最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
472 / 625
17章

441話 勝手が違う

しおりを挟む
 流石の私でも1対2で戦うのは厳しいわ。
 T2Wにおける複数戦とプレイヤーのいる複数戦ってのは別物ってのを何度も言ってきた気がする。
 
『そろそろ持たないぞ!』
『なかなか手強い相手で!』

 って言うか1対1ならさっさと倒せる強さはあるんだからさっさとどうにかしてくれないかな。柳生が速攻で1体倒すって算段だったからこっちはこっちで時間稼ぎをしているんだからな。現状、正面からは棍棒持ち、左右からは射撃されて、回避に手一杯すぎる。何て言うかこの戦法が中々に厄介と言うか、理に適っている。とにかく棍棒持ちがガンガン建物を破壊しつつ、前に出る事で追い込みをかけ、こっちの逃げ場を潰しながらも味方の射線域を絞っても来れる。ぼこぼこ破壊しているのがここにいるから撃てって合図にもなっている事だな。

「間接狙いするか……って、思ったけどしっかり対策してるわ」

 また棍棒を振ってビルやら建物を破壊して真っすぐ突っ込んでくるのに合わせて腕部グレネードで頭部を狙い射撃。バシュバシュと音を立ててグレネードが射出されるとあまり速くない弾速の弾が簡単にヒットする。あれくらいならあの棍棒で吹っ飛ばして来ると思ったけど、そうでもないな。装甲が厚いからこれくらいのダメージを貰っても大丈夫って事かね。

「回復出来ないゲームだってのを考えると、ダメージ食らうのは悪手だと思うんだけど」

 ダメージ量に対して装甲値が高いとあまり食らわないってのは分かるがそれでもそんなにノーガード戦法ってのは信じられない。ダメージを貰ってもいいから仕留めた方が良いって判断か?このゲームのセオリーがいまいちわかってないからその辺は聞いて……みても、ダメそうだな。あいつ結構な脳筋だし、その辺聞いても「わからん!」って返しそうだ。

 そう考えていたところにまた射撃されるので回避行動をしつつ、射撃機の位置を探るが、上手い事隠しているな。あんまりそっちに気を向けていると前から突っ込んでくるからそっちも抑えて……。

『まだか!』
『今片付けた!』

 遅いっちゅうねん。
 そう思っているとかなり離れた所で大きく爆発が起きる。倒したら爆発する演出もあるのか。まー、イベントだし、色んな人が見ているってのを考えたら演出が派手にもなるか。
 
「よくよく考えたら倒せるだろって前提であいつを送り出したけど、負けてたらどうしようって話だった」

 大分信用はしていたけど、私のゲームプレイや今までの経験で言えば、流石に信用し過ぎてた気もする。って言うか、ちょっとチームを組んだからって倒してくれる確信をどこから出したんだ、私は。T2Wのやり過ぎか?クランなんか立てて柄にない事してきた弊害か。

「一旦合流して、攻勢に出るとして、どうするか」

 引き離す様に途中から後ろに向かって飛ばしていたから、この棍棒持ちをすり抜けて、射撃を搔い潜って合流、どっちがどっちを対処するか……ってのはもう確定か。
 棍棒持ちはキャノンを潰された段階で対処が難しい、射撃機は射撃タイミングと場所を移す速度を考えたら軽量っぽいからそいつと戦えれば私としても行けるんだが。

「こういう時にマイカの奴だと、手早いんだがなあ」

 お馴染みの様に棍棒を振るって建物を破壊。飛んできた瓦礫が装甲を凹ませる音を聞きながら、もう一度頭部に目がけてリロードが完了した腕部グレネードを射出。先程と同じように、何発か連続して頭部に命中させ、爆発で視界を防ぐと共に前ブースト、すぐさま相手を踏み越えて逃げる時よりも速い動きで斜めに飛び上がると、迎撃射撃。いつものくせで左腕受けて、腕部グレネードがダメになるが、場所は把握した。

 ついでに散々っぱら破壊してくれたおかげで射撃で体勢が崩れたとは言え着地はスムーズに、滑走路に着地するように滑っていけるのは僥倖。

『待たせた』
『デカブツをやれ、こっちはこっちでお客さんの相手だ』

 少し滑りながら射撃された方を視認している間に、柳生が合流。
 まったく、来るのが遅いんだよ。

『あい、分かった』
『装甲が厚いから気を付けろよ』

 それだけ言えば、全てわかったという様に加速して棍棒持ちに向かっていくのを見てから射撃機の方へ向かう。不意撃ちで飛んでくる射撃は避けるのが厳しいが、正面切って戦うってなれば、射撃自体は結構避ける事は出来る。

 ビル、建物を踏み場にしながら射撃された方に向かっていくと、私と同じような軽量装甲に、長距離射撃用のライフルを持ち、明らかに射撃をしますって機体を見つける。

「散々ぱら撃ってきやがって、覚悟しろ」

 ジャコンとBRを構え、飛び上がっている間に何発か射撃。空中だと命中精度が悪いな。
 相手の足元周りに着弾し、地面を融解させるのを見ると、流石に嫌がったのか後ろに引きながらこっちに長距離用ライフルで反撃してくるが、相手の場所と狙いが分かっている攻撃程温い物はない。サイドブーストを掛けて機体を捻りを入れて回転回避。
 馬鹿正直にバック走をしている相手に対して、こっちは上から狙いを付けられ、一直線に接近できるのはかなりのアドバンテージ。こういうゲームに限らないけど、FPSなり射撃するゲームで高所やら有利ポジション取ってるのにそれを捨てる奴はセンスと言うか理解力が無い。逃げ方1つ取ってもそいつがどれくらいゲームが出来るかの指標にもなる。
 目の前にいる射撃機、こいつは……まあまあだな。逃げ方はしっかりジグザグと言うか、左右に振るし、加減速もちゃんとするけど、甘い所が目立つ。

「キャノンとグレネードが無いとめんどくさい」

 上空から撃ち下ろしBRで攻撃。ビーム発射音を響かせ、建物を融解させ、徐々に距離を詰めていく。相手の反撃も来るが、それは回避行動か、ダメになりかけている左腕で受けて直撃を避ける。こんな事ならしっかりシールド持ってきたらよかった。
 
「そろそろ決着付けようや」

 オープン回線であれこれ言ってくるのを無視してBRでオーバーヒートしない程度に適宜撃ち込みながら接近。向こうの攻撃が連射出来ないのもあるけど、接近専用の武器があったらもう出しているだろうから、このまま押し切る。
 まあ、ここまで来たらやる事は決まっている、BRで射撃して距離を詰め、ある程度詰めたら腕部ガトも織り交ぜて弾幕を厚くする。大分撃ち込んだおかげもあり、かなり削ってきたが、最後の最後にBRに被弾。爆発と共に手放し、代わりにナイフを抜いて踵部分に装着。軽量相手なら腕部ガトリングもそこそこ嫌がるダメージは出るが、目的はそっちではない。
 さっきの重量級と同じように頭部を狙い、少しでも目くらまし、ぎりぎりまで接近した所で向こうがライフルを振って攻撃してくるのに合わせ跳躍。空中で1回転半捻りを加えて相手の頭上を通り過ぎる瞬間に踵を突き下ろして真上からナイフ突き刺す。流石にこんな動きはT2Wじゃ出来ないわ。
 あー、あとあれだ、倒したって確信が得られないのは、機体越しって部分がある。まだ動くかもしれないってのがでかい。
 足をさらに動かしナイフを切り裂く様に引き抜き、突き刺さった部分に引っ掛けて踵からのマウントを解除、くるくると回転しながら上に飛んでいくナイフをちらりと確認してからブーストを掛けてタックル。ビルに射撃機を押し込んで、落ちてきたナイフをキャッチすると共に沈黙するまで滅多刺し。結局接近戦するならヒートだったりチェーンソーが付いているような付加機能が付いてるのも考えとこ。
 そして暫く滅多刺しにして、沈黙しただろうと思った瞬間に爆発が起きて吹っ飛ばされ、対面にあったビルにめり込む。こういうのって普通判定無しにしとけや。イベントだけの特殊表現だと思ったのに。しかも結構な勢いで吹っ飛ばされたおかげでブーストちょっと不調になるし、良い事ないわ。次の戦いの時は気を付けて倒そう。上手く使って爆弾みたいな扱いしたら面白そうだけど、成功率は低いか。



 
 そんな事を思っていたらそこそこの距離で爆発が起こる。向こうも決着が付いたか。柳生が負けてたらもう勝てないぞ。

『決着ー!勝者ブルーチーム!』

 ああ、大丈夫、勝ててたっぽい。
 で、あっという間に転移させられて待機室って言うか、ハンガーに飛ばさる。で、飛ばされたなと思っていたら次試合のアナウンスが流れる。何かすげえタイトスケジュールだ。

「4人相手だともう無理だぞ」
「ううぬ、もう1人いないと厳しいか」
「T2Wの方だってこんなカロリー高い事してないっての」

 インベントリを開いて煙草を……ってのはないんだった。
 とりあえず機体の調整と言うか武装変更や装甲の組み合わせを弄りながら話を続ける。

「とりあえず前は任せるから射撃片重にするけど、勝てるかどうかはあんたの殲滅速度次第なんだから」
「で、あれば射撃のみに徹するのは?」
「人数が少ないから分断されると厳しい、だから速度の速いあんたに合わせてるんだよ重装甲にしても抜けられてボコられたら意味ないでしょ」

 とりあえずさっきの反省点として、キャノンがいらない、シールドは必須。近接武器は用意しておいた方が良い。軽量ホバーで飛行は結構有用。ナイフを足に仕込むのは悪くない。とりあえずこの辺りで組み直して次の試合までに考えて……。

「たまたま誘ったうえに、メインゲームでもないのに何故そこまでする?」
「ん-……そうねえ……」

 機体の調整をしていた手を少しだけ止める。

「負けるのは死ぬほど嫌いなんだよ、私は」

 エンジョイ勢に中指立てて暴言吐くくらいにはな。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...