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第4章:奈落の影、揺るがぬ誓い
第126話:狙われる絆
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◇
遺跡を後にして二日。
俺とリーネ、美咲は山道を抜け、小さな村へとたどり着いていた。
「ここなら……少しは落ち着けそうだな」
瓦屋根の家々から煙が立ちのぼり、子どもたちの声が響く。
血と死の匂いから離れ、ほんの少し、平穏が胸に沁みた。
「宿はあちらにあるようです」
リーネが顎で指し示し、俺は頷く。
◇
その頃――村の外れ。
黒衣の影たちが木陰に潜んでいた。
「対象の行動を確認。同行者は二名。女性と思われる」
「ふむ……従属スキルそのものは強力だが、彼の隙は“仲間”にある」
低い声が続く。
「直接本人を狙うより……仲間を揺さぶれ。心を折るのが一番早い」
兵たちは音もなく散り、村の外周を包囲していった。
◇
「悠斗くん、これ……」
宿屋の食堂で、美咲が差し出したのは村人からもらった花束だった。
色とりどりの野草を束ねただけの、素朴な花。
「お礼だって。私たちが魔物を追い払ったこと、知ってるみたい」
「……ありがたいな」
花の香りが、どこか懐かしく胸を落ち着ける。
だが同時に、背筋を走る嫌な寒気を拭えなかった。
◇
夜。
「……悠斗、何か気になっているのですか?」
窓際で剣を研いでいると、リーネが問いかけてきた。
「……ああ。あの術者が言ってたろ。“次はある”って」
「……」
「確実に、もう動いてるはずだ」
リーネは静かに頷き、視線を窓の闇に向ける。
◇
その闇の中。
一人の村人が家から出て、井戸へ水を汲みに来ていた。
背後に忍び寄る黒い影。
「……」
次の瞬間、影の刃が閃いた。
「ひっ……!」
悲鳴が夜に響き渡る。
◇
俺はすぐに立ち上がった。
「リーネ! 美咲! 外だ!」
三人は駆け出し、井戸の前に辿り着く。
そこには倒れた村人と、その背後に立つ黒衣の兵士がいた。
「やはり……来やがったか」
剣を抜き、睨み据える。
兵士はにやりと笑った。
「……高宮 悠斗。お前を直接仕留めろとは言われていない」
「……何?」
「狙うのは――お前の大事な仲間だ」
兵士が指を鳴らす。
村の外から、さらに数体の影が忍び寄る気配がした。
◇
「悠斗くん!」
美咲が震える声で叫ぶ。
リーネは氷の剣を構え、前に出た。
俺は黒鎖を握り締める。
(……やっぱり来たか。狙いは俺じゃない。美咲とリーネ……!)
◇
__________________
後書き
ここまで読んでくださりありがとうございます!
第126話では「影誓機関が仲間を標的にし始める」展開を描きました。
悠斗が術者の“次がある”という言葉を思い出す
村の静かな日常に忍び寄る影
ついに「仲間を狙う」と明言される敵
次回127話は「仲間狙いの急襲」。
美咲やリーネを守るため、悠斗が再び全力を振るうことになります。
遺跡を後にして二日。
俺とリーネ、美咲は山道を抜け、小さな村へとたどり着いていた。
「ここなら……少しは落ち着けそうだな」
瓦屋根の家々から煙が立ちのぼり、子どもたちの声が響く。
血と死の匂いから離れ、ほんの少し、平穏が胸に沁みた。
「宿はあちらにあるようです」
リーネが顎で指し示し、俺は頷く。
◇
その頃――村の外れ。
黒衣の影たちが木陰に潜んでいた。
「対象の行動を確認。同行者は二名。女性と思われる」
「ふむ……従属スキルそのものは強力だが、彼の隙は“仲間”にある」
低い声が続く。
「直接本人を狙うより……仲間を揺さぶれ。心を折るのが一番早い」
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◇
「悠斗くん、これ……」
宿屋の食堂で、美咲が差し出したのは村人からもらった花束だった。
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「お礼だって。私たちが魔物を追い払ったこと、知ってるみたい」
「……ありがたいな」
花の香りが、どこか懐かしく胸を落ち着ける。
だが同時に、背筋を走る嫌な寒気を拭えなかった。
◇
夜。
「……悠斗、何か気になっているのですか?」
窓際で剣を研いでいると、リーネが問いかけてきた。
「……ああ。あの術者が言ってたろ。“次はある”って」
「……」
「確実に、もう動いてるはずだ」
リーネは静かに頷き、視線を窓の闇に向ける。
◇
その闇の中。
一人の村人が家から出て、井戸へ水を汲みに来ていた。
背後に忍び寄る黒い影。
「……」
次の瞬間、影の刃が閃いた。
「ひっ……!」
悲鳴が夜に響き渡る。
◇
俺はすぐに立ち上がった。
「リーネ! 美咲! 外だ!」
三人は駆け出し、井戸の前に辿り着く。
そこには倒れた村人と、その背後に立つ黒衣の兵士がいた。
「やはり……来やがったか」
剣を抜き、睨み据える。
兵士はにやりと笑った。
「……高宮 悠斗。お前を直接仕留めろとは言われていない」
「……何?」
「狙うのは――お前の大事な仲間だ」
兵士が指を鳴らす。
村の外から、さらに数体の影が忍び寄る気配がした。
◇
「悠斗くん!」
美咲が震える声で叫ぶ。
リーネは氷の剣を構え、前に出た。
俺は黒鎖を握り締める。
(……やっぱり来たか。狙いは俺じゃない。美咲とリーネ……!)
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後書き
ここまで読んでくださりありがとうございます!
第126話では「影誓機関が仲間を標的にし始める」展開を描きました。
悠斗が術者の“次がある”という言葉を思い出す
村の静かな日常に忍び寄る影
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美咲やリーネを守るため、悠斗が再び全力を振るうことになります。
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