陰陽師の異世界騒動記〜努力と魔術で成り上がる〜

熊1969

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第1章 遥か高き果ての森

十四話 新武器作成

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とある日。

「うーむ…」
《どうしたのですか龍人様?》

   鍛錬を終えた俺がログキャビンのテラスにてあるものたちを並べ、その前にあぐらをかいて唸っているとシリルラが話しかけてきた。

   初日にグレイウルフを解体した時からそうだったが、彼女はどうやら俺の思考だけでなく俺が何をやっているのかも見えているようだ。

   で、結局俺が今何をしているかという話なんだけど。

   実はあるものを作ろうとしているのだが、それについて色々と悩んでいる真っ最中である。

「……いつまで悩んでおるのじゃ?」
「リュート様大丈夫ですの?」

   そんなことを考えていると、ひょこっと両肩に手が置かれそれに伴うようにそれぞれ一つずつ顔が飛び出た。

   どちらとも端正なそれは、人間態になっているエクセイザーと、今日も今日とて遊びにきたリィスである。

    あいつ以外に女性と関わりなどほとんどなかった俺としては、こんな魅力的な女性と可愛らしい少女が身を寄せてきているというのはいささか落ち着かない。

「い、いやほら、ここは慎重に選ぶ必要があってだな。だから……って、あれ?」
「み、魅力的な……くっ、何度言っても直らぬのか……いや、本心である以上仕方がないのか……」
「可愛らしい、可愛らしい……ふへへぇ」

《…………………》

   なんか二人とも顔を真っ赤にしてブツブツと何事か呟いていた。彼女たちの表情は一瞬でころころと変わっていく。

   ともかく、いい感じ?にこちらから意識がそれたのでその隙に広げていたものをまとめ、少し移動してそちらで改めて思案を続けることにした。

   あ、これは余談だがエクセイザーはなんか気に入ったのか、最近はよく人間態で過ごしている。そして俺のことをじっと見ているが、何をしているのだろう。

《バカ龍人様》
「なぜに唐突な罵倒!?」

   まあ、内心で綺麗だなーと思うと途端にぱっと顔をそらすけど。これについては普通に恥ずかしいのだとわかっていた。

   と、まあエクセイザーのことは置いといて。かれこれ一時間ほど悩んでいるし、そろそろ決めなくては。

《……私は従来の方がいいと思いますね》
「ん、シリルラはそう思うか。けど男としてはそっちも捨てがたい……うむむ」

   痺れを切らしたように提案してくれるシリルラ。なんか拗ねているような、怒っているような声な気がしないでもないが……

   ……触れるとまた仕返しをされそうなので口には出さないでおこう。

《で、どうするんですかねロリ人様?》

   口に出さなくても仕返しされた。

「だからロリコンじゃねえって!そもそも俺が好きなのはあいつだけだし。もう伝えられないけど」
《っ……さっさと決めてくださいバカ人様》
「それもはや原型ほとんど残ってないじゃん。ロリ人もだけど ……って、また思考がそれた」

   今更だけど、 俺が作ろうとしているのは〝銃〟である。

   銃とは、人類がより短い時間で苦労することなく効率的に人を殺せるように、そして戦争に勝つために作った現代兵器の一つ。

   実はリィスに奇襲攻撃をされた時に思ったのだ。俺は遠距離からの攻撃に対する対抗策を持っていないと。

   以前にも考えた通り、俺の最も得意なのは剣だ。人生のうちで修練に費やした時間が一番長く、負ける気はしない。

   けれどそれはあくまで近接戦闘の話。霊力を使えば中距離戦等も可能にはなるが、やはり純粋なリーチでは間合いに入らなければ何もできない。 

   そこで登場するのが銃というわけである。毎回札などを取り出すより、銃なら抜いて撃つ、それだけの動作で済む。

   陰陽師の中にも、弾丸に退魔の霊力を込めて妖退治をしていた流派だってあるし、今も海外で活躍している退魔士や陰陽師にはそういう方向の人もいる。

   その系統に属する親戚のおじさんに小さい頃、射撃術の手ほどきを受けたことがあるので、基礎はできてる。

   じゃあ後は実物を作るだけだろ、何うだうだ言ってんだってことになるんだけどな……銃の見た目だ。
   
   そう、見た目。ここで俺の中の男のロマンが顔を出した。そいつは俺にこう訴えかけた。

「ただの銃を作るなどつまらない。せっかくなら異世界の不思議素材を駆使し、ファンタジー感満載なロマン武器を作り上げるのだ、ってな」

   結局俺はそれに負けた。しかしいざ作らんとなった時に、また普通の見た目にするか派手目にするか悩んでいるというわけである。

   我ながら結構しょぼい、しかし男としては壮大な悩みだった。

…『黒鋼クロハガネ
   黒い色をした鋼。通常の鋼の約5倍の強度と靭性を持ち、主に駆け出しから一人前になった冒険者の持つ武器の素材として使われる。大気中の魔力を吸い取り僅かながら自己修復機能を持っているので、よく手入れすれば年単位で使える。

…『レクト鉱石』
   白い色をした鉱石。少しでも摩擦を起こすと激しい雷を生み出す。主に魔物を捕獲する際の麻痺罠の要として使われ、強度もそこそこなので重宝されている。

…『玉鋼』
   名の通り玉状に固められた鋼。炭素を多く含んでおり、加工すれば強靭な剣にも盾にも鎧にもなる。

…『超高純度鉄』
   砂鉄から作り出された混じりっけのない純鉄。非常に粘り強く、錆びず、酸に溶けず、低温にも強い。ただしそこまで強度があるわけではない。

…『魔封石』
   薄い緑色の鉱石。名の通り魔力を封じ込める力を秘めており、主に犯罪を犯した裏冒険者や魔法使いの拘束に使われる。また、城の外壁にも使われており、魔法に対する耐性が非常に高い。

…『ディフィル鉱石』
   青色の鉱石。衝撃に対する耐性が高く、鎧のコーティングや職人の作業用金槌などに使われる。

…『魔伝石』
   ミスリルの劣化版と称される鉱石。その魔力伝導率は250%とミスリルをも凌ぐが、ミスリルほどの硬度を持たないのでそう言われている。ベテランの魔法使いが杖の素材として使う。

   ちなみに使うものはこんな感じだ。あとは耐久性に定評のあるエクセイザーの皮とかも使う。

《……では、中間にしてみては?》
「中間?」
《はい。土台は普通の物にして、少しだけ改造を加えるのですね。何も完全にそれっぽくする必要はありませんね》
「なるほど……それが一番いいか。サンキューシリルラ」

   そういうわけであっさりとシリルラの案が可決され、これまで延々と悩んでいたのが全て無意味になった。

   ……別に悲しくなんてないし。むしろここら辺でまとめられたからよかったし?

   早速、作業を始める。タイプは大型の自動式拳銃オートマチックガンで、銃身は上下二連、全長は約30センチほどだ。

   ドラゴエッジ抜き、並べた素材を整形していく。一ミリも違いがあるのは許されないので、慎重にパーツを削り出していった。

   【彫刻師】のスキルで金属の扱いが以前より格段に得意になっており、わりと作業はスムーズに進む。

   スライダ、アイアンサイト、ハンマー、セーフティレバー、グリップと銃に必要な要素をどんどん完成させていく。

「……できた!」

   そして、体感時間で数時間後。俺は出来上がったものをごとりとテラスに敷いた作業シートの上に置き、額に流れる汗をぬぐいながら満足げに笑った。

「終わったのかえ?」
「もう、酷いじゃありませんの。お相手して欲しかったですわ」
「ごめんごめん、でももう完成したから」

   二人に謝りながら、それに目線を戻す。作業シートの上に鎮座しているのは、一つの大きな漆黒の銃だった。

   真ん中がライン状に発光している近未来的なフォルムのバレルには二つの銃口が付いており、それぞれ下は霊力を用いた衝撃弾と、上は鉱石で作った実弾を使う。

   紫色の魔物の皮で覆われたグリップの付け根は尖った造形で、バレルの下部分も逆さにしたヒレのような角ばった形状だ。

   グリップの上に実弾用のハンマーと、さらにその下には真ん中に淡く光る紫色の石をはめ込んだ円形のつまみが。

   グリップの付け根には左右両側面にスイッチがあり、一つはマガジンキャッチ、一つは霊力弾の機能停止ボタンだ。

   トリガーは二つあり、上は実弾専用、下は霊力弾専用。霊力弾のほうはある鉱石を使ってつまみで威力調整できるようにした。

「名付けて、〝オールス〟Mr.Iマークワンってとこだな」

   ちなみに名前の由来は、銃口が二つあることから双頭の魔物オルトロスをイメージしてつけている。

「ほう?それが新たな武器か。格好いいではないか」
「おっ、そう思うか?」
「うむ。攻撃的なデザインで良いと思うぞ」
「ありがとエクセイザー。んじゃ、ちょっと試してみるとしますか」

   そう言いながらオールスを持って立ち上がり、ブーツを履いてテラスから地面に降りる。

   近くにある木を適当に身つくろい、弾倉を装填したオールスMr.Iを右手で構え左手で支え、まずは上の引き金を引いた。


ドガンッ!!


   凄まじい音を立てながら、銃口から音速で弾が撃ち出される。それは真っ直ぐ木の幹を捉え、貫通して目測で直径十センチほどの大穴を開けた。

「うし、ちゃんと直線的に進んだからライフリングは機能してるな」
「な、なぁ!?」
「な、なんですの!?鼓膜が破けるかと思いましたわ!?」

   後ろを見れば、あまりの音に耳を塞いでいた二人が心底驚いたというような顔をしていた。 まあ初めてみるだろうしな。
   
   だが、まだ終わりではない。次は霊力弾の方だ。つまみの突出している部分を五つの浅い溝の一番左にセットし、真ん中の石に指を触れて霊力を流し込む。

   すると銃身に走るラインがひときわ強く輝き、本領発揮とでもいうように低いを音を立てた。

  さっきのとは別の木にオールスMr.Iを向け、下の引き金を引く。するとオールスMr.Iが放電し、ラインがさらに強く光り……


ゴバァンッ!!!


木が、文字通り木っ端微塵になった。

   音を立てて冷却を始めるオールスMr.Iと粉々になった木を見比べて、俺は目を瞬かせる。

「一段階目でこれかよ。自分で作っておいて五段階目とか絶対使いたくなくなったぞ。絶対ミサイルレベルの破壊が起きるだろこれ」

   ふと二人は今度はどんな反応をしているのだろうと思って振り返れば、あんぐりとしていた。

   開いた口が塞がらないという様子で、俺の手にあるオールスMr.Iを凝視している。多分同じ立場だったら俺もああなるだろう。

《成功ですね、龍人様》
「ん、そうだな」
「………いやいや、失敗じゃろ。なんてものを生み出しておるのだお主は!?」
「ヤバイですわね。あんなものぶっぱなされたら死ぬ自信しかないですわ……」

   さも当然であるかのように応酬を交わす俺たちに我に返って突っ込むエクセイザー。未だ呆然とした様子のリィス。

「だ、大丈夫だって。普段は絶対使わないから」
「そうしてもらわんと、こちらの気が休まらぬぞ……」
「あの、私が来るときは家の中においてくださいます?できれば二階の隅っこの方に」
「はい、善処します」

   しかし二人の反応はともかく、無事に完成して良かった。かなり悪戦苦闘して作ったからな。

   特にレクト鉱石の扱いはかなり難しかった。何度感電しかけたことか。だが結果は上々。ちょっと威力がやばい気がするけど、なんとか作れた。
   
   でもこれは二人にも言った通り、遠距離からの攻撃や奇襲に対するための打開策。 普段は使う機会なんてないだろう。

   



   ーーこの時の俺は、そう思っていた。まさかすぐに使うことになろうとは全く予想せずに。
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