最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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17章

443話 動きの展開力

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 思った以上に感触が良い。
 機体の制御は地上よりも難しく、気にする部分も多いし、今まであれこれと必死こいてやってきた事が全くもって通用しないからなおの事、難度が高い……のは、周りも一緒だったりするから、いかにこの状況を飲み込んで、順応していくかって話よ。

「って言うのが、建前だったりするけど」

 色んなゲームをしてきて、この手の物もやってきたけど、操縦周りの細かい設定が足を引っ張っているというか、操作難度を上げている感じはする。ひたすら真っすぐ飛ぶだけなら問題はないけど細かい横の制御だったり、加減速の具合を自分で調整しなきゃいけないのは結構大変。勝手にブレーキが掛かって停止するわけじゃないから吹かし続けると文字通りエリアの果てまで加速し続けていくから適度に自制しつつ機体を動かさないといけないのはちょっと他のゲームと違うとこかな。

「でもまあ、こういうメカを動かすのにあれこれ操作するってのは良いよね」

 フックショットを使い、近くにあったデブリに突き刺して引っ掛けて、それを引きずる様に前進していき、他のプレイヤーが戦っている所に目がけて突き刺しておいたデブリを自分が静止し、最後の微調整を加えてからフックショット外して飛ばす。
 我ながら中々にえぐい攻撃だな、もたもた戦闘している所に突っ込ませたおかげもあって、1機だけだが直撃。ぐるぐると回転しながら吹っ飛んでいく様を見ながらにまにまする。こんなにも簡単に行くとちょっと拍子抜けではあるが、楽しすぎる。吹っ飛ばされた奴は、暫く機体を回転させながらすっ飛んでいくので、吹っ飛んだ奴と戦っていたのと白兵戦の練習でもするか。

「こういうのは実戦でさっさと慣れた方が良いんだよなあ」

 じゃこっとARを構えて射撃しながら接近、ちゅんちゅんと音が鳴るのだが……この辺はゲーム的演出だな。そら、宇宙そのものの物理法則なりを持ってきたら無音すぎて味気ない。BGMもそうだけど、SEってのもゲームに限らず映画やらアニメやら、娯楽には大事。
 そんな事を考えつつ、射撃を受けてバランスを崩している機体に向かっていくのだが、さっきの射撃だけでやられるわけもなく、反撃でビーム射撃で返してくる。ああ、なるほど、銃の反動が無いのは光学系兵器の特徴だな。
 当たり前だが、こっちも素直に撃たれるわけもなく、制御が難しくないビームライフルが主流になるのくらいのは見越している。しっかりビームシールドで射撃を防ぎ、勢いのまま蹴りをお見舞いしてやる。
 ぐしゃっとひしゃげるような音を聞きながら更にブーストを掛けて加速を付けた所で、適当なデブリにフックショットを引っ掛け、無理やりの減速とバックブーストで停止。ただ向こうは何も繋がっていないので、さっさと勢いをカウンターしないとさっき吹っ飛んでいった奴と同じ末路だが……。

「まさか何もしないとは」

 吹っ飛ばされてそのまま耐えるのかなと思ったら特に何もしてこない……訳ではないけど、カウンターブーストを当てるのが遅すぎる。かなり距離を取ってから姿勢制御をしてからこっちを向き直す。けど、さっさと次の所に行っているので私の姿は捉えられていない。




 何て言うか、この宇宙戦、楽しすぎる。
 地上で動いていた時に関しては、正直な所T2Wの時と変わらない。なんだったら同じような事は4脚戦車でやっていたし、機動力の差はあるにしても生身でやれていたことの沿線上でしかないので、こうやって自由自在に飛び回れるのは爽快感含めてT2Wじゃ味わえない。こう、自分が操作できる事も多く、自分の実力でどこまでも強くなれるってのも良い所。
 
『アカメ殿、攻撃が当たらないのだが、どうしたら!』
『宇宙だと遠近感が狂うからなあ……地上の様に攻撃するのやめりゃーいいんだよ』

 上下逆さまでいつもの様に光も反射しないカーボンブレードを振るい相手に攻撃を繰り出している柳生の方を確認しつつ、細かくサイドブーストを掛けぐるりと姿勢を変えてから戦っている様を楽しむ。

『そう、は、言っても……!』
『そーだなあ……遠近が狂っているから間合いが測れないってなら突っ込んで突き入れりゃいいだろ?』

 もしくは、すれ違うようにして、刀を振るうってのもあるな。
 それにしても大半のプレイヤーが宇宙で溺れているのを見ると、操作難度が結構高いのかね。こういうのは感覚とコツを掴むのにそこまで苦労しないと思う。柳生だって地上であれだけ近接戦出来てるから上手い事動けると思うんだがまだコツを掴めてないみたいだ。

『もっと柔軟に、力業で制御できるほど簡単じゃないぞ』

 地上での戦闘が染みついている古参連中ほど宇宙で溺れている気がする。そりゃいきなり勝手も違うし、操作難度が増えた宇宙じゃ難しいって事か。それでも基本操作の部分は一緒だし、ちょっと考えれば慣れそうなもんだけど。

 で、柳生の奴が私に言われた通り、斬りかかる……のではなく、突きをメインにした突撃攻撃に切り替えている。言われた通りの事を素直にやっている辺り、向上心があるなあ。
 何て事を思っていれば、上から雨の様に射撃を貰うので、回避行動でサイドブーストを掛けて体を横に振りながら射撃された方に方向転換。これも横を振りつつ、体自体を回転させるブーストは別ってもんだから、やっぱむずいわ。

『私はお客さんの相手してるから、さっさと倒しなさいよ』
『任せい!』

 絶え間なく射撃してくる方を向いて、ビームシールドで受けながらバックブーストを掛けて距離を取りつつARで反撃。 マップ的にデブリが多く、ちょっと油断するとそれにぶつかって結構なダメージ。何て事が起きるから後ろに下がっている間も、障害物に当たらない様にしなきゃならない。考える事が多くて大変だが、この大変さこそ、面白さだよなあ。

「まーだまだ、甘いね」

 後ろに下がりながらぐるりと一回転と共にデブリにフックショットを掛け、シューっとワイヤーが擦れる音を聞き、十分に長さを確保出来た所で一気に前に。シールドで受けつつ射撃をしながら一直線上での戦闘を振って、すれ違うと共にワイヤーをぐるりと絡ませるようにし、フックショットのワイヤーで縛り付けると共に、ARを構えてグレネードを一発。

 派手なピンク色の爆発……の方が個人的には好きなんだけど、普通の赤い炎が上がる。これも演出の1つだけど、本当だったら爆発しないよなあ。でもそういう細かいことをあーだこーだいって水を差すことはナンセンス。派手な演出って大好き。

「って、まだ原型が残ってるのか」

 半壊して辛うじて動いているのを見て「ひゅう」っと口笛1つ。
 悲しいけどこれ、バトロワなのよね。
 もう一度ARを構えてから縛り付けている機体に向けて引き金をかるーく引いてやる。
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