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新章 切掛
46 中和剤の投入
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ん……。
まだ眠い。でも、そろそろ起きようかな。夢現のまま考えことをする。えっと、何をしなきゃいけないんだっけ。
ああ、確か何か薬を作らないといけないんだっけ……。
そこで目的を思い出してパッと目が覚めた。
中和薬はどうなっただろうか?
確認するためにベッドから飛び起き、中和薬を確認する。
……うん。さすが私。品質も安定している。
あとは一週間ほど寝かせるだけだ。もっと期間を置きたいけれどこればかりは仕方がない。
あと、殿下たちに飲ませる薬を作らないと。
また窯の前に立つ。
二つの魔法円を操りながら治療薬を作っていく。中和薬より多少難易度が下がるが、それでも作るのには手間がかかる薬だ。
ああ、これをフィルさんに見せながら作っていけばよかったかな。そんなことを考えながら多めの薬を作る。
やっぱり二週間だとギリギリだった。
長い間放置された大罪の水を完全に中和するには中和薬を何度か作らないといけないからもう少し時間をおいてまた作ることにしよう。
私は先ぶれを出した後、ジルディット殿下の元へ転移した。
「ジルディット殿下、久しぶり。待たせたね。一応薬は出来たよ」
先ぶれを出していたのでジルディット殿下とフィルさんもその場に立っていた。
「フィルが言っていた治療薬ですか?」
「これは井戸の中を中和する中和薬。三百年も影響を及ぼしているということはその周辺にも毒が溜まっているようなものだから中和薬を作ったの。
長期間使用するから何度か中和剤を入れないといけないんだけどね。とりあえずこの薬一個で三か月は保つと思う」
「……これが中和薬?」
ジルディット殿下は指で摘まみ、匂いを嗅いだり、感触を確かめたりしている。
「これはどうやって作るのですか?」
「これはジッグという動物の血を薬草と混ぜて魔力で固めたものなの。ちゃんとしたものなら一個作るのに三か月は必要なんだけど、当分はこれで十分だと思う」
私は話をしながら鞄から大量の小瓶を出し、机の上にのせると彼は目を丸くし、一つ手に取って眺め始めた。
「これは?」
「これが治療薬。一日一本飲むの。それを三か月間くらいかな。そうすれば魔力は本来の使用する量までは戻ると思う。多分」
「え? 多分、ですか?」
「うん。だってずっと昔に作っただけだし」
「ええ!? 飲んでも大丈夫なのですか?」
「だからこうして大量に作ったの。また誰かが実験台になってもらおうと思って」
「……なるほど」
「今王宮に罪人は結構いる?」
「いますが……。彼らを実験台に、か。ちょうど一人、適任者がいます」
「適任者?」
「ええ、ロシュフォードという男なんですが、とある女性のせいで、罪人として裁かれようとしているんです」
「犯人じゃないのになんで罪人として裁かれるの?」
「その女性がロシュフォードの剣を使い、人を殺したのです」
「ふうん。で、その人が実験台にいいのね?」
「ええ、彼は私の元側近で魔法が使えましたから」
「わかった。じゃあ、ロシュフォードって人に飲ませよう」
ジルディット殿下は複雑そうな表情をしている。
信頼している部下が罪人となったのは手痛いことなのだと思う。
きっとあれだね、側近を蹴落として失脚させるのが目的とか派閥争に巻き込まれたとかそういう類のものじゃないかな。実直な部下が狙われた。
私がこれに口を出すことじゃない。
「さて、フィルさんに井戸の場所を調べてもらうように言っておいたんだけど、できた?」
「クロエ様、もちろん調べておきました。私が今から案内します」
「では行こうか」
私はフィルさんの案内で執務室を出ようとすると、ジルディット殿下も併せて立ち上がった。
「ん? ジルディット殿下も行くの?」
「もちろん!! こんな大きなことは滅多にありませんから」
ジルディット殿下は子供のようにワクワクと興奮しているように見える。
私たちは王宮で使われている井戸まで歩いていると、ジルディット殿下が不安そうに聞いてきた。
「クロエ様、本当に大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫。私が完成させた薬だからね」
「……それにしても大罪の水というのは恐ろしいものですね」
「そうだね。こうして三百年もの間、人々を苦しめ続けている。随分長い間魔法が使えなかったんだろうね」
そうして王宮を出て一番近い王都の街の共同井戸の前にやってきた。
街の人たちが大勢井戸の前で水を汲んだり、井戸端会議をしたりして賑わっている。そこを騎士たちが少し後ろへ下がって待つように話をしている。
「まずはここ。ここと繋がっている井戸があるんだよね?」
「ええ。ここの井戸以外にも近くに四か所の井戸があるのですが、水源が繋がっているという話です」
フィルさんが詳しく説明してくれる。
「そっか。そっちも同時に中和剤を入れないとだめかもしれないね。よし、じゃあ始めるね。井戸の中を覗いててもいいけど、気を付けてね」
「「わかりました」」
私はそう言うと、持っていた一つの中和剤を井戸にぽとんと投げ込んだ。
殿下もフィルさんも興味津々に井戸の中を覗いている。暗くて井戸の中の様子は見えないはずだが、目を離すことはなく見ている。
― 魔力の波動を操り、神の力を汚すものよ。我が意志を持って、その悪を打ち砕かん! 毒よ消え去れ。
言葉と共に井戸の中に落ちた中和剤から魔法円が浮かび上がり、水の中で赤い炎が揺らめいている。
まだ眠い。でも、そろそろ起きようかな。夢現のまま考えことをする。えっと、何をしなきゃいけないんだっけ。
ああ、確か何か薬を作らないといけないんだっけ……。
そこで目的を思い出してパッと目が覚めた。
中和薬はどうなっただろうか?
確認するためにベッドから飛び起き、中和薬を確認する。
……うん。さすが私。品質も安定している。
あとは一週間ほど寝かせるだけだ。もっと期間を置きたいけれどこればかりは仕方がない。
あと、殿下たちに飲ませる薬を作らないと。
また窯の前に立つ。
二つの魔法円を操りながら治療薬を作っていく。中和薬より多少難易度が下がるが、それでも作るのには手間がかかる薬だ。
ああ、これをフィルさんに見せながら作っていけばよかったかな。そんなことを考えながら多めの薬を作る。
やっぱり二週間だとギリギリだった。
長い間放置された大罪の水を完全に中和するには中和薬を何度か作らないといけないからもう少し時間をおいてまた作ることにしよう。
私は先ぶれを出した後、ジルディット殿下の元へ転移した。
「ジルディット殿下、久しぶり。待たせたね。一応薬は出来たよ」
先ぶれを出していたのでジルディット殿下とフィルさんもその場に立っていた。
「フィルが言っていた治療薬ですか?」
「これは井戸の中を中和する中和薬。三百年も影響を及ぼしているということはその周辺にも毒が溜まっているようなものだから中和薬を作ったの。
長期間使用するから何度か中和剤を入れないといけないんだけどね。とりあえずこの薬一個で三か月は保つと思う」
「……これが中和薬?」
ジルディット殿下は指で摘まみ、匂いを嗅いだり、感触を確かめたりしている。
「これはどうやって作るのですか?」
「これはジッグという動物の血を薬草と混ぜて魔力で固めたものなの。ちゃんとしたものなら一個作るのに三か月は必要なんだけど、当分はこれで十分だと思う」
私は話をしながら鞄から大量の小瓶を出し、机の上にのせると彼は目を丸くし、一つ手に取って眺め始めた。
「これは?」
「これが治療薬。一日一本飲むの。それを三か月間くらいかな。そうすれば魔力は本来の使用する量までは戻ると思う。多分」
「え? 多分、ですか?」
「うん。だってずっと昔に作っただけだし」
「ええ!? 飲んでも大丈夫なのですか?」
「だからこうして大量に作ったの。また誰かが実験台になってもらおうと思って」
「……なるほど」
「今王宮に罪人は結構いる?」
「いますが……。彼らを実験台に、か。ちょうど一人、適任者がいます」
「適任者?」
「ええ、ロシュフォードという男なんですが、とある女性のせいで、罪人として裁かれようとしているんです」
「犯人じゃないのになんで罪人として裁かれるの?」
「その女性がロシュフォードの剣を使い、人を殺したのです」
「ふうん。で、その人が実験台にいいのね?」
「ええ、彼は私の元側近で魔法が使えましたから」
「わかった。じゃあ、ロシュフォードって人に飲ませよう」
ジルディット殿下は複雑そうな表情をしている。
信頼している部下が罪人となったのは手痛いことなのだと思う。
きっとあれだね、側近を蹴落として失脚させるのが目的とか派閥争に巻き込まれたとかそういう類のものじゃないかな。実直な部下が狙われた。
私がこれに口を出すことじゃない。
「さて、フィルさんに井戸の場所を調べてもらうように言っておいたんだけど、できた?」
「クロエ様、もちろん調べておきました。私が今から案内します」
「では行こうか」
私はフィルさんの案内で執務室を出ようとすると、ジルディット殿下も併せて立ち上がった。
「ん? ジルディット殿下も行くの?」
「もちろん!! こんな大きなことは滅多にありませんから」
ジルディット殿下は子供のようにワクワクと興奮しているように見える。
私たちは王宮で使われている井戸まで歩いていると、ジルディット殿下が不安そうに聞いてきた。
「クロエ様、本当に大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫。私が完成させた薬だからね」
「……それにしても大罪の水というのは恐ろしいものですね」
「そうだね。こうして三百年もの間、人々を苦しめ続けている。随分長い間魔法が使えなかったんだろうね」
そうして王宮を出て一番近い王都の街の共同井戸の前にやってきた。
街の人たちが大勢井戸の前で水を汲んだり、井戸端会議をしたりして賑わっている。そこを騎士たちが少し後ろへ下がって待つように話をしている。
「まずはここ。ここと繋がっている井戸があるんだよね?」
「ええ。ここの井戸以外にも近くに四か所の井戸があるのですが、水源が繋がっているという話です」
フィルさんが詳しく説明してくれる。
「そっか。そっちも同時に中和剤を入れないとだめかもしれないね。よし、じゃあ始めるね。井戸の中を覗いててもいいけど、気を付けてね」
「「わかりました」」
私はそう言うと、持っていた一つの中和剤を井戸にぽとんと投げ込んだ。
殿下もフィルさんも興味津々に井戸の中を覗いている。暗くて井戸の中の様子は見えないはずだが、目を離すことはなく見ている。
― 魔力の波動を操り、神の力を汚すものよ。我が意志を持って、その悪を打ち砕かん! 毒よ消え去れ。
言葉と共に井戸の中に落ちた中和剤から魔法円が浮かび上がり、水の中で赤い炎が揺らめいている。
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