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12章
307話 戦火が広がればクランが儲かり、敵が増える
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「おねーさん、何か見られてない?」
「いるねー、後から私たちが回ったクランに営業掛けてるのが」
大手のクラン4つを回って確信したのが、後追いしている奴がそこそこの距離を取りながらこっちを見ているって事だ。ほぼ100%商売敵で、どういう相手かもあらかた予想付いている。どうせ中堅~大手の商人クランの連中だろう。
「こういう時にPKあったらボコれるのに」
「うちは穏便なクランだからそーいうのはやめなさい」
「えー、だってー?」
「やるならやるで良いけど、二度と逆らえないように完膚なきまでに叩きのめせる?」
そう言うと、明らかに引いた顔をしつつ、追ってきているプレイヤーの方向を見る。
一応まだ襲撃中だから露骨な妨害はしてこないけど、あいつら中々に陰湿だからな、露店妨害してきたこと、忘れてないんだからな。
「ちなみにいつからゲームしてる?」
「初期出荷からかなあ」
「イベント全部参加してるなら私が何で恨まれてるかも分かると思うんだけどね」
何かあったかなーって感じに考えるのだが、単純に覚えてないか気にしていないから覚えてないって事か。あの対人イベントって個人戦もあったような気がしたけど、あっちだったら知らんか。
「まあ、何にせよ狭い界隈で結構敵作ってんのよ」
そんな事を言っている間に向かってくる4足歩行のモンスターに対し、右手で投げ物ポーチから手裏剣2枚を抜くと同時に投げ、モンスターの出鼻を挫かせたのを見つつ右手の投げた勢いのままくるりと1回転、左手でCHを抜いて左半身を向けた所で引き金を絞り1発。
「追撃してくれ」
「はいよ」
左半身をモンスターに向けた状態の私の背中を踏み台にして紫髪が飛び上がってさらに一撃。獣の鳴き声を発して怯んで後ずさりしているのを聞きつつ、装填スキルを使用。
くいっとCHを振ると共に中折れと排莢をさせ、次の銃弾を指で弾いて装填完了。この装填スキル、その時によって勝手にやってくれるの便利。
して、何度か剣戟を当てて怯ませたモンスターに対し、紫髪が攻撃を振り切ったタイミングでまた1発撃ち込んで撃破。やっぱり前衛後衛しっかり分けて動けるとガンナーは物理後衛としては優秀。
「後ろの方にいるとはいえ、結構抜けてくるのな」
「交代しながら立ち回ってるからしょうがないねー、どうしても全部が全部前線でとどめられるかって言われると違うし」
刀を振るってびっと風切り音をさせてから鞘に仕舞っている横からまたちらりと向こうを見て、追ってきているのを確認。その様子を見てか紫髪も同じように視線を向けた方に移すとため息一つ。
「何もしてこないとはいえ、後ろにいると鬱陶しいね」
「だからってこっちから手を出したら負けだぞ」
偶然を装って火炎瓶の巻き添えにしたらいい感じに追っ払えるとは思うけど、あからさまにやればこっちが不利になる場合が多い。こういうオンラインゲームでのいざこざって大っぴらにやりだした方が叩かれる場合もあるから、なるべくやり返す様にしないと後々面倒くさい。
「あくまでも被害者面を装って置くってのも大事なのよ、適度に釘刺しながらな」
両手でCHを折って、排莢させてからゆったり装填しながら5個目の大手クランに……行く前に東側の襲撃が終わる。
『西と南はまだ襲撃終わってないみたいだねぇ』
『じゃあ西だな、強い敵に対し強力な武器は売れるし』
『ボス―、銃弾と火炎瓶ほしいー』
『一回補充しに行きなさい』
連絡を取り合いつつ、帰還スクロールで一足先に紫髪とドルイテンに帰還、特に補充はないのでそのままの足で西エリアに。
「結構こっちは押されてるね」
「レベルアベレージが高いから人が少ないと押されるのはいつもの事だろ?」
エリア3-1まで押されているので、結構ぎりぎりの攻防だな。
大体3個目のマップで前線を作って、崩壊してもぎりぎり2くらいで持ちこたえているのだが、こんな所まで攻められるのは珍しい。って言ってもまだイベント開始で日も経っていないのでそのうち強力な襲撃が起きる可能性もあるが。
「とりあえず火炎瓶の売り込みしに行こう」
「おねーさん、商売好きねー」
「あんたのトレーニングルームを建ててやるって話なんだからきりきり働きなさい」
少し離れた所ではぎゃーぎゃーと騒ぎ立てて、モンスターと激戦を繰り広げているプレイヤー群がいるので、少し後ろで待機している大きい塊を狙って売り込みに行く。
勿論その間も後ろには商人であろう連中がこそこそ付いてきているし、街側の方では露店がぽつぽつと立ちならんで、消耗品を細々と売っている。そう言うのもあるので、一応価格調査で露店を見て回りつつ、大手のクランを探しては火炎瓶の実演販売をしまわりながら、ちょくちょくモンスター相手にする。
「3ダース貰えないか?」
「1本1,500Zだけど、ダース買いするなら今だと12,000Zで良いわ」
「よし、買った」
36本の火炎瓶と引き換えに36,000Zを貰ってその場を後にしつつ、接近してきたモンスター相手に銃撃と剣撃、ついでに火炎瓶で今しがた火炎瓶を売り払った所へと侵攻されないように壁を作ってから手をぷらぷらと振ってその場を後にする。
暫く離れてからそのクランへと振り向くと、後ろから付けていたプレイヤーが同じようにクランに売りこみをしているのが見える。商魂たくましいのは見習うべきところではあるな。
「ねー、ボス、いいの?」
「何がだ」
「1本1,200Zでしょ?そんなに売上でないんじゃないかなあって」
「まあ、この辺は結構算数とかになるかな……今20万で200ℓのアルコールが作れるわけだけど、あの火炎瓶は0.5ℓなわけじゃん?」
「単純計算で400本作れるね」
「ガラス瓶や油、布の材料費ってのを考えるとアルコール代が500Z、その他材料費が300Zって所だから、そもそも1,500Zで1本売ってるのがぼったくってるのよ」
1本900Zが材料費、そこにプラスして手間賃もろもろを考えたら1,200Zでも結構ぼったくってるんだけどな。
「算数苦手なのよね……まー、単純計算で50万くらいの売上?」
「そうね、そこからアルコールの買い取り代金と材料費を引いて、大体25万くらいのあがりってとこかしら」
リアルと違ってすぐに大量に作れるから原価以外の諸経費が掛からないからリアルで考えるよりかは全然わかりやすいとは思う。材料費だけを計算して、赤字にならない様にしているだけだし?
後はこの火炎瓶が流通するまでは専売で売りまくれば十分に稼げる。って訳だが、400本全部売れる訳じゃないだろうし、自分たちで使うってのもあるから1,500Zでもよかったかもしれん。
「まだあんまり流通していないアイテムだから今のうちに稼いでおかないとな」
「おねーさん、色々考えてるんだ」
「レシピ自体簡単だし、ちょっとやる気のあるプレイヤーなら自力ですぐ作れるし、こういうのは素早く売っぱらわないとな」
在庫溢れたとしても、自分たちで消化すればいいだけだし、何一つ無駄にならないって所も大きい。流通するなら流通するでそれも良し。
「ただまあ、やっぱり最初に儲け話を作っているってのは敵だったり、運営の対応は早いから」
バグではなく仕様のミスでひたすらに稼いだら、やっぱり持ち金が怪しいからと他のプレイヤーに疎まれたり、バグは放置しているくせにプレイヤーの有利になるようなミスは速攻修正されたりなんてのも経験しているからこそだが。
「後はあの後追いプレイヤーがどう動いてくるか次第かな」
喧嘩売ってくるなら売ってくるで買ってやるけどさ。
「いるねー、後から私たちが回ったクランに営業掛けてるのが」
大手のクラン4つを回って確信したのが、後追いしている奴がそこそこの距離を取りながらこっちを見ているって事だ。ほぼ100%商売敵で、どういう相手かもあらかた予想付いている。どうせ中堅~大手の商人クランの連中だろう。
「こういう時にPKあったらボコれるのに」
「うちは穏便なクランだからそーいうのはやめなさい」
「えー、だってー?」
「やるならやるで良いけど、二度と逆らえないように完膚なきまでに叩きのめせる?」
そう言うと、明らかに引いた顔をしつつ、追ってきているプレイヤーの方向を見る。
一応まだ襲撃中だから露骨な妨害はしてこないけど、あいつら中々に陰湿だからな、露店妨害してきたこと、忘れてないんだからな。
「ちなみにいつからゲームしてる?」
「初期出荷からかなあ」
「イベント全部参加してるなら私が何で恨まれてるかも分かると思うんだけどね」
何かあったかなーって感じに考えるのだが、単純に覚えてないか気にしていないから覚えてないって事か。あの対人イベントって個人戦もあったような気がしたけど、あっちだったら知らんか。
「まあ、何にせよ狭い界隈で結構敵作ってんのよ」
そんな事を言っている間に向かってくる4足歩行のモンスターに対し、右手で投げ物ポーチから手裏剣2枚を抜くと同時に投げ、モンスターの出鼻を挫かせたのを見つつ右手の投げた勢いのままくるりと1回転、左手でCHを抜いて左半身を向けた所で引き金を絞り1発。
「追撃してくれ」
「はいよ」
左半身をモンスターに向けた状態の私の背中を踏み台にして紫髪が飛び上がってさらに一撃。獣の鳴き声を発して怯んで後ずさりしているのを聞きつつ、装填スキルを使用。
くいっとCHを振ると共に中折れと排莢をさせ、次の銃弾を指で弾いて装填完了。この装填スキル、その時によって勝手にやってくれるの便利。
して、何度か剣戟を当てて怯ませたモンスターに対し、紫髪が攻撃を振り切ったタイミングでまた1発撃ち込んで撃破。やっぱり前衛後衛しっかり分けて動けるとガンナーは物理後衛としては優秀。
「後ろの方にいるとはいえ、結構抜けてくるのな」
「交代しながら立ち回ってるからしょうがないねー、どうしても全部が全部前線でとどめられるかって言われると違うし」
刀を振るってびっと風切り音をさせてから鞘に仕舞っている横からまたちらりと向こうを見て、追ってきているのを確認。その様子を見てか紫髪も同じように視線を向けた方に移すとため息一つ。
「何もしてこないとはいえ、後ろにいると鬱陶しいね」
「だからってこっちから手を出したら負けだぞ」
偶然を装って火炎瓶の巻き添えにしたらいい感じに追っ払えるとは思うけど、あからさまにやればこっちが不利になる場合が多い。こういうオンラインゲームでのいざこざって大っぴらにやりだした方が叩かれる場合もあるから、なるべくやり返す様にしないと後々面倒くさい。
「あくまでも被害者面を装って置くってのも大事なのよ、適度に釘刺しながらな」
両手でCHを折って、排莢させてからゆったり装填しながら5個目の大手クランに……行く前に東側の襲撃が終わる。
『西と南はまだ襲撃終わってないみたいだねぇ』
『じゃあ西だな、強い敵に対し強力な武器は売れるし』
『ボス―、銃弾と火炎瓶ほしいー』
『一回補充しに行きなさい』
連絡を取り合いつつ、帰還スクロールで一足先に紫髪とドルイテンに帰還、特に補充はないのでそのままの足で西エリアに。
「結構こっちは押されてるね」
「レベルアベレージが高いから人が少ないと押されるのはいつもの事だろ?」
エリア3-1まで押されているので、結構ぎりぎりの攻防だな。
大体3個目のマップで前線を作って、崩壊してもぎりぎり2くらいで持ちこたえているのだが、こんな所まで攻められるのは珍しい。って言ってもまだイベント開始で日も経っていないのでそのうち強力な襲撃が起きる可能性もあるが。
「とりあえず火炎瓶の売り込みしに行こう」
「おねーさん、商売好きねー」
「あんたのトレーニングルームを建ててやるって話なんだからきりきり働きなさい」
少し離れた所ではぎゃーぎゃーと騒ぎ立てて、モンスターと激戦を繰り広げているプレイヤー群がいるので、少し後ろで待機している大きい塊を狙って売り込みに行く。
勿論その間も後ろには商人であろう連中がこそこそ付いてきているし、街側の方では露店がぽつぽつと立ちならんで、消耗品を細々と売っている。そう言うのもあるので、一応価格調査で露店を見て回りつつ、大手のクランを探しては火炎瓶の実演販売をしまわりながら、ちょくちょくモンスター相手にする。
「3ダース貰えないか?」
「1本1,500Zだけど、ダース買いするなら今だと12,000Zで良いわ」
「よし、買った」
36本の火炎瓶と引き換えに36,000Zを貰ってその場を後にしつつ、接近してきたモンスター相手に銃撃と剣撃、ついでに火炎瓶で今しがた火炎瓶を売り払った所へと侵攻されないように壁を作ってから手をぷらぷらと振ってその場を後にする。
暫く離れてからそのクランへと振り向くと、後ろから付けていたプレイヤーが同じようにクランに売りこみをしているのが見える。商魂たくましいのは見習うべきところではあるな。
「ねー、ボス、いいの?」
「何がだ」
「1本1,200Zでしょ?そんなに売上でないんじゃないかなあって」
「まあ、この辺は結構算数とかになるかな……今20万で200ℓのアルコールが作れるわけだけど、あの火炎瓶は0.5ℓなわけじゃん?」
「単純計算で400本作れるね」
「ガラス瓶や油、布の材料費ってのを考えるとアルコール代が500Z、その他材料費が300Zって所だから、そもそも1,500Zで1本売ってるのがぼったくってるのよ」
1本900Zが材料費、そこにプラスして手間賃もろもろを考えたら1,200Zでも結構ぼったくってるんだけどな。
「算数苦手なのよね……まー、単純計算で50万くらいの売上?」
「そうね、そこからアルコールの買い取り代金と材料費を引いて、大体25万くらいのあがりってとこかしら」
リアルと違ってすぐに大量に作れるから原価以外の諸経費が掛からないからリアルで考えるよりかは全然わかりやすいとは思う。材料費だけを計算して、赤字にならない様にしているだけだし?
後はこの火炎瓶が流通するまでは専売で売りまくれば十分に稼げる。って訳だが、400本全部売れる訳じゃないだろうし、自分たちで使うってのもあるから1,500Zでもよかったかもしれん。
「まだあんまり流通していないアイテムだから今のうちに稼いでおかないとな」
「おねーさん、色々考えてるんだ」
「レシピ自体簡単だし、ちょっとやる気のあるプレイヤーなら自力ですぐ作れるし、こういうのは素早く売っぱらわないとな」
在庫溢れたとしても、自分たちで消化すればいいだけだし、何一つ無駄にならないって所も大きい。流通するなら流通するでそれも良し。
「ただまあ、やっぱり最初に儲け話を作っているってのは敵だったり、運営の対応は早いから」
バグではなく仕様のミスでひたすらに稼いだら、やっぱり持ち金が怪しいからと他のプレイヤーに疎まれたり、バグは放置しているくせにプレイヤーの有利になるようなミスは速攻修正されたりなんてのも経験しているからこそだが。
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