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22章
576話 salida
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「良い雰囲気の所ですね」
「今更コロッセウム型のステージでやる奴なんてセンスがないわセンスが」
中世ヨーロッパによくある、豪華絢爛なダンスホールの真ん中。私がゲーム開始時くらいから知っている犬の獣人で、死ぬ程このゲームをやっている奴が目の前にいる。
「それにしても随分とめかしこんでるじゃない」
「それは貴女もじゃないですか?」
白を基調とし、青が所々に入っているびしっとしたスーツ、それに各種装飾やアクセサリーがくどくない程度に付いていて、非常に高級感がある。多分って言うか、確実に薫の奴が作ったと思う。何だかんだであいつって金さえ払えば何でも作る職人だし。
こっちもこっちで白を基調とした裾が長く大きく広がるドレス。所々にレース模様の飾りがあしらわれて高級感もありつつ、動きが阻害されるような構造にはなっていないシンプルながらも上質な出来のドレス。全体的な感じで言えばフラメンコのドレスに近いので、大きく振れば裾が広がる。
「そして、何でダンスの誘いを?」
すっと構えてくるのでそれに合わせて手を握りステップを踏み始める。
「あんたがトップを取り続けてるって言うから、私も狙おうかなって」
軽く予備歩で動き続けながら面と向かって会話を続ける。なんとなく腹立たしいというか、ちょっとだけ意地張ってダンススキルをガン上げしたかいがあったから、スムーズな足運びよ。リアルじゃ踊り何て全然やらないけど、スキルを覚えりゃ思い通りってのはリアルに欲しい。
「だから最後にいい思い出でも作ってやろうかなーって」
「随分とサービスしてくれますね?」
くるりとターンをし、また歩きながらしっかりとしたダンスを続け、他愛のない会話を続ける。初めて声を掛けた時の事やら、イベントで悔しい思いをしただの、共闘したとき、何度か戦った時の思い出やらなんやら……。
「まだそんなに日が経ってないのに色々あるわね」
「ええ、色々ありましたね」
「で、いい思い出は作れた?」
「そうですね、やっぱり最初のころにうちに引き込んでおけばよかったと思います」
暫くそんな思い出話をしていれば、曲が終わりフィニッシュ。ぴたりとポーズも決めて様になっているのが自分でもよくわかる。
「それじゃあぼちぼちやるか」
「私としてはもう少しダンスを楽しみたい所ですが」
決めポーズから片手を握った状態を維持したままで距離を取り、ゆっくりと離れ、指先が離れた瞬間にお互いが得物を抜いて1回転共に振り抜く。こっちは銃剣の付いたオートマチック、向こうはオーソドックスなロングソード。甲高い金属音が響く中、ほんの数秒だけ刃を押し付け合ってから弾き、またくるりと回転してから互いを見つめる。
「また変な銃を持って……」
「あんたは変化がないわ」
ドレスの裾をたなびかせながら片手で構え即時に射撃。ちゅんちゅんと弾く音をさせ向こうがしっかりしたヒーターシールドで防ぐ。まあ、これくらいはしてくるだろうから色々対策なり、新しい事も増えてるから、いけるだろう。
そうしてひとしきり射撃した後、空になったマガジンを手首のひねりで飛ばし装填。の隙を狙って距離を詰めながら斬撃が飛んでくるので、そのまま銃で受けながら呼吸を一つ。遠距離職にとって距離をガンガン詰めてくる近接系の相手は当たり前だけど相性が悪い相手、だけどスキルや装備、ステータスを弄りやすいこのゲームで今更普通のゲームの相性を持ち出すってのはやっぱりセンスがない。だからこそ、こいつと戦うことに意義がある。
「こんな感じにやられる人ではないでしょう」
そりゃそうだ。軽い感じにびゅんびゅんと振るわれる斬撃を受けつつ、タイミングを計り斬撃が途切れた所で右手に別のハンドガンを「転送」し、構えてない所への不意打ち。軽いうめき声が聞こえると共に攻撃の手が止まるので、軽くバックステップを挟んでから新しいマガジンをこれまた空間から出し、マガジンを抜いた方の銃に装填。
「火力が出るから使ってきたけど正直2丁拳銃ってあんま趣味じゃないのよね」
くるくると銃を回しながらどう出るか伺う。まあ、こっちとしては突っ込まれる方がちょっと大変なんだけど、タンク型なのもあって結構どっしり構えてこっちの様子を伺ってくる。
「よく使ってるみたいですけど?」
「私はデカくて派手な方が本当は好きなんだよ……っと」
パンパンと小気味良い音をさせて近寄らせないようにしてからまた数歩下がり、ある程度の距離を取れたところでハンドガンを戻し、新しい銃を右手に転送し、がちゃんと大きく音をさせながらにんまりと笑う。
「やっぱり銃使うなら派手で目立つもんを使ってなんぼよ」
転送して出した大型銃器、今まで散々手回しで使っていたガトリングも工学のおかげでレバーを握りこむと銃身が回り始め、すぐさま火を噴き始める。重低音を鳴らし、薬莢が落ちるたびに甲高い金属音を混じらせる。
「そういうのは反則じゃないですか、ね!」
さっきと違い、厚めの大きいタワーシールドで受けている犬野郎が文句を飛ばしてくる間に、ガトリングの撃ち切ったマガジンが自動的に下部から落ちる。
「おっと……」
「全く、あれこれ出して!」
タワーシールドから身を出し、そのシールドから新しい盾を取り出しつつこっちに接近するので、左からキャノン砲を抜いて接近する前に引き金を絞る。轟音を響かせ反動で自分も大きく後ろに飛びながら着弾を確認。爆炎を眺めながらキャノンを戻して一息。
「まあ、死んで無いんだろうけど」
「……随分な火力ですね……」
爆炎の中、ネクタイを緩めながら悠然と歩いてくる犬野郎。スーツの上着を投げ捨て、Yシャツ姿に。サスペンダーも付けて腕まくりして、やけにセクシーな野郎だ。
「今まで見たことないスキルと武器、あれこれと覚えてきたようで」
「面白いでしょ」
まだ使える兵装はあるけどこれ以上はMPがしんどい。せっかく覚えてきたってのにケロっとしてるあいつの耐久力本当にどうなってるんだ?ガンナー特有の固定ダメージもあんまり通ってる感じもないし。多分、あいつ固定ダメージに対しての防御スキルを取ってるに違いないだろう。
「とは言え長期戦で逃げまわられるとこっちが負けますからね」
「よく、お分かりで」
スカートの裾をまくり、赤いテープがグリップに捲かれたハンドガンを2丁取り出して構え、未だに悠然と歩いている犬野郎に向けて一発。勿論いつものようにガード……からうめき声一つ。うん、実用的になってきた。そのまま軽く様子を見ていたら、がらんと大きく音を立ててシールドを落とし、顔を押さえている。
「……貫通するならあらかじめ言って貰えますか?」
「言ったら対策するじゃん」
ほんと、国家らが本番くさい。
「今更コロッセウム型のステージでやる奴なんてセンスがないわセンスが」
中世ヨーロッパによくある、豪華絢爛なダンスホールの真ん中。私がゲーム開始時くらいから知っている犬の獣人で、死ぬ程このゲームをやっている奴が目の前にいる。
「それにしても随分とめかしこんでるじゃない」
「それは貴女もじゃないですか?」
白を基調とし、青が所々に入っているびしっとしたスーツ、それに各種装飾やアクセサリーがくどくない程度に付いていて、非常に高級感がある。多分って言うか、確実に薫の奴が作ったと思う。何だかんだであいつって金さえ払えば何でも作る職人だし。
こっちもこっちで白を基調とした裾が長く大きく広がるドレス。所々にレース模様の飾りがあしらわれて高級感もありつつ、動きが阻害されるような構造にはなっていないシンプルながらも上質な出来のドレス。全体的な感じで言えばフラメンコのドレスに近いので、大きく振れば裾が広がる。
「そして、何でダンスの誘いを?」
すっと構えてくるのでそれに合わせて手を握りステップを踏み始める。
「あんたがトップを取り続けてるって言うから、私も狙おうかなって」
軽く予備歩で動き続けながら面と向かって会話を続ける。なんとなく腹立たしいというか、ちょっとだけ意地張ってダンススキルをガン上げしたかいがあったから、スムーズな足運びよ。リアルじゃ踊り何て全然やらないけど、スキルを覚えりゃ思い通りってのはリアルに欲しい。
「だから最後にいい思い出でも作ってやろうかなーって」
「随分とサービスしてくれますね?」
くるりとターンをし、また歩きながらしっかりとしたダンスを続け、他愛のない会話を続ける。初めて声を掛けた時の事やら、イベントで悔しい思いをしただの、共闘したとき、何度か戦った時の思い出やらなんやら……。
「まだそんなに日が経ってないのに色々あるわね」
「ええ、色々ありましたね」
「で、いい思い出は作れた?」
「そうですね、やっぱり最初のころにうちに引き込んでおけばよかったと思います」
暫くそんな思い出話をしていれば、曲が終わりフィニッシュ。ぴたりとポーズも決めて様になっているのが自分でもよくわかる。
「それじゃあぼちぼちやるか」
「私としてはもう少しダンスを楽しみたい所ですが」
決めポーズから片手を握った状態を維持したままで距離を取り、ゆっくりと離れ、指先が離れた瞬間にお互いが得物を抜いて1回転共に振り抜く。こっちは銃剣の付いたオートマチック、向こうはオーソドックスなロングソード。甲高い金属音が響く中、ほんの数秒だけ刃を押し付け合ってから弾き、またくるりと回転してから互いを見つめる。
「また変な銃を持って……」
「あんたは変化がないわ」
ドレスの裾をたなびかせながら片手で構え即時に射撃。ちゅんちゅんと弾く音をさせ向こうがしっかりしたヒーターシールドで防ぐ。まあ、これくらいはしてくるだろうから色々対策なり、新しい事も増えてるから、いけるだろう。
そうしてひとしきり射撃した後、空になったマガジンを手首のひねりで飛ばし装填。の隙を狙って距離を詰めながら斬撃が飛んでくるので、そのまま銃で受けながら呼吸を一つ。遠距離職にとって距離をガンガン詰めてくる近接系の相手は当たり前だけど相性が悪い相手、だけどスキルや装備、ステータスを弄りやすいこのゲームで今更普通のゲームの相性を持ち出すってのはやっぱりセンスがない。だからこそ、こいつと戦うことに意義がある。
「こんな感じにやられる人ではないでしょう」
そりゃそうだ。軽い感じにびゅんびゅんと振るわれる斬撃を受けつつ、タイミングを計り斬撃が途切れた所で右手に別のハンドガンを「転送」し、構えてない所への不意打ち。軽いうめき声が聞こえると共に攻撃の手が止まるので、軽くバックステップを挟んでから新しいマガジンをこれまた空間から出し、マガジンを抜いた方の銃に装填。
「火力が出るから使ってきたけど正直2丁拳銃ってあんま趣味じゃないのよね」
くるくると銃を回しながらどう出るか伺う。まあ、こっちとしては突っ込まれる方がちょっと大変なんだけど、タンク型なのもあって結構どっしり構えてこっちの様子を伺ってくる。
「よく使ってるみたいですけど?」
「私はデカくて派手な方が本当は好きなんだよ……っと」
パンパンと小気味良い音をさせて近寄らせないようにしてからまた数歩下がり、ある程度の距離を取れたところでハンドガンを戻し、新しい銃を右手に転送し、がちゃんと大きく音をさせながらにんまりと笑う。
「やっぱり銃使うなら派手で目立つもんを使ってなんぼよ」
転送して出した大型銃器、今まで散々手回しで使っていたガトリングも工学のおかげでレバーを握りこむと銃身が回り始め、すぐさま火を噴き始める。重低音を鳴らし、薬莢が落ちるたびに甲高い金属音を混じらせる。
「そういうのは反則じゃないですか、ね!」
さっきと違い、厚めの大きいタワーシールドで受けている犬野郎が文句を飛ばしてくる間に、ガトリングの撃ち切ったマガジンが自動的に下部から落ちる。
「おっと……」
「全く、あれこれ出して!」
タワーシールドから身を出し、そのシールドから新しい盾を取り出しつつこっちに接近するので、左からキャノン砲を抜いて接近する前に引き金を絞る。轟音を響かせ反動で自分も大きく後ろに飛びながら着弾を確認。爆炎を眺めながらキャノンを戻して一息。
「まあ、死んで無いんだろうけど」
「……随分な火力ですね……」
爆炎の中、ネクタイを緩めながら悠然と歩いてくる犬野郎。スーツの上着を投げ捨て、Yシャツ姿に。サスペンダーも付けて腕まくりして、やけにセクシーな野郎だ。
「今まで見たことないスキルと武器、あれこれと覚えてきたようで」
「面白いでしょ」
まだ使える兵装はあるけどこれ以上はMPがしんどい。せっかく覚えてきたってのにケロっとしてるあいつの耐久力本当にどうなってるんだ?ガンナー特有の固定ダメージもあんまり通ってる感じもないし。多分、あいつ固定ダメージに対しての防御スキルを取ってるに違いないだろう。
「とは言え長期戦で逃げまわられるとこっちが負けますからね」
「よく、お分かりで」
スカートの裾をまくり、赤いテープがグリップに捲かれたハンドガンを2丁取り出して構え、未だに悠然と歩いている犬野郎に向けて一発。勿論いつものようにガード……からうめき声一つ。うん、実用的になってきた。そのまま軽く様子を見ていたら、がらんと大きく音を立ててシールドを落とし、顔を押さえている。
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