最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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7章

210話 最後の準備

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 ももえの予想は当たりと言えば当たりなんだろうが、それでもアカメを機体から引き剥がすと言うのは厳しい注文だ。そもそも出来てたら出来てたでもうとっくの昔にやれている。

「おい、あと1エリアしかないぞ!」
「ももえ一人じゃ固定ダメージが追いついてないからしょうがないだろう、バイパーの奴はどこいるんだ」
「これでも頑張ってるんですけどー!」
「ずっと殴れるわけじゃないから厳しいんだよねぇ」

 ぎゃんぎゃんと何度か殴り合いをしてから一度距離を取り一息。

「よし、相談タイム」
「認める」

 うちのボスは優しいな……さて、どうしたものか、足元狙いでの攻撃をして引き剥がそうとしたのだが、あの6脚戦車の使い方が上手いと言うのもかなりある。
 所謂フレキシブルアームのようにぐねぐねと動くので傾いた機体制御に、ある程度のバランスを崩したところで3点がコースに付いていれば転倒する事もない。6脚設置維持を絶対にしなくて良いと言うのもあるので、6脚のうち2脚を防御に回してきたりするので、まあ厄介。
 そもそも後ろ向きで走りながら、6脚の足を操作しつつ、儂ら4人を相手にするってどれだけマルチタスクが得意なんだ?

「で、どうする?」
「あのトカゲ野郎じゃないと固定ダメージが稼げないだろ、ちゅんちゅん撃ってるがあんまり効いてないしな」
「手数だからしょうがないじゃないですか!」
「別に倒さなくても良い訳だから、協調してビリにさせたりはぁ?」
「倒すと言う取り決めしたろうに……そもそもあいつがどうぞって言いながら前に行かせてもらえると思うか?」

 前にいる我らがボスのアカメにぴっと指を向ける。
 あいつはあいつでガウェインの奴を呼んでティータイムに入っている。いや、いいんだが、本当に良いのか観戦組のお前らは。








「私は此処でクラン連中と遊んでるけど、あんた達は先行ってもいいのに」
「まあ、お祭りですからね、勝つのは好きですけど、やっぱり仲間や知り合いでわいわいしてる方が楽しいですし」
「あー、確かにねぇ……私は勝つって前提の上でやるけどさ」

 変わらずの相談タイムを待ちながら残りのコース状況を確認。
 もう少し走れば眺めのトンネルに入り、それを抜ければ最後のコースになり、全スタート地点が合流する形になり、最後の大乱戦に突入だ。
 流石に速い奴はもうゴール手前くらいまで行ってるだろう、何だかんだで遭遇しなかったからうちの連中がいるかどうかを結構確認しつつ、蛇行してきたツケがここに出てきたか。
 
「ごちそーさん、前線組は良い茶葉使ってるわね」
「ええ、最近ファーマーをやって自分で生産しているのでね」

 かちゃかちゃとティーセットを返してどう出てくるかを、いつものDボアを手の中で回しつつ様子を伺う。機体とHPを共有しているを見破るのは合っているがもうちょっと条件があるんだよな。まあ接触していなきゃいけないのは当たりではあるが外れだな。

「んー、やっぱりこう、肉薄できる戦闘ってのも楽しいわねぇ……複数戦闘の立ち回りも概ね出来ているし、うんうん成果は良いね」

 折角色々用意してきたのにまだトカゲ野郎が来てないのがなあ。此処で全部出しちゃったらそれはそれで面白くないし、驚き顔を見てみたい。
 ……が建前であって、単純にクランの連中とじゃれ合うのも面白いと思っただけだ。

「都合よく、他のプレイヤーは無視して先に進んでくれるからデスマッチ感強いわねぇ」

 ちらちらこっちを見てくるのはいるが、手を出してくるのまではいない。最初にやり合ってた時からも遠巻きに見ていくだけしかいないので何とも平和なイベントだ。
 流石にイベント開始の大混戦と地雷原の所はパイプ爆弾と火炎瓶で蹴散らしはしたが、やっぱりあれはインパクトが強すぎて、他の連中が手を出してこなくなるのが問題。爆発物ってどうしてもそうなってしまうから火薬量を減らして細かくするか、でかいので一気に吹っ飛ばすかのどっちかになるんだよな。
 でもまあ、此処まで出したら他のプレイヤーも作るだろうし、配信でどういうのかも理解されるから今後流通していくとは思う。後はまあ、イベント時の威力低下はありそうかな?

「流石にバランス崩すからなぁ……威力低下は確実にありそうだけど、それはそれで良し」

 威力が下がったら下がったでしょうがないが……ただまあ、コストパフォーマンスが悪いってのもあるし、見逃してくれるかな?
 いや、駄目そうだな、ギルドハウスと個人露店で大量に爆弾と火炎瓶ばら撒き売ったから運営に目付けられてるかもしれん。
 そろそろ新しい事業を立ち上げないと行けないな……あのポンコツピンクに色々持たせて配信させて宣伝させてヤバい物でも捌くか。

 そんな事を思っていたら向こうの相談タイムが終わったらしい。
 うんうん、良いよ良いよ、こうして本気で戦ってくれる相手なんてそうそういないしな。

「もういいんか」
「ああ、やっぱりこのまま倒すって方針だ」

 気が付けばさっき言っていたトンネルに入り、オレンジ色の街灯が頭上をするすると通り過ぎていく。
 こういうトンネル戦ってよく映画とかでもあるな。映画の佳境に入ってきたくらいによく見るよな、こういうシチュエーション。

「よーし、覚悟しろよ!」
「流石にあたしも、隠し玉出さなきゃねー?」
「え、そんなんあるん!?」

 そういえば今まで本気でマイカの奴が戦っている所は見た事ないな。
 二次職で条件を満たしたら貰えるスキルがあるから多分それの事を言っているんだろうけど、よくよく考えてみたら全員が全員二次職だからそういうのはあるのか。
 勿論私もあるけど、誰にも言ってないし、教えてないので私も隠し玉として持ってはいるんだけどな。

「んー、レースには勝てないだろうけど……」

 残弾を確認、マガジンの用意と、持ってきた武器を改めてインベントリにある事を見てから一息。
 ああ、そうだ、こういう時こそだったな。

「やはり、戦うからこそは、な」

 インベントリから葉巻を取り出し、これもいつもの様に火を付けて紫煙を辺りに燻らせ、にぃーっといつもの様に口角を上げたギザ歯の見える笑みを浮かべて。

「私に勝つなんて100万年早いと言う事を教えてやるよ」
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