最後の魔法は、ひとを待つための魔法だった

まるねこ

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新章 切掛

49 ロシュフォードの眠りと魔力暴走

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 毎日王宮に出勤した後、ロシュフォードさんに薬を服用させて経過を観察し、魔術師たちへ魔法の講義を行う。

 そんな日が三か月ほど続いた。

 ロシュフォードさんは徐々に本来の魔力が使えるようになったようだ。

「ロシュフォードさん、魔力が戻ってよかったね」
「……ですが、戻ったところで私は罪人ですし、来週の判決で罪が決定し、服毒死が待っています」
「なら、裁判の時にこの魔法を使うといいよ。しっかり覚えておいてね」
「……承知いたしました。クロエ様、ありがとうございます」

 私はロシュフォードさんにある魔法を教えた。禁忌とされる魔法なのであまり教えたくはないけれど、彼なら大丈夫だろう。

 もちろん禁忌の魔法なのでそれなりに身体へのダメージはある。

 こうして貴族牢から出て王族が使う井戸へと一人やってきた。

 今なら間に合う。
 師匠、ちゃんとするからね。

 私は王族が使う井戸に中和剤を投げ込み、詠唱する。

 うっすらと魔法円が燃えているのを確認し、井戸を後にした。



「ジルディット殿下、準備ができたよ」
「クロエ様、ロシュフォードの魔法を確認したが、あれが本来の彼の魔力なのか」
「うん、そうだよー。ジルディット殿下はもっと強い魔力を持っているから扱いには気を付けてね」
「分かった」

「じゃあ、この薬を飲んでちょうだい。中身はロシュフォードさんと同じもの。毒見係の人、これを一口飲んでみて」

 私は予め多めに用意しておいた薬をカップに少し注ぎ、毒見係に渡す。
 問題なしとされた後、殿下は瓶に入った治療薬を一口で飲んだ。

「マズ、くはないな」
「もちろん。私が作ったんだから不味いわけないよ。じゃ、これを頑張って毎日飲むからね。可能ならメルローズ妃殿下にも同じものを飲ませてちょうだい」
「分かった」

 私はとりあえず一週間分の薬を執事に渡して様子を見ることになった。


 ジルディット殿下は言いつけ通り、毎日薬を飲み続け、メルローズ妃殿下も一緒に飲んでいたようだ。二、三日もすると薬が効いてきたようで使える魔力が増加したことを実感しているらしい。

 そうして効果を実感した一週間後、ついにロシュフォードさんに判決を言い渡す日が訪れたようだ。

 私は当事者や関係者でないため、その場に居ることは出来なかったが、場内が慌ただしくなっていることを知り、彼の魔法が成功したのだと感じた。

 彼が使用した魔法は記憶を映像化する魔法。

 魔法を使用した人の記憶が魔法円から立体的に浮かび上がり、その場にいる人たちが記憶を見れる。ただ、記憶を魔法で無理やり引き出しているので負担が重く、数日から三ヶ月は眠りについてしまう。

「クロエ様!!」

 ジルディット殿下は私の執務室に走り込んできた。よほど急いでいたのだろう。息を切らし、汗をぬぐいながら部屋へノックせずに入ってきた。

「ジルディット殿下、どうしたの?」
「ロシュフォードが魔法を使い、自らの記憶を周囲に見せ、無実を証明したんだ」
「うん。で、彼は無罪になったの?」

「ああ、父上も出席していた貴族たちもみんな黙らせてきた。すぐにロシュフォードの短剣を使っていた女も判明し、今、騎士団が捕縛に向かっている。女が捕まり次第ロシュフォードは無罪になるだろう」
「そっか。よかったね」

「これもクロエ様のおかげだ。だが、肝心のロシュフォードが目覚めないんだ」
「今、彼はどこに?」
「医務室に寝かされている」
「そっか。彼が目覚めるのはまだ少し先だろうね」
「なぜ?」

「彼は禁忌の魔法を使ったから。どの程度使ったのか分からないからいつ目覚めるとかも私にはわからないかな」
「彼にその魔法を教えたのはクロエ様だったんですね」
「うん。服毒で死ぬ予定だったんでしょ? なら自分が思うようにやってみればいいんじゃないかなって思って」

 もちろん魔女の私が何もしないで魔法を教えるわけがない。きっちりと彼とは契約を交わしている。

 これも仕事だからね!


 私は嬉々として彼が目覚めるのを待った。

 彼が目覚めるまでの間にジルディット殿下は色々と動いていたようだ。ロシュフォード様は無罪が決定し、今は自分の邸に戻っている。

 そろそろ彼は目覚めるね。

 実はその間にメルローズ妃が妊娠していることが判明した。なぜ判明したのかというと、彼女は突然魔力暴走のような症状が起きたからだ。

 突然身体中痛み出し、ベッドから起き上がることができなくなってしまった。

 医者を呼んでも原因不明だと言われ、ジルディット殿下は悩み、私に相談してきた。

 私は魔力が関わっているのなら彼女を直接見ないと分からないと伝えると、すぐに見てほしいと言われたのでそのままジルディット殿下と共に彼女の自室に向かった。

「クロエ様、メルローズは大丈夫なのでしょうか?」
「んーちゃんと見てみないと分からないよ。まあ、なんとかなるんじゃないかな?」
「そんな適当な……」

 私たちは話をしながらメルローズ妃の部屋の前に立ち、扉をノックする。

「メルローズ、入るぞ」
「……はい」

 ……すごい。すごいとしか言いようがない。

 部屋の外まで漏れ出る魔力に私は驚いた。
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