最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
332 / 625
12章

307話 戦火が広がればクランが儲かり、敵が増える

しおりを挟む
「おねーさん、何か見られてない?」
「いるねー、後から私たちが回ったクランに営業掛けてるのが」

 大手のクラン4つを回って確信したのが、後追いしている奴がそこそこの距離を取りながらこっちを見ているって事だ。ほぼ100%商売敵で、どういう相手かもあらかた予想付いている。どうせ中堅~大手の商人クランの連中だろう。
 
「こういう時にPKあったらボコれるのに」
「うちは穏便なクランだからそーいうのはやめなさい」
「えー、だってー?」
「やるならやるで良いけど、二度と逆らえないように完膚なきまでに叩きのめせる?」

 そう言うと、明らかに引いた顔をしつつ、追ってきているプレイヤーの方向を見る。
 一応まだ襲撃中だから露骨な妨害はしてこないけど、あいつら中々に陰湿だからな、露店妨害してきたこと、忘れてないんだからな。

「ちなみにいつからゲームしてる?」
「初期出荷からかなあ」
「イベント全部参加してるなら私が何で恨まれてるかも分かると思うんだけどね」

 何かあったかなーって感じに考えるのだが、単純に覚えてないか気にしていないから覚えてないって事か。あの対人イベントって個人戦もあったような気がしたけど、あっちだったら知らんか。

「まあ、何にせよ狭い界隈で結構敵作ってんのよ」

 そんな事を言っている間に向かってくる4足歩行のモンスターに対し、右手で投げ物ポーチから手裏剣2枚を抜くと同時に投げ、モンスターの出鼻を挫かせたのを見つつ右手の投げた勢いのままくるりと1回転、左手でCHを抜いて左半身を向けた所で引き金を絞り1発。

「追撃してくれ」
「はいよ」

 左半身をモンスターに向けた状態の私の背中を踏み台にして紫髪が飛び上がってさらに一撃。獣の鳴き声を発して怯んで後ずさりしているのを聞きつつ、装填スキルを使用。
 くいっとCHを振ると共に中折れと排莢をさせ、次の銃弾を指で弾いて装填完了。この装填スキル、その時によって勝手にやってくれるの便利。
 して、何度か剣戟を当てて怯ませたモンスターに対し、紫髪が攻撃を振り切ったタイミングでまた1発撃ち込んで撃破。やっぱり前衛後衛しっかり分けて動けるとガンナーは物理後衛としては優秀。

「後ろの方にいるとはいえ、結構抜けてくるのな」
「交代しながら立ち回ってるからしょうがないねー、どうしても全部が全部前線でとどめられるかって言われると違うし」

 刀を振るってびっと風切り音をさせてから鞘に仕舞っている横からまたちらりと向こうを見て、追ってきているのを確認。その様子を見てか紫髪も同じように視線を向けた方に移すとため息一つ。

「何もしてこないとはいえ、後ろにいると鬱陶しいね」
「だからってこっちから手を出したら負けだぞ」

 偶然を装って火炎瓶の巻き添えにしたらいい感じに追っ払えるとは思うけど、あからさまにやればこっちが不利になる場合が多い。こういうオンラインゲームでのいざこざって大っぴらにやりだした方が叩かれる場合もあるから、なるべくやり返す様にしないと後々面倒くさい。
 
「あくまでも被害者面を装って置くってのも大事なのよ、適度に釘刺しながらな」

 両手でCHを折って、排莢させてからゆったり装填しながら5個目の大手クランに……行く前に東側の襲撃が終わる。
 
『西と南はまだ襲撃終わってないみたいだねぇ』
『じゃあ西だな、強い敵に対し強力な武器は売れるし』
『ボス―、銃弾と火炎瓶ほしいー』
『一回補充しに行きなさい』

 連絡を取り合いつつ、帰還スクロールで一足先に紫髪とドルイテンに帰還、特に補充はないのでそのままの足で西エリアに。




「結構こっちは押されてるね」
「レベルアベレージが高いから人が少ないと押されるのはいつもの事だろ?」

 エリア3-1まで押されているので、結構ぎりぎりの攻防だな。
 大体3個目のマップで前線を作って、崩壊してもぎりぎり2くらいで持ちこたえているのだが、こんな所まで攻められるのは珍しい。って言ってもまだイベント開始で日も経っていないのでそのうち強力な襲撃が起きる可能性もあるが。

「とりあえず火炎瓶の売り込みしに行こう」
「おねーさん、商売好きねー」
「あんたのトレーニングルームを建ててやるって話なんだからきりきり働きなさい」

 少し離れた所ではぎゃーぎゃーと騒ぎ立てて、モンスターと激戦を繰り広げているプレイヤー群がいるので、少し後ろで待機している大きい塊を狙って売り込みに行く。
 勿論その間も後ろには商人であろう連中がこそこそ付いてきているし、街側の方では露店がぽつぽつと立ちならんで、消耗品を細々と売っている。そう言うのもあるので、一応価格調査で露店を見て回りつつ、大手のクランを探しては火炎瓶の実演販売をしまわりながら、ちょくちょくモンスター相手にする。



「3ダース貰えないか?」
「1本1,500Zだけど、ダース買いするなら今だと12,000Zで良いわ」
「よし、買った」

 36本の火炎瓶と引き換えに36,000Zを貰ってその場を後にしつつ、接近してきたモンスター相手に銃撃と剣撃、ついでに火炎瓶で今しがた火炎瓶を売り払った所へと侵攻されないように壁を作ってから手をぷらぷらと振ってその場を後にする。
 暫く離れてからそのクランへと振り向くと、後ろから付けていたプレイヤーが同じようにクランに売りこみをしているのが見える。商魂たくましいのは見習うべきところではあるな。

「ねー、ボス、いいの?」
「何がだ」
「1本1,200Zでしょ?そんなに売上でないんじゃないかなあって」
「まあ、この辺は結構算数とかになるかな……今20万で200ℓのアルコールが作れるわけだけど、あの火炎瓶は0.5ℓなわけじゃん?」
「単純計算で400本作れるね」
「ガラス瓶や油、布の材料費ってのを考えるとアルコール代が500Z、その他材料費が300Zって所だから、そもそも1,500Zで1本売ってるのがぼったくってるのよ」

 1本900Zが材料費、そこにプラスして手間賃もろもろを考えたら1,200Zでも結構ぼったくってるんだけどな。

「算数苦手なのよね……まー、単純計算で50万くらいの売上?」
「そうね、そこからアルコールの買い取り代金と材料費を引いて、大体25万くらいのあがりってとこかしら」

 リアルと違ってすぐに大量に作れるから原価以外の諸経費が掛からないからリアルで考えるよりかは全然わかりやすいとは思う。材料費だけを計算して、赤字にならない様にしているだけだし?
 後はこの火炎瓶が流通するまでは専売で売りまくれば十分に稼げる。って訳だが、400本全部売れる訳じゃないだろうし、自分たちで使うってのもあるから1,500Zでもよかったかもしれん。

「まだあんまり流通していないアイテムだから今のうちに稼いでおかないとな」
「おねーさん、色々考えてるんだ」
「レシピ自体簡単だし、ちょっとやる気のあるプレイヤーなら自力ですぐ作れるし、こういうのは素早く売っぱらわないとな」

 在庫溢れたとしても、自分たちで消化すればいいだけだし、何一つ無駄にならないって所も大きい。流通するなら流通するでそれも良し。

「ただまあ、やっぱり最初に儲け話を作っているってのは敵だったり、運営の対応は早いから」

 バグではなく仕様のミスでひたすらに稼いだら、やっぱり持ち金が怪しいからと他のプレイヤーに疎まれたり、バグは放置しているくせにプレイヤーの有利になるようなミスは速攻修正されたりなんてのも経験しているからこそだが。

「後はあの後追いプレイヤーがどう動いてくるか次第かな」

 喧嘩売ってくるなら売ってくるで買ってやるけどさ。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...