25 / 62
25 久々の魔女の村
しおりを挟む
「魔法も使えるんだし、私みたいに魔女になってみたら?」
「魔女、ですか?」
「魔女の村はあるし、記憶の定着が済んでやりたいこともないのならその魔力を生かして魔女になってもいいんじゃないかな」
私はそう口にすると一筋の光を見出したようにアリアさんの表情は明るさを取り戻しつつあった。
その後、昼食を用意し、アリアさんと食べながら平民の生活の仕方を教えた。
彼女はあとがないと切羽詰まっているせいか、一つひとつ真剣に聞いて取り組んでいる。
夕方頃になると、徐々に知識が定着をし始めているようで彼女の身体が薄っすらと光を帯びている。
やはりエティ師匠のやり方を基本とした知識の継承は、私のように眠りに入る必要はないようだ。目の前で見て改めてこの魔法は感慨深いものだと知る。
そうだ、ラルド副官には明日休むことを伝えておかないと。私は思い出したように手紙を書いてラルド副官宛に送った。
「魔女様、なんだか、他人の記憶が増えていくような感じがします」
「記憶?イメージかな?」
「えっと、物を覚える時や勉強している時の感覚に近いような? でも、どれも断片的なんです。けれど、平民や下位貴族の暮らし方が一気に理解できるような……」
彼女は増えていく知識に混乱しているようだ。
「一晩経ったら落ち着くだろうし、今日はごはんを食べて早めに寝ようか」
「はい」
彼女は素直に頷いた。私は台所に立ち、夕食を作り始める。鶏肉を畑で採れた香草と一緒にオーブンで焼いていく。
肉の焼けるいい香りとパチパチと油の爆ぜる音。魔法でさっと温めたパンにバターを塗り、サラダを添えて食べていく。
久しぶりに誰かと食べる食事にどこか心が温かくなる。
アリアさんの口に合うか心配だったけれど、「温かな料理を食べるのは久しぶりです。とっても美味しい」と喜んで食べていた。
そうして私たちは早々に床に就いた。
翌朝、私が起きると、既にテーブルには朝食が用意されていた。
「魔女様、おはようございます」
そこにはアリアさんが立っていた。
「おはよう。これ、アリアさんが準備したの?」
「はいっ。寝て起きたら様々な知識が増えていて、私でもできるかなって思ったんです」
朝食はパンと野菜のスープという簡単なものだったけれど、アリアさんにとっては初めての調理なはずだ。
よく見ると手には切って止血した跡が見て取れる。
「知識は増えても身体がそれを覚えるまでが大変だからね。大丈夫だった?」
「はい! 世界が一変したような感じです。昨日まで見えていたものは本当にちっぽけなものだったのだと理解しました」
「とりあえず食べようか」
「はい!」
私達は朝食を食べ始めた。アリアさんの様子をみているけれど、特段問題は出ていないようだ。
「さて、朝食も食べたことだし、アリアさんのこれからを聞きたいんだけど?」
「魔女様、私、様々な知識を得て考えました。私、魔女様のような魔女になりたいです。そして、一人前の魔女になった暁にはこの知識で得たものを利用して様々なことに取り組んでいきたいです」
「そっか。わかった。ならこのまま魔女の村に向かうかな」
「魔女の村ですか?」
「うん。私のような忌み子も沢山いる村なの。詳しくは村長に聞くといいと思う」
「わかりました」
私達は朝食を終えて準備に取り掛かる。
久々の魔女の村だ。
ユーグ師匠のお使いで度々訪れていたけれど、ユーグ師匠が亡くなってからは忙しくて一度も顔を出していなかった!
準備を怠ると村長は烈火のごとく怒り始めるので気を付けないとね。私は庭の薬草を急いで摘み、魔女の村へと転移した。
「リディンナさんいますか?」
「おや、クロエじゃないかぃ。久しぶりだぇ」
私は村長のリディンナさんの家を訪ねた。リディンナさんは笑顔で私達を迎え入れてくれる。
リディンナさんは私にとっては可愛いおばあちゃんという感じなの。
見た目は五十代くらいなんだけど、年齢は八十歳を超えたところ。リディンナさんは薬の女王と言われるほど薬の調合が上手で、その若さも自身が調合している薬の影響だと言われている。
エティ師匠とはまた違った年の取り方をしている。
「今日はどうしたんだぇ?」
「魔女になりたい女性を連れてきました。アリアさん、こっちへきて」
「はい。アリアです。私は、魔女クロエ様に助けてもらいここに来ました。一生懸命、頑張ります。どうか魔女にさせていただきたいです」
彼女は緊張しながらも丁寧にリディンナさんへ挨拶をする。
すると、さっきまで笑顔だったリディンナさんが不審そうな目でアリアさんを見ている。
「……ふぅん。貴族の子かぃ。色々と訳ありな娘っこねぇ。でも、最近の貴族の子は心が折れやすくてかなわないのよねぇ」
「使えなかったら手放して構わないよ」
「そうかぃ。まぁ、クロエが連れてくるくらいだからねぇ」
リディンナさんはアリアさんを手招きする。
「ふぅむ。魔力は結構あるねぇ。とりあえずこっちで預かろうかねぇ」
「リディンナさんありがとう。これ、最近渡してなかった薬草もついでに持ってきたの」
「助かるわぁ」
私はそう言って薬草と金貨の入った小袋をテーブルの上に置くと、リディンナさんはまた笑顔に戻っていた。
「じゃあ、アリアさん私はこれで。あとは自分で頑張ってね」
「魔女様、ありがとうございます」
私は転移してまた家に戻った。
一日だったけど、人がいるってやっぱり違うんだな。
師匠、早く戻ってこないかな。
私はそう思いながら部屋を片づけていた。
「魔女、ですか?」
「魔女の村はあるし、記憶の定着が済んでやりたいこともないのならその魔力を生かして魔女になってもいいんじゃないかな」
私はそう口にすると一筋の光を見出したようにアリアさんの表情は明るさを取り戻しつつあった。
その後、昼食を用意し、アリアさんと食べながら平民の生活の仕方を教えた。
彼女はあとがないと切羽詰まっているせいか、一つひとつ真剣に聞いて取り組んでいる。
夕方頃になると、徐々に知識が定着をし始めているようで彼女の身体が薄っすらと光を帯びている。
やはりエティ師匠のやり方を基本とした知識の継承は、私のように眠りに入る必要はないようだ。目の前で見て改めてこの魔法は感慨深いものだと知る。
そうだ、ラルド副官には明日休むことを伝えておかないと。私は思い出したように手紙を書いてラルド副官宛に送った。
「魔女様、なんだか、他人の記憶が増えていくような感じがします」
「記憶?イメージかな?」
「えっと、物を覚える時や勉強している時の感覚に近いような? でも、どれも断片的なんです。けれど、平民や下位貴族の暮らし方が一気に理解できるような……」
彼女は増えていく知識に混乱しているようだ。
「一晩経ったら落ち着くだろうし、今日はごはんを食べて早めに寝ようか」
「はい」
彼女は素直に頷いた。私は台所に立ち、夕食を作り始める。鶏肉を畑で採れた香草と一緒にオーブンで焼いていく。
肉の焼けるいい香りとパチパチと油の爆ぜる音。魔法でさっと温めたパンにバターを塗り、サラダを添えて食べていく。
久しぶりに誰かと食べる食事にどこか心が温かくなる。
アリアさんの口に合うか心配だったけれど、「温かな料理を食べるのは久しぶりです。とっても美味しい」と喜んで食べていた。
そうして私たちは早々に床に就いた。
翌朝、私が起きると、既にテーブルには朝食が用意されていた。
「魔女様、おはようございます」
そこにはアリアさんが立っていた。
「おはよう。これ、アリアさんが準備したの?」
「はいっ。寝て起きたら様々な知識が増えていて、私でもできるかなって思ったんです」
朝食はパンと野菜のスープという簡単なものだったけれど、アリアさんにとっては初めての調理なはずだ。
よく見ると手には切って止血した跡が見て取れる。
「知識は増えても身体がそれを覚えるまでが大変だからね。大丈夫だった?」
「はい! 世界が一変したような感じです。昨日まで見えていたものは本当にちっぽけなものだったのだと理解しました」
「とりあえず食べようか」
「はい!」
私達は朝食を食べ始めた。アリアさんの様子をみているけれど、特段問題は出ていないようだ。
「さて、朝食も食べたことだし、アリアさんのこれからを聞きたいんだけど?」
「魔女様、私、様々な知識を得て考えました。私、魔女様のような魔女になりたいです。そして、一人前の魔女になった暁にはこの知識で得たものを利用して様々なことに取り組んでいきたいです」
「そっか。わかった。ならこのまま魔女の村に向かうかな」
「魔女の村ですか?」
「うん。私のような忌み子も沢山いる村なの。詳しくは村長に聞くといいと思う」
「わかりました」
私達は朝食を終えて準備に取り掛かる。
久々の魔女の村だ。
ユーグ師匠のお使いで度々訪れていたけれど、ユーグ師匠が亡くなってからは忙しくて一度も顔を出していなかった!
準備を怠ると村長は烈火のごとく怒り始めるので気を付けないとね。私は庭の薬草を急いで摘み、魔女の村へと転移した。
「リディンナさんいますか?」
「おや、クロエじゃないかぃ。久しぶりだぇ」
私は村長のリディンナさんの家を訪ねた。リディンナさんは笑顔で私達を迎え入れてくれる。
リディンナさんは私にとっては可愛いおばあちゃんという感じなの。
見た目は五十代くらいなんだけど、年齢は八十歳を超えたところ。リディンナさんは薬の女王と言われるほど薬の調合が上手で、その若さも自身が調合している薬の影響だと言われている。
エティ師匠とはまた違った年の取り方をしている。
「今日はどうしたんだぇ?」
「魔女になりたい女性を連れてきました。アリアさん、こっちへきて」
「はい。アリアです。私は、魔女クロエ様に助けてもらいここに来ました。一生懸命、頑張ります。どうか魔女にさせていただきたいです」
彼女は緊張しながらも丁寧にリディンナさんへ挨拶をする。
すると、さっきまで笑顔だったリディンナさんが不審そうな目でアリアさんを見ている。
「……ふぅん。貴族の子かぃ。色々と訳ありな娘っこねぇ。でも、最近の貴族の子は心が折れやすくてかなわないのよねぇ」
「使えなかったら手放して構わないよ」
「そうかぃ。まぁ、クロエが連れてくるくらいだからねぇ」
リディンナさんはアリアさんを手招きする。
「ふぅむ。魔力は結構あるねぇ。とりあえずこっちで預かろうかねぇ」
「リディンナさんありがとう。これ、最近渡してなかった薬草もついでに持ってきたの」
「助かるわぁ」
私はそう言って薬草と金貨の入った小袋をテーブルの上に置くと、リディンナさんはまた笑顔に戻っていた。
「じゃあ、アリアさん私はこれで。あとは自分で頑張ってね」
「魔女様、ありがとうございます」
私は転移してまた家に戻った。
一日だったけど、人がいるってやっぱり違うんだな。
師匠、早く戻ってこないかな。
私はそう思いながら部屋を片づけていた。
61
あなたにおすすめの小説
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
選ばれなくてよかったと、今は思います
たくわん
恋愛
五年間の婚約を、一夜で破棄された。
理由は「家格の不一致」。
傷ついた翌朝、私は泣くのをやめて仕事着を着た。
王立文書院の渉外部職員として、今日も書類と向き合う。それだけでいいと思っていた。
出勤すると、一枚の張り紙があった。
新長官着任。エドワード・ヴァルツ・シュタイン侯爵。
昨夜の晩餐会で、遠くに座っていた「氷の侯爵」がそのまま上司になった。
彼は口数が少なく、笑わず、感情を見せない。
でも仕事の評価だけは正確だった。
「君の報告書は読みやすい」「渉外部はあの職員が要になっている」——誰かに選ばれたくて生きてきたわけではないのに、仕事を通じて初めて、自分の輪郭がはっきりしてくる気がした。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる