クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ

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第3章:揺れる絆、迫る真実

第75話:刻まれる代償

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地に突き立てた剣を支えに、俺は荒い息を吐いた。
全身が焼けるように熱く、視界の端がじりじりと黒く染まっていく。

「……はぁ、はぁっ……」

力を振るいすぎた。
従属の波を一度に広げた反動が、確実に俺の中を蝕んでいた。

(やべぇな……立ってるのがやっとだ)



「悠斗!」
リーネが駆け寄り、肩を支える。
その手の冷たさが、逆に自分の体温の異常を浮き彫りにした。

「顔が真っ青……! もう無理よ、戦えない!」

「……まだだ。立たなきゃ……」

そう答えた途端、膝が勝手に崩れかける。



「悠斗くんっ!」
美咲が前に飛び出し、両手で俺の腕を必死に支える。
震えているのに、その瞳だけは強く揺るがなかった。

「もういいの! あなたがあなたでなくなる方が……私、ずっと怖いんだから!」

「……美咲」

言葉が喉で詰まる。
その瞳の奥に宿るものを、俺は直視できなかった。



「……離れろ」
俺は苦笑混じりに呟く。

「近くにいれば……お前まで巻き込む」

「離れない!」
即座に返された。
涙に濡れた声が、胸を締め付ける。

リーネが横目でそれを見て、ほんの一瞬だけ眉をひそめた。

(……彼女はもう、はっきりと想っている。
でも――悠斗は気づかない)



その頃、少し離れた場所。

拓真は仲間から距離を取り、物陰で小さく舌打ちをしていた。

「……ちっ。やっぱり怪物だ。いつか俺たちまで巻き込む」

その目に宿るのは恐怖だけでなく、焦りと嫉妬。
そして彼の袖口には、戦場で接触した兵士から渡された小さな紋章が忍ばれていた。

「……これを渡せば、俺は……」

小声は誰にも届かず、ただ不穏な影が広がっていく。



「……悠斗、しばらくは休め」
リーネがきっぱりと告げる。

「無理を続ければ、本当に戻れなくなる」

「……ああ」
素直に頷くしかなかった。

今の俺は、仲間を守るどころか、自分すら保てない。



それでも、美咲は俺の手を握ったまま離そうとしなかった。
その温もりだけが、朦朧とする意識を繋ぎ止めていた。

(……守れるのか、俺に)

不安が、胸の奥で重く広がっていった。



__________________

後書き

ここまで読んでくださりありがとうございます!

第75話では「従属スキルの代償」が表面化しました。
悠斗の身体と精神は確実に限界へと近づいており、美咲とリーネの支えがより鮮明になっていきます。
同時に、拓真の裏切りの伏線がさらに濃く示されました。

次回、第76話は――
休息を取る一行に迫る新たな動き。
王国の追手だけでなく、クラス内部の亀裂が決定的になり始めます。
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