11 / 62
11 ユーグの記憶 魔女の呪い
しおりを挟む
「誰かっ、誰かっ、この子を助けてやっておくれよ!! ここは魔女の村なんだろう!?」
一人の老婆らしき声が魔女を呼んでいる。
「なんだい? なにごとさね」
エティ師匠は面倒そうに扉を開けて外へ出ていく。ユーグ師匠もその後を追った。
視界に飛び込んで来たのは髪の毛を振り乱した老婆と荷車に乗せられた黒い髪の長い女だった。
その瞬間、エティ師匠が大声で叫んだ。
「ユーグ、後ろへ下がりなっ! お前たちも下がれっ!」
何か良くないことがあったのかもしれない。ユーグ師匠は指示通り後ろへ下がり、他の魔女達も悲鳴をあげながら距離をとった。
「ちっ、そこの老婆、この女は何だい。なぜここへ連れてきたんだ!」
エティ師匠は荷車の女を気にしながら老婆に聞いている。
「この子はシャナ。私の孫だ。忌み子でずっと迫害されてきた。私がずっと守ってきたんだ。それなのにっ、貴族のお偉いさんが来て、娘を、娘をこんな風にさせちまったんだよ! 助けておくれよ! 可愛い孫なんだっ」
老婆は膝を突き、頭を地面に付けてエティ師匠に願っている。
エティ師匠は何も言わず、突然老婆に向けて大きな火の球をぶつけた。
「ぎゃぁぁぁ。お、おのれぇぇぇぇぇ。ゆ、ゆるさんぞぉぉぉ」
老婆は先ほどとは打って変わり、魔物のようなぎらついた目でエティ師匠に襲い掛かろうとしていた。
だが、距離をとっていた魔女たちは一斉に老婆に向けて攻撃をする。
ユーグ師匠は訳もわからず、状況を見守っているだけだった。
魔女たちの攻撃で老婆は地面から出てくる槍で貫かれ、風で切られ、火で最後の消し炭になるまで燃やされた。
他の魔法使いや魔女たちは口を開くことなく荷車の女を遠くから眺めている。ある者は彼女を見て恐怖で顔を引きつらせたり、家に逃げ帰ったりしている。
「エティ師匠、どう、なっているんですか?」
「ああ、これはこの村に災いが呼びこまれたのさ」
「災いが呼びこまれた?」
「ああそうだ。この村は襲撃や侵略者が来られないように特殊な結界が張ってある。それを越えてきた。その意味はわかるね?」
「結界を通れる魔法使いか魔女、ですね」
エティ師匠は厳しい目をしたまま頷いた。
「その通り。あの荷車に乗っている女をよく見ておきな。あの黒髪。相当な魔力を持っているんだろう。腕に入れ墨のような模様が浮かび上がっている。あれに触れてはならんし、近づいてもならん」
「なぜですか?」
「呪いが移るからさね。仕方がないがあの娘を殺すしかない」
「え……。でも、彼女は生きているじゃ」
「……けて。たす、けて。死にたく、ない。なんで、もするから……」
か細く荷車から声が聞こえてくる。その声を聞いた一部の魔女からはまた悲鳴があがる。
彼女たちはこの呪いの怖さを知っているようだ。
「一刻も早く、殺さねばならん」
エティ師匠は真剣な顔で魔女や魔法使いに向かって叫ぶ。
「あの呪いに向けて魔法をかけるさね」
その言葉を聞いた魔女や魔法使いたちはまた一斉に呪文の詠唱をはじめ、荷車の女に向かって魔法を掛け始める。
女を閉じ込めるようにいくつもの魔法円が浮かび上がった。
エティ師匠も他の人たちと同じように魔法をかけて女とともに呪いを閉じ込めようとしている。
黒髪の女は苦しいようで悲鳴を上げ、助けてと何度も叫んでいて聞いているこちらの胸が苦しくなってくる。
「皆の者、一気に畳みかけるんだ」
「「はい」」
「きゃぁぁぁっ。痛いっ、痛いっ。助けてっ」
出力を上げると、魔法円はより一層光が強くなる。
それと同時に女は大声をあげ、彼女から魔力が噴き出してきた。
「気を付けろっ!!」
そう叫んでエティ師匠は魔法の出力を上げていくが、女から噴き出した魔力は抑えきれないようだ。
悲鳴を上げながらもだえ苦しむ女はユーグ師匠に助けを求めるように視線を送る。
だが、今のユーグ師匠では何もできず、ただ見守るしかできなかった。
パチンッ。
女の魔力に耐えきれず魔法円がはじけ飛んでしまった。
「まずい!! お前たち避難しな! 私が行く」
エティ師匠はそう言うと、呪文を唱え始めた。
エティ師匠の身体は燃えるように赤い光に包まれて黒髪の女と似たような模様が顔や腕など体中に刻み込まれていく。
「長老!」
「エティ様!」
魔女や魔法使いたちは後ろへ下がり、距離を取りながらもエティ師匠を心配し、声を掛けている。
その魔法が私にはどんなものかはわからないけれど、確実に悪い物だとは分かる。
エティ師匠はそのまま女の腕を取り、詠唱を続ける。
すると先ほどまで悲鳴を上げていた黒髪の女は魔力を抜き取られるように静かになり、入れ墨のように体中に入っていた模様が徐々に消えていく。
それと同時にエティ師匠は地面に崩れ落ちた。
「エティ師匠!!」
ユーグ師匠が声をあげて駆け寄ろうとした時、一人の高齢の魔女が止めに入った。
「触るんじゃない!」
「ですがっ」
「いいか、よくお聞き。エティ様は自ら呪いを掛け、この女の呪いを吸い取り、消し去った。エティ様のことだ、我々に影響を及ぼさないように自分自身への呪いだろう。だが、誰が触れるにしてもどのような呪いかを確認してからにせねばならん」
「は、い」
ユーグ師匠はその魔女の言葉に従うしかなかった。
きっと彼女はエティ師匠の次に偉い人なのだろう。
その魔女は黒髪の女を放置し、エティ様に魔法を掛け、調べていく。
魔女の魔法を嫌うかのように時折パチンと弾ける音がしている。
一人の老婆らしき声が魔女を呼んでいる。
「なんだい? なにごとさね」
エティ師匠は面倒そうに扉を開けて外へ出ていく。ユーグ師匠もその後を追った。
視界に飛び込んで来たのは髪の毛を振り乱した老婆と荷車に乗せられた黒い髪の長い女だった。
その瞬間、エティ師匠が大声で叫んだ。
「ユーグ、後ろへ下がりなっ! お前たちも下がれっ!」
何か良くないことがあったのかもしれない。ユーグ師匠は指示通り後ろへ下がり、他の魔女達も悲鳴をあげながら距離をとった。
「ちっ、そこの老婆、この女は何だい。なぜここへ連れてきたんだ!」
エティ師匠は荷車の女を気にしながら老婆に聞いている。
「この子はシャナ。私の孫だ。忌み子でずっと迫害されてきた。私がずっと守ってきたんだ。それなのにっ、貴族のお偉いさんが来て、娘を、娘をこんな風にさせちまったんだよ! 助けておくれよ! 可愛い孫なんだっ」
老婆は膝を突き、頭を地面に付けてエティ師匠に願っている。
エティ師匠は何も言わず、突然老婆に向けて大きな火の球をぶつけた。
「ぎゃぁぁぁ。お、おのれぇぇぇぇぇ。ゆ、ゆるさんぞぉぉぉ」
老婆は先ほどとは打って変わり、魔物のようなぎらついた目でエティ師匠に襲い掛かろうとしていた。
だが、距離をとっていた魔女たちは一斉に老婆に向けて攻撃をする。
ユーグ師匠は訳もわからず、状況を見守っているだけだった。
魔女たちの攻撃で老婆は地面から出てくる槍で貫かれ、風で切られ、火で最後の消し炭になるまで燃やされた。
他の魔法使いや魔女たちは口を開くことなく荷車の女を遠くから眺めている。ある者は彼女を見て恐怖で顔を引きつらせたり、家に逃げ帰ったりしている。
「エティ師匠、どう、なっているんですか?」
「ああ、これはこの村に災いが呼びこまれたのさ」
「災いが呼びこまれた?」
「ああそうだ。この村は襲撃や侵略者が来られないように特殊な結界が張ってある。それを越えてきた。その意味はわかるね?」
「結界を通れる魔法使いか魔女、ですね」
エティ師匠は厳しい目をしたまま頷いた。
「その通り。あの荷車に乗っている女をよく見ておきな。あの黒髪。相当な魔力を持っているんだろう。腕に入れ墨のような模様が浮かび上がっている。あれに触れてはならんし、近づいてもならん」
「なぜですか?」
「呪いが移るからさね。仕方がないがあの娘を殺すしかない」
「え……。でも、彼女は生きているじゃ」
「……けて。たす、けて。死にたく、ない。なんで、もするから……」
か細く荷車から声が聞こえてくる。その声を聞いた一部の魔女からはまた悲鳴があがる。
彼女たちはこの呪いの怖さを知っているようだ。
「一刻も早く、殺さねばならん」
エティ師匠は真剣な顔で魔女や魔法使いに向かって叫ぶ。
「あの呪いに向けて魔法をかけるさね」
その言葉を聞いた魔女や魔法使いたちはまた一斉に呪文の詠唱をはじめ、荷車の女に向かって魔法を掛け始める。
女を閉じ込めるようにいくつもの魔法円が浮かび上がった。
エティ師匠も他の人たちと同じように魔法をかけて女とともに呪いを閉じ込めようとしている。
黒髪の女は苦しいようで悲鳴を上げ、助けてと何度も叫んでいて聞いているこちらの胸が苦しくなってくる。
「皆の者、一気に畳みかけるんだ」
「「はい」」
「きゃぁぁぁっ。痛いっ、痛いっ。助けてっ」
出力を上げると、魔法円はより一層光が強くなる。
それと同時に女は大声をあげ、彼女から魔力が噴き出してきた。
「気を付けろっ!!」
そう叫んでエティ師匠は魔法の出力を上げていくが、女から噴き出した魔力は抑えきれないようだ。
悲鳴を上げながらもだえ苦しむ女はユーグ師匠に助けを求めるように視線を送る。
だが、今のユーグ師匠では何もできず、ただ見守るしかできなかった。
パチンッ。
女の魔力に耐えきれず魔法円がはじけ飛んでしまった。
「まずい!! お前たち避難しな! 私が行く」
エティ師匠はそう言うと、呪文を唱え始めた。
エティ師匠の身体は燃えるように赤い光に包まれて黒髪の女と似たような模様が顔や腕など体中に刻み込まれていく。
「長老!」
「エティ様!」
魔女や魔法使いたちは後ろへ下がり、距離を取りながらもエティ師匠を心配し、声を掛けている。
その魔法が私にはどんなものかはわからないけれど、確実に悪い物だとは分かる。
エティ師匠はそのまま女の腕を取り、詠唱を続ける。
すると先ほどまで悲鳴を上げていた黒髪の女は魔力を抜き取られるように静かになり、入れ墨のように体中に入っていた模様が徐々に消えていく。
それと同時にエティ師匠は地面に崩れ落ちた。
「エティ師匠!!」
ユーグ師匠が声をあげて駆け寄ろうとした時、一人の高齢の魔女が止めに入った。
「触るんじゃない!」
「ですがっ」
「いいか、よくお聞き。エティ様は自ら呪いを掛け、この女の呪いを吸い取り、消し去った。エティ様のことだ、我々に影響を及ぼさないように自分自身への呪いだろう。だが、誰が触れるにしてもどのような呪いかを確認してからにせねばならん」
「は、い」
ユーグ師匠はその魔女の言葉に従うしかなかった。
きっと彼女はエティ師匠の次に偉い人なのだろう。
その魔女は黒髪の女を放置し、エティ様に魔法を掛け、調べていく。
魔女の魔法を嫌うかのように時折パチンと弾ける音がしている。
53
あなたにおすすめの小説
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
選ばれなくてよかったと、今は思います
たくわん
恋愛
五年間の婚約を、一夜で破棄された。
理由は「家格の不一致」。
傷ついた翌朝、私は泣くのをやめて仕事着を着た。
王立文書院の渉外部職員として、今日も書類と向き合う。それだけでいいと思っていた。
出勤すると、一枚の張り紙があった。
新長官着任。エドワード・ヴァルツ・シュタイン侯爵。
昨夜の晩餐会で、遠くに座っていた「氷の侯爵」がそのまま上司になった。
彼は口数が少なく、笑わず、感情を見せない。
でも仕事の評価だけは正確だった。
「君の報告書は読みやすい」「渉外部はあの職員が要になっている」——誰かに選ばれたくて生きてきたわけではないのに、仕事を通じて初めて、自分の輪郭がはっきりしてくる気がした。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる