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湖畔ピクニックに、勝った!!
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――引き揚げられた。
次の瞬間、肺が空気を思い出す。
盛大に水を吐き、咳き込み、視界が揺れた。
「はぁ……はぁ……っ」
湖畔の光が、きらきらと瞬いている。
耳鳴りの向こうで、名前を呼ぶ声。
……あ。
ヴィンセント。
両腕に抱えられ、しっかりと支えられている。
彼が、助けてくれた。
「はぁ……はぁ……
助けてくれて、ありがとう……ヴィン」
声が、かすれていた。
想像していた「助けられ方」とは違ったけれど、
これはこれで――命の恩人、だ。
「……君が、無事で……よかった」
胸に、彼の息が当たる。
鼓動が、まだ速い。
「貴方が、そばにいてよかった」
正直な言葉が、ぽろりと落ちた。
怖かった。
本当に。
ヴィンセントが、私の姿を見て――固まった。
……え?
なに?
視線の先に、はっとして自分を見る。
薄着だった。
湖の水で、布が身体に張りついて、
輪郭をなぞるみたいに、透けている。
――これは。
えっちっちな、やつだ。
顔が、かぁっと熱くなる。
ヴィンセントを見ると、
彼も、はっとしたように視線を逸らした。
そして、次の瞬間。
静かな魔術陣が、足元に広がる。
ふわっと、
あたたかい風に包まれた。
水気が、するすると消えていく。
冷えた身体が、じんわりと温まる。
……あ。
「万が一セットのタオル、
必要なかったな……」
ぽつりと呟くと、
自分で自分がおかしくなって、少し笑ってしまった。
「ヴィンの魔術、気持ちがいいね!」
にっこり笑うと、
ヴィンセントの喉が、わずかに鳴った。
彼は、ぎゅっと、私を抱きしめた。
力は強くない。
けれど、逃がさない、と伝わる腕。
「君は……
どれだけ俺を……
気が済むんだ」
低い声。
息が、首元にかかる。
胸の奥が、きゅっとする。
湖に落ちたときの恐怖が、
まだ身体に残っている。
けれど――今は、それよりも。
「今……すごく、
ヴィンを、感じたい」
言葉にした途端、
心臓が跳ねた。
「……ダメ、かな?」
ほんの一瞬の沈黙。
風が、葉を揺らす音。
次の瞬間、
ヴィンセントの唇が、重なった。
――深い。
今までの「軽い」それとは、違う。
触れたまま、離れない。
息が、混じる。
そして、
彼の舌が――私から、絡ませてくれた。
……あ。
受け止めてくれる。
逃げない。
止めない。
応えてくれる。
「……っ」
喉の奥から、息が漏れた。
くちゅり、と。
水音が、小さく響く。
はぁ……はぁ……
こんなキスが、あるなんて。
唇が重なった瞬間、逃げ場のない距離で吐息が絡み合う。
触れているのは、ただ口付けだけなのに、
その奥で舌が触れ、熱を分け合うたび、頭の内側がじんわりと痺れていった。
溺れていく感覚。
さっきの湖とは、まるで違う。
あたたかくて、やわらかくて、
……きもち、いい……
胸の奥が、じんと満たされていく。
「……ふ、……あ……」
吐息が、こぼれる。
深く、深く、混じる。
思考がゆるやかにほどけていく。
どこまでが自分で、どこからが彼なのか、曖昧になっていく感覚。
溺れていく。
抗う理由なんて、もう見つからない。
彼にすべてを委ねたい、と思った。
強引ではないのに、逃げ道を残さないその口付けが、
甘やかな支配として、心と身体の境目を優しく溶かしていく。
ただ唇を重ねているだけなのに、
胸の奥が満たされて、熱が静かに広がっていく。
しばらくして、
ようやく、唇が離れた。
名残惜しい距離。
額が、触れ合うほど近い。
「……こんなに、
気持ちがいい口付け……
今まで、おあずけされてたなんて……」
思わず、恨み言みたいに言ってしまう。
ヴィンセントが、くすりと笑った。
「これからも、
溺れさせてあげるよ」
――ずるい。
そんなこと、
言われたら。
湖畔ピクニックは――
大成功、だ。
死にかけたけれど。
……結果オーライ!
結局、コテージで“むふふ”は、
出来なかったけれど。
それでも。
ちゃんと、
前に進んだ。
私は、心の中で、
がっつりガッツポーズを決めた。
次の瞬間、肺が空気を思い出す。
盛大に水を吐き、咳き込み、視界が揺れた。
「はぁ……はぁ……っ」
湖畔の光が、きらきらと瞬いている。
耳鳴りの向こうで、名前を呼ぶ声。
……あ。
ヴィンセント。
両腕に抱えられ、しっかりと支えられている。
彼が、助けてくれた。
「はぁ……はぁ……
助けてくれて、ありがとう……ヴィン」
声が、かすれていた。
想像していた「助けられ方」とは違ったけれど、
これはこれで――命の恩人、だ。
「……君が、無事で……よかった」
胸に、彼の息が当たる。
鼓動が、まだ速い。
「貴方が、そばにいてよかった」
正直な言葉が、ぽろりと落ちた。
怖かった。
本当に。
ヴィンセントが、私の姿を見て――固まった。
……え?
なに?
視線の先に、はっとして自分を見る。
薄着だった。
湖の水で、布が身体に張りついて、
輪郭をなぞるみたいに、透けている。
――これは。
えっちっちな、やつだ。
顔が、かぁっと熱くなる。
ヴィンセントを見ると、
彼も、はっとしたように視線を逸らした。
そして、次の瞬間。
静かな魔術陣が、足元に広がる。
ふわっと、
あたたかい風に包まれた。
水気が、するすると消えていく。
冷えた身体が、じんわりと温まる。
……あ。
「万が一セットのタオル、
必要なかったな……」
ぽつりと呟くと、
自分で自分がおかしくなって、少し笑ってしまった。
「ヴィンの魔術、気持ちがいいね!」
にっこり笑うと、
ヴィンセントの喉が、わずかに鳴った。
彼は、ぎゅっと、私を抱きしめた。
力は強くない。
けれど、逃がさない、と伝わる腕。
「君は……
どれだけ俺を……
気が済むんだ」
低い声。
息が、首元にかかる。
胸の奥が、きゅっとする。
湖に落ちたときの恐怖が、
まだ身体に残っている。
けれど――今は、それよりも。
「今……すごく、
ヴィンを、感じたい」
言葉にした途端、
心臓が跳ねた。
「……ダメ、かな?」
ほんの一瞬の沈黙。
風が、葉を揺らす音。
次の瞬間、
ヴィンセントの唇が、重なった。
――深い。
今までの「軽い」それとは、違う。
触れたまま、離れない。
息が、混じる。
そして、
彼の舌が――私から、絡ませてくれた。
……あ。
受け止めてくれる。
逃げない。
止めない。
応えてくれる。
「……っ」
喉の奥から、息が漏れた。
くちゅり、と。
水音が、小さく響く。
はぁ……はぁ……
こんなキスが、あるなんて。
唇が重なった瞬間、逃げ場のない距離で吐息が絡み合う。
触れているのは、ただ口付けだけなのに、
その奥で舌が触れ、熱を分け合うたび、頭の内側がじんわりと痺れていった。
溺れていく感覚。
さっきの湖とは、まるで違う。
あたたかくて、やわらかくて、
……きもち、いい……
胸の奥が、じんと満たされていく。
「……ふ、……あ……」
吐息が、こぼれる。
深く、深く、混じる。
思考がゆるやかにほどけていく。
どこまでが自分で、どこからが彼なのか、曖昧になっていく感覚。
溺れていく。
抗う理由なんて、もう見つからない。
彼にすべてを委ねたい、と思った。
強引ではないのに、逃げ道を残さないその口付けが、
甘やかな支配として、心と身体の境目を優しく溶かしていく。
ただ唇を重ねているだけなのに、
胸の奥が満たされて、熱が静かに広がっていく。
しばらくして、
ようやく、唇が離れた。
名残惜しい距離。
額が、触れ合うほど近い。
「……こんなに、
気持ちがいい口付け……
今まで、おあずけされてたなんて……」
思わず、恨み言みたいに言ってしまう。
ヴィンセントが、くすりと笑った。
「これからも、
溺れさせてあげるよ」
――ずるい。
そんなこと、
言われたら。
湖畔ピクニックは――
大成功、だ。
死にかけたけれど。
……結果オーライ!
結局、コテージで“むふふ”は、
出来なかったけれど。
それでも。
ちゃんと、
前に進んだ。
私は、心の中で、
がっつりガッツポーズを決めた。
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