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第2章 王への道
五話 異世界への到着
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すみません、また更新期間が少し長引きました。
楽しんでいただければ幸いです。
ーーー
無限に連なる世界の一つ、そこに生きるものたちにヒュリスと呼ばれる世界。いくつもの大陸と無数の小島などで構築され、数多くの種族が繁栄する世界である。
ヒュリスには数え上げればきりの無いほどの生命体が存在するが、大まかに人族、亜人族、魔族、そして魔物という四種族で分別されている。
その四つの種族の中、まず大小様々な国が存在し、異なった人種や地域ごとに統率者たるものが存在している人族が東一帯に繁栄していた。その数は他の種族を圧倒する。
次に西一帯を魔族が支配し、魔王を筆頭として一つの国にまとまって存在している。そのため、その物騒な名に反して歴史上最も平和が保たれている種族と呼ばれている。
亜人族は南全体の大陸を包み込む大樹海の中で連合国家を作り、一丸となってひっそりと生活を送っている。無論、その領域の外に出て他の種族の中で生きるものも数多くいた。
そして最後に、魔物。他の種族同様に多種多様な……いや、比べるべくもなく無数の種類が存在する彼らは、無法地帯、あるいは自然の姿そのままである北全体に蔓延っていた。
基本本能の赴くままに生きる彼らは、北の大陸においてある程度の高い知能を持つ魔物、あるいは高位の存在へと昇華したものをリーダーとし日々争いながら生きている。たった一つ、大陸の果てに竜の収める国がポツンと存在しているのみだ。
さて。これが大まかなヒュリスの概要である。他にも山ほど説明することはあるが、それは今は割愛し話を進めるとしよう。
ヒュリスには、俗に『秘境』と呼称される特別な場所が数多くある。その数はヒュリス全体の国の数を足してなおあまりあるほどの数だ。
そのうちの一部はすでに知恵あるものたちによって発見、調査、管理をされているが、それよりもその存在が明らかになっていない、伝説上にのみ語られる秘境のほうが遥かに多い。
それは何十層もの深さを持つ地下迷宮であったり、あるいは迷路のように綿密な通路で構成された遺跡であったり……あるいは、空高く浮かぶ浮島であったり。
そんな一度列挙すれば枚挙に暇のないものである秘境だが、そのうちの一つが世界の東の果て……今は忘れ去られた幻の島に存在していた。
全方位を海で囲まれ隔絶しているその孤島はそれそのものが秘境であり、島の中にはかの伝説の〝森〟に勝るとも劣らぬ屈強な魔物たちが生息している。
しかし、その孤島の重要な部分は何もそこだけでは無い。それと同じくらい…否、それ以上に重要なものが、そこにはあった。
【至高なる迷宮】
かつてまだこの島に知恵あるものが訪れた頃、この孤島にあるそれはそう呼称され、時に崇められ、時に恐れられた。
その正体は……かつて神へと至った一人の人間が長い時間をかけて作り上げた、こと力を磨くことにおいては世界最高峰と謳われていたダンジョンである。
秘境が自然の摂理により生まれた奇跡なのだとしたら、ダンジョンは地上の存在より昇華したものよって人為的に作られた奇跡だ。その神秘性は秘境に勝るとも劣らない。
中でも、一つの要素において最高と称される三つのダンジョンが存在し、さらに三大ダンジョンとよばれるその中でも【至高なる迷宮】は群を抜いた神秘性を誇る。
そして、遥か太古の昔【至高なる迷宮】は世界を脅かす悪しきものが現れた際、どこかの世界から呼び出された勇者が力を身につける場所として重宝されていた。
というのも、神が勇者を選ぶとこの島に設置された転移させる〝座標〟となる魔法陣の刻み込まれた台座に召喚され、最低限の説明をするとすぐさま【至高なる迷宮】にて神に与えられた力を磨いていたのである。
それは訳も分からぬまま別の世界に召喚され、一方的に世界の命運を背負わされた者からすればあまりにもスパルタな方針だが、しかし世界の命運がかかっている以上は仕方のないことだった。
そして神々の祝福を受け【至高なる迷宮】にてその力を開花させた勇者が世界の人々を率い、世界の危機に立ち向かった、というわけである。
正に歴史に残る英傑たちの時代だったその時代は神代と称され、今もなお国々の歴史として、子供達に聞かせる伝説として語り継がれている。
だが悲しきかな、神代から数千もの時がたった今、この場所は人々の記憶から忘れ去られ、その存在を示すものもほとんどが消滅、あるいは隠されてしまっている。
それは年月が経つにつれて魔法が発達していき、相応の代償は伴うものの神でなくとも人の手で異界より勇者を呼び出せるようになってしまったというのもある。
さらに【至高なる迷宮】には劣るものの、強力なダンジョンも次々と発見されていったことでその場所の不便さも相まって、少しずつこの島は使われなくなっていった。
神代より人の数も増え、魔法も、武具もより強力に進化したため、世界の希望である勇者をわざわざ危険な目に合わせるのではなく自分達の目に届く場所にあるダンジョンで時間をかけて育てる、という考えに変わっていくのは必然とも言えた。
そういう様々なことが積み重なっていき、必要のなくなったこの島はかつての美しい面影もなく完全に荒れ果て、今は強力無比な魔物達がうろつく人外魔境と成り果ててしまった。
そんな島の頂上……【至高なる迷宮】への入り口が存在する神殿。島と同じく壊滅し、木々に呑まれ廃墟となり果てたそこには、件の勇者召喚の際に用いられた台座が存在していた。
していた、というのは既に半壊状態だからであり、残っている半分も無数に亀裂が走り、縁が欠けている。植物の根が侵食している上に苔生しており、僅かに残ったエネルギーの上に菌類が繁殖している始末だった。
誰がどう見ても、使用不可能。かつて勇者を送り込んでいた神でさえも諦め、新しいものを作るだろうというその台座は、既にその役目を果たすことはできなかった。
ドッ!!!
ーー今、この瞬間までは。
突如、半壊していた台座の魔法陣に澄み切った瑠璃色の力が宿ったかと思うと光の柱が立ち上り、天空へと向けて轟音を立てながら直進していった。
外側から見ても極大のその光の柱は神殿を覆い隠していた木々を壊れかけの天井ごと消しとばし、広がるオーラの波は島の隅々まで行き渡り木々をざわめかせる。
そのとてつもない力の波動に、島中の生物が頂上へ振り返り、地上の魔物たちは困惑の咆哮を上げ、翼を持つ魔物達は一斉に飛び立った。
その光の柱の下にある台座は強い輝きを放っており、半壊したそれの上には巨大な魔法陣が高速で回転していた。それは間違いなく、かつて異界より救世主を導いた光そのものであった。
それが最高潮に達したその瞬間ーー光の柱が弾ける。その代わりに、未だ収まりきっていない光の中に複数の人影が姿を現した。
神殿の中を包み込んでいた光は徐々に収まっていき、それに伴い、この世界に転移してきた者達の姿も露わになっていった。そのシルエットは一つは男、二つは女だ。
やがて完全に霧散した時……そこにいたのは両腕で顔を庇っている背の高い青年と波打つ黒髪を持つ少女、そしてメガネをかけた瑠璃色の髪を持つ、瞑目している少女だった。
青年と黒髪の方の少女は光が収まったのを肌で感じ取ると、恐る恐る手を下ろし目を開ける。そして自分たちがどことも知れぬ廃墟の中、謎の台座の上にいることに呆然とした。
「ここは……?」
「何よ、これ……」
光の余韻が粒子となり漂う廃神殿の中を見渡し、唖然とした様子で呟く青年……シュウ。その横にいた少女……雫は腰が抜けてガクッと膝を折ってしまい、それをシュウが慌てて支える。
そんな風に困惑しきりな様子の二人に対し、もう一方の瑠璃色の髪の少女……瑠璃は静かに息を吐き、うっすらと目を開く。
「……どうにか、うまくいったようですね」
そして、落ち着きはらった様子でそう呟いた。顔を青白くした雫のことを抱きしめていたシュウがその呟きを拾い、ピクリと肩を震わせる。
そしてそっと雫から体を離すと立ち上がり、瑠璃へと向き直った。20センチ以上も上からギロリと殺気の滲む目線で瑠璃のことを睨み下ろし、ひどく低い声で問いかける。
「…説明してくれ。ここはどこだ? お前のことだ、何か考えがあって連れてきたんだろ? それにうまくいったってなんのことだ?」
「……何か勘違いしているみたいですが、まず私が連れてきたというのは半分正解で半分間違っていますね。私たちは強制的にこの世界に招ばれたんですね」
「……じゃあ、うまくいったってのは」
「強制的な転移から座標をこの場所にどうにか変更できた、という意味ですね」
淡々とした口調で説明する瑠璃にどこか気圧されながらも、シュウは自分が見当違いの怒りを抱いていたことに気付く。そして瑠璃に「すまない」と謝った。特に気にしていない瑠璃はかぶりを振って了承する。
それからしばらくの間、シュウは廃墟の中にあった椅子に雫を寝かせて様子が落ち着くまでそばに寄り添い、瑠璃はまた瞑目してまるで何かを探っているように瞼の下で眼球を動かしていた。
そんな瑠璃の体の周りには、先ほど魔法陣の周りを舞っていた瑠璃色の粒子が集まり、まるで川の流れのようにゆっくりと循環をしている。そこには半透明の小さな人型の何か……精霊が集まってきていた。
仄かに発光する粒子と精霊に囲まれ、それらに揺らされて瑠璃色の髪がなびくその光景は文字通り、とても神秘的である。
「……ありがとう。もう大丈夫よ」
「そうか…また気分が悪くなったりしたらすぐに言えよ?」
「ええ、頼りにしてるわよシュウ」
ようやく落ち着いて起き上がった雫はシュウにウィンクしてそういう。それにシュウは不敵に笑い、任せとけと返した。
そんなこんなで復活した雫を伴い、シュウは未だに台座の上にいる瑠璃の方へと近づいていく。するとタイミングよく粒子と精霊達が消え、瑠璃は短く息を吐きながら目を開いた。
「……やっぱりダメでしたかね」
「おーい白井、雫が回復したぞ」
「おや、もう大丈夫なのですかね?」
「ええ。ごめんなさい、迷惑をかけて」
「お気遣いなく……それよりも、お二人に話したいことがありますね」
体ごと向き直り、真面目な声音と表情でそう言う瑠璃に自然と二人の背筋も伸び、真剣な表情になって聞く体制に入る。
そんな二人の顔を交互に見た瑠璃は一度深呼吸をした後、意を決してその言葉を解き放った。
「ーー片割れと繋がりました。この世界に、センパイがいますね」
ーーー
定期試験があるので、更新が途切れる、あるいは遅くなります。誠に申し訳ございません。
感想をお願いいたします。
楽しんでいただければ幸いです。
ーーー
無限に連なる世界の一つ、そこに生きるものたちにヒュリスと呼ばれる世界。いくつもの大陸と無数の小島などで構築され、数多くの種族が繁栄する世界である。
ヒュリスには数え上げればきりの無いほどの生命体が存在するが、大まかに人族、亜人族、魔族、そして魔物という四種族で分別されている。
その四つの種族の中、まず大小様々な国が存在し、異なった人種や地域ごとに統率者たるものが存在している人族が東一帯に繁栄していた。その数は他の種族を圧倒する。
次に西一帯を魔族が支配し、魔王を筆頭として一つの国にまとまって存在している。そのため、その物騒な名に反して歴史上最も平和が保たれている種族と呼ばれている。
亜人族は南全体の大陸を包み込む大樹海の中で連合国家を作り、一丸となってひっそりと生活を送っている。無論、その領域の外に出て他の種族の中で生きるものも数多くいた。
そして最後に、魔物。他の種族同様に多種多様な……いや、比べるべくもなく無数の種類が存在する彼らは、無法地帯、あるいは自然の姿そのままである北全体に蔓延っていた。
基本本能の赴くままに生きる彼らは、北の大陸においてある程度の高い知能を持つ魔物、あるいは高位の存在へと昇華したものをリーダーとし日々争いながら生きている。たった一つ、大陸の果てに竜の収める国がポツンと存在しているのみだ。
さて。これが大まかなヒュリスの概要である。他にも山ほど説明することはあるが、それは今は割愛し話を進めるとしよう。
ヒュリスには、俗に『秘境』と呼称される特別な場所が数多くある。その数はヒュリス全体の国の数を足してなおあまりあるほどの数だ。
そのうちの一部はすでに知恵あるものたちによって発見、調査、管理をされているが、それよりもその存在が明らかになっていない、伝説上にのみ語られる秘境のほうが遥かに多い。
それは何十層もの深さを持つ地下迷宮であったり、あるいは迷路のように綿密な通路で構成された遺跡であったり……あるいは、空高く浮かぶ浮島であったり。
そんな一度列挙すれば枚挙に暇のないものである秘境だが、そのうちの一つが世界の東の果て……今は忘れ去られた幻の島に存在していた。
全方位を海で囲まれ隔絶しているその孤島はそれそのものが秘境であり、島の中にはかの伝説の〝森〟に勝るとも劣らぬ屈強な魔物たちが生息している。
しかし、その孤島の重要な部分は何もそこだけでは無い。それと同じくらい…否、それ以上に重要なものが、そこにはあった。
【至高なる迷宮】
かつてまだこの島に知恵あるものが訪れた頃、この孤島にあるそれはそう呼称され、時に崇められ、時に恐れられた。
その正体は……かつて神へと至った一人の人間が長い時間をかけて作り上げた、こと力を磨くことにおいては世界最高峰と謳われていたダンジョンである。
秘境が自然の摂理により生まれた奇跡なのだとしたら、ダンジョンは地上の存在より昇華したものよって人為的に作られた奇跡だ。その神秘性は秘境に勝るとも劣らない。
中でも、一つの要素において最高と称される三つのダンジョンが存在し、さらに三大ダンジョンとよばれるその中でも【至高なる迷宮】は群を抜いた神秘性を誇る。
そして、遥か太古の昔【至高なる迷宮】は世界を脅かす悪しきものが現れた際、どこかの世界から呼び出された勇者が力を身につける場所として重宝されていた。
というのも、神が勇者を選ぶとこの島に設置された転移させる〝座標〟となる魔法陣の刻み込まれた台座に召喚され、最低限の説明をするとすぐさま【至高なる迷宮】にて神に与えられた力を磨いていたのである。
それは訳も分からぬまま別の世界に召喚され、一方的に世界の命運を背負わされた者からすればあまりにもスパルタな方針だが、しかし世界の命運がかかっている以上は仕方のないことだった。
そして神々の祝福を受け【至高なる迷宮】にてその力を開花させた勇者が世界の人々を率い、世界の危機に立ち向かった、というわけである。
正に歴史に残る英傑たちの時代だったその時代は神代と称され、今もなお国々の歴史として、子供達に聞かせる伝説として語り継がれている。
だが悲しきかな、神代から数千もの時がたった今、この場所は人々の記憶から忘れ去られ、その存在を示すものもほとんどが消滅、あるいは隠されてしまっている。
それは年月が経つにつれて魔法が発達していき、相応の代償は伴うものの神でなくとも人の手で異界より勇者を呼び出せるようになってしまったというのもある。
さらに【至高なる迷宮】には劣るものの、強力なダンジョンも次々と発見されていったことでその場所の不便さも相まって、少しずつこの島は使われなくなっていった。
神代より人の数も増え、魔法も、武具もより強力に進化したため、世界の希望である勇者をわざわざ危険な目に合わせるのではなく自分達の目に届く場所にあるダンジョンで時間をかけて育てる、という考えに変わっていくのは必然とも言えた。
そういう様々なことが積み重なっていき、必要のなくなったこの島はかつての美しい面影もなく完全に荒れ果て、今は強力無比な魔物達がうろつく人外魔境と成り果ててしまった。
そんな島の頂上……【至高なる迷宮】への入り口が存在する神殿。島と同じく壊滅し、木々に呑まれ廃墟となり果てたそこには、件の勇者召喚の際に用いられた台座が存在していた。
していた、というのは既に半壊状態だからであり、残っている半分も無数に亀裂が走り、縁が欠けている。植物の根が侵食している上に苔生しており、僅かに残ったエネルギーの上に菌類が繁殖している始末だった。
誰がどう見ても、使用不可能。かつて勇者を送り込んでいた神でさえも諦め、新しいものを作るだろうというその台座は、既にその役目を果たすことはできなかった。
ドッ!!!
ーー今、この瞬間までは。
突如、半壊していた台座の魔法陣に澄み切った瑠璃色の力が宿ったかと思うと光の柱が立ち上り、天空へと向けて轟音を立てながら直進していった。
外側から見ても極大のその光の柱は神殿を覆い隠していた木々を壊れかけの天井ごと消しとばし、広がるオーラの波は島の隅々まで行き渡り木々をざわめかせる。
そのとてつもない力の波動に、島中の生物が頂上へ振り返り、地上の魔物たちは困惑の咆哮を上げ、翼を持つ魔物達は一斉に飛び立った。
その光の柱の下にある台座は強い輝きを放っており、半壊したそれの上には巨大な魔法陣が高速で回転していた。それは間違いなく、かつて異界より救世主を導いた光そのものであった。
それが最高潮に達したその瞬間ーー光の柱が弾ける。その代わりに、未だ収まりきっていない光の中に複数の人影が姿を現した。
神殿の中を包み込んでいた光は徐々に収まっていき、それに伴い、この世界に転移してきた者達の姿も露わになっていった。そのシルエットは一つは男、二つは女だ。
やがて完全に霧散した時……そこにいたのは両腕で顔を庇っている背の高い青年と波打つ黒髪を持つ少女、そしてメガネをかけた瑠璃色の髪を持つ、瞑目している少女だった。
青年と黒髪の方の少女は光が収まったのを肌で感じ取ると、恐る恐る手を下ろし目を開ける。そして自分たちがどことも知れぬ廃墟の中、謎の台座の上にいることに呆然とした。
「ここは……?」
「何よ、これ……」
光の余韻が粒子となり漂う廃神殿の中を見渡し、唖然とした様子で呟く青年……シュウ。その横にいた少女……雫は腰が抜けてガクッと膝を折ってしまい、それをシュウが慌てて支える。
そんな風に困惑しきりな様子の二人に対し、もう一方の瑠璃色の髪の少女……瑠璃は静かに息を吐き、うっすらと目を開く。
「……どうにか、うまくいったようですね」
そして、落ち着きはらった様子でそう呟いた。顔を青白くした雫のことを抱きしめていたシュウがその呟きを拾い、ピクリと肩を震わせる。
そしてそっと雫から体を離すと立ち上がり、瑠璃へと向き直った。20センチ以上も上からギロリと殺気の滲む目線で瑠璃のことを睨み下ろし、ひどく低い声で問いかける。
「…説明してくれ。ここはどこだ? お前のことだ、何か考えがあって連れてきたんだろ? それにうまくいったってなんのことだ?」
「……何か勘違いしているみたいですが、まず私が連れてきたというのは半分正解で半分間違っていますね。私たちは強制的にこの世界に招ばれたんですね」
「……じゃあ、うまくいったってのは」
「強制的な転移から座標をこの場所にどうにか変更できた、という意味ですね」
淡々とした口調で説明する瑠璃にどこか気圧されながらも、シュウは自分が見当違いの怒りを抱いていたことに気付く。そして瑠璃に「すまない」と謝った。特に気にしていない瑠璃はかぶりを振って了承する。
それからしばらくの間、シュウは廃墟の中にあった椅子に雫を寝かせて様子が落ち着くまでそばに寄り添い、瑠璃はまた瞑目してまるで何かを探っているように瞼の下で眼球を動かしていた。
そんな瑠璃の体の周りには、先ほど魔法陣の周りを舞っていた瑠璃色の粒子が集まり、まるで川の流れのようにゆっくりと循環をしている。そこには半透明の小さな人型の何か……精霊が集まってきていた。
仄かに発光する粒子と精霊に囲まれ、それらに揺らされて瑠璃色の髪がなびくその光景は文字通り、とても神秘的である。
「……ありがとう。もう大丈夫よ」
「そうか…また気分が悪くなったりしたらすぐに言えよ?」
「ええ、頼りにしてるわよシュウ」
ようやく落ち着いて起き上がった雫はシュウにウィンクしてそういう。それにシュウは不敵に笑い、任せとけと返した。
そんなこんなで復活した雫を伴い、シュウは未だに台座の上にいる瑠璃の方へと近づいていく。するとタイミングよく粒子と精霊達が消え、瑠璃は短く息を吐きながら目を開いた。
「……やっぱりダメでしたかね」
「おーい白井、雫が回復したぞ」
「おや、もう大丈夫なのですかね?」
「ええ。ごめんなさい、迷惑をかけて」
「お気遣いなく……それよりも、お二人に話したいことがありますね」
体ごと向き直り、真面目な声音と表情でそう言う瑠璃に自然と二人の背筋も伸び、真剣な表情になって聞く体制に入る。
そんな二人の顔を交互に見た瑠璃は一度深呼吸をした後、意を決してその言葉を解き放った。
「ーー片割れと繋がりました。この世界に、センパイがいますね」
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定期試験があるので、更新が途切れる、あるいは遅くなります。誠に申し訳ございません。
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