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新章 切掛
38 声を掛けてきた男
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あれから私は五百年もの間一人でこの森にずっと住み続けている。
ユーグ師匠は五十年後に生まれ変わると言っていたじゃないか。私はずっと探して彼が生まれ変わるのを待っていた。でも、彼はまだ現れていない。
もしかしたら魔法は失敗したんじゃないかと思う。
でも、それを認めてしまうのはとても怖かった。孤独が私を壊してしまいそうだったから。
五百年は本当に長かった。
たまに依頼に来る人もいたが、私を脅威と捉えて殺しに軍隊を差し向けた貴族もいた。
私はその度に追い払い、ここを守り続けている。なぜ軍隊がここに来たのかと言えば、数百年の間に隣国との戦争が起こっていたようだ。
何度か内乱もあったみたいでいくつもの政権が変わった。
それでも魔力のある王族はどこかで生き延びてまた王族に返り咲いているようだ。私はただ傍観者として見守っているだけ。
今の私は忘れ去られた存在と言っていいのかもしれない。
私自身はたまに街に出かけては薬を売ったり、食料を買ったりしていて国が変わっていく様子を見ていた。
ようやくこの国は戦争が終わり、国はまた安定した時代に入ろうとしていた。
だが、残念なことに長く続いた戦争は様々な技術を消滅させた。
その中でも特に顕著に表れたのは魔法だ。
戦争で貴族が減り、魔法が使えない者が増えた。次第に使える魔力も減っているように思える。
魔獣も素材の為に狩りつくされ、昔ほど強い生き物はない。これもきっと時代の流れなんだろう。
私はいつものように回復薬を売りに王都の街へと出かけた時のことだった。
「ちょっと君、お名前を聞いてもいいかな?」
「貴方は誰?」
商業ギルドで回復薬を納品した帰りに平民の服を着た金髪の男の人に声を掛けられた。商業ギルドでは名前を名乗ってはいるけれど、あえて私の名を聞いてきた。
彼の目的は一体なんだろう。
私は不審に思い、後ろへ後ずさると相手は驚いたのか焦りはじめ言い訳を始めた。
「あ、いえ、あのっ。話が聞きたくて」
「話ってなんですか?」
私がそう聞くと、彼はホッと胸を撫でおろしている。その様子を見て少し面白くなった。
「魔法薬のことについて聞きたいんだ」
「いいよ」
「本当か!?」
私の言葉に男の人は驚いた後、満面の笑みを浮かべた。
「ここで立ち話をするのも何だから、すぐに私の家へ行こう」
「わかった」
私は周りを確認しながら歩いていたけれど、彼の少し離れたところに従者らしき人が付いてきているだけで他にはいなかった。
「で、貴方はだれ?」
黙々と歩くのも嫌なので私は男の人に歩きながら聞いてみた。
「私の名はジルディットと言うんだ。商業ギルドで素晴らしい効果を発揮する回復薬があると聞いていたんだが、納品するのはいつも子供で誰も作成者の住んでいる場所や何をしている人なのかも分からないということで調べていた」
「で? 私が納品に来たところに声を掛けたの?」
「そうだ。この素晴らしい魔法薬をどうやって作っているのか知りたくて」
ジルディットさんは持っていた回復薬を取り出し、うっとりしている。
「無理じゃない?」
「えっ?」
私がそう言うとジルディットさんは驚いて固まった。いちいち反応が大きくて面白い。
「ジルディットさんは王族だから作れるかもしれないけど、ほとんどの人はここまでの効果は出せないんじゃないかな? 大体魔法円の技術なんて今は残っていないよね?」
ジルディットさんは怖いくらい真剣な表情をしている。
「なぜ、私が王族だとわかったんだい?」
「ん? 魔力だよ。私は魔力が豊富だからジルディットさんの魔力を見ることができる。ただそれだけ」
私がそう言うと、突然立ち止まり、両手をガシリと掴まれた。
「な、なにっ!?」
「ぜひ、ぜひ私に魔法を教えてもらいたい」
ぐいぐいと近づいてくる顔に私は恐怖を感じて後ろへ下がろうとするが、手を握られているので動くことができない。
「ひえっっっ。近い、近いっ。顔が近いよっ」
ジルディットさんはとても真剣だということはなんとなくわかった。
「わかった、わかったよ。わかったから、離してちょうだい?」
「す、すまない。つい興奮してしまい……」
「きっと商業ギルドから聞いていると思うけど、私の名前はクロエ。魔の森に住んでいる魔女。よろしくね。回復薬を作っているのは私だよ」
「魔の森に住んでいる、魔、女……?」
ジルディットさんはごくりと唾を飲み込んでいる。いちいち反応が大げさだね。ちょっと面白い。
暇だし、時間を潰すにはちょうどいいかなって思ったの。
危ないんじゃないかなとか考えてみたんだけど、魔力が低下している時代に捕まっても問題なく逃げられると踏んだのもある。それに魔力が低下している理由も知りたいと思ったの。
ジルディットさんは子供姿の私が嘘をついているんじゃないかと半信半疑のようだ。
そして落ち着いたジルディットさんとまた王宮へ歩きながらずっと気になっていたことを聞いてみた。
「ねえ、ジルディットさん。なんで魔力はあるのに使える魔法が少ないのかな?」
「……それは長く続いた先の戦争で魔法の大部分が消失したことかな?」
「それもあるけど、全体的に魔力を使った魔法が少ない? 使える魔力量っていうのかな、減っている感じがするんだよね」
私がそう言うと、彼はまたピタリと足を止めた。
「まぁ、あとで聞くから。さっさと王宮に向かおうよ」
「……そう、だな」
私は何度も真剣な表情で立ち止まる彼をなだめ、なんとか王宮の彼の執務室へと入った。
もうすでに面倒くさくなってきた。
彼にとっては私の話は一つ一つ重要なことなのだろうと思うけれど、私にとっては暇つぶし程度だったのでちょっと面倒だなって思い始めている。
ユーグ師匠は五十年後に生まれ変わると言っていたじゃないか。私はずっと探して彼が生まれ変わるのを待っていた。でも、彼はまだ現れていない。
もしかしたら魔法は失敗したんじゃないかと思う。
でも、それを認めてしまうのはとても怖かった。孤独が私を壊してしまいそうだったから。
五百年は本当に長かった。
たまに依頼に来る人もいたが、私を脅威と捉えて殺しに軍隊を差し向けた貴族もいた。
私はその度に追い払い、ここを守り続けている。なぜ軍隊がここに来たのかと言えば、数百年の間に隣国との戦争が起こっていたようだ。
何度か内乱もあったみたいでいくつもの政権が変わった。
それでも魔力のある王族はどこかで生き延びてまた王族に返り咲いているようだ。私はただ傍観者として見守っているだけ。
今の私は忘れ去られた存在と言っていいのかもしれない。
私自身はたまに街に出かけては薬を売ったり、食料を買ったりしていて国が変わっていく様子を見ていた。
ようやくこの国は戦争が終わり、国はまた安定した時代に入ろうとしていた。
だが、残念なことに長く続いた戦争は様々な技術を消滅させた。
その中でも特に顕著に表れたのは魔法だ。
戦争で貴族が減り、魔法が使えない者が増えた。次第に使える魔力も減っているように思える。
魔獣も素材の為に狩りつくされ、昔ほど強い生き物はない。これもきっと時代の流れなんだろう。
私はいつものように回復薬を売りに王都の街へと出かけた時のことだった。
「ちょっと君、お名前を聞いてもいいかな?」
「貴方は誰?」
商業ギルドで回復薬を納品した帰りに平民の服を着た金髪の男の人に声を掛けられた。商業ギルドでは名前を名乗ってはいるけれど、あえて私の名を聞いてきた。
彼の目的は一体なんだろう。
私は不審に思い、後ろへ後ずさると相手は驚いたのか焦りはじめ言い訳を始めた。
「あ、いえ、あのっ。話が聞きたくて」
「話ってなんですか?」
私がそう聞くと、彼はホッと胸を撫でおろしている。その様子を見て少し面白くなった。
「魔法薬のことについて聞きたいんだ」
「いいよ」
「本当か!?」
私の言葉に男の人は驚いた後、満面の笑みを浮かべた。
「ここで立ち話をするのも何だから、すぐに私の家へ行こう」
「わかった」
私は周りを確認しながら歩いていたけれど、彼の少し離れたところに従者らしき人が付いてきているだけで他にはいなかった。
「で、貴方はだれ?」
黙々と歩くのも嫌なので私は男の人に歩きながら聞いてみた。
「私の名はジルディットと言うんだ。商業ギルドで素晴らしい効果を発揮する回復薬があると聞いていたんだが、納品するのはいつも子供で誰も作成者の住んでいる場所や何をしている人なのかも分からないということで調べていた」
「で? 私が納品に来たところに声を掛けたの?」
「そうだ。この素晴らしい魔法薬をどうやって作っているのか知りたくて」
ジルディットさんは持っていた回復薬を取り出し、うっとりしている。
「無理じゃない?」
「えっ?」
私がそう言うとジルディットさんは驚いて固まった。いちいち反応が大きくて面白い。
「ジルディットさんは王族だから作れるかもしれないけど、ほとんどの人はここまでの効果は出せないんじゃないかな? 大体魔法円の技術なんて今は残っていないよね?」
ジルディットさんは怖いくらい真剣な表情をしている。
「なぜ、私が王族だとわかったんだい?」
「ん? 魔力だよ。私は魔力が豊富だからジルディットさんの魔力を見ることができる。ただそれだけ」
私がそう言うと、突然立ち止まり、両手をガシリと掴まれた。
「な、なにっ!?」
「ぜひ、ぜひ私に魔法を教えてもらいたい」
ぐいぐいと近づいてくる顔に私は恐怖を感じて後ろへ下がろうとするが、手を握られているので動くことができない。
「ひえっっっ。近い、近いっ。顔が近いよっ」
ジルディットさんはとても真剣だということはなんとなくわかった。
「わかった、わかったよ。わかったから、離してちょうだい?」
「す、すまない。つい興奮してしまい……」
「きっと商業ギルドから聞いていると思うけど、私の名前はクロエ。魔の森に住んでいる魔女。よろしくね。回復薬を作っているのは私だよ」
「魔の森に住んでいる、魔、女……?」
ジルディットさんはごくりと唾を飲み込んでいる。いちいち反応が大げさだね。ちょっと面白い。
暇だし、時間を潰すにはちょうどいいかなって思ったの。
危ないんじゃないかなとか考えてみたんだけど、魔力が低下している時代に捕まっても問題なく逃げられると踏んだのもある。それに魔力が低下している理由も知りたいと思ったの。
ジルディットさんは子供姿の私が嘘をついているんじゃないかと半信半疑のようだ。
そして落ち着いたジルディットさんとまた王宮へ歩きながらずっと気になっていたことを聞いてみた。
「ねえ、ジルディットさん。なんで魔力はあるのに使える魔法が少ないのかな?」
「……それは長く続いた先の戦争で魔法の大部分が消失したことかな?」
「それもあるけど、全体的に魔力を使った魔法が少ない? 使える魔力量っていうのかな、減っている感じがするんだよね」
私がそう言うと、彼はまたピタリと足を止めた。
「まぁ、あとで聞くから。さっさと王宮に向かおうよ」
「……そう、だな」
私は何度も真剣な表情で立ち止まる彼をなだめ、なんとか王宮の彼の執務室へと入った。
もうすでに面倒くさくなってきた。
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