最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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19章

529話 制御難

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 いきなりステータスを上げたから色々出来るってのは甘い話で、なんだったら急に上げて機敏になった自分の体に反応しきれてないのが現状だったりする。新しいFPSやTPSのゲームでマウス感度弄って上手い事噛み合わない時が続く、あの感じ。どうも反応が過敏になりすぎている。
 このVRゲームじゃないけど、普通のコンシューマーゲームでもタイミングが大事なコマンドだったり、アクションをする時は咄嗟に出せるっちゃ出せるのに、こういうのになるとどうもダメだな。

「アカメ殿、動きが雑ですぞ!」
「感度が良いのってどうも苦手なのよね」

 二人になってから、アリスの置き土産でもある大盾を使いつつ、相変わらずの近接戦を続けているわけだが、流石にガウェインとガヘリスのコンビを相手にするのはまあきつい。松田の奴はあの手この手でアオメを抑え込んでくれているので、専念出来ているとはいえさっきよりも受けの精度が悪い。ああ、でも反応しやすくなってるから、慣れたらステ振り直す時よりもいいのか。

「よくもまあ、AGIカンストして動けてるわ、マイカの奴は」

 って言うかよくよく考えてみたらレベル上限が99って聞いてたから、ステータス振り直したとしても「99+24」で123ポイント分しかステータスが振れないわけで、それを全部ぶっこめばあんな風な機動力になるのも頷ける。

「この手のゲームって結局の所、極化が強くなるもんだなあ……」

 オールマイティが強いってどのゲームでも中途半端になりがち。だからまあ、こういう感じになってるわけだが。

「相手のガンナー、厄介ですな!こっちもショットガンはないんですかな!」
「使えなくなったから無理だな、あっても使いにくい」
「だからって出し惜しみしていたら負けますぞ!」

 そんな事を言っていれば銃声が響き、散弾が辺り一面にばら撒かれる。アリスの大盾が本当にあって良かったと思うくらいには遮蔽としてしっかり使えている。必死こいて松田が引っ張って移動したりもしてどうにかこうにか使い続けているが、障害物扱いのせいで装備は出来ない。

「それにしても、こんな重い物良く振り回せていましたな!」
「ほんと、そう思う」

 アリスがやられてからというものの、しっかりガンナーとしての後衛をやっているアオメを意識して深く前に突っ込めないのが原因で、結構な膠着状態になっている。幸いなことにガヘリスが前に出て、という事はないので、集中出来れば良いんだけど。

「やはり後ろ2人がきついですかな?」
「まー、そりゃね……タイマンで殴り合いになったら負ける気はしないし」

 って言うただの強がりではあるけど、残り少ない弾数を考えれば、タイマンの方が圧倒的にやりやすい。

「自爆でもしますかね?」
「うちの連中は自爆好きねえ……あの後衛二人をやれるならお釣りまでくるけど、倒せるほどの火薬はもうないんだな、これが」

 スモークとフラッシュグレネードは爆発性じゃないし、グレネードも道中渡して使ってあと2本。これだけの火薬量じゃ、レベルの高い相手にはちょっと心もとない。って言うかなんでもかんでもすぐに自爆する癖やめさせんと。

「ではどうやってタイマンをするんですかな!」
「そうねー……アオメさえやれればあんたとガヘリスはいい勝負しそうだから」

 ちらりと大盾から軽く顔を出して、射撃でガウェインの足止めをしつつ、アオメの位置を確認。これがTPSだったらカメラ越しに場所わかるけど、残念ながら一人称視点。向こうもしっかり盾役の後ろに引っ込んでこっちの事を伺いつつ射撃なのは変わらず。挟み撃ちしていた時にアリスと松田で落とせなかったのが悔やまれる。

「それじゃあ気合入れていくか」
「どうするんで」
「フラッシュとスモークを使って攪乱しつつ、背中にグレネード突っ込んで直接吹っ飛ばすとか?」
「派手な作戦ですな!」

 実際は数少ない手札を切っているだけで、これ以外でアオメの奴を少しでも無効化し、先に仕留めにかかるか。

「どうにかガウェインの脚を止められないか?」
「粘着液ならありますぞ」
「よし、あいつにぶつけてから仕掛けにいこう」

 調合系の強みってのが良く出てる気がする。こういう便利アイテム作れるのは唯一無二って感じ。とりあえず丸底フラスコに入っ白い粘着液。明らかにどこぞの蜘蛛男が使う奴だけど、そんな事は気にしない。
 2人で一息ついてからフラッシュを投げ込み視界を奪ってからのスモーク投擲。先にフラッシュを出したのはトラッカー封じ。スモーク抜けてくるから地味に厄介なのよね、あれ。

「よーし、いけいけ!」

 大盾から身を低くしたまま飛び出し、松田を反対のサイドにいかせ、こっちはガウェインの奴に向かって前進。流石にフラッシュはアオメの方に投げ込んだからスモークだけしか影響がないが、こっちをうっすらとでも捉えているあたり良い腕している。

「全く、これだから強い相手は」

 そのまま近づいてきた私を狙って一閃。上げたAgiのおかげもあるが、攻撃を避けるため正座の状態になりつつ滑り、上体を後ろに逸らして回避、そこから一気に体を跳ね上げて立ち上がり、ガウェインの盾を踏み台にして跳躍、そのまま一番上にきて、あの憎たらし犬顔を拝んだ所で、しゅぱっとフラスコを敢えて足元に投げつける。

「ガヘリスがいない」

 さっきまで後ろにいたと思ったんだが、姿が見えず、あたりを探りながら着地し、松田の援護に入るために駆けだすと共に、走った方向を見ると赤い光点が二つ。

「クソ、読まれたか!」
「いかせませんよ!」

 足が固定されている状態でも上半身を捻って攻撃することは出来る。振り向きながらの飛ぶ斬撃。これを目で追ってから折れた刀を抜いて防ぐと共に手放して、急いで松田の方に。銃声と陥没するような衝撃音が響く中、松田の奴の必死こいてる声が聞こえる。

「やっぱ博打だったか」

 ガウェインの奴は取るのにてこずってるし、十分距離も開けた。あいつが来るまでに、かつ松田の奴がやられる前に2人しとめるってまた難度のたかいこって。
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