薄幸の巫女は召喚勇者の一途な愛で護られる

砂城

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1巻

1-2

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 勇者は知らないが、シアーシャの生い立ちは恵まれたものではない。弱い回復術が使えたために巫女みことして神殿に入れられはしたが、貴族の庶子である彼女はまっとうな扱いを受けてこなかった。後ろ盾のない巫女みこなど、衣食住が保障される分、孤児より多少ましな程度だ。
 これまでほとんど『大事』にされたことのないシアーシャは、勇者の侶伴となりはしたが、そこに何かの希望を抱いているわけではない。この身は勇者をこの国にとどめるための道具でしかない。
 道具として、与えられた仕事をする。その中にねやの相手が含まれていたとしても、覚悟の上だ。
 なのに――
 まさか、勇者が自分の意思を尊重してくれるなど、考えたこともなかった。

「……お体は? その……先ほど、あれほどお疲れの御様子でしたし……?」

 まどいと、道具としての使命感、そしてうら若い娘としての恥じらいが入り交じり、やっと返せたのはそんな言葉だ。

「眠気はおぼれかけて吹っ飛んだ。体は――ものすごく疲れたはずなんだけど、シアちゃんと出会えたからかな。アドレナリン出まくりみたいで、今のとこは問題なし」

 ドキドキと激しい鼓動は、自分のものなのか、それとも抱きしめられている勇者のものなのか。
 判然としないながらも、そっと上目遣いに勇者の顔を見上げると、その頬が赤くなっているのが分かる。
 それが風呂で温まったせいばかりではない――と、思いたい。
 そんな考えが浮かんできたことに一番驚いたのは、シアーシャ自身だった。

「あ、あの……わたくしは、ねやの作法はほとんど、その……」

『本物』の侶伴候補だった高位な貴族の令嬢の巫女みこたちの世話役として、シアーシャも侶伴に必要とされる講義には出ていたが、ねやについては『勇者の望むことを受け入れるように』とだけしか聞いていない。令嬢たちは各々おのおのの家で必要最低限ではあってもその手の教育を受けていたため、それで問題ないのだが、シアーシャはそうはいかなかった。基本的なことは知ってはいても、実際にどのように行われるかについては全くと言っていいほどの無知だ。

「大丈夫、ちゃんと優しくする。ちょっと今の俺の状態だと難しいけど、でも、できるだけ、ね?」

 けれど、そうまで言われてしまい、彼女はうなずくことしかできなかった。


   ◇ ◇ ◇


 浴室から寝台までは、そのまま勇者に運ばれて移動することになった。

「お、重いですからっ」
「どこが? マジで羽根みたいに軽いよ」

 軽く笑いながら言う勇者は、最初に出現したときのくたびれて生気のなかった彼とは別人のようだ。しょうひげはそのままだが、湯につかったからか肌には張りとつやが戻り、髪も湿り気をびてしっとりとつやめいていた。

「濡れたままだと風邪ひくし、俺が脱がすけど……ホントにいいんだよね?」
「は、はい……っ」

 トサリ、と寝台に降ろされる。思いがけなく勇者の顔が近かった。
 やや長めの前髪の間からのぞくしっこくの瞳に見つめられる。そういえば、最初に見たときはこれほどの黒ではなく、もっと茶色味が強かったはず、などと頭に浮かんだ。だがそれも、衣の合わせにかけられた手の感触に、あっという間にどこかに行ってしまった。
 濡れた衣を脱ぐのはやっかいで、勇者の手の動きに合わせてシアーシャも体を動かす。
 まるで自ら望んでいるようでしゅうに顔が赤くなるが、肌をかすめる指の感触は決して嫌なものではない。
 最初から裸の勇者は恥ずかしくないのだろうか。いや、彼はまだこれが夢だと信じ込んでいるのだ。夢の中のいちいち、そんなふうに思っているのかもしれない。
 それがそうではなかったと分かったとき、彼はどんな態度を見せるのだろう。
 驚くのは間違いない。その様子を想像して、思わずシアーシャの唇が笑みの形になる。

「ああ、やっと笑った」
「え?」

 シアーシャは勇者を見ていたが、勇者もまた彼女のことを観察していたらしい。

「笑い顔、ものすごくかわいい。あ、もしかして、俺の態度がおかしかった?」
「そ、そんなことはございませんっ」
「そう? ……まぁ、最初から真っ裸だもんなぁ。がっついて見えても仕方ないけど、でも、ホント、ちゃんと丁寧にするから」

 そう言いながら顔を近づけてきたかと思うと、シアーシャの唇に少しだけかさついた勇者のそれが押し当てられた。

「っ!」

 それがせっぷんと呼ばれる行為であることくらいは、シアーシャも知っている。けれど知識でそうと分かっていても、実際に経験するのはまた別だ。
 もともと赤くなっていた顔がこれ以上ないほどに上気する。

「ホントかわいいなぁ」
「ゆ、勇者様っ!」
「ちょっとあせった声もかわいい――けど、どうせなら名前で呼んでほしいかな」
「……え? で、ですが……」

 そう言われて、シアーシャは気づく。勇者にも名前があるのだということに。
 数世代に一度しか召喚されない勇者は、唯一無二の存在だ。たぐいまれなる力を持ち、魔津波を治めてこの国を平和へ導いてくれる者であり、その代わりは誰にもできない。
 そんな勇者とは、たった一人を指し示す呼称である。
 ちなみに、過去の勇者は『先代』『先々代』『第〇代勇者』などと呼び慣されている。
 神殿に残された記録をたどれば彼らの名も分かるだろうが、『勇者』と言えばそれだけで通じるため、周囲の者たちも、シアーシャ自身もそれが当たり前だと思っていた。
 けれど勇者――今、目の前にいる彼も、一人の人間なのだ。
 名前があって当然であり、故郷には家族や友人がいたはずである。それをこの国の都合で勝手に召喚した。無論、彼の都合など一切考慮せず。
 勇者にしてみれば、不条理極まりないことだろう。
 シアーシャは今まで考えたこともなかった、この国に住まうものとしての視点でしか考えていなかったことが、急に恥ずかしくなってぼうぜんとする。
 しかし、シアーシャの沈黙を別の意味に受け取ったらしい勇者が口を開く。

「ああ、そうか。俺、まだ名乗ってなかったっけ。俺はね、りゅういちろうって言うんだ」

 聞きなれない響きだが、彼のいた世界ではそれが普通なのだろう。せめて、自分だけはきちんと彼の名を呼びたくて、シアーシャはなるべく近いと思える音を探す。

「……す、だりゅー……いっ、ちろー、さま?」
「あー、惜しい、切るとこが違う。ってか、言いにくよなぁ。無理せず龍でいいよ、学生時代もそう呼ばれてたし」
「リュー、さま?」
「くぅっ! ちょい発音が違うとこがまたっ……うん、それでいい。てか、そう呼んで?」

 嬉しげに笑う様子は、ひげづらなのに妙に子供っぽく見え、シアーシャの胸がどくんと強く脈打った。
 それがなぜなのか? 深く追究するのが恐ろしく、慌てて他のことに思考を向けようとして気がつく。
 何時いつの間にやら、自分も勇者――龍一郎と同じく、一糸まとわぬ姿になっている。

「っ!」

 どうやら会話の最中も彼の手は止まっておらず、シアーシャも無意識にそれに合わせていたらしい。再びしゅうが押し寄せてきて、彼女は腕を動かして少しでも隠そうとした。だが、それを大きなてのひらさえぎられる。

「きれいだよ。だから隠したりしないでほしいな」

 そう言われても、シアーシャは自分の体の貧相さを知っている。
 この国の女性にしては長身で、あまり肉付きがよくない。小柄で豊満な女性が好まれるこの国の基準では、外れもいいところだ。
 それなのに――

「色が白くて、きゃしゃで……マジで、俺の理想まんまだな」

 シアーシャを見る彼の瞳は嬉しげで、だからこそ本心からの言葉だと分かる。
 たんのうするようにシアーシャを見つめた彼は、再び、ゆっくりと唇を近づけてきた。

「……んっ」

 先ほどとは異なり、触れ合った唇はすぐには離れていかない。少しずつ角度を変えながら、何度も口づけられる。
 二度目といえども、口づけ自体が初めてであったシアーシャだが、幾度も繰り返されるうちにその感触に慣れて、こわばっていた体の力が少しずつ抜けた。それを見計らったように、龍一郎がとがらせた舌先で彼女の唇をノックする。
 引き結んだ唇を開けということだと理解して、シアーシャは躊躇ためらいながらも従う。即座にぬるりとしたものが口中に入り込んできた。
 それが龍一郎の舌だと気がつき、驚きで固まる。だが、不思議なことに嫌悪感はない。

「ん、む……んっ」

 他人の一部が自分の中にあるというのは、シアーシャにとって実に奇妙な感覚だった。
 そもそもが他者との関係が薄い彼女である。嫌悪感こそないが、龍一郎の舌がうごめく度にびくびくと体が震え、うっかりと彼の舌を噛んでしまわないように更に大きく口を開く。それを幸いと、また龍一郎に好き勝手された。
 ねっとりと歯列を舌先でなぞられ、くまなく内部を探られる。やがて、奥に縮こまっていた彼女自身のそれにも絡み始めた。すでに、シアーシャの脳の許容量は限界に近い。

「んんっ……ふっ、ううっ!」

 息をすることすら忘れていたために、窒息寸前だ。必死に龍一郎の背中をたたいていると、そこでやっと彼もシアーシャの状況に気がつく。

「ご、ごめんっ! 大丈夫?」

 ようやく新鮮な空気が肺に流れ込み、彼女はけほこほとせきをする。鼻で呼吸をすればよかったのだと気がつくが、そうなるとまた、自分の鼻息が彼にかかってしまうのではないかと心配になる。
 まだまだ混乱は収まりそうにない。
 息が整うのを見計らい、龍一郎はびるように銀色の髪を優しくくしけずってくれた。

「ごめんね。がっつかないって言ったのに」
「い、いえ。その……私は、大丈夫ですから」
「そう? あんまりシアちゃんがかわいくてさ、つい……次はもっとゆっくりするからね」

 次もあるのか、とシアーシャは驚き、こんがんするように龍一郎を見上げる。
 酸欠で頬を上気させ、うっすらと目に涙がたまった状況でのその行動が、更に龍一郎に火をつける結果となることまでは予想できなかった。

「……まじで、俺、自制心の限界試されそうだな」
「え?」
「いや、こっちのこと。それより、ほんとに大丈夫なら……」

 そう言いながら、シアーシャの返事を待つこともなく、もう一度、龍一郎が顔を近づけてくる。
 唇が重なり、舌を絡ませ合う。
 二度目なので、心の準備はできていた。けれど、その他のことについては別の話だ。
 龍一郎の手が動き、首筋から肩にかかるラインをなぞりつつ、背中に回る。しの肌をう他者のてのひらの感触に、こらえきれない震えが全身に走った。
 そちらにばかり気を取られている隙に、もう片方の手が動き始める。

「っ! んぅっ!」

 シアーシャのやや控えめな胸のふくらみが強く掴まれた。龍一郎にしてみれば軽く力をこめただけなのだが、太い指が柔らかなふくらみに食い込む感触に、シアーシャはびくん、と大きく体を跳ねさせた。龍一郎はそんな彼女の反応を見ても行為を止めることなく、更にゆっくりと確実にそこを刺激し続ける。
 口づけの最中に、片手でシアーシャの背をなだめるようにでながら、その体重を支えるという器用なことをし、更に胸をあいした。
 シアーシャは混乱しつつも、いくつのことを同時にするのだと、感心する。
 もっとも、わずかでもそんなことを考えられるのは、龍一郎がどこまでも優しいおかげだ。
 素肌をう、今日初めて会った男の手。
 いくら覚悟をしていても、恐怖や嫌悪を感じて当たり前だ。
 それなのに、慣れない行為にまどいと驚きがありはしても、負の感情は湧かない。それはきっと、龍一郎がシアーシャを大事に思っているのが分かるからだった。
 肉欲が感じられないわけではない。この行為自体が、それの最も顕著けんちょな現れなのだから当然の話であるし、龍一郎も隠すことなくそれを口にしている。けれど、それでも――
 口づけられてからずっときつく閉じていたまぶたをほんの少し持ち上げると、シアーシャの瞳に龍一郎の顔が映る。彼はひどく真剣な目でシアーシャの表情を観察していた。
 少しでも彼女が嫌悪をあらわにすれば、すぐに引く用意があるのだと、説明されるまでもなく分かる。
 自分の欲を押し殺してでも、彼女に嫌な思いをさせないようにしているのだ。
 それを嬉しいと思う。彼が自分を欲してくれているということを含めて。これまでほとんど他者に必要とされたことのないシアーシャにとって、たましいが歓喜するに十分だった。
 まだ出会ってから半日も経っていないが、すでに自分の心がどうしようもないほどに龍一郎にかれていることを認めざるを得ない。
 ただ、それでも、まだ己の気持ちを口にするのは躊躇ためらわれ、代わりにそっとたくましい背中に自分の腕を回した。

「……シアちゃん?」

 それまで受け身に徹していたシアーシャのいきなりの行動に、龍一郎がまどったような声を出す。それには構わずに更に腕に力をこめると、自分とは全く異なる筋肉質の体が感じられた。
 自分から体を密着させるのはひどく恥ずかしかったが、それ以上に龍一郎のぬくもりを強く感じたいという願いのほうが強い。

「もっと……で、いいんだよね?」

 問いかけられ、言葉にするのが恥ずかしく、小さくうなずくことで肯定の意を伝える。
 龍一郎は嬉しげに笑った。ただそれだけのことなのだが、心臓の鼓動が一段階速くなる。
 ゆるり、と男の手が肌の上をう。
 肉付きの薄い鎖骨から、控えめなボリュームの胸、細い腰へ、何度も往復した。
 途中、柔らかなタッチで胸のふくらみを刺激する。それに呼応するようにして立ち上がる先端を指の間に挟み込む。敏感なそこをこりこりとこすり合わされると、じんわりとした何かが全身を走り抜け、シアーシャの腰が無意識に揺らぐ。

「やばい、いい香り。それに、すごくやわらかい……」

 ひとしきりシアーシャの唇をむさぼった後、龍一郎はひとまず満足した様子で、今度は彼女の胸に顔をうずめた。なめらかな肌に頬ずりする。口づけのときにも感じたが、彼のひげは見た目よりも柔らかいらしく、チクチクするような痛みがない代わりにふわふわとした感触がくすぐったい。

「……っ」
「声、出してよ。君の声がきたい」

 きつく唇をかんであえぎを押し殺したのが分かったのだろう。少し伸び上がるようにして、耳元で龍一郎がささやく。
 吐息がかくくすぐり、思わず首をすくめると、その様子に気がついた彼は、とがらせた舌先を耳穴に差し込んだ。

「きゃっ!」

 ぬるりとした感触は、口内でのそれよりももっと生々しい。ぎょっとして全身をすくませると、耳元で小さな笑い声がした。

「ごめん、でも、ホントかわいい」

 揶揄からかわれているのだろうが、反撃するような余裕はシアーシャにはない。
 五感のすべてを刺激されている。鼻腔をくすぐるたくましい、あるいはたけだけしい香りは龍一郎のものだ。何もかもが初めてで、それを受け止めるだけで精いっぱいだった。
 そんなシアーシャとは異なり、龍一郎の手は明確な目的を持って動いている。
 まっすぐ伸ばされていた細い足の内ももをてのひらでなぞり、ゆっくりと開かせた。ある程度の空間ができたところで自らの膝をこじ入れると、更にそこを大きく割り開いた。

「あっ……っ!」

 細い腰と敷布の間に手を差し入れる。背後からでんのラインを確かめつつ、指を一本、シアーシャの秘裂に忍ばせた。
 知らぬ間にあふれ出していた液体が、ぷちゅん、と小さな水音を響かせる。

「えっ? あ……?」
「まじ、かわいい。もうこんなにしてくれて」
「わ、私……」
「気持ちいい? ――ああ、大丈夫。言わなくていいよ」
「リ、リュー様っ」
「うん、俺の名前呼んで? いっぱい感じてくれていいからね?」

 指はまだ一本だけだ。それもナカへ侵入させることはせず、ゆっくりと秘裂に沿って上下させている。けれど、そんな柔らかな刺激さえ、初めてのシアーシャにとっては大きすぎた。
 ゆるゆるとした指の動きにより、トクリと新たな液体があふれ出すのが自分でも分かる。月のモノが来たのかと慌てるが、特有のさびくさい香りはない。もしかすると、龍一郎の『感じて』というのはこの状態のことなのだろうか。だが、それを問いただす余裕があるはずもない。

「あ、あっ……リュー、さまっ」

 やがて頃合いと見たのか、表面をなぞるだけだった指が、ツプンとソコに埋められる。
 その名の通りの『処女地』であるが、指一本だけのためか痛みはない。代わりに非常な違和感があったが、それも、ゆるゆるとした抜き差しが始まるとすぐに馴染なじんだ。

「んっ……」

 れられている指は、たった一本だ。その動きも決して激しいものではない。
 なのに、全身の神経がそこに集中してしまう。
 苦しくも痛くもない――それどころか、今まで感じたことのない不思議な感覚が湧き上がる。シアーシャがけんにしわを寄せると、それをなだめるように優しい口づけが落とされた。

「ごめんね。でも、俺もそろそろ限界」
「リュー様……?」

 彼は簡単にびの言葉を言いすぎる。この先、勇者として一軍をひきいるためにも、それは直してもらわなければ。
 そんな現実逃避気味な思考が浮かぶが、それも一瞬でどこかに消え失せた。他でもない龍一郎の行動によって。

「な、何を……えっ? きゃぁっ!」

 一気に体の位置を下に移動させた龍一郎が、クプクプと音を立てつつ彼の指を受け入れていた部分に、躊躇ためらうことなく口づけたのだ。

「リュー様っ!?」

 男女のいとなみについての知識はあるため、触れられるのはまだ分かる。けれど、シアーシャにとっては不浄なその場所に、唇を寄せるなど信じられない。

「な、なりませんっ! そのようなところ……ああっ!」

 必死になって身をよじり龍一郎から逃れようとするが、大きく開かれた足をがっちりと掴まれているために果たせない。
 それでも足掻あがいていると、ソコをぺろりとなめ上げられ、こらえきれずに悲鳴を上げた。

「リュー様っ!」

 頭が真っ白になるというのは、まさにこのことだ。今までで最大の混乱状態だと言っていい。けれど、龍一郎はそんなシアーシャにはお構いなしに、何度もそこに舌をわせる。
 あふれてくる液体をなめとり、えんした。
 次に彼が的を定めたのは、秘裂の上にある小さな突起だ。唇全体でおおうようにしたのち、舌先で薄皮をぺろりとく。シアーシャはせっまったような悲鳴を上げた。

「や、あっ……な、何っ?」
「……気持ちいい?」
「や、だめっ! しゃべら……ああっ」

 つま先から何かががってきて、がくがくと足が、いや、全身が震える。こんな感覚は生まれてこの方、一度も経験したことがない。
 混乱を通り越して恐慌状態におちいりかけるが、逃れようにも龍一郎にがっちりと下半身を捕らえられている状態では、それもままならない。それでも必死に身をよじっていた。

「ああっ! やっ……何、か……く、ぅっ」

 抜き去られていたはずの指がナカに忍び込む。それも、二本になって。
 バラバラに動くそれらに柔らかくほどけかけていた内部をまわされ、刺激で真っ赤にれた突起を強く吸い上げられた。

「ひっ! ああ……っ!」

 途端、シアーシャの全身にかみなりに打たれたような衝撃が走り、薄い腹がひくりとけいれんする。次の瞬間には、シアーシャは脱力して敷布の上に沈み込んでいた。

「あ? な……今、の……?」
「イケたみたいだね。よかった」

 全力疾走をした後のような荒い息をしているシアーシャに、龍一郎が嬉しそうにささやく。
『イケた』とは今の状態のことを指しているらしいが、あまりにも鮮烈な経験にまだ理解が追いつかない。それでも、彼が嬉しそうなのだから、悪いことではないのだろう。

「リュー、様……?」
「この後、痛い思いをさせちゃうからね。その前に、気持ち良くなってもらえてよかったよ」
「痛い……ですか?」
「うん。こればっかりはどうしようもないんだ。ごめんよ?」
「……お謝りになられることはございません。私は、リュー様のものです。どうぞ、ご存分になさってください」
「また、そんなあおるようなことを……」

 天をあおぎ、まるでなげくような口調だ。その様子に、何かまずいことを口走ったのかと不安になるが、少ししてシアーシャに戻した彼の視線は、まるで肉食獣のように尖っていた。

「ホント……たまんない。かわいすぎて死にそう。遠慮なく頂きます」
「リュー……ああっ!」

 龍一郎の言葉の意味をはかりかねて問いかけようとした言葉は、まだ埋め込まれていたままだった指の動きにはばまれた。
 先ほどまでのことがまるでであったかのように、激しく抜き差しされる。熱が冷めやらぬシアーシャの体に、またしてもせんりつが走り抜けた。
 グブグブと、粘着質な液体が混ぜられる音が、龍一郎のまわすソコから聞こえる。バラバラに動く指は、シアーシャの内部を隅々までなぞり、探った。それがある一点を通過したとき、あの不思議な感覚が強く湧き上がる。

「あんっ!」

 それは、シアーシャが初めて上げたきょうせいだ。

「ここ、だね」
「あっ! まっ……あ、あんっ!」

 制止の言葉は、言い終わる前に、その感覚によって打ち消されてしまう。
 シアーシャが声を上げた箇所を中心に、龍一郎の指が動く。彼は指の腹で押したかと思うと、軽く爪を立ててひっかくようにそこを刺激した。
 その度に重苦しい熱がその部分から湧き上がり、シアーシャの全身をおかしていく。
 それだけでも持て余すというのに、同時進行で口づけられた。顔といわずシアーシャの体全体がほんのりと赤く染まっていく。

「あ、ひあっ……ん、ぅんっ!」

 少しでもその熱を逃がそうと、必死になって頭を振るが、そんなことで収まるはずもない。
 せっかく整いかけていた呼吸が荒くなる。すがるものを求めて敷布の上をさまよっていた両腕は、龍一郎に導かれてそのたくましい背中に回された。
 力任せに抱き着くことしかできないシアーシャに、けれど龍一郎はひどく嬉しそうな顔をする。
 そして――

「そろそろ……大丈夫そう、だね」

 彼の息も上がっているように思えるのは、シアーシャの気のせいだろうか?

「……あ、んんっ」

 様子をうかがおうと固く閉じたまぶたをわずかに開けるのと同時に、ぬるり、とナカに収められていた指が抜き去られた。その感触に、思わず声を上げる。自らの指を唇に持っていく龍一郎から目が離せない。

「……っ!」

 指の間に糸を引く粘着質の液体がどこから生じたのかに気がつき、シアーシャはそれを舌でなめとる彼の正気を疑う。
 けれど、最大の衝撃が彼女を襲うのはこの後だ。
 ひたり、とナニかが彼女の蜜口に押し当てられる。龍一郎の体にはばまれて視界に収めるのは叶わないが、ソレがナニかはシアーシャにもうすうす察せられた。
 男と女のねやごととは、男のモノを女が受け止めること。
 知識では分かっていても、指とは全く異なる質感と、奇妙なほどのつるりとした感触に、ぞわりと体中の毛穴が開く。

「痛い、だろうけど……ちょっとだけ我慢して?」

 申し訳なさそうな声が上から聞こえる。見上げると、眉の両尻を下げた龍一郎の視線とぶつかった。
 言葉にして何か返せればいいのだろうが、とっさには何も浮かばず、結局は彼の背に回された腕に力をこめるだけになる。だが、それがきっと正解だった。
 下がっていた眉尻が上がったかと思うと、彼は両腕をシアーシャの下肢にあてがいそこを大きく開かせる。恥ずかしい姿勢に、シアーシャは再びぎゅっとまぶたを閉じる。そこに一つ、優しい口づけが落とされた。


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