まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

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2教会での暮らし

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 教会に来て一年が過ぎた頃、私達も随分村に馴染んできたと思う。

 最初はシスターから離れられない状態だったローニャも今では畑の手伝いをする事が出来るようになっている。私ももちろん畑の手伝い。

 村には私と年の近い子供が三人いて女の子はサーシャとモヒ。男の子はシュー。みんな優しくてすぐに仲良くなった。

「ナーニョ、今日は山に山菜取りに行くんだって」
「楽しみ! 私、行ったことないの」
「小さい子は連れていけないけど、私達くらい大きくなればいいみたい」
「おい、迷子になるんじゃねぇぞっ」

 私達は笑い合いながらお爺さん達に付いていく。

 今日は山に行くということで腰にナイフを下げて籠を背負ってみんなで山に入る。

「サーシャ、モヒ、シュー、ナーニョ、お前達はずっと喋っておくんだぞ? そして声の届く範囲から広がってはいけないからな」
「なんでー?」

「森には獣がでるからだ。喋っていれば向こうが気づいて逃げてくれる。自分たちの安全のために喋り続けることが大事だ。喋っていればお互いどういう状況かも分かるだろう?」
「そっか。わかったー」

 そうして村の人達と一緒に山に入った。魔物が出ない時でも獣は出る。獣人とは違い、四足歩行で知能は低い。

 獣人と獣は昔同じ種類だったが、進化の過程で人間寄りになったものと獣の形態を取り続ける事で今のようになったのだろうと言われている。

 獣は獣人に対して襲ってくることはないが、縄張り意識の強い獣は襲い掛かってくる危険がある。あと、発情期の場合も危ない。
 私達の姿形は人間に近いため発情期はない。

 私達は探検のように適当な木の棒で広いガサガサと枯葉を叩いたり、振り回しながら散策していく。

「ナーニョ、これがシュロの葉だ。傷薬になる。覚えておくんだ」
「ケムおじぃ、分かった!」
「これは腹痛の時に煎じる、これは頭痛の時に頭に乗せる葉……」

 年寄りは子供たちに知識を教えていく。皆が魔法を使いこなせる訳ではない。だからこそこうして生き抜くための知識を年寄りから受け継いでいくのだ。

 きのこはどこに生えやすいのか、何故全部採ってはいけないのか、ナーニョ達は一つ一つ教えてもらいながら籠にきのこや山菜を入れていく。

「ナーニョ、これはお前の頑張った分だ。神父様と食べろ」
「ケムおじぃ、ありがとう」

 無事に山から降りてきた私達は採ってきた山の恵みを分けて教会に戻っていく。

「神父様、シスター、ローニャ、ただいまっ! お土産を持ってきたよ」
「おぉ、これは美味しそうじゃな。晩御飯が楽しみじゃ」
「美味しい料理を作るから待っていてね」
「ローニャも手伝う」

 こうして私達は厨房に入り、シスターの料理の手伝いをする。シスターはキノコを焼いて山菜を茹でてソースを掛けると、いい香りが厨房内に広がり、ローニャのお腹が鳴いた。

「お腹が減った。早く食べたい」

 私達は笑いながら食堂でお祈りをした後、みんなで食事を摂った。

 今日、山であった事、教えてもらった事を神父様やシスターに話をする。ローニャも負けじと畑の手伝いをしたと話をしている。
 それを二人はニコニコと聞いてくれている。

 ……ここに来て良かった。

 私は心の中でそう思った。温かな二人に守られてローニャも私もすぐに村に馴染めた。

 今でも両親の事を考えると涙が出てしまうけれど、二人は私達の第二の両親であることは間違いない。

「そうだ、ナーニャ、今日は貴女の九歳の誕生日でしょう? ポイの実を用意したわ」

 !!!

 私は驚いた。あの日の光景を思い出して涙が止まらなかった。

「……シ、シスター、ありがとう」

 私は首に下げてある指輪をギュッと握りしめた。

 きっと神父様やシスターは知らなかったと思う。私がポイの実が好きだった事や誕生日で母がわざわざ用意してくれていたポイの実。

 ポイの実を噛った瞬間甘味が口に広がっていく。

 ああ、あの時と同じ味だ。

 あの頃の幸せだった自分。
 父と母とローニャで笑い合っていた誕生日。父と母の死。

 色んな物を思い出して苦しくなる。

「ナーニョ? 大丈夫?」
「シ、シスター。ごめんなさい。ちょっと昔を思い出してしまっただけ。もう大丈夫。ありがとう」

 きっと前に居た孤児も同じような事があったのかもしれない。神父様もシスターも慣れているようだ。

 ローニャも心配そうに見ている。

 私はいつまでも泣いていてはいけない。

 後ろを向いてもお父さんもお母さんも戻ってこない。グッと指輪を握りしめた後、ポイの実を食べた。

 甘酸っぱくて大好きな味。
 この味はきっと忘れる事が出来ない。

 お父さんとお母さんの残してくれた指輪を握りしめた。

 もう泣かない。
 ちゃんと前を向くわ。

 お父さんやお母さんのように立派な人になる。私は涙を拭い決意を新たにする。

 決意をした翌日から私は両親の事を思い出す余裕もないほど朝から晩までお手伝いと勉強に励んだ。もちろん魔法の練習もした。

 神父様が心配するほど毎日魔力を使って自分の限界まで頑張った。妹はそんな私を見て思うところがあったのだろう。


 自分も六歳になったら魔法の勉強がしたいと言い始めた。

 神父様はローニャの気持ちを汲んで六歳の誕生日にヒエロス(怪我回復)とサーロー(土質改善)、ヒーストール(浄化)の指輪をもらって大喜びしていた。

 ちなみに私が持っている母の指輪はターフィルの指輪で水刃のナイフが相手を刺すことが出来る魔法だ。

 妹が持っている父の指輪はスーフィルの指輪。こちらは植物の棘の付いたナイフ。練度により毒が込められるものだ。

 ローニャは一度興味本位で使おうとした時に体中の魔力を吸い取られるような恐怖を感じ、無理やり指輪を指から抜いたようだ。

 それ以降、本人も扱いが難しい指輪だと自覚しているようで決してネックレスから外そうとはしない。

 今は神父様から貰った指輪で色々な土質を改善しているようだ。この改善の仕方は他の指輪と少し違い、使用者の意識で改善の仕方が変わるのだとか。

 育てる植物により向いている土質が違うらしく、考えなければ植物が上手く育たない。

 ローニャは毎回村のお爺さん達に助言を乞いながら魔法を使っている。

 その事がローニャの教育にとても合っていたようでローニャは思慮深くとても賢い子になっていると思う。

 神父様はそんなローニャを見てこの村で少しでも勉強が出来るようにと村役場や神父様の持っている本を読ませたり、時折来る行商人達から本を買い与えたりしてくれた。

 もちろん私も一緒に読んで勉強しているが、ローニャほど熟読出来てはいない。

 姉として誇らしいと共に少し寂しい気持ちになる。
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