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12 ユーグの記憶 魔の森へ
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「……エティ様。こんな女のために、自らの命を削るとは」
どうやらエティ様が自身に掛けた呪いは、呪いを吸い取り、体内に閉じ込める代わりに自分の寿命を削るものだったようだ。
「ユーグ、エティ様を丁寧に寝かせておくれ」
ユーグ師匠は頷き、エティ師匠を抱えて部屋に戻っていった。他の魔女たちはその姿に涙を流す者もいた。
エティ師匠をゆっくりとベッドに寝かせ、しばらくしてエティ師匠は目を覚ました。
「エティ師匠、大丈夫ですか?」
「ああ、私なら問題ないさね。で、あの黒髪の女はどうしたんだい?」
ユーグ師匠はエティ師匠の言葉でようやく黒髪の女のことを思い出したようだ。
慌てて扉を開けると、扉の前で女が静かに立っていた。
ユーグ師匠は珍しく嫌悪感をあらわにした。
えっ?
ちょっと待って。黒髪の女は……。
私は混乱するけれど、師匠の記憶は待ってくれない。
「いつまでも扉の前で突っ立ってないで入れてやんな」
ユーグ師匠は彼女を部屋の中に招き入れ、椅子に座らせる。
「お前、名前はなんて言うんだい?」
「クロエディッタ、です」
女は素直に話した。
「なぜ呪いを掛けられたんだい? お前さんならその豊富な魔力で呪いなんて弾き返せただろう?」
「……妹が、妹が人質に取られた、んです」
「そうか」
エティ師匠はそれ以上クロエディッタの素性を聞くことはなかったが、何かを感じたのかサーデル様に手紙を書いて送った。
「エティ師匠、呪いで自分の寿命を削っていると聞いたんですが、大丈夫なのですか?」
「さあね。あとどれくらい保つかは分からないさ。私はこの魔女の村をでなけりゃならん。クロエディッタ、お前を連れてな」
「なぜ彼女を?」
「クロエディッタはこの魔女の村に災いをもたらした。呪いを吸い取ったとはいえ、ここにいてはまた呪いが復活してしまうかもしれんさね。私たちはこの地を守るため、ここから去るのさ。ユーグ、お前はサーデルの元で修行を続けな」
「エティ師匠、嫌です。私も一緒に行きます」
「馬鹿者。私が死ねば呪いは復活するかもしれんのだ。お前は連れて行かん」
「師匠が死ぬ前に絶対に呪いを解いてみせますからっ。私を連れて行ってください」
「だめだ」
ユーグ師匠とエティ師匠が押し問答をしているうちにサーデル様が部屋へ転移してきた。
「サーデル、ユーグを連れて王都に戻りな」
サーデル様は師匠の姿を見るなり、眉間に皺をよせた。
「エティ師匠、何やったんですかっ。全くもう……」
「この女が使われたのさね」
「黒髪に黒い瞳……」
「こうするしかクロエディッタの魔力を抑えられなかったのさね。まぁ、これも定めさ。受け入れるしかないさね」
「どうせエティ師匠のことです。行く当てはないんでしょう?」
「まぁ、なんとかなるさね」
「師匠らしいといえば師匠らしいですが。私の持っている小屋に住んで下さい。呪いをまき散らされると困る」
「……すまないね」
「ユーグ、この家の物全て持てるか?」
「はい」
「なら準備しておけ」
サーデル様はそう言い残して、どこかへ転移していった。
ユーグ師匠は持ち前の魔力を駆使して全ての物を浮かせて集め始めた。
クロエディッタはと言うと、この部屋に入ってきてからずっと黙ったまま動こうともしていなかった。
「クロエディッタ、お前さんはこれから私の弟子だ。いいね」
「はい」
魔法のことはよく理解していなかったようだけど、自分がこの村に災いを持ち込んだためにエティ師匠が犠牲になったことは理解できていたのか素直に返事をしている。
しばらく様子を見ていると、サーデル様が戻ってきた。
「エティ師匠、準備が出来ました。立てますか?」
「ああ、問題ないよ。クロエディッタ、こっちへ来な」
「はい」
彼女は立ち上がり、エティ師匠を支えるように手を取った。
もともと彼女は優しい人なのかもしれない。
「ユーグ、荷物も抱えたな。では庭に出る」
一同家を出て広い場所まで歩いていく。
サーデル様は周囲を確認した後、魔法の詠唱を始めた。
金属音が削られるような音と共に大きな魔法円が地面に刻まれていく。
「エティ師匠、もう行くのですか」
その音を聞いた魔女たちがまた外へと出てきた。
「ああ、みんな。ありがとうね。サティア、村のことは頼んだよ」
「エルティーヌ……。達者でね」
「ああ、サティアもね」
二人は見つめ合い今生の別れを覚悟している。
その様子が私には苦しくて涙が出てくる。
きっと長い間サティアさんと友人として一緒に過ごしていたのだろう。
「エティ師匠準備が出来ました」
「「「エティ様!!」」」
「ああ。じゃあね」
ユーグ師匠とエティ師匠を支えるクロエディッタ、サーデル様は魔法円に入り、魔女たちの見守る中、転移した。
「サーデル、ここはどこだい?」
「師匠、ここは魔の森です」
「全く……。こんな場所に年寄りを住まわせるなんて一体どういう了見なんだい」
「エティ師匠、ちょうど空いている家がここしかなかったんですよ。大丈夫問題ない。結界はきちんと張れているし、水も食料もありますからね。それに欲しい物があればユーグに持ってこさせますから」
「チッ。仕方がないねぇ」
師匠はクロエディッタの添えている手を放し、やれやれと言いながら家の中へと入っていった。
魔の森の中……。
ここは今、まさに私が住んでいる場所だ。
この時にエティ師匠とクロエディッタがここへ住むことになったのね。
それにクロエディッタという名前。
師匠はクロエと私に名づけた。彼女もまた黒髪に黒目で姿も私と同じ。
ユーグ師匠は一体何を考えていたんだろう。
どうやらエティ様が自身に掛けた呪いは、呪いを吸い取り、体内に閉じ込める代わりに自分の寿命を削るものだったようだ。
「ユーグ、エティ様を丁寧に寝かせておくれ」
ユーグ師匠は頷き、エティ師匠を抱えて部屋に戻っていった。他の魔女たちはその姿に涙を流す者もいた。
エティ師匠をゆっくりとベッドに寝かせ、しばらくしてエティ師匠は目を覚ました。
「エティ師匠、大丈夫ですか?」
「ああ、私なら問題ないさね。で、あの黒髪の女はどうしたんだい?」
ユーグ師匠はエティ師匠の言葉でようやく黒髪の女のことを思い出したようだ。
慌てて扉を開けると、扉の前で女が静かに立っていた。
ユーグ師匠は珍しく嫌悪感をあらわにした。
えっ?
ちょっと待って。黒髪の女は……。
私は混乱するけれど、師匠の記憶は待ってくれない。
「いつまでも扉の前で突っ立ってないで入れてやんな」
ユーグ師匠は彼女を部屋の中に招き入れ、椅子に座らせる。
「お前、名前はなんて言うんだい?」
「クロエディッタ、です」
女は素直に話した。
「なぜ呪いを掛けられたんだい? お前さんならその豊富な魔力で呪いなんて弾き返せただろう?」
「……妹が、妹が人質に取られた、んです」
「そうか」
エティ師匠はそれ以上クロエディッタの素性を聞くことはなかったが、何かを感じたのかサーデル様に手紙を書いて送った。
「エティ師匠、呪いで自分の寿命を削っていると聞いたんですが、大丈夫なのですか?」
「さあね。あとどれくらい保つかは分からないさ。私はこの魔女の村をでなけりゃならん。クロエディッタ、お前を連れてな」
「なぜ彼女を?」
「クロエディッタはこの魔女の村に災いをもたらした。呪いを吸い取ったとはいえ、ここにいてはまた呪いが復活してしまうかもしれんさね。私たちはこの地を守るため、ここから去るのさ。ユーグ、お前はサーデルの元で修行を続けな」
「エティ師匠、嫌です。私も一緒に行きます」
「馬鹿者。私が死ねば呪いは復活するかもしれんのだ。お前は連れて行かん」
「師匠が死ぬ前に絶対に呪いを解いてみせますからっ。私を連れて行ってください」
「だめだ」
ユーグ師匠とエティ師匠が押し問答をしているうちにサーデル様が部屋へ転移してきた。
「サーデル、ユーグを連れて王都に戻りな」
サーデル様は師匠の姿を見るなり、眉間に皺をよせた。
「エティ師匠、何やったんですかっ。全くもう……」
「この女が使われたのさね」
「黒髪に黒い瞳……」
「こうするしかクロエディッタの魔力を抑えられなかったのさね。まぁ、これも定めさ。受け入れるしかないさね」
「どうせエティ師匠のことです。行く当てはないんでしょう?」
「まぁ、なんとかなるさね」
「師匠らしいといえば師匠らしいですが。私の持っている小屋に住んで下さい。呪いをまき散らされると困る」
「……すまないね」
「ユーグ、この家の物全て持てるか?」
「はい」
「なら準備しておけ」
サーデル様はそう言い残して、どこかへ転移していった。
ユーグ師匠は持ち前の魔力を駆使して全ての物を浮かせて集め始めた。
クロエディッタはと言うと、この部屋に入ってきてからずっと黙ったまま動こうともしていなかった。
「クロエディッタ、お前さんはこれから私の弟子だ。いいね」
「はい」
魔法のことはよく理解していなかったようだけど、自分がこの村に災いを持ち込んだためにエティ師匠が犠牲になったことは理解できていたのか素直に返事をしている。
しばらく様子を見ていると、サーデル様が戻ってきた。
「エティ師匠、準備が出来ました。立てますか?」
「ああ、問題ないよ。クロエディッタ、こっちへ来な」
「はい」
彼女は立ち上がり、エティ師匠を支えるように手を取った。
もともと彼女は優しい人なのかもしれない。
「ユーグ、荷物も抱えたな。では庭に出る」
一同家を出て広い場所まで歩いていく。
サーデル様は周囲を確認した後、魔法の詠唱を始めた。
金属音が削られるような音と共に大きな魔法円が地面に刻まれていく。
「エティ師匠、もう行くのですか」
その音を聞いた魔女たちがまた外へと出てきた。
「ああ、みんな。ありがとうね。サティア、村のことは頼んだよ」
「エルティーヌ……。達者でね」
「ああ、サティアもね」
二人は見つめ合い今生の別れを覚悟している。
その様子が私には苦しくて涙が出てくる。
きっと長い間サティアさんと友人として一緒に過ごしていたのだろう。
「エティ師匠準備が出来ました」
「「「エティ様!!」」」
「ああ。じゃあね」
ユーグ師匠とエティ師匠を支えるクロエディッタ、サーデル様は魔法円に入り、魔女たちの見守る中、転移した。
「サーデル、ここはどこだい?」
「師匠、ここは魔の森です」
「全く……。こんな場所に年寄りを住まわせるなんて一体どういう了見なんだい」
「エティ師匠、ちょうど空いている家がここしかなかったんですよ。大丈夫問題ない。結界はきちんと張れているし、水も食料もありますからね。それに欲しい物があればユーグに持ってこさせますから」
「チッ。仕方がないねぇ」
師匠はクロエディッタの添えている手を放し、やれやれと言いながら家の中へと入っていった。
魔の森の中……。
ここは今、まさに私が住んでいる場所だ。
この時にエティ師匠とクロエディッタがここへ住むことになったのね。
それにクロエディッタという名前。
師匠はクロエと私に名づけた。彼女もまた黒髪に黒目で姿も私と同じ。
ユーグ師匠は一体何を考えていたんだろう。
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