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未熟な聖女
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今日も朝早くから起きて薬草の世話をはじめる。ジェットはというと、家に帰ってきてから小さなクッションの真ん中で丸まり、動かないでいる。
死んだのかしら? と突くとふるふると動いている様子を見て生きているのを確認したわ。
「ガロン、ジェットは何を食べると思う?」
「そうですなぁ。森に住む獣は肉を食べておりますが、聖獣は木の実や果実を好みますし、とりあえず花や野菜を食べさせてみてはいかがですかな」
「そうね」
とりあえず野菜を一口サイズに切り、ジェットの前に置くが食べる様子はない。
「食べないのかしら? ほらっ、食べなさい」
私は手に野菜を乗せてジェットの前に出すとジェットは私の指を舐めてきた。
「可愛いわね。あら、この子。私の魔力を食べているわ。不思議な子ね。良いわ、魔力は沢山あるから分けてあげるわ」
そう言って指先から魔力を出すとジェットはペロペロと数度舐めると満足したのか眠りについてしまった。可愛い。
撫でたい衝動に駆られたが、寝ている子どもはそっとしておくべきとガロンに言われたので我慢する事にした。
暫くすると、魔法郵便で母から小包が届いた。同封された手紙を読むと、新しい薬を作ったから試せと書いている。
どうしようかしらね。お母様はお祖母様程危ない薬は作らないと思うけれど、私自身で試すのは嫌なのよね。
そう思っていると来客がきたようだ。
― ドンドンドン ―
「扉を叩くのはどなた?」
いつものようにレースアイマスクをして扉を開けると家の前に立っていたのは所々汚れが目立つ聖女服を着た薄い水色の長い髪に碧眼の小さな女の子だった。
「あら、可愛い女の子ね。私にご用事かしら?」
女の子は私の身体を見ても怖がる素振りも見せない。変わった子ね。
「森の魔女。私を助けなさい」
あらあら、とても元気な女の子なのね。
私はクスリと笑い、言葉を返した。
「なぜ私が貴女を助けなければいけないのかしら?」
クッションで寝ていたジェットは何かを感じたようでピョンと私の肩に飛び乗り、毛を膨らませている。私の言葉に女の子は苛立っているのか口を尖らせた。
「魔女だからでしょ! 誰のせいでこんな事になったのか知らないとは言わせないわ!」
「ごめんなさいね? 全然貴女の話が見えないわ。しっかりと、最初から説明して下さる?」
女の子は偉そうなものの言い方をしながらもここまできた経緯を話しはじめた。
どうやらこの女の子はこの間滅亡したロード国の見習い聖女だったらしい。見習い聖女として魔獣討伐騎士団の巡回に参加し、魔獣の討伐や土地の浄化でたまたま国の外れまで来ていたところ、王都の惨事から難を逃れたのだとか。
「それで何故私が貴女を助けなければならないの?」
「貴女が国を滅ぼしさえしなければ私は森を彷徨う事は無かったのよ!」
「ふふっ、可笑しな事を言うものね。貴女、聖女なのでしょう? 本来なら溢れ出た魔物全てを聖女である貴女が討伐しないといけないのよ? それに私は国から殺されかけたのよ? 攻撃されて反撃しないのは可笑しいわね」
女の子はぐっと言葉に詰まった。
「でも! 私は孤児だし、森から一人でここまで歩いて来た。ここしかもう頼る人も居ないんだからっ!」
女の子は目に涙を浮かべ虚勢を張るように大声で言葉を吐き出す。
「ふぅん? それで? ここからだと村まであと少しよ? 教会に駆け込めば良いのではないかしら?」
「それが出来れば苦労しないわ。これを見れば分かるでしょう?」
女の子は袖をグッと捲し上げると術式が埋め込まれている。
「あらあら。他国へはいけないように制限されているのねぇ」
ガロンは今まで黙って家の中にいたのにパタパタと女の子の周りを飛び、何かを確認したのか私に耳打ちしてきた。
「そうねぇ。貴女、ここに来るまで一人で野宿していたの?」
「そうよ! 最初は騎士達と一緒だったわ。でも、国が滅んだと知らせがあった時、聖女として未熟だったし、国を出ることが出来ない私は国境付近で足手纏いになると捨てられたの。そこから一人で野宿をしながらなんとかここまで来たのよ」
「じゃぁ、野宿はできそうね」
私はそう言いながら魔法でメッセージを飛ばす。
女の子は大人たちに捨てられて自分には後がないということを十分に理解しているようね。
「だから、ここしか行く当てがないの! ここに置いてちょうだい」
「それは難しいわ。私は魔女だもの。品行方正な聖女様には難しいでしょう?」
「わ、私だって魔女にだってなれるわ! 何にだって、なれるわ! 辛い修行だってやってみせるし! だから、ここに置いてちょうだい」
「辛い修行も頑張るのね。ふふっ、それは良いことを聞いたわ」
女の子と話をしていると光の粒と共に返信が来た。
「良かったわね。貴女を引き取ってくれる人が見つかったわ。これからはその人物の言う事を聞きなさいな。なぁに、悪いことにはならないわ。きっと今よりも何倍も成長が出来るわよ?」
女の子は突然の事に頭が付いていかないようでぽかんと口を開けていた。
「今から貴女を引き取ってくれる人の元に直接送るから後はその人に全て聞きなさいな」
「……私は奴隷になるの?」
女の子は不安そうな顔をしている。
「ふふっ。そうかもね? さぁ、これを持って」
私は指をパチンと鳴らして桶を渡すと、女の子は何これ? と不思議そうな顔つきね。
ふふふっ。
「彼に宜しくと伝えてね」
そう言って私は錫杖を取り出し、呪文を唱える。シャランと地面を突くと女の子の足元に魔法円が浮かび上がり、光の粒と共に女の子は転移した。
「エイシャ様、久々なのにアレを渡すとは。きっとあの方様は今頃地団駄を踏んでおりますぞ」
ガロンは宙をぐるりと飛び回りながらやれやれと話をしている。
「ふふっ。私のちょっとした気遣いなのよ?」
さて、私の領分はここまでね。
女の子が転移したせいか肩に乗っていたジェットはまた落ち着きを取り戻し、私の首にぴたりとくっ付いて来たわ。
ふふっ、可愛いわね。
ーーーーーーーーーーーー
ここで一つ修正を。
曽祖母→祖母となりました。
死んだのかしら? と突くとふるふると動いている様子を見て生きているのを確認したわ。
「ガロン、ジェットは何を食べると思う?」
「そうですなぁ。森に住む獣は肉を食べておりますが、聖獣は木の実や果実を好みますし、とりあえず花や野菜を食べさせてみてはいかがですかな」
「そうね」
とりあえず野菜を一口サイズに切り、ジェットの前に置くが食べる様子はない。
「食べないのかしら? ほらっ、食べなさい」
私は手に野菜を乗せてジェットの前に出すとジェットは私の指を舐めてきた。
「可愛いわね。あら、この子。私の魔力を食べているわ。不思議な子ね。良いわ、魔力は沢山あるから分けてあげるわ」
そう言って指先から魔力を出すとジェットはペロペロと数度舐めると満足したのか眠りについてしまった。可愛い。
撫でたい衝動に駆られたが、寝ている子どもはそっとしておくべきとガロンに言われたので我慢する事にした。
暫くすると、魔法郵便で母から小包が届いた。同封された手紙を読むと、新しい薬を作ったから試せと書いている。
どうしようかしらね。お母様はお祖母様程危ない薬は作らないと思うけれど、私自身で試すのは嫌なのよね。
そう思っていると来客がきたようだ。
― ドンドンドン ―
「扉を叩くのはどなた?」
いつものようにレースアイマスクをして扉を開けると家の前に立っていたのは所々汚れが目立つ聖女服を着た薄い水色の長い髪に碧眼の小さな女の子だった。
「あら、可愛い女の子ね。私にご用事かしら?」
女の子は私の身体を見ても怖がる素振りも見せない。変わった子ね。
「森の魔女。私を助けなさい」
あらあら、とても元気な女の子なのね。
私はクスリと笑い、言葉を返した。
「なぜ私が貴女を助けなければいけないのかしら?」
クッションで寝ていたジェットは何かを感じたようでピョンと私の肩に飛び乗り、毛を膨らませている。私の言葉に女の子は苛立っているのか口を尖らせた。
「魔女だからでしょ! 誰のせいでこんな事になったのか知らないとは言わせないわ!」
「ごめんなさいね? 全然貴女の話が見えないわ。しっかりと、最初から説明して下さる?」
女の子は偉そうなものの言い方をしながらもここまできた経緯を話しはじめた。
どうやらこの女の子はこの間滅亡したロード国の見習い聖女だったらしい。見習い聖女として魔獣討伐騎士団の巡回に参加し、魔獣の討伐や土地の浄化でたまたま国の外れまで来ていたところ、王都の惨事から難を逃れたのだとか。
「それで何故私が貴女を助けなければならないの?」
「貴女が国を滅ぼしさえしなければ私は森を彷徨う事は無かったのよ!」
「ふふっ、可笑しな事を言うものね。貴女、聖女なのでしょう? 本来なら溢れ出た魔物全てを聖女である貴女が討伐しないといけないのよ? それに私は国から殺されかけたのよ? 攻撃されて反撃しないのは可笑しいわね」
女の子はぐっと言葉に詰まった。
「でも! 私は孤児だし、森から一人でここまで歩いて来た。ここしかもう頼る人も居ないんだからっ!」
女の子は目に涙を浮かべ虚勢を張るように大声で言葉を吐き出す。
「ふぅん? それで? ここからだと村まであと少しよ? 教会に駆け込めば良いのではないかしら?」
「それが出来れば苦労しないわ。これを見れば分かるでしょう?」
女の子は袖をグッと捲し上げると術式が埋め込まれている。
「あらあら。他国へはいけないように制限されているのねぇ」
ガロンは今まで黙って家の中にいたのにパタパタと女の子の周りを飛び、何かを確認したのか私に耳打ちしてきた。
「そうねぇ。貴女、ここに来るまで一人で野宿していたの?」
「そうよ! 最初は騎士達と一緒だったわ。でも、国が滅んだと知らせがあった時、聖女として未熟だったし、国を出ることが出来ない私は国境付近で足手纏いになると捨てられたの。そこから一人で野宿をしながらなんとかここまで来たのよ」
「じゃぁ、野宿はできそうね」
私はそう言いながら魔法でメッセージを飛ばす。
女の子は大人たちに捨てられて自分には後がないということを十分に理解しているようね。
「だから、ここしか行く当てがないの! ここに置いてちょうだい」
「それは難しいわ。私は魔女だもの。品行方正な聖女様には難しいでしょう?」
「わ、私だって魔女にだってなれるわ! 何にだって、なれるわ! 辛い修行だってやってみせるし! だから、ここに置いてちょうだい」
「辛い修行も頑張るのね。ふふっ、それは良いことを聞いたわ」
女の子と話をしていると光の粒と共に返信が来た。
「良かったわね。貴女を引き取ってくれる人が見つかったわ。これからはその人物の言う事を聞きなさいな。なぁに、悪いことにはならないわ。きっと今よりも何倍も成長が出来るわよ?」
女の子は突然の事に頭が付いていかないようでぽかんと口を開けていた。
「今から貴女を引き取ってくれる人の元に直接送るから後はその人に全て聞きなさいな」
「……私は奴隷になるの?」
女の子は不安そうな顔をしている。
「ふふっ。そうかもね? さぁ、これを持って」
私は指をパチンと鳴らして桶を渡すと、女の子は何これ? と不思議そうな顔つきね。
ふふふっ。
「彼に宜しくと伝えてね」
そう言って私は錫杖を取り出し、呪文を唱える。シャランと地面を突くと女の子の足元に魔法円が浮かび上がり、光の粒と共に女の子は転移した。
「エイシャ様、久々なのにアレを渡すとは。きっとあの方様は今頃地団駄を踏んでおりますぞ」
ガロンは宙をぐるりと飛び回りながらやれやれと話をしている。
「ふふっ。私のちょっとした気遣いなのよ?」
さて、私の領分はここまでね。
女の子が転移したせいか肩に乗っていたジェットはまた落ち着きを取り戻し、私の首にぴたりとくっ付いて来たわ。
ふふっ、可愛いわね。
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ここで一つ修正を。
曽祖母→祖母となりました。
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