最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
442 / 625
16章

412話 曲者揃い

しおりを挟む
「……あれ、見たかったんですよね」
「まあ、な」
「あんまり今は触れない方がいいですよ?」

 ちらりと横を見れば、ボス戦が終わり大きく足を広げて煙草を吹かして休憩をしているアカメが1人。明らかに不機嫌と言うのが見て分かる上に、いつもの姿になっているので、他3人が少しだけ遠巻きにそれを見つめている。
 アカメ以外の3人は先に祭壇の場所を特定し、とんぼ返りでボス戦をしていたアカメの所に合流したわけだが、しっかりボスは倒しているし、特に問題も無かったはず……の割には不機嫌がすぎじゃないか?と言った感じにちらちらと様子見をしている。

「お前らちょっと話して来いよ……」
「駄目ですよ、ボス戦待機してるんですから」
「威圧感半端ないですね!」

 赤髪で、宇宙猫Tを着ていた時とは違う明らかに威圧感と言うかピリピリした雰囲気を放っているアカメがじろっと3人の方を向いてから煙草の紫煙を大きく吐き出す。

『さっさと倒して来い、お前らならすぐいけんだろ』
『ボスの特徴とかは……』
『タンク型装甲持ちのボス、ボスを小型化した雑魚は4体まで時間湧き』

 今までと違うそっけない態度を取りながら、すぱすぱと煙草を吸い続けているアカメ。こうも機嫌1つでここまで態度が変わるのかと思う3人。結構暗い雰囲気になっていたところ、ボスエリアに侵入出来るようになったので、アカメと同じようにするっと3人が侵入してボス戦を始める。たまたま3人侵入出来た……訳ではなく、他に1人別の場所から侵入するが、もう1人が入ってこない。

「さくっと倒さないと、アカメさんもっと機嫌悪くなりますよ」
「それぐらいイラついたんだろ、原因が何かは分かんねえけどな」
「……どうやら、アカメさんがマジ切れしてボスをなぶり殺したらしいですね!」
「だからそこのマジ切れした理由が問題なんだろうが」

 サンダースの頭をぺしっとシャールが引っぱたき、戦闘準備を進める。人がいないならいないで、もう一度アカメを呼んで、と思った所でもう1人入ってきたので5人パーティが完成。中央に集まり、いつもの様にシャールがガンを飛ばしているのをアオメが抑えつつ、どう戦うかを相談……する前にサンダースが先に声を上げる。

「ボスと雑魚体がタンクと装甲持ちなので雑魚を引き付けて、装甲や装備の薄い所狙って倒すのがセオリーですね!」
「虫ボスんときも装甲持ちだったんだからいけんだろ」
「ええと、こっちは前1後2向けの編成なんですが、其方の2人は」

 1人はサングラスに革ジャンのムキムキマッチョマン、もう1人は銀髪と眼帯、身長並みに大きいライフルが特徴のヒューマン。遅れてきたのは銀髪の方で、マッチョはほぼ同時ぐらいに侵入してきたが、遅れてきた方はかなりマイペースだ。

「俺は前に出る」
「私は後ろだ」

 2人とも素っ気ない返事をすると、自分の定位置だろう所にすたすたと向かい、準備を始める。その様子を見れば、シャールも楽しそうに笑うと同じように前に出てボスの出現位置で待機を始める。その様子を見て、残されたサンダースとアオメは呆れたようにしつつ、中1後1として待機。

「おい、足引っ張んじゃねえぞ」
「それは此方の台詞だ」

 早速前衛で言い合いを始めているシャールとマッチョ。周りの事なんてどこ吹く風と言った感じで、構えたまま微動だにしないマッチョと、くるくるリボルバーを回しているシャール。待機している2人は動作だけを見ればかなり対照的。

「向こうは騒がしいですが……こっちはこっちで頑張りますか」
「それじゃあ、自分が2人の援護をしますね!」
「邪魔さえしなければそれでいい」

 銀髪が地面にライフルを設置し、何度も同じ位置に出てくるボスの出現位置に向けて伏せた状態で構えて待機。こっちもこっちで我関せず、とにかく一発当てたらそれで終わる。そんな気迫を醸し出している。

「ガンナーって何でこうも自分勝手な人が多いんでしょうか」
「アカメさんも中々の傍若無人でしたね」
「……パーティ慣れしてないのと、ソロで動く方が強いからだよ」

 サンダースがぽつりと零した事に中後衛の2人が揃って反応する。

「だから急造のパーティだと噛み合わせが悪いんだ、上手く回しているパーティは現状貴様らの所しか知らない」
「……見ていたのですか」
「私の事、スカウトしないか?これ以上先に進んで『勝つ』には限界なんだ」

 スコープを覗いて微動だにしない銀髪がそんな事を言うと、サンダースとアオメがぴくりと反応する。

「アカメ、T2Wにおける正式版ガンナーの最初で最後の1人、初回イベント全体11位、クラン対抗戦2位、レースイベント1630位、闘技大会1位、使う獲物は多種多様、ガンナーの現状を作ったプレイヤー……そうだろ?」
「ちょっと詳しすぎじゃないですか?」
「有名人と言う事だ……出たぞ」

 そういうとボスが出現し、地面に着地。轟音と土煙を上げ、自分で土煙を獲物で払っているタイミングで銀髪がすぐに引き金を絞る。発砲音の轟音と共にしゅるしゅると風切り音を発した弾丸がボスの兜を思い切り弾き飛ばす。じゃこっとコッキングレバーを引く音と共に、通常の物より大きい薬莢がゴロンと音を立てて転がる。

「……凄い威力だ」
「後ろで守られてっからだろうが、いくぞ!」

 体勢を崩したボスに対してシャールとマッチョも動き、射撃しながら押し込みを始める。相変わらずのリボルバー連射と高速装填で回転率を上げた射撃攻撃。その隣で、高速でコッキングレバーを前後し、ショットガンを射撃しまくるマッチョ。攻撃方法は違えど、連射しての弾幕を張るという部分に関しては一致しているため、がんがんとボスを押していく。

「さて、僕達は雑魚を引きつけますか、2匹ずつで良いですね?」
「了解です!えっと……」
「ベギー」
「それではベギーさん、援護射撃をお願いします!」
「ああ」

 サンダースとアオメが二手に分かれ、ボスの左右から湧いてきた雑魚を引き付けている間、ベギーがそれぞれ雑魚とボスに対しての援護射撃を始める。
 






 暫く煙草をすぱすぱと吹かして気分を落ち着けている間にボスが出現、あいつらが戦い始めたのを肴にしつつ観戦。さっきの戦闘、あまりにもイライラし過ぎて本気で切れてしまったし、なんだったらうちのパーティ連中にすら少し当たったのは悪い部分が出たので、落ち着かないと。

「それにしても本気でイラっとしたのは久々だわ」

 感情が高ぶるとああなるのは悪い癖だ。常に頭は冷たく、心は熱くしないといけないってのは分かっているんだが、抑え過ぎたのが原因か?
 トカゲの奴もいたが、射線ちょっと塞がれたくらいで狼狽えやがって……私が抜けたからってあいつ腑抜けただろ。今度会ったらもう一回説教してやらないと。

「それにしてもえげつない立ち回りしてんな、あいつら」

 ぷあっと紫煙を吐きだしてから状況を見る。
 最初の一発で兜を吹っ飛ばしたのもあるが、前2人の弾幕が異常に厚いのでボスを釘付けにしているし、後ろがしっかり雑魚を引き受け、強力な援護射撃を出来るようにしている。つまり、何だかんだで良い感じにまわっているという事だ。ああ、これもまたイライラする原因だよ。こんな事ならもうちょっと私が主体となってさっきの戦闘を引っ張った方が良かったって事じゃないか。
 
「……結局クランを抜けて強くなったと思ったらそうでもないって、どうなんだろうな」

 ため息と一緒に紫煙を吐きだしながら、少しだけ俯く。
 あれこれと考えて反省するのは全部終わってからにしよう、とにかく今は勝ちを狙わないといけないから、余計な考えはやめないと。

「ふー……とにかくあいつらがボスを倒すの待つか」

 どうせ余裕だろ、あの様子だったら。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

処理中です...