45 / 82
未熟な聖女 聖女視点
しおりを挟む
「王宮と音信不通となった。皆、警戒するように」
「王宮で何かがあったのかもしれない」
「まさか、謀反した者が?」
「いや、分からない。勝手な憶測は危険だ。しばらく待つしかない」
団長たちの会話から騎士達に緊張が走った。
続報を待つが、いくら待っても連絡は来ないし、返信をしようにも連絡が取れない。
他の騎士も疑問に思い、王宮の騎士団以外の者、つまり家族や教会など王宮外の誰かに連絡を取ってもらおうと連絡してみるが、誰も連絡が取れなくなっているようだ。
ここにいる私たち以外、誰とも連絡が取れないことに不安を口にする者も出始めた。
私の名前はサフィア。十歳。私達はロード国の外れで瘴気が濃い場所に大型の魔獣が出たため、私と魔獣騎士団が討伐に出向いた。
本来なら聖女と聖女の従者、護衛の聖騎士のみで魔獣討伐に出向くのだが、今の私は見習い聖女として魔獣騎士団についていく形で王都から遠く離れたある森の中に来ていた。
国からの連絡を待つ事三日。騎士達も苛立ち始めた頃、行商の馬車に出くわした。
「待て、そこの行商人。そんなに急いでどうしたんだ?」
私たちは王都の方向から馬車を走らせている行商人を呼び止め、声を掛けた。
「その服は、王宮騎士団の騎士か。悪いことは言わねぇ、お前さんたちもすぐにここから離れた方がえぇ」
馬車を運転していた白髪に白髭を蓄えた老人は目を泳がせ何か焦っているように見えた。
「どういうことだ?」
「知らないのかね。今、王都は大変なことになっているんだ。王宮に魔女が現れた後、魔物が沸き始めた。今はもう王都中魔物で溢れかえっている。悪いことは言わねえから早く逃げたほうがえぇ」
「王都が魔物で溢れかえっている……?」
「ああそうだ。儂らも命からがらここまで逃げてきた。こうしている間にも魔物がここまでくるんじゃないか。儂らは急いでいるんだ。……話はもういいか?」
騎士団長は行商人の話を聞いて理解が出来ていない様子。みんなもその言葉に理解が追いつかず固まってしまっている。
「さあ、どいてくれ」
話は終わったとばかりにそう言い残し、一行は必死で逃げるように去って行った。
「どういう、こと、だ?」
行商人が言っていたことが本当なら……。
もし、本当なら、私たちはどうすればいいの。
思ってもいなかった事態に直面し、騎士達は混乱を隠せないまま話し合いを始めた。騎士の中には王都に帰ろうと言う意見やこのまま逃げようという意見がされた。
話し合いの結果、取り敢えず王都付近まで戻り、様子を見に行くことに話が決まると王都に向けて歩き始めた。
しかし、王都へ近づくにつれ街道には見た事の無い魔獣や生き物が増えてきた。『王都には魔物が溢れている』という話が真実味を帯びてくる。
何とも言えない緊張感が漂い、不安が押し寄せてくる。
そして皆、目の前の光景に絶句する。
やはり国は滅亡していた。
『これ以上は近づくと危険だ』騎士の一人がそう叫び急いで私達はサン国に逃げる事になった。けれど、王都中に溢れている魔物は私達を見つけ襲い掛かってくる。
騎士達を一人、また一人と追い詰めていく。
私は怪我をした騎士達を回復させながらサン国付近までやってくる事がどうにか出来た。
百人以上いた魔獣騎士団は気づけば私と騎士団長と数名の騎士が残っているだけになっていた。けれど、問題はそこからだったの。
私はロード国から逃げる事が出来ないように腕に誓約の術式が埋め込まれていたために騎士達に置いていかれる事になった。
「見習い聖女様、ここからは一人で頑張って生き残って下さい。我々はこのまま国境を出ます」
「な、なんで? 私を近くの村まで連れていきなさいよ!」
「国境付近の村もそろそろ魔獣に襲われている頃でしょう。それに連れて歩くには貴女は子供過ぎる。大人の女性ならまだしも子供は途中の村で売ることも出来ない」
「……う、売る? どういうこと!? 私だって活躍していたでしょう?」
「ここまで貴女を連れてきた理由は浄化や回復魔法が使えるからという理由だけです。でもここから私達はただの平民になる。
国境も越えられない見習い聖女なんて邪魔でしかない」
「そ、そんな……」
「腕を斬り落としてサン国に助けを求めても未熟な聖女を助ける事はしないでしょう。
せっかく引き離した魔物も迫って来ています。私達はこれで気兼ねなく国境を越え先に進めます。
あぁ、最後に。その言葉遣い、直した方がいいですよ? 命が惜しくば、ね。この先の森は魔女の森です。魔女をなんとかすることができれば生き残る道もあるかもしれません。では私達はこれで」
あっさりと私は騎士達に捨てられてしまった。
後ろからは魔物の這いずる音が聞こえてきた。死んでいった騎士達の姿を思い出し、必死になって私は魔女の森に向けて走りだす。置いていかれた。
嘘よ。
捨てられた。
嘘だと言って。
最後までお供しますって。
一緒に国を出る手立てを考えようって。
言ってくれないの?
誰か助けて。
「王宮で何かがあったのかもしれない」
「まさか、謀反した者が?」
「いや、分からない。勝手な憶測は危険だ。しばらく待つしかない」
団長たちの会話から騎士達に緊張が走った。
続報を待つが、いくら待っても連絡は来ないし、返信をしようにも連絡が取れない。
他の騎士も疑問に思い、王宮の騎士団以外の者、つまり家族や教会など王宮外の誰かに連絡を取ってもらおうと連絡してみるが、誰も連絡が取れなくなっているようだ。
ここにいる私たち以外、誰とも連絡が取れないことに不安を口にする者も出始めた。
私の名前はサフィア。十歳。私達はロード国の外れで瘴気が濃い場所に大型の魔獣が出たため、私と魔獣騎士団が討伐に出向いた。
本来なら聖女と聖女の従者、護衛の聖騎士のみで魔獣討伐に出向くのだが、今の私は見習い聖女として魔獣騎士団についていく形で王都から遠く離れたある森の中に来ていた。
国からの連絡を待つ事三日。騎士達も苛立ち始めた頃、行商の馬車に出くわした。
「待て、そこの行商人。そんなに急いでどうしたんだ?」
私たちは王都の方向から馬車を走らせている行商人を呼び止め、声を掛けた。
「その服は、王宮騎士団の騎士か。悪いことは言わねぇ、お前さんたちもすぐにここから離れた方がえぇ」
馬車を運転していた白髪に白髭を蓄えた老人は目を泳がせ何か焦っているように見えた。
「どういうことだ?」
「知らないのかね。今、王都は大変なことになっているんだ。王宮に魔女が現れた後、魔物が沸き始めた。今はもう王都中魔物で溢れかえっている。悪いことは言わねえから早く逃げたほうがえぇ」
「王都が魔物で溢れかえっている……?」
「ああそうだ。儂らも命からがらここまで逃げてきた。こうしている間にも魔物がここまでくるんじゃないか。儂らは急いでいるんだ。……話はもういいか?」
騎士団長は行商人の話を聞いて理解が出来ていない様子。みんなもその言葉に理解が追いつかず固まってしまっている。
「さあ、どいてくれ」
話は終わったとばかりにそう言い残し、一行は必死で逃げるように去って行った。
「どういう、こと、だ?」
行商人が言っていたことが本当なら……。
もし、本当なら、私たちはどうすればいいの。
思ってもいなかった事態に直面し、騎士達は混乱を隠せないまま話し合いを始めた。騎士の中には王都に帰ろうと言う意見やこのまま逃げようという意見がされた。
話し合いの結果、取り敢えず王都付近まで戻り、様子を見に行くことに話が決まると王都に向けて歩き始めた。
しかし、王都へ近づくにつれ街道には見た事の無い魔獣や生き物が増えてきた。『王都には魔物が溢れている』という話が真実味を帯びてくる。
何とも言えない緊張感が漂い、不安が押し寄せてくる。
そして皆、目の前の光景に絶句する。
やはり国は滅亡していた。
『これ以上は近づくと危険だ』騎士の一人がそう叫び急いで私達はサン国に逃げる事になった。けれど、王都中に溢れている魔物は私達を見つけ襲い掛かってくる。
騎士達を一人、また一人と追い詰めていく。
私は怪我をした騎士達を回復させながらサン国付近までやってくる事がどうにか出来た。
百人以上いた魔獣騎士団は気づけば私と騎士団長と数名の騎士が残っているだけになっていた。けれど、問題はそこからだったの。
私はロード国から逃げる事が出来ないように腕に誓約の術式が埋め込まれていたために騎士達に置いていかれる事になった。
「見習い聖女様、ここからは一人で頑張って生き残って下さい。我々はこのまま国境を出ます」
「な、なんで? 私を近くの村まで連れていきなさいよ!」
「国境付近の村もそろそろ魔獣に襲われている頃でしょう。それに連れて歩くには貴女は子供過ぎる。大人の女性ならまだしも子供は途中の村で売ることも出来ない」
「……う、売る? どういうこと!? 私だって活躍していたでしょう?」
「ここまで貴女を連れてきた理由は浄化や回復魔法が使えるからという理由だけです。でもここから私達はただの平民になる。
国境も越えられない見習い聖女なんて邪魔でしかない」
「そ、そんな……」
「腕を斬り落としてサン国に助けを求めても未熟な聖女を助ける事はしないでしょう。
せっかく引き離した魔物も迫って来ています。私達はこれで気兼ねなく国境を越え先に進めます。
あぁ、最後に。その言葉遣い、直した方がいいですよ? 命が惜しくば、ね。この先の森は魔女の森です。魔女をなんとかすることができれば生き残る道もあるかもしれません。では私達はこれで」
あっさりと私は騎士達に捨てられてしまった。
後ろからは魔物の這いずる音が聞こえてきた。死んでいった騎士達の姿を思い出し、必死になって私は魔女の森に向けて走りだす。置いていかれた。
嘘よ。
捨てられた。
嘘だと言って。
最後までお供しますって。
一緒に国を出る手立てを考えようって。
言ってくれないの?
誰か助けて。
78
あなたにおすすめの小説
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
偽りの婚姻
迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。
終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。
夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。
パーシヴァルは妻を探す。
妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。
だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。
婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……
特技は有効利用しよう。
庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。
…………。
どうしてくれよう……。
婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。
この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる