。
いろいろ嘘ついて……ごめんなさい。
◆ ◆ ◆
淡く光る魂になってしまったチカの、最期の想い。
あのあと、シャチョーが伝えてくれた。
幽界にある事務所に連れ戻されたあと、俺は外出禁止となり、そのまま謹慎処分を食らった。
下界の人間に情報を漏らした罪、幽界道具を使わせた罪……その他もろもろ、とにかく問題だらけ。よーく反省しろ、だって。
だけど……俺が凹んでるのも分かってて、「ちょっと休んでおけ」ということかもしれない。
そしてシャチョーは、『オーモノ』についても説明してくれた。
「『オーモノ』は、正しくは『負う者』、正式には『因業を負う者』。つまり――自分が死んだ原因に関わる者だ」
「大きい物じゃなかったのか……」
「間違いじゃねぇが、まぁ隠語みたいなものだ。大っぴらに言えねぇからな」
自分の『負う者』に接触すると、必然的に忘れた記憶を蘇らせることになる。
だけど思い出すのは、自分の最期のときの記憶だ。死神バイトなんてしている連中はロクな死に方をしていないことも多いから、精神的にかなりのダメージを食らってしまう。
だけどそれを乗り越えられたら、それが一番の罪滅ぼしに……つまり『徳』の獲得に繋がる。
つまり、俺にとっての『オーモノ』はチカだったのだ。
一部の死神バイトに下される、最初で最後の試練。
タナトさんは、その最後の記憶が辛すぎて途中で放棄したそうだ。
確か、パワハラで自殺したって言ってたもんな。もう一回それを味わうなんて、しんどすぎるよ。
そういう理由で逃げるのは、別に悪くないと思う。
「酷い目に遭って何も覚えてない」
と言っていたのは本当にその通りなんだな、と思った。
「その性質上、『負う者』に関する一切のことは対象者……今の場合なら、カメだな。対象者には知らされねぇ。自ら接し、乗り越えることに意味があるからな」
「ふうん……」
これらの試練はあくまで死神バイト側の話であって、『負う者』には全く関係ないらしい。
だけど今回は、チカが生霊だったことが事態を混乱させた。
幽界の人間に限りなく近い状態だったこと――そして、チカにとっての『負う者』が俺だったこと。
「……あの事故のときのガキが、チカだったのか」
「そーいうこったな」
「じゃあ……俺はチカを二度殺したようなもんじゃねぇか……」
チカの身体は確かに生きていたけど、チカにとってはあのとき死んだも同然だった。
チカにとっての『因業を負う者』が俺……ってのは、そういうことだろ?
そう思ってうなだれていると、
「こんの、バカが!」
という声と共にシャチョーの例のゲンコツが飛んできた。
「いっ……痛ってぇな!」
「そうじゃねぇって言ってんだろ! 頭悪いな!」
「こんだけボコボコ殴られりゃ、バカにもなるってーの!」
「そう意味じゃねぇ、このアホンダラが!」
顔を真っ赤にして怒鳴るシャチョーの背後で、タナトさんが
「それだけ暴言が吐ければ大丈夫かな」
と小さく呟いている。
だって……だってよぉ……。
どう聞いてもそういう風にしか聞こえねぇんだけど?
「いいか、耳の穴かっぽじってよく聞け! カメと『敦見知佳』の『因業を負う者』は、かなり特殊なんだよ」
凹んでいる俺を少しは気にしてくれたのか、シャチョーの声が少しだけ和らぐ。
「特殊?」
「言うなれば、逆なんだ。『こいつのせいで自分は死んだ』じゃなくて『自分のせいで相手まで死んだ』。……お互いが、そう思ってた」
「だろ?」と言い、シャチョーが横目で俺を見る。
「そうじゃねぇってのか?」
「因果関係ってのはそんな単純なもんじゃねぇんだ。とにかく、もうその辛気臭いツラはやめろ」
そう言い残すと、シャチョーは事件の後始末のために慌ただしく事務所を出て行った。
結局……俺は、試練はこなしたが魂は得られなかった。チカの魂は、オカシな事態になっちまったために社長に保護されたからだ。
でも、今となってはそんなことはどうでも良かった。もう俺にできることは何もなくて……事務所でおとなしく掃除するぐらいしかなかったし。
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