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教育
しおりを挟む「手加減してやるからかかってこいよ」
アクアに向かって宣言すると。
『シロいるんだろ?』
精霊神のシロと俺は心の中で直接会話する。
『はい、転移します』
シロは俺の意図を汲み取りダリアードの外、邪魔が入らない草原に俺達を転移した。
「フランよく見ておけよ」
俺はアクアから目を離さないようにしながらフランに戦闘という物を教えようと思った。
フランは大きい声で返事をする。
「はい!」
「まずは相手より心理的に優位に立つことは重要だ。俺はまだ力を出してない! と全力の力を出している状態でも相手に余裕を見せろ」
「油断を誘うんですね!」
「違うな……」
アクアは待ちきれないとばかりに俺に突っ込んでくる。
「僕の前でそんなに喋ってて大丈夫ですか!」
さすが剣聖になるだけはある。
昔の一直線のような剣術が嘘のように読みづらい。
だがまだまだだ。
「くっ!」
俺はアクアが鞘から一瞬で振り切った剣を避ける。
『油断を誘うんじゃなく、勝てないと思わせるんだよ』
間合いを取ったアクアに対して俺は動かずにフランに声をかける。
「剣をギリギリで避けても余裕の笑みを見せろ、心理的有利を取るんだ。お前の剣なんて当たるわけがないだろ、雑魚が! みたいな感じになる」
「勉強になります!」
感心しているフランの横で。
ユウカやアリアスから非難の声が上がる。
「いやいや、変な事教えないでよ!」
「きゅい!」
「戦闘中にそんな事考えてるのクレス君だけだよ」
俺だけなのか......。
アクアの瞳が変わる。
「僕はまだ舐められているのですね」
蒼の瞳が青色に。
『精霊化』
アクアの精霊化を見て思う。
「魔力がない奴に精霊化とか可笑しいだろ!」
「僕は本気です」
俺も剣を構えて迎え撃つ態勢に入る。
「フラン、圧倒的な魔力差がある時にはどうするかわかるか?」
「いえ」
フランは俺の問いに首をふる。
「それはな、魔術や剣術に費やした時間が物を言うが......考えろ、どうやったら勝てるかを最後まで! 何も思い付かなかったら逃げるのが最善の手だ」
「……はい!」
少し考えたフランから良い返事が返ってきた。
「僕はお兄様に認めてもらう!」
「だからな……」
俺はアクアじゃ到底見えない速度でグランゼルを振るう。
剣だけに狙いを定めて。
グランゼルはアクアの持っていた剣に触れ合うとアクアの剣の刀身を半分に斬る。
『俺をお兄様と呼ぶんじゃねぇ』
何が起こったのかアクアは理解出来てない。
圧倒的な実力差。
「圧倒的な実力差があった時の対処法をフランに教えよう」
失った剣を見ているアクアを尻目にフランを教育する。
『その時は逃げろ! 抗っても実力差は埋まらない』
「でもそれでも勝たないといけない時はどうするのですか?」
アクアは剣を投げ捨て、右手に剣を召喚する。
アクアは俺達の会話を邪魔するように魔法で召喚した剣で俺を攻撃してくる。
「自分がその場で相手を超える程に実力をつけるか、後は運だな」
「そうですか、そちらの方は今自分の限界を超えようとしているのですか?」
俺はアクアの剣を避けながらフランと会話する。
「これは悪い例だな、実力差があるのに相手を見ていない、これじゃ得る物もないし、勝てる筈もない」
「僕はずっと貴方を見ていました! 目標は貴方を倒すこと!」
アクアは俺達の会話を聞いていたのか剣を振りながら会話に入ってくる。
「知ってますか? 英雄が世界を救った日からリリアさんは変わってしまった、僕は剣聖になるまで貴方の存在を忘れていた!」
そういえば女神が記憶を書き換えたよな、アクアは思い出したのか。
「俺が言いたいのはお前は俺を舐めてるって事なんだよ、剣聖になったぐらいで調子に乗るなよ」
「……」
アクアは眉間にシワを寄せる。
自覚してたみたいだな。
「お前はずっと何かを狙ってるが、精霊化の能力か?」
「ッ!」
誘いに乗ってやろうじゃねぇか。
俺はトドメを刺そうとアクアの剣を避け、左手でアクアの腹を殴る。
『チェンジ』
瞬間に俺の視界が逆転する。
「チッ!」
俺は舌打ちと共に自分の状況を確認する。
「これでわかったでしょ、僕に勝つことは不可能です」
俺が殴っていたはずなのに、アクアが殴った事になっている。
俺は腹を抑えながら言葉を紡ぐ。
「精霊化の相手には自分も精霊化になるしか対等に戦える方法はない、だけどなフラン」
俺は再度アクアに突っ込む。
右手に持っているグランゼルをアクアに向かって振るう。
「何度やっても一緒ですよ、これを使うと皆んな諦めるんですよ! 僕には勝てないと『チェンジ』」
相手と自分の全ての状況を入れ替えるアクアの能力を逆手に取る。
俺の視界が逆転する。
その瞬間に俺は剣を戻して、何も持ってない左手を振る。
『俺は例外だ』
アクアは何も持っていない左手をただ振り抜く。
「ッ!」
そして俺は困惑しているアクアの顔面を左手でぶち抜く。
『出直してこい、雑魚が』
俺達は立ち上がらないアクアを放置して国に戻るのだった。
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