陰陽師の異世界騒動記〜努力と魔術で成り上がる〜

熊1969

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第1章 遥か高き果ての森

六話 二日後とミスリルリザード

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ピピピピッ、ピピピピッ

「ん……」

   夢という名の檻に囚われていた意識が携帯のアラームの音により現実にだんだん浮上していく。

   俺は目をつむったまま右腕だけを動かし、頭のすぐ横に置いてあったスマホのボタンを押してアラームを止める。

   カチッという小さな音とともにアラームが止まったのを聞き、もう一方の手で布団をどかそうとする。

スカッ

   が、手は布団を捉えなかった。あれ、いつも布団をかぶって寝てるんだけど…

   うっすらと目を開ければ、視界に移ったのは慣れ親しんだ和室ではなかった。

   見えるのは何も置かれていない、殺風景な部屋。まだ新しい木の香りがし、窓から差し込む陽光が明るく室内を照らしていた。

「…あ、そうだった俺、昨日から異世界に来たんだった」

   そこまで確認したところで俺はむくっと上半身を起こし、完全に目を覚ます。そして自分の体を見下ろした。

    すると、上半身が丸見えだった。爺ちゃんの影響か、寝るときはなぜか上半身裸じゃないと落ち着かない。

   丸見えだった、ということは俺の体に何もかかっていないということで、それは昨日のグレイウルフの毛皮だけでは床に敷く方の布団だけしか作れなかったことを意味する。掛け布団も作ろうかな。
 
《おはようございますですね、龍人様》

   唐突に、頭の中に若い女性の声が響く。抑揚がない声音だったが、どこか無愛想とは感じなかった。

「ん、おはようシリルラ」

   そう返事をし、俺はググッと慣れない場所で寝たことにより固まった体をほぐした。

   首に手を当てて鳴らしながら立ち上がり、近くに落ちていた服をもそもそと着こむ。

   着終わると、扉をあけて寝室から出ていった。

    新しく視界に飛び込んで来たのは、広いリビング兼ダイニング。

   そこには毛皮布団しかない寝室とは対照的に様々な物が置いてあり、長方形の机と四脚の椅子が一つ、左壁に棚付きのシンクとゴミ箱が一つある。

   手製であるそれらの出来栄えに我ながら満足し、一つ頷いてから部屋の中を通過していく。

   リビングの右端、つまりこの家の正面から見れば玄関にあたるドアを開け、外に出た。

   すると眼に映るのは視界いっぱいの緑。周囲の木々は日の光を受けて薄く内側を浮かび上がらせる。

   それを見て俺はああ、やはり別の世界に来たのだな、と自覚した。


●◯●


   俺が異世界ヒュリスにイザナギ様に転生させてもらってから、早2日が経過した。

   その短い期間の中で、俺は〝空波〟で倒れた倒木を中心にその周りの木を集め、携帯で構造を検索しながらログキャビンや家具を作った。

   ログキャビンの外観は一般的な住宅用の二階建てで、面積は約110平方メートル。引いて開く両開き形のドアに高床式のテラス、屋根は片流れ型。場所は最初に転生して目を覚ました場所を整備して使った。

   一階には先ほども見たがリビング兼ダイニングと肉などをさばくキッチン、トイレ、風呂。

   二回はロフトだが、半分は1階から吹き抜けになってるから床の面積は半分くらいだ。

   ロフトにはまだ何も作ってない。もしかしたら住人が増えて改装するかもしれないけど、今のところ手に入ったものを保管しておく倉庫にしてる。

   今は、そのロフトにはこの2日で手に入った肉やら、ログキャビンを作っている途中に襲って来たので倒したモンスターの素材などを保管していた。もちろん劣化防止のために魔術で完璧な空間にしてある。

   次に中にある家具。先ほども見たが一階はリビング兼ダイニングに木製の机、四脚の椅子、棚付きのシンク。洗面所には洗面台。

   最後に、寝室の隣の風呂場にはヒノキ風呂もどきの風呂桶と、体を洗うのに必要なもの。

   といっても森の中なので石鹸やシャンプーなどあるわけもなく、あるのは倒して手に入ったグレイウルフの皮をなめして作った、タオルくらいだ。

   窓はログキャビンを組み立て終わった後、壁をところどころ四角に切って、ガラスの代わりに風の壁をはめ込んだ。

   作成時には、あのグレイウルフをさばいた時の短剣をもう一度作り直して鉈の形にし、それを使って作業をした。

   驚いたことに、この土ツール(俺命名)は土のはずなのにツルツルで、食べ物を切っても問題ない。

   ノコギリやかんななどの工具はなかったが、基本的に全部周りの土から道具を作り出したり、スキル【龍鱗】を発動したら、本物の龍の鱗みたいに肌が変質したのでヤスリの代用品にしたりした。

   内装で文明の利器となるもの、例えば洋式のトイレなどは中に携帯で調べた仕組みをそのまま術式にしてはめ込んだら簡単に再現できた。

   あ、ちなみにトイレットペーパーはないので作業中近くで見つけた紙のような長くてでかい葉っぱを代用してる。水は自分の魔術で代用セルフだ。

   腐敗を防ぐために木を炭化させるのは、例の如く手の平に霊力を集中させてイメージすれば炎を起こせたので、しばらく温度調整を練習してからやった。

   規格を測るのは、視点を変えられるというシリルラに上空から手伝ってもらいながら地面を操作してやった。

   釘や木と木をつなぎ合わせる土は、周りの地面から作り出して使った。もしかして土って最強の資源なんじゃね?と作業中に思った。

  ちなみに、土から物を作り出すのが楽しすぎて、残りMPが空になるまで遊んでいたのは余談である。

   あ、あとちらほら寄ってきたグレイウルフから一つ新しいアイテムを手に入れた。

…《灰狼のベルト》
   秘境『遥か高き果ての森』に生息するグレイウルフの魂が変質したもの。灰色の帯にグレイウルフの意匠の施されたバックルがついている。装備すると本能的な直感が研ぎ澄まされる。空腹に耐えれる時間が長くなる。

それがこれだ。

   これを元のベルトと差し替えて使っているのだが、わざわざ〝天日〟を使わずとも、つけてるだけで常に五感が研ぎ澄まされているので、とても使い勝手がいい。

   まあ、権限レベルの関係でいくら使っても二、三分で全快するんだけど。ログキャビンをまるまる一つ作るために、何度も木を運んできたりして沢山動いたのに、あまりお腹も減らなかった。

   でも多分、この空腹に耐えれる時間が長くなるっていうのは、エネルギー消費だけを抑えるという意味なんだと思う。普通に肉体の疲労は溜まっていったし。

   しかしそこは《灰狼のブーツ・疾風》の効果により、感覚では疲労も六割がた軽減できたのでプラマイゼロだ。

   さらに、ひたすら木を切る、運ぶ、切る、運ぶの繰り返しをしていると【疲労耐性】という通常スキルを手に入れた。これにより、合計で九割の疲労のカットを実現している。

…これ、軽いチートなんじゃないだろうか。

 
●◯●


   数度深呼吸して森の空気を取り込んだ後、中に戻って貯蓄しているグレイウルフの肉と捌く用の土ナイフを持ってくる。

   そしてテラスに積み上げてある昨日のうちに集めといた20センチくらいの長さの枝をナイフで削って鋭くし、肉を適当に切って刺す。

   そうすると、あらかじめテラスに設置してあった薪入りの土台の上で、手頃な大きさの石を使って火を起こす。

   これを他人が見れば、魔術で火を起こせばいいのではないか、と言われるかもしれない。

   しかし、俺は元々陰道は得意ではない。

   昔、修行の一環で一ヶ月ほど山の中に放り込まれた際生き残るために、必死に水を作り出す方法と、小さい頃からよく土を使って霊力の操作技術の修練がてら遊んでいたのでその二つはできる。

   だが、それ以外はからっきしだ。だからいちいち火を起こさなくてはいけない。

   やがて火花が薪に燃え移り、数分待つと炎が大きくなってきたので肉つき枝を立てかける。


ジュウゥ…


   肉の焼ける音があたりに響く。しばらくして表面が茶色になってくると、油が垂れて美味しそうな匂いもしてきた。

「よし、こんくらいでいいかな。いただきます」

   大体の感覚で中まで火が通ったのを確認し、火を消してかぶりつく。

   すると、口の中を甘い肉汁が駆け巡ってゆき非常に食欲を刺激してきた。

「んぐ、んぐ…ごくんっ、うまい!」

   俺はそれに逆らうことなく咀嚼を繰り返す。ああ、このわずかに残っている獣臭さがなんとも…

《…ごくり》

…シリルラ、今つば飲み込まなかったか?

《さあ、なんのことでしょう》

そうか?ならいいけど。

   それから数分後、肉を食べ終えたので手を洗い、立ち上がる。枝は水で洗って土台の近くに置いておいた。

「さて。腹ごしらえもしたことだし、張り切っていくか」
《私はナビゲーターをしますね》
   
   シリルラの言葉を聞きながら、俺はテラスに取り付けた階段を降りて森の中に入っていく。

   今からするのは、探索だ。

   主な目的は魔物の分布と食料を調達できる場所、それと最も重要なのは川を探すことである。

「水分は何よりも重要だからな」
《…主な理由は、いちいち水を魔術で出すのが面倒くさいからですよね》

うっ、それを言われると痛い…

   と、とにかく。食料にしたって、いつまでも貯蓄している肉だけを食べていると飽きる。

   食にうるさい日本人としては、色々と食べてみたいのだ。魚とか果物とか米とか米とか。

《…コメを強調しましたね》

ソウルフードだからな。

   幸い、この『遥か高き果ての森』にはほとんどのものが揃っているらしく、基本何でも手に入るとか。

   他にもポーションという回復薬の原料になる薬草とか、異世界特有の未知の架空鉱石とか未知の魔物とか。

   考えれば考えるほど、異世界での探索というものはテンションが上がっていった。

「それじゃあ、レッツゴー!」
《おー》


●◯●


   探索を開始してから三十分後。

   俺は、携帯のヒュリス版マップと、シリルラの的確なナビゲーションで無事大きな川を見つけることができた。

できたのだが………


   俺は木の陰から、川の水面に口をつけているそれをこっそりと観察した。


「クルルルルル……」


なんかいる。

   なんかっていうか、なんだあれ?でかい銀色のトカゲ?5メートルくらいはあるんですけど。全身の鱗が逆立ってて、刺さったら痛そう。

《魔物図鑑で調べてみては?》

それもそうだな。

   携帯を取り出し、インターネットから魔物図鑑を選出する。

   そしてキーワード検索を選び、『トカゲ、銀色』という文字を打ち込むと、一番上にすぐそこのトカゲに酷似した、写真付きの詳細が出てきた。


《ミスリルリザード》
種族:蜥蜴種
   秘境『遥か高き果ての森』に生息する魔物。蜥蜴種系統の上位種で、名前の通りミスリルでできた鱗が全身を覆っている。
   武器は強靭な全身の筋肉と鋭い牙、同じ上位種のグレイウルフを即死させるほどの猛毒、多少の部位欠損なら即時再生するほどの回復力、そして最も軽く鋭い金属と呼ばれるミスリルの鱗の鎧で戦い、生まれつき非常に戦闘能力が高い個体が多い。
   同時に高い知力も併せ持ち、決して格上のモンスターには挑まず、自らの縄張りの中で格下か同格の魔物を狩って一生を過ごす。
   倒す方法は限られており、ミスリルより硬度の高い金属で脳を潰すか警戒心が薄れて鱗の隙間が出ている時に一瞬で首を切り落とすのみである。
   主食は主に肉で、死んだ他の魔物の死骸を漁る。
 稀に進化する個体がおり、その個体は進化した時点で『ボス』と同等の強さを誇る。
   


…また上位種か!

   この森どうなってんだよ。上位モンスターって、ゲームだと終盤のステージに出てくるモンスターって感じだろ?

   それが、なんで水を探しにきただけで出会えるんだ?

《私が説明しますかね?》

あ、頼む。

   それからシリルラに説明されたことを要約するとこうだ。

   まず最初に、この『遥か高き果ての森』は伝説に数えられるほどの超危険地帯である。

   生息するのは、ほとんどが各系統のモンスターの上位種、森の外では絶滅した種ばかりである。

   さらに、『ボス』と呼ばれる通常の魔物とは比較にならないほどの強力な進化個体も何匹も跋扈しているとか。

   何者にも邪魔されず、弱肉強食の言葉通り強い魔物が弱い魔物を喰らい、さらに強く進化していったことで、今の状態になっているらしい。

   場所は地上ではなく、『エナジーコア』という物体の力で、天空の遥か高い場所に浮かんでいる。

   『宝庫』の二つ名で呼ばれ、地上や『迷宮』と呼ばれる、ゲームでいうところのダンジョン的なものに存在するアイテム、資源の全てが自生や自然に作られたりしている。

   生成するためのエネルギーは、大気中にただよう濃密な霊力を『エナジーコア』が吸収し、運用、自己生成しているらしい。

   他にも色々と細かい説明がされたが、とりあえず今は必要なことだけを抜き出した。

…なあ、シリルラ。

《なんですかね?》

…俺、怒ってもいいよな?

《……さあ?》

   いや、マジでキレても誰も文句言わないって。

   だって考えてもみろ。自分のミスで命を吹き消しちゃって、挙句の果てに転生させたはいいけどまたミスってこんな場所に落とすとか。

   ステータスの異常な上昇率と、魔術の力がなかったら即死してた自信がある。

《…まあ、普通の人間であればすぐに死んでいたでしょうね》

だろ?

   俺は必死に叫び声をあげたいのをこらえた。そんなことしたらミスリルリザードに勘付かれるし、他のモンスターも寄ってくるだろう。

さて。じゃあ気持ちを切り替えて……


「ミスリルキター!」

俺は、小声で小さくガッツポーズした。
   
《すごいはしゃぎようですね》

   だってミスリルだぞ?
  
   物語では魔法金属として扱われる、有名な架空金属の一つ。まさかこの世界にもあったとは。

《…ミスリルの詳細も説明しますか?》

プリーズ。

《了解ですね》

   すると、脳内にミスリルの説明文が浮かんでくる。


…『ミスリル』
   ヒュリスの中で最も軽く鋭い金属として存在する金属。その魔力伝導率の高さから『魔法金属』とも呼ばれる。
   同時にヒュリスに存在する金属の中で6番目の硬度を誇り、火に対して強い耐性を持つため加工するのは困難を極める。
   ミスリルはとても希少な金属であり、『十大迷宮』の最下層、もしくは伝説の秘境『遥か高き果ての森』に生息するミスリルリザードの鱗を剥ぎ取る、または鉱山にて稀に発掘されることで入手できる。成人女性の拳一つ分の大きさで全ての王国で平均価格千五百万リラもの超高額を誇っている。
   上記にある通りミスリルは『魔法金属』と呼ばれるほど魔力伝導率が高い。その伝導率は二百パーセント。よく王国の宮廷魔術師の杖などに装飾として使われる。


《…こんな感じですね》
「……ちょっと待って」

一瞬で、興奮が冷めてしまった…

   成人女性の拳一つ分の大きで、平均価格千五百万リラ?つまり千五百万円?高すぎない?

   恐る恐るシリルラにそう聞くと、ミスリルリザードは非常に強力な魔物であり、並みの冒険者では倒せるような代物ではないらしい。

   更に迷宮での遭遇エンカウント率は極めて低いらしく、出会えること自体が稀。

   故に、発見し、討伐したものは、ある意味英雄視されるとか。

   次に採掘する方法だが、こちらも鉱山一つに、3歳児の子供の平均体重と同じ量が取れれば大量だという。

   以上二つの理由により、ミスリルは人間の間では、ぼったくりでは済まされないレベルの大金で取引されているらしい。

   時々金持ちや貴族、都市の領主などが蔵に眠っていたミスリルが使われたものを市場に流すことがあるらしいが、その際は値段の高騰による戦争が起きるみたいだ。

…うん、もう驚くの疲れたわ。


   で、今現在俺の目の前には体長5メートルはあるミスリルリザードがいるわけである。

   図鑑には、ミスリルリザードの体長は3メートルで超巨大サイズと記載してあった。通常サイズはだいたい1メートル~1メートル半。

   もう一度確認しよう。俺の目の前には、そんな常識を遥か彼方に放り投げた5メートルという規格外の怪物がいる。

   そして、ミスリルは成人女性の拳一つ分の大きさで千五百万もする希少金属。

   あのミスリルリザードから鱗を全て剥ぎ取って売ったら、いったいいくらになるのだろうか。

   もはや考えるのもバカらしい。推定では億を超えると思われる。

   しかし、金銭はこの森でレベリングを終えた後、もし地上に降りる事ができた時人間の都市に行くのなら、確実に必要になるだろう。

   俺は別に金が好きなわけではないが、ここで資金源を手に入れても、命の危険以外はなんの損もない。

   更に、ミスリルは魔力伝導率が高い。つまり、霊力の伝導率が高いことになる。

   その効率は二百パーセント。例えば霊力を100流せば、200も武器の威力を増せるのだ。

   いったいどれほどの温度があれば加工できるのかわからないが、あの鱗で武器を作れば今後役に立つことは間違いない。

結論、あのミスリルリザード狩ろう。
  
   そうとなれば早速あれを倒す方法を考え始める。

   たしか、倒す方法はミスリルより硬いもので脳を潰すか、一瞬で首を切り落とす、だったか。

《でしたら、ブーツの加速による特攻を提案しますね。一瞬の威力であればミスリル程度なら切断できるかと》

   なるほど。ならそれでいこう。なるべく鱗を潰したくないしな。

   俺は枝を踏んで音を立てる、なんてベタな展開を起こさないように、静かに体を沈め、地面に手をつく。

   土ツールを作って遊んだ際わかったのだが、最初にグレイウルフを捌いた時のナイフを一本作るので霊力を100消費した。

   たった100であれだけの切れ味を持ったナイフを作り出せるのなら、例えば二十倍の霊力を込めて作り出したらどうなるのだろうか。

   俺は頭の中に両刃の剣を強く想像する。刀身は細く鋭く、切れ味に特化したもの。

   大体の方向性を決めて、最後に霊力を2000くらい地面に流し込んだ。

ズズッ…

   すると、手のひらの中に拳二つぶんほどの剣の柄が飛び出てきた。

   それを一気に引き抜くと、綺麗な茶色をした、二メートルほどの大太刀が姿を現す。

   持つだけでわかる…これは、かなり強い武器だ。土だけど。

   満足げに一つ頷き、軽く足に力を込めて跳躍し隠れていた木の枝の上に着地する。

   しっかりと両足でバランスをとると、大太刀を持っている右手を引き絞り、剣の腹を左腕で支えた。

   次いで、スキル【身体能力超強化Lv1】をいつも霊力を巡らせる感覚で発動する。

「シッ!!!」

   そして次の瞬間、俺はブーツの力により凄まじい速度でミスリルリザードに向かって一直線に跳んだ。

狙うは…首と胴体の繋ぎ目ッ!

「セアァッ!」

   俺の声によりようやくミスリルリザードは頭をあげるが、その視線上に俺はいない。

トンッ!

   なぜなら、霊力を空中で固めて、それを踏み、移動したからだ。

   回転により速度の増した大太刀の柄を両手で持ち、一気に振り下ろす!

   すると、スパァンッ!!!という空気を切る音とともに、俺の斬撃によりミスリルリザードの頭が上に跳ね飛んだ。

   最初は少しだけ抵抗があったが、鱗の下はあまり固くなかったのか太い首をやすやすと切り離すことに成功する。

   だが、勢い余ってそのまま川に突撃してしまった。

「ぷぁっ!冷たっ!」

   ゲホッ、頭から思いっきり突っ込んだから鼻に水入った…

《やりすぎですね。ほどほどにしたほうがいいですね》
「おっしゃる通りです……」

   思わず咳き込んでいると、ふと自分の体に影がかかる。

   何事かと見上げてみれば、空高く舞ったミスリルリザードの頭部が落ちてくるところだった。

「うぉっとぉ!?」

   慌ててその場から飛び退き、衝突を回避する。

   ミスリルリザードの頭は、激しく水しぶきを撒き散らしながら川底に着地した。それでもなお、下顎までしか沈んでいない。どれだけ巨大かがよくわかる。

   背後でも、ドッ、という重い音とともにミスリルリザードの体が地面に伏した。

   無言で頭部に近づいていき、切り口を見る。すると、なんのささくれもなく綺麗な切り口だった。

「…すげぇ」

   まさかここまで簡単に倒せてしまうとは。もうちょい面倒なことになるのを想定してたんだが。

   まあ、楽に倒せたのは悪いことではない。真正面から挑んでたらどうなってたのかわからなかった。

   早速、血抜きをするために大太刀を川底に突き刺し、両腕で頭を持ち上げる。ミスリルの説明通り、見た目に反して結構軽かった。
   
「っと」

ポウ…

   頭を縦にして一息つくと、見計らったかのようにミスリルリザードの頭部が白く輝き始める。

「えっ、これってもしかして…!?」

   俺が動揺してる間にも光は強まっていきーーー





カッ!!





   ーーーやがて、光がおさまるとそこにはミスリルリザードの頭部の代わりに精緻な装飾の施された銀色の剣が突き刺さっていた。


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