最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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7章

207話 2対1

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 数日見ないで本気出したアカメちゃんってホントわけわかんない。
 何を持ってるのか分からないし、何を仕込んでるのか分からない、ついでに言えば見るたび衣装変わってる。
 今だって何か代わる代わる銃を持ち替えてあたしと十兵衛ちゃんを捌いているし?
 まあ十兵衛ちゃんは馬に乗ってなきゃいけないから、そこから槍のリーチを生かして攻撃ってわけだけど、ガンシールドと反撃の銃撃で攻めあぐねているって感じ。
 あたしの方も挟み撃ちで接近する所に背面撃ちだったり、曲撃ちみたいな事して牽制してくるからやりにくいったらありゃしない。

「もうちょっと加減してあげればぁー?」
「まだ『全部』使ってないんだから加減してるって」

 十兵衛ちゃんの突き攻撃をうまい事ガンシールドで受けて滑らせて銃口を向ける。それだけですぐに武器を引き戻して受けに回らないと行けないってのはだいぶ警戒してる感じ?

「やはりやりにくいな」
「あたしが乗りつけるとコンビネーションが難しいからねぇ……まだ隠し玉あるみたいだし、どうしよっか」
「お前も隠し玉があるじゃろう、こっちも本気でやらんとこのままゴールされるぞ」
「うーん、もうちょい確定出来ないと出せないからぁ」

 まだまだ楽しもうって顔して銃を回しながらこっちを見ているアカメちゃんをちらっと見つつ、十兵衛ちゃんとの攻防を観察する。
 うーん、よくよく考えればやっぱりアカメちゃんの「近接相手」への対処の仕方ががらっと変わっている気がする。バイパーちゃんに作って貰ったガンシールドの使い方が上手くなっているのも此処2日くらいの話だし、どこで練習したのやら。
 
「ほーら、さっさと掛かってこーい」

 くるくると銃を回していると思ったらぴたっと手に持って早撃ち。それを十兵衛ちゃんが金属音をさせて弾き、また構え直して一息。
 んー、またくるくる銃を回してるけど、あれって何の意味があるんだろう。って言うかこんな走っている状態でよくもまあ落としもしないであんな風に捌けるなあ。

「そーいや、あんた達は見てて楽しいんか?」

 少し離れて観戦している薫ちゃん達、確かに見ているだけだけど、何かやり取りを始めているね。もしかしてどっちが勝つか賭けてるっぽい。

「最初はこのイベントレースで勝つってのを考えてましたけど、そっちよりもクランで戦っている姿の方が楽しいので」
「あたしは元々、アカメちゃんに作ったげた装備を見るためにきたからねぇ、でも勝ちそうなマイカちゃんに10口ね」
「拙者は分からんな、協力した好で十兵衛殿に15口」
「私はアカメさんに20口」

 相変わらずお茶しながらまったり賭け事してるよ。あれ1口幾らなんだろ……。全員が全員結構な金額を持っている気がするから、1万だとしても10万単位でお金動いてるよね。

「あやつらはのんきで良いな……こちとら攻めあぐねているというに」
「本当にさっさとしないと、もっと攻めにくくなるよぉ」
「全く、追加メンバーの連中はどこで道草くってるのやら」

 あのくるくる回してる銃の意味が分からないんだよね、アカメちゃん自体は無駄な事をする人じゃないから理由はあるんだろうけど、今の所は銃口をどこに向けているか分からなくしている?って感じなのかな。

「しょうがない、いつものパターンで戦うとするか」
「いつものってぇ?」

 ちょっとアカメちゃんと同じような笑い方をすると十兵衛ちゃんが横づけして攻撃を開始しようとする。

「最初は強く当たって後は流れでって奴だ」

 つまりはアドリブでって事か。うん、まあ、前回のイベントの時と変わんないね。余計な事と言うか、そっちの方が直感的に動けるからいいのかな?

「イベントで勝つってのも良かったけど、ここはきっちりボスの威厳を示さないとな」

 そんな事を言っている所に十兵衛ちゃんが相変わらずの騎馬戦で接近し、槍のリーチを生かして、突き、薙ぎ払い、叩き、色々と攻め方を確認しながらこっちはこっちで反対側に回ってまたとびかかるタイミングを見計らう。
 まあ、勿論だけど、十兵衛ちゃんの攻撃を受けながらもこっちの事は確認するよね。ああ、やりにくい。

「それにしてもHPが高くないか、お前さん」
「そりゃまあ、対策するにきまってるでしょ、じゃないと純戦闘員のあんた達に勝てる訳ないし」
「えー、教えてよぉー、もうちょっと優しくしてもいいじゃんかぁ」
「甘えても駄目だっての」

 ちょっとだけ隠し玉っぽいのは引き出せてるかな、十兵衛ちゃんの攻撃タイミングで一気に近づいて牽制掛けると、少しずつだけど受けきれない事が起きるので、やっぱりこっちとしては陽動牽制がいいかな。
 相手の機体の上にさえ乗ってしまえばこっちの土俵に持ち込めるんだけど、さっきのボード飛ばしが来るとやばいんだよなあ……たまたま戻れたから良かったけど、これでダメだったらダウン判定で暫く動けないってのが大きいし、中々リスキー。
 追いつけないってのが一番大きいんだよなあ、折角戦ってるのに良い所で離脱するってすっごい勿体ない。
 
「でも、まー、アカメちゃん的には2人ってどうなんー?」
「そうねぇ……楽しい事は楽しいわよ?」

 ガンシールドに大きく傷を付けながらしっかり答えてくれる。やっぱ余裕あるじゃん、アカメちゃん。

「その余裕顔を少しは悔しさににじませてやりたいんだが、なっ!」
「っと……負けたらやっぱ悔しさ満点ではあるわね」

 何度目かの受けをして、反撃の銃撃をした後に、すぐさまアカメちゃんの機体に飛び乗って蹴り技。
 結構攻撃与えてるんだけど、全然HP減らないのはどういう理由なのか、そこを解決しないと駄目かな。

「ねー、アカメちゃん、やっぱそんなにHP高くないよね?」
「そうねぇ、そこもちゃんと考えれば分かるわよ」

 何度目かの蹴りを与えて十兵衛ちゃんの体勢が整った所で自分のホバーボードの所に飛び移り、攻守交替。
 うん、この方法が常に攻撃の手を止めなくてもいいし、陽動も出来るしで一番いい感じ。
 十兵衛ちゃんもこの方法が良いと感じたのか、交互攻撃での挟み撃ちに切り替えて、ようやく攻撃方法が出来上がったかな。
 何だかんだで前回のイベントの時はそんなに協力プレイってのはしなかったから新鮮。

「でもそういうのをぐだぐだとさせるのが良いのよねぇ」

 コートの裏から取り出した油をまた放り投げ……ると思ったら十兵衛ちゃんに思いっきりぶつけて、怯ませてから銃口を構え……ると思ったら松明持って投げ付けてるよ。

「ぶわ、ついに直接的になったな!」
「火炎瓶は火炎瓶であるけどねー、こういう乗り物レースじゃ油の方が使い勝手が良いのよ」

 勿論十兵衛ちゃんだってタダではやられないからしっかり避けてるけど、油まみれになったのもあってやり難そう。何か色々出してくるなあ、本当に。

「引くわー、アカメちゃんのやる事引くわー」
「あんた達だから本気でやったげてんでしょ」

 怯んだ十兵衛ちゃんからこっちに銃口を脇の下から覗かせて背面撃ちで攻撃してくる。あー、そうだ、こういう時にあたしって防ぐ手立てがあんましないんだよなあ。

「もー、痛いからやなのにぃー!」

 咄嗟に足を上げて銃撃を防御、何だかんだでレガース入れてるから防御力はあるけど、振動がくるのがなあ……勿論当たったらびりびりするし、思わず痛いっていちゃうくらいにびっくりしちゃうんだよね。

「まーだまだ、連携が甘いぞおぬしら」

 背面撃ちしたいつものリボルバーをくるんと回して銃口から上がっていた硝煙を吹いてポージング。
うーん、様になってるなあ。

「じゃあ、もう1人追加だったらどーよ!」

 アカメちゃんに対して少し下がって十兵衛ちゃんと横並びになっている真ん中を突っ切って、真っすぐ大剣を振ってくるのが1人。
 
「そういう強気に出てくる所があんたの良い所よ」

 流石に大振りの一発だから横回転ですり抜けると共に、大型銃を引き抜いて一発。さっきよりもかなり大きい金属音を響かせ、距離を強制的に取らせてから3人横並びに。

「ニーナちゃん、遅かったねぇ」
「不意打ちなのに声を上げるのは意味が分からんぞ」
「うっせーよ!大変だったんだぞ、此処まで来るの!」

 よーし、これでもうちょっと苦戦させられるかな。
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