最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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2章

68話 ど外道

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 階段にいるゾンビを容赦なく叩き落として、うめき声を上げながら転がり落ちていくのをちょっと楽しそうに眺める。勿論その様子を見られて二人に引かれるわけだが。

『……他のプレイヤーは見かけないですね?』
『突入した後なのか、まだ準備なのかは分からないけど、まずは先に階段を降りるのを優先よ』
『T2Wのモデリングってえぐいけど、ゾンビってまた凄いリアル……』
『まあ、敵なのは変わりないわ』

 2体目はスケルトンだがやっぱり蹴り落とす。がしゃんがしゃんと音を立てながら落ちていくのを楽しそうにいつもの凶悪な笑みを浮かべて見つめる。
 やべ、これ楽しい。

『趣味悪いですよ……』
『ノーコストで経験値貰えるんだからいいじゃない』
『あたしは楽しくないかなぁ』

 三者三様の思いを言いながら階段の下まで降りきって辺りを見回す。流石に転げ落ちた奴はいつものようにポリゴン状になって消失したようだ。
 さて……この地下洞窟だが、基本通路はほぼ直線、途中に分かれ道があるタイプだ。そこまで大きく迷うようなものではない。多分何処かの通路に行けばボスなり村人なりがいると思うが、付けておいたマーカー数は結構多い。
 可能であれば数PTでのローラー作戦みたいなことをしたかったが、そんな余裕も無ければ人脈も無い。何よりもさっさとクリアしてたまにはトッププレイヤーみたいなことをしてもいいじゃない。

『ってか、あんたゾンビとか平気なわけ?』
『苦手生物のフィルターレベルあげたんで』
『あたし蛇だめー!』
『あんたはあんたで、もうちょっと危機感を持ちなさい』

 陣形はチェルシー、私、マイカの縦列隊形だ。通路自体の横幅もそこまで広くもないので妥当な所だろう。それにしても昨日よりも進み具合が良くなってるな、やっぱり覚悟を決めたか。
 後ろにいるマイカはかなりマイペースでもある。どっちかっていうとバトルジャンキー的な感じもあるだろうな。
 
『とりあえず未探査の分かれ道をしらみつぶしで行くわよ』

 最初に見つけた分かれ道に反れ、未探査エリアの方へと進む。ああ、そういえば忘れていたことが一つだけあった。

『マイカだっけか、あんた探査系のスキルって持ってない?』
『うーん……探査はないかなぁ……気配とかは察知できるけど!』

 やっぱりバトルジャンキーっぽいなあ、リアルで格闘技をやってる人はこっちでリアルじゃできない動きが出来るからとかでドはまりするとか聞いたけど、その手のタイプなんだろうか?ちゃんと引くときは引いてくれる相手ならジャンキーだろうが何だろうがいいのだが。

『やっぱり魔法なんだよなあ……あんたたち二人とも魔法防御低いでしょ』
『僕はV型ですし』
『あたしはAD型ー』
『……ステータス聞くの忘れてたわ』

 AD型、手数で勝負する軽剣士系のタイプだ。弓職はDEXを上げる事でダメージが上がるので物理弓なら結構いるタイプだ。多分チェルシーや犬野郎と一緒で必要最低限のSTRは振っているはずなので2振り+αって所だろう。SAD型が一般的な格闘系のはずなので、手数特化か。
 
『それじゃあ、そのAD型の強さを見せて貰おうかしらね』
『なになに、敵ー?』
『目の前に普通の?ゾンビがいますけど』

 顔を見て目で「ヤってこい」と指示を出すと、ぱあっと明るい顔をして犬の様に尻尾を振ってるかの如くマイカが飛び出し、先制攻撃のとび膝蹴り。
 凄いな、一気に体勢を崩してるし、結構なダメージ入ってるんじゃないかな?
 そのまま着地すると共に、素早く掌底で軽く後ろに飛ばし二連蹴り。
 足技主体なのかな、個人的にはチェーンパンチとか見たいけど。
 で、手数って言うか足数でボコってそのままポリゴン状になっていく。やっぱりどういう敵であっても全部ポリゴン状になって消えていくんだな。
 昨日の一つ目ゾンビは消えてないから固定ダメージ50とダメージ分で倒せないって事だな。立ち位置的には大ボスっていうか中ボスクラスか。

『うーん、感触が嫌いっ』

 一気にダメージを与えて攻撃するタイプと違って連続攻撃系は映像が派手だな、私には出来ない芸当だ。

『やっぱ格闘技は映えるわね、ああいう感じの動きもそのうち出来ればいいのに』
『ガン=カタとかあこがれるー!』
『ガンナーやるなら覚悟しておかないと修羅の道だろうけど』

 そんな会話をしながら通路の一つ目を片付けるわけだが、突き当りは特に何もなく、単純な行き止まりだ。収穫無しと言う事で引き返していくが、途中でスケルトン相手に立ち回る事になる、そういえばスケルトンだけバラバラになるだけで消失していったのは見ていないな、不死性とかあるんだろうか。

『あのスケルトンに思い切りぶつかってバラバラにしてみて?』
『? じゃあいきます』

 がしゃんと大きい音を立ててバラバラになるスケルトンを眺めるが、バラバラになっただけで特に消えたりはしない。とりあえず踏んで粉々にしていると、ようやく消失していく。

『やっぱ骨は粉々にしないとか』
『何をやってるんですか?』
『死霊系のボスなら基本的な処理の仕方を覚えておいてもいいかなって』

 メモ帳に対処方法を殴り書きしておく、死霊系を使役していて村人を誘拐ってなるとゾンビやらスケルトンがボスって戦は薄そうだが。
 
 そしてこのダンジョン、何が一番大変かと言うと、とにかく雑魚が多い。
 通路を歩けばゾンビの一匹二匹は当たり前、遠距離攻撃してこないだけましだが、とにかく物量でそこそこの耐久力のあるやつが多いのが厄介すぎる。これ更に進んだら動物の奴も出てくるんだろうか。むしろ出てこないって選択肢がないだろ。
 それに何だかんだでチェルシーのV極型がこのダンジョンとしてはハマっているという点もかなり大きい。
 ざっくりと地下1階の探索を完了させたわけだが、地下2階への道を探すまでに私とマイカ自体はダメージほぼ0、チェルシー自体も盾受けだから特にダメージを受けておらず、自動回復でまかなっていた。
 V型のメリットはHPと防御だが、地味に自動回復の数値も上がるので、多少食らった程度じゃポーションを使うまでもない所だろう。
 あの犬野郎だって攻撃貰いながらも自動回復でポーション使ってた覚えなかったし。

『ゾンビとスケルトンばっかりだと飽きるわね』
『手ごたえなーい』
『僕の後ろにいるからですよ!』

 順調に下に降り、地下2階。それにしても他プレイヤーってこんなに見ないものかね。フラグ立てるの早すぎて運営の想定以上だったとかか?

『流石にそこまできついダンジョンではないと思うけど、地下1にいた一つ目も遭遇しなかったな』
『今の所余裕ー?』
『狭くて浅いといいんですけど……』

 長いとそれだけホラー要素に付き合う訳だし、精神的ダメージの方が強いか。どっちにしろ時間を掛ければ掛けるほど夜になるわけだし、スピードクリアは一概にも悪いわけではない。

『うーん……地下1は消耗狙いな気がする』
『2階もローラー作戦で?』
『あたしならさっきのゾンビとスケルトンくらいだったら余裕だよー?』

 地下2の階段元でどうするかを相談する。確かにマイカの実力であればゾンビ、スケルトン辺りなら余裕だが、不測の事態もある。チェルシーと一緒でPT会話で呼ぶのもありか。

『接近戦の不安もあるけど、チェルシーと私はセットじゃないときついから、マイカは遊撃と言うか足の速さで分かれ道を一気に探索、何もなければすぐに戻るって形に変えよう』
『はーい、がんばりまーす!』
『防御0のアカメさんと攻撃0の僕ならそうなりますね』

 ちょっとだけムっとしたのでハラスメントブロック越しに肩パンしておく。

『とりあえず死に戻りするぐらいなら、さっさと逃げるのだけは約束しなさい?』
『はーい!』

 そうしてマイカの戦闘力を頼りにしながら分かれ道を地下1と同じようにしらみ潰して先に進んで行く。それにしても分かれた道から打撃音が響くのは中々に新鮮だな。
 とにかくこの1PT2チーム体制で先に進んで行く。分かれ道の先に分かれ道があった時は素直に戻り、後回しにしつつ、行き止まりの地点だけを先に潰していく。
 それにしても地下2もあまり構造が変わらないと言うか、敵の数が増えた所しか変わり映えも無い。手抜きにも程がある気がする。それとも入口ぶち抜いたから外に出て行ってバリエーションが減ったとか?

 しばらくそんな事を考え、分かれ道を潰して同じような事をしていたら村人を見つける……のだが。

『あー、これは駄目そうね……』

 目が虚ろになって「うー」とか「あー」とか言っている。半分ゾンビ状態と言った所だろうか、鉄格子の中にいるし、とりあえずは放置でいいかもしれない。それに数的にも私が追跡した2人のほかにも何人かいる。

『鉄格子の部分、いきなり開けられたりすると面倒だから針金で固定しとくか』

 よく謎の力で、とか。中からがんがん叩かれてとかで勝手に開いて、無駄に相手しなきゃならない事があるので、結構がっちりと固定。しかも銃を作る時よりも長く針金を使ってだ。

『とりあえず全部片付けてから助けにくるしかないわね』
『治るんですかね、これ』
『さあねー……全部変わってないだけあるし、まだ望みはあるんじゃない?』

 マップにマーカーを打っておいて、次の地点に行くのを促す。
 こういう時に余計な事はしない、大体方法も分からないのにあれこれしようがないし、素直にクリアを目指しておこうって話になる。


 
 そうして村人の発見をし、さらに奥へと進むと一気に広がった場所が現れる。
 明らかにボスが出ますよーって感じのフィールドになるのだが、特に何かいるわけではない。一応5g弾を装填し、備える。単純な相手なら今の所マイカが処理してくれるし、私も銃剣で対応が出来るので念の為だが。
 で、真ん中あたりまで行くと今まで来ていた通路にモヤのようなものが発生して引き戻れなくなる。どうやらボスエリアで確定のようだな。
 そうして軽く時間が経つと黒い光の輪が出現して敵がリスポンしてくる。これまたそのまま、ネクロマンサーであろう奴が出てくるが、ベタだな。

「貴様らが私の障害をしている冒険者共か、しかし残念だったな、もうあの村は私の手中だ。こうして貴様らが来たところで、あそこの村人は生贄になってもらうのは確定してい……ごふっ……!?」









 会話を遮る爆発音が響く、その音はここ最近、何度か聞いたし、僕のすぐ横で鳴っている。っていうか今ここでそれをするタイミングじゃないっていうか、あれ、普通に倒せそうだけど……え……?

「ええぇえぇ!?」
「うっわー!?」

 マイカさんと顔を見合わせながら、僕たちの真ん中にいる「あの人」はものすごい不機嫌な顔をしながら、すぐに2発目を入れて撃っている。勿論その2発目は簡単に相手を貫いているし、ダメージを与えてはいるけど。

「ちょ、ちょっとアカメさん何やってるんですか!」
「アカメちゃんそれはダメだってぇ!」

 僕とマイカさんで一緒に腕や体を掴んでアカメさんを押さえつける、何がこの人の逆鱗に触れたのか分からないけど、今まで一番不機嫌な顔してるし、訳が分からない。
 って言うか何で急に撃ったの?いや、そりゃ敵だろうし、ボスだろうけど、すっごい重要な事っていうか黒幕ですって感じの台詞だったけど。

「話がなげぇ」

 そう言い切ったアカメさんは淡々とMPポーションを飲んで回復している。
 やっぱりやる事無茶苦茶だよ、この人!
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