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第1章 遥か高き果ての森
五話 説明とレアアイテム
しおりを挟む《…落ち着きましたかね?》
「おう…一応な」
一通り騒いで、ありがたいお節介に対する鬱憤は吹き飛んだ。
さて、それじゃあ気持ちを切り替えて、この力をうまく使う方向にシフトチェンジしていこう。
とりあえず、まだ少しだけ聞きたいことがあるので質問を続けることにする。
「気になってたんだけど、なんで霊力のことをこの世界では魔力っていうんだ?」
《そもそも、この世界では霊力の回復のプロセスが違うんですね》
「というと?」
《霊力は名前の通り、人間の魂が持つ力であり、体外に放出した霊力は自然界に存在する八百万の神々が回復するですね。回復速度は権限レベル次第で決まるですね。話は変わりますが、龍人様のいた世界では、ベクトルは違えど人々は盛んに神を崇めていたですね》
そういやそうだったな。キリスト教やイスラム教、仏教など、地球では沢山の神が崇められていた。あんまりにも宗派が多いし、考え方の違いで宗教同士の争いが盛んに起きている。
ちなみに、俺の家は特別崇めている神はいない。日本独特のあらゆるものに神が宿っているという考えを何よりも大切にし、国土の上に広がる全てのものに信仰を捧げた。
だからこそ、皇家は現代になっても八百万の神々や人界に留まっている霊魂たちから気に入られ、力を得ることができていた。
当然、家系の中にはそれをあたかも自分が成し遂げたかのように横柄に振る舞った馬鹿もいたらしいが、そういう奴はその時の当主に破門にされた挙句、どれだけ強くともすぐに神々にも見限られた。いきなり自慢の種であった術を使えなくなり、のたれ死んだものもしばしば。
っと、話が逸れたな。シリルラ、続けてくれ。
《はい。いかな神といえど、自分を慕ってくれるというのは嬉しいものなのですね。だから、ごく稀に龍人様の家のように長く力を与え続けることもあるのですね。しかし、この世界では一部の人間しか教会を建ててはいないのですね。ほとんどの人間は、信仰など持ってはいないのですね》
「まあ、地球でもそう変わらないけどな」
大多数の人たちは、宗派だのなんだのなんて気にして暮らしてはいないと思うけど。毎日欠かさず何かに感謝してるのなんて、教会のシスターとか神父さんとかだけだ。
《だから、人間にほとんど干渉をしない神々の代わりに精霊と呼ばれる神霊の眷属が霊力を補充するんですね》
「ふむ、それで?」
《精霊は火、水、風、土の四元素を扱い、使う霊力はそれぞれの元素に左右されるですね。故に染まる前の純粋な霊力ではなく、 補充する際に混ざってしまうのですね》
なるほど、だから区別するために霊力ではなく魔力と呼ぶのか。…って、ちょっと待て。
俺、異世界から来たから持ってるの純粋な霊力なんだけど?いや、この世界で生活しているうちに俺のも魔力になるのか?
《あ、ちなみに龍人様の霊力は下級神である私が補充を担当するので綺麗な霊力のままですね。おめでとうございます、バレちゃいけない案件が一つ増えたですね》
…ちなみにバレたら?
《おそらく魔法使いたちの恰好の研究材料になるかと。彼らは魔法の真髄…つまり魔力の根源にたどり着くことこそが使命と考えていますね。そんな綺麗な霊力放って置くわけがないですね》
「ノオォォォッ!」
ついさっき叫んだばかりだというのに、俺はまた頭を抱えて絶叫した。ちょっと転生してからハードモードすぎませんかね!?
…でも、霊力が純粋なままなのは悪いことじゃない。陰陽師にとって霊力は非常に重要なものだ。繊細で心に左右されやすく、絶望したり憎悪に飲み込まれると呪力と呼ばれるものに変わる。
人を呪いにかけ、無残に殺す力に。…俺が何よりも忌避しているものに。
陰陽師として熟達していれば早々堕ちることはないが、俺はまだ未熟だ。だから、変に霊力が変質しないのはありがたいな。
「…はぁ、もういいや。とにかく頑張ろう、いろんな意味で」
《本当に切り替えが早いですね》
そうと決まればまずはこの森で暮らすために寝床と食料の確保だ。シリルラの案内があれば出れそうな気もするが、しばらくはここで自給自足の生活を送ってレベルを上げ、外に出た時に舐められないように装備などを整えることにしよう。
とりあえず、さっきの空波でなぎ倒した木でログハウスでも作るか。権限レベルが最高の今なら土台作りも楽だろうし。飯は…さっき倒しちゃった何かでいいや。火で焼いて食べよう。
そういうわけで綺麗に一直線に開いた道を進んでいくと、やがて空波が消えた地点にたどり着く。するとそこには腹に風穴が空いた灰色の狼らしき何かの死体が転がっていた。きっとこれだろう。
「これが魔物か…」
《ウルフ系モンスターの上級種、グレイウルフですね。集団で狩りを行い、鋭い爪と牙、そして素早い動きで獲物を捕まえるんですね》
ふーん。あれ?でもこいつ一匹しかいないけど?集団で狩りをするなら他のはどこにいったんだ?
《どうやら群れとはぐれてしまった個体のようですね。そして森の中をさまよっていたところを龍人様の空波で腹に風穴を開けられ死んだ、と》
シリルラの説明になるほど、とうなずいていると、ポケットの携帯からピコンッという音が鳴る。取り出してみると、さっきまで表示されていたゲージが消え「アップデートが完了しました!」という文字が浮かんでいた。
「なんだこれ?」
《マップやインターネットの検索機能にこちらの世界の仕様が追加されたようですね。試しにネットを開いてみるですね》
言われた通りにインターネットを開いてみる。すると『地球版にしますか?ヒュリス版にしますか?』という選択肢が出てくる。へぇ、この世界ヒュリスっていうのか。
ヒュリス版を選んでみると、『魔物図鑑』、『冒険者ギルド一覧』『大陸内の国一覧』などいろいろな項目が出てくる。魔物図鑑を選んでグレイウルフを調べると体長から習性、レベルの範囲などが表示される。おおっ、こりゃすごい。
逆に地球版を選ぶとお馴染みの赤いYの文字が特徴的なインターネットが展開される。いろいろ調べてみた結果こちらも問題なく使えることがわかったので、狼のさばき方を調べ毛皮や爪、牙、肉を分別することにする。
「あ、でもナイフどうしよう…」
普段からナイフなんて持ち歩いてるわけ無いのでどうしようかと悩む。
しかしすぐにイザナギ様から受け取った多大なお節介を思い出し、試しに地面に手をついてサバイバルナイフを思い浮かべてみる。
するとわずか二、三秒で手の中に茶色の鋭い短剣が形成された。一瞬その姿を想像しただけなのに、柄から伝わってくる内部の回路は驚くほど密で強力なものになっている。
相当量の土が凝縮されたのか、短剣はそれなりの重量もあった。思わず手を離すと刀身が全て地面に埋まる。どんだけ切れ味いいんだよ。
《すごいですね。たとえ権限レベルが最高だとしても、この数分でここまで適応するとは。龍人様は霊力を扱う才能がありますね》
「いや、今回はたまたまだけどな」
地面からナイフを抜き取り、スマホを片手にさばいていく。ナイフの切れ味は凄まじく、まるで狼を紙のようにスパスパと分解できた。
「ふぅ…こんなもんか」
解体するついでに近くの木を削って作った台の上に解体したものを並べる。血抜きするために切り離した頭部に、注意しながらなんとか剥ぎ取った毛皮、四本足の爪、そして肉。
《おめでとうございます龍人様。称号スキル、解体師を入手したですね。解体する際にどこをどういう風にすれば上手くさばけるのかがわかりますね》
「おっ、そりゃ便利だな。これからしばらくサバイバル生活を続ける中で役に立ちそうだ」
ポウ…
そんな風に喜んでいると、突如狼の頭が光に包まれる。そして少しずつ形を変えていき、やがて光が収まると頭があったところには黒い金属が縫い付けられた灰色のブーツが一足代わりに置いてあった。えっ、なにこれ。
《これは…すごいですね。龍人様、これはドロップアイテムですね。モンスターの特性を引き継いだ魂が実体化したものですね。しかもこのブーツはレアドロップですね》
「レアドロップ?」
《モンスターの上級種の魂が稀に突然変異を起こし、より強力なものになったのがレアアイテムですね。既に所有権は龍人様になっているようですね》
恐る恐る手に取ってみる。金属が縫い付けられているので重いかと思ったが、普通の靴と変わらない重量だった。
…《灰狼のブーツ・疾風》
秘境『遥か高き果ての森』に生息するグレイウルフの魂が変質したもの。レアアイテム。風を操り、装着者が疾風のごとき速さで動くことを可能にする。疲労を軽減する効果がある。縫い付けられた金属は霊魂の核、魂核が物質化したもので、オリハルコンと同等の硬さを誇る。
所有権:皇 龍人
と、頭の中に説明文が浮かぶ。この森遥か高き果ての森っていうのか。いかにもな感じだな。っていうか、オリハルコンと同等って、あの架空金属のオリハルコンか…?
《ちなみにオリハルコンはこの世界に存在する金属の中で5番目に硬質ですね。さらに風の加護もついているとは…》
あれ、ひょっとして俺最初からチートアイテム手に入れちゃった?
《まあ、いいんじゃないですかね。あ、あとその靴は人間の都市で売却すれば三百万リラはくだらないですね。リラはこの世界の単位で、一リラは一円と同じですね》
つまりこのブーツ一つで三百万円はくだらないと!?とんだ掘り出しもんじゃねえか!レアアイテムってそんな高価なのか?
《ドロップする確率は0.5パーセントからプラスマイナス0.1パーセントの範囲なので、持っているのは上級の冒険者か金持ちのボンボンくらいですね》
…うん、もう驚き疲れたわ。
はぁ…初っ端から色々あったけど、とにかくこれから頑張っていこう。
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