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1,地下の楽園
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しおりを挟むソラが見上げると、空には大きな黒い渦のような穴があった。
「あそこは、人間界とミデルを繋ぐトンネルなんだ。なんでソラが通れたのかはわからないけど、人間界と通じる場所はトンネルしかない」
見ているとゆっくりとうねる渦に吸い込まれそうで、恐怖を感じる穴だった。
しかし、ソラはロワールの言葉に希望を抱いた。
「じゃあ、あのトンネルを通れば、私は人間界に戻れるの!? 生き返れるの!?」
ロワールは、残念そうに首を横に振った。
「……通れないことはないんだけど、今はトンネルが工事中で、自由には行き来できない」
「そんな……」
ロワールは、声音を落として言った。
「僕達も困っているんだ。なぜなら、この楽園は、人間の幸せで出来上がった世界なんだよ」
「人間の幸せで……?」
ロワールは、今度は森のほうを指差した。
「たとえば、あの木の実」
青々とした葉を茂らせる樹木に、黄色いりんごのようなまるい実がいくつかついていた。
「ここになる実は、全部人間の喜びを栄養にして実るんだ。だから、人間が幸せになればなるほど僕達もおいしい食事にありつける。そのために、僕達妖精は、人間が幸せになる手伝いをするんだ。ラッキーなタイミングや、一度だけ出会った素敵な人なんかがいるだろう? あれは、僕達がセッティングしているんだ。でも、今はトンネル工事のせいで、人間界に行ける妖精が限られている。そのせいで、幸せじゃない人間が増えているみたいなんだよね」
「……それは、あなた達のせいじゃないよ」
自分達の別れ話に他人が入り込む余地などなかったと、ソラは思い出して胸が痛んだ。
「それでも、どんなときでも、人間をサポートするのが僕達の仕事なんだ。僕達は、人間が喜ぶ顔を見るのも好きだからね」
リップサービスなのかもしれなかった。
けれど、今のソラには、ロワールの言葉がじわりと沁みた。
ソラは、引いたはずの涙がまた込み上げてきた。
「最初から、あなたみたいな人に出会えていたらよかったのかな……」
俯いたソラから、涙が一粒、二粒と地面へこぼれ落ちた。
ついさっきまでの勢いのあるソラから一転し、華奢な肩が余計にか細く見える。
ソラの涙を見たロワールは、居てもたってもいられなくなった。
「ソラのそんな顔を見ていると、放っておけなくなるよ……っ!」
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