天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

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再会

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 勝手に開いた扉の向こうにはフランの姿があった。

 俺に気づいたのかフランは俺に近寄り声をかけてくる。

「あっ! クレスさん? 何故ここにいるのですか?」

『に……げ、ろ』

「えっ?」

 俺の身体に魔法で出来た糸みたいな物が絡み付いている。

 それも魔力感知能力が高い者だけが見破れるかどうかまで洗練された魔力の糸が。

 操られた身としては初見では避けきれないだろうな。

 糸が飛んでくるとかじゃなく身体に絡みついた状態で糸が現れたんだからな。

「きゅ、きゅい~」

 アリアスにも糸が巻き付いている。

 人化を解くと魔力のコントロールが乱れる、今のアリアスは抵抗することが出来ないみたいだ。

 俺はぎこちない動きで鞘から出されたグランゼルを振り上げると、フランに襲いかかった。

 流石に抵抗しているからか、スローのように振られた剣をフランは容易く回避する。

「に、げろ!」

 やっと俺の異変に気づいてくれたのか、俺を避けながらフランは扉から部屋を出ていく。

 俺はこの糸から抜け出す方法を探す。

 糸を絡み付けるだけで人を操る能力とかチートすぎるだろ。

 フランはすでに見えないが、足が勝手に動いていく。

 たぶんフランの後を追っているのだろう。

 俺を操っている男は俺の近くにはいない、遠隔操作系の能力は操作している対象と離れる程に魔力の消費が多くなるはず。

 しかも意識がある人を動かすんだ、途方もない時間を能力を磨くことに使ったんじゃないか。

 俺は操作系の能力をチート級まで引き上げた奴を知らない。

 普通なら動きに逆らうと簡単に脱出できるからだ。

 俺に能力をかけた男は気にくわないが不遇のようなスキルをここまでする程の奴だ、侮れない。

 そんな事を思いながら進んでいるとピタリと足が一つの扉の前で止まる。


『なに! フランを襲っただと!』

 聞き覚えのある声が聞こえた後に自動で扉が開く。

「フランを連れてきた事に恩は感じていたが、ここまでされる義理はないぞ!」

 俺の姿を目で捉えた王は俺を指差し決められていただろうセリフをペラペラと垂れ流す。

 周りに居た騎士が俺を囲む。

 俺は剣をぎこちなく振るうと触れてもいない筈なのに騎士達はその場で血を流しながら倒れていった。

 操るだけじゃなく、その糸で殺すことも出来るのか……反則だぞ。

「フラン! ダメじゃ逃げるぞ」

「何か理由があるかも知れません、クレスさんの話を聞いてくださいませんか?」

 フラン流石にこの状況でそれはダメだ。

「フランお前もあの小僧の仲間か!」

 フランの言い分も聞く事もないと言うように予め設置していたのか床一面に魔法陣が現れる。

 光が部屋中を満たし、その光が消えると城の外に転移していた。

 そこは大きな広場の中央、昼には人々が行き交い、人々がベンチに腰掛け話す交流場にもなる。

 皆んなが寝静まる夜中の筈なのに周りを囲むように人々がこちらを見ている。

 あらかじめ準備されてたように……。

「民よ、聞け! 儂を殺そうと策を仕掛けた罪人がここにおる」

 俺の真上には映画のスクリーンのように先ほどの王が居た部屋で起こった出来事が鮮明に映像として流れている。
 
「一人はフローラを殺し、儂をも殺そうとした小僧じゃ!」

 それも決められていたセリフか?

「もう一人は、フローラを儂が殺したと小僧にそそのかされ、小僧に手を貸した娘」

 フランは反論もしない、オロオロとして何が起きているのか分かっていないようだ。

 殺せというコールが段々と大きくなり聴こえてくる。

 うるせぇ!

 王はフランの目の前に剣を投げる。

 準備万端だな。

「……フローラの娘じゃが罪は罪……もしもフランが小僧を斬れば今回の事は水に流す」

 人々は王の言葉に息をのみ、尊敬の眼差しを贈る。

 フランは人殺しなんかやったことない娘だぞ……俺を殺すことが出来ないと愚王は初めからわかってるんだよ!
 
「さぁ、やるのだ!」

 フランは言われたままに剣を取ると……。



 その剣で王を突き刺した。

「ぐっ! 何を……」

 王は抵抗も出来ないまま、倒れた。

 人々も突然の出来事に声を失い、広場は静寂に包まれた。



『これはなんという大罪でしょう』



 静寂を切り裂いた男は驚いたという見え見えな演技をしながら登場した。



『王は死んだ、大丈夫です! 剣聖ヴェルドが大罪を犯した罪人をこの場で処刑し私が王になりましょう』

 ヴェルドの筋書き通りに王も踊らされたと言うわけか。

 そして王を殺したフランを殺し、剣聖ということは王に最も近い権力がある。

 誰も文句は言わないだろうな。

「い、いやぁぁぁ!」

 フランはやっと自分がしたことに気づいたのか血塗れの剣を持ち、倒れた王を見ながら絶叫する。

「これはこれはフラン様がやっと自分がしたことの重大さを理解してくれましたか」

 惚けたような声はフランには聞こえない。

「私は……私は……」

 白銀のオーラがフランを中心に膨れ上がる。

精霊化オーラルフォーゼ

 そして目の色が蒼色から金色に変わる。

「クレスさん」

 俺に助けを求めるように、泣きそうな顔で一言呟いたフランはその場で倒れた。

 精霊化が発動したことで人々は動揺する。

「また不幸を起こすのですか! 最凶の娘は!」

 ヴェルドは倒れたフランに向かって叫ぶ、さっきの演技とは違う、ヴェルドから初めて心がこもった声を聞いた。

 ヴェルドは腰にかけている鞘から剣を引き抜くとフランに向かって駆ける。


 
「検討違いもいいところだぜ! お前らが勝手に勘違いして、この娘を追い込んだんだろうが!」

 一人の男がヴェルドとフランの間に入る。

 だがヴェルドは止まらない。

 その乱入者に強く言葉を放つ。

「どけ!」

「いやだね、そうだ! 周りの人達には眠ってもらおうかな。騒ぎになると、どこぞの英雄君は嫌がるからね」

 その男を中心に波紋のように魔力が人々を襲う。

『眠れ』

 指をパチッと鳴らすとバタバタと人々が倒れていく。

 アイツの顔、つい最近見たことがある気がする。

「門番だ!」

 ルナリアに来たときにいた門番の騎士だ!

「俺の……いや、僕の事を忘れたのかい?」

 闇のような煙が剥がれ落ちると、そこには黒髪黒目の美少女がいた。

「誰ですか、貴女は」

 ヴェルドは突然目の前の男が女に変わった事で距離を取る。



『僕かい? 僕はね、つい最近までずっと人探しをしていた、ただの』


 俺には心当たりがある。

 突然消えたことを怒ってるのか?

 その美少女は俺を見ながら正体を明かす。


『ユウカ・サクラギ。闇の勇者だよ』



 俺は悪くないから! 俺を見ながら言うのはやめて欲しい。



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