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エイシャの危機 カイン視点
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「エイシャ様!!」
俺の前にいたエイシャ様は地底の虫にやられて地面に倒れた。魔法で倒そうにも魔の力が抑えられている今、虫を一掃できないでいる。
ため近づこうにも虫が邪魔して近づくことさえできない。
聖獣達も魔法で虫を殺していくが間に合わない。
虫を掃討している時についに最悪な事態となった。エイシャ様が虫に囚われた。
歯がゆい思い。
先ほど散らばっていた虫達が一気にエイシャ様のところへ飛び、覆い始めた。
「チッ。エイシャ! 起きろ!」
ネメアー殿が叫び、虫を引きはがしているがエイシャ様は倒れたままだ。
俺や聖獣達も必死になって虫を潰しているが、どこからともなく湧き出る虫の勢いでエイシャ様を虫達から引き離せないでいる。
先ほどまでエイシャ様を覆いつくしていた虫達が羽を震わせ一同に魔力を放出しはじめた。
放出した魔力は一匹の蜂型の虫に集められ、その虫は魔法円を構築している。
そしてエイシャ様に向かって魔法円を向けた。
「エイシャー!」
倒れたエイシャ様は魔法円に吸い込まれるようにどこかへと転移させてしまった。
クソッ。
ネメアー殿は怒り狂い、虫に向かって咆哮を浴びせる。
その場は怒り狂った魔獣、それを抑える聖獣、目的は達したとばかりに散らばろうとする虫達で辺りは騒然となっている。
「魔人カインよ。魔女が連れ去られたのだろう? 急いで追わなくてよいのか?」
フェンリルが声を掛けてきた。
「今すぐにでも追いたいが、ネメアー殿が暴れているからそちらを止めないとここの被害は拡大するだろう」
「……大丈夫だ。奴は我らで抑え、魔獣城に送っておく。魔人よ、急げ。魔女が改造されてしまう前に」
「だが、飛ばされた先が分からない」
俺はエキドナ様やエイシャ様ほど魔法は得意ではないため、彼女たちのように微かな魔力を感じながら長距離を追うことは難しい。
すると聖獣達はネメアー殿を聖魔法で押さえつけながらこちらに声が届くように話をする。
「魔人、そこの魔獣パイアは輝石を埋め込まれたのだろう? その元になっている聖獣はイピリアだ。彼は人間に狩られた。この大量の虫達も輝石の破片が埋め込まれている。これらも行方不明になった我らの仲間の気配だ」
「人間ヲ探セ。我ラノ仲間ヲ殺シタ者を見ツケ出セ」
聖獣達も虫に埋め込まれている輝石の破片に苛立っている。
「人間か。分かった」
パイア殿も聖獣達に任せ、俺はエキドナ様にエイシャ様が連れ去られたことを知らせた後、人間の国に飛んだ。
エイシャ様の魔力はもちろんだが、虫達が行使していた魔力もしっかりと覚えている。
転移先まで追うことは出来ないが、近くにいればすぐに分かる。
一つ、また一つ。
人間の国に転移し、確認していく。
焦りと、怒りと、エイシャ様を失うかもしれない不安で焦燥感に駆られる。
早く見つけ出さねば。
四つ目の国に転移した時、……見つけた。
エイシャ様を転移させたやつはやはり人間の国に住んでいた。
先ほどまでの焦燥感が怒りに切り替わっていく。漏れ出る魔力を抑える必要はないだろう。
俺の漏れ出る魔力で街の外が騒がしくなっている。俺の怒りに呼応するように魔獣が集まり始めているようだ。
行き交う人々は俺を見て恐怖で逃げる者や建物の影に隠れ口を閉じ、じっと様子を見ている者など様々だ。俺は歩くごとに地面が割れ、馬が嘶き、暴れているがそんなことはどうでもいい。
魔力は郊外の邸から感じる。
その邸は貴族の邸で三階建ての立派な建物になっていて入口には門番が立っていた。
「おい、止まれ!!ここはクリスヒル公爵家の邸だ。許可のない者は立ち去れ」
門番が止めようとするが、俺の漏れ出る魔力に当てられ倒れこむ。
そのまま入口から入り、邸を壊しながら歩き、エイシャ様のいる場所に向かった。
……ここか。
扉を開くと、そこには小さな子供と、魔法円の中にいるエイシャ様がいた。
「エイシャ様!!」
俺の前にいたエイシャ様は地底の虫にやられて地面に倒れた。魔法で倒そうにも魔の力が抑えられている今、虫を一掃できないでいる。
ため近づこうにも虫が邪魔して近づくことさえできない。
聖獣達も魔法で虫を殺していくが間に合わない。
虫を掃討している時についに最悪な事態となった。エイシャ様が虫に囚われた。
歯がゆい思い。
先ほど散らばっていた虫達が一気にエイシャ様のところへ飛び、覆い始めた。
「チッ。エイシャ! 起きろ!」
ネメアー殿が叫び、虫を引きはがしているがエイシャ様は倒れたままだ。
俺や聖獣達も必死になって虫を潰しているが、どこからともなく湧き出る虫の勢いでエイシャ様を虫達から引き離せないでいる。
先ほどまでエイシャ様を覆いつくしていた虫達が羽を震わせ一同に魔力を放出しはじめた。
放出した魔力は一匹の蜂型の虫に集められ、その虫は魔法円を構築している。
そしてエイシャ様に向かって魔法円を向けた。
「エイシャー!」
倒れたエイシャ様は魔法円に吸い込まれるようにどこかへと転移させてしまった。
クソッ。
ネメアー殿は怒り狂い、虫に向かって咆哮を浴びせる。
その場は怒り狂った魔獣、それを抑える聖獣、目的は達したとばかりに散らばろうとする虫達で辺りは騒然となっている。
「魔人カインよ。魔女が連れ去られたのだろう? 急いで追わなくてよいのか?」
フェンリルが声を掛けてきた。
「今すぐにでも追いたいが、ネメアー殿が暴れているからそちらを止めないとここの被害は拡大するだろう」
「……大丈夫だ。奴は我らで抑え、魔獣城に送っておく。魔人よ、急げ。魔女が改造されてしまう前に」
「だが、飛ばされた先が分からない」
俺はエキドナ様やエイシャ様ほど魔法は得意ではないため、彼女たちのように微かな魔力を感じながら長距離を追うことは難しい。
すると聖獣達はネメアー殿を聖魔法で押さえつけながらこちらに声が届くように話をする。
「魔人、そこの魔獣パイアは輝石を埋め込まれたのだろう? その元になっている聖獣はイピリアだ。彼は人間に狩られた。この大量の虫達も輝石の破片が埋め込まれている。これらも行方不明になった我らの仲間の気配だ」
「人間ヲ探セ。我ラノ仲間ヲ殺シタ者を見ツケ出セ」
聖獣達も虫に埋め込まれている輝石の破片に苛立っている。
「人間か。分かった」
パイア殿も聖獣達に任せ、俺はエキドナ様にエイシャ様が連れ去られたことを知らせた後、人間の国に飛んだ。
エイシャ様の魔力はもちろんだが、虫達が行使していた魔力もしっかりと覚えている。
転移先まで追うことは出来ないが、近くにいればすぐに分かる。
一つ、また一つ。
人間の国に転移し、確認していく。
焦りと、怒りと、エイシャ様を失うかもしれない不安で焦燥感に駆られる。
早く見つけ出さねば。
四つ目の国に転移した時、……見つけた。
エイシャ様を転移させたやつはやはり人間の国に住んでいた。
先ほどまでの焦燥感が怒りに切り替わっていく。漏れ出る魔力を抑える必要はないだろう。
俺の漏れ出る魔力で街の外が騒がしくなっている。俺の怒りに呼応するように魔獣が集まり始めているようだ。
行き交う人々は俺を見て恐怖で逃げる者や建物の影に隠れ口を閉じ、じっと様子を見ている者など様々だ。俺は歩くごとに地面が割れ、馬が嘶き、暴れているがそんなことはどうでもいい。
魔力は郊外の邸から感じる。
その邸は貴族の邸で三階建ての立派な建物になっていて入口には門番が立っていた。
「おい、止まれ!!ここはクリスヒル公爵家の邸だ。許可のない者は立ち去れ」
門番が止めようとするが、俺の漏れ出る魔力に当てられ倒れこむ。
そのまま入口から入り、邸を壊しながら歩き、エイシャ様のいる場所に向かった。
……ここか。
扉を開くと、そこには小さな子供と、魔法円の中にいるエイシャ様がいた。
「エイシャ様!!」
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