オオカミさんといっしょ!

豆狸

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第一話 オオカミさんに助けられ

8・オオカミさんは司祭さま②

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 太陽、月、星──三柱の神々が世界を創ったといわれている。
 三柱の神々はいずれも尊く、自分の主神と異なるからといってほかの神さまを貶めることは禁じられていた。
 少なくともこのフォーレ王国においては、三柱の神々もその信徒も平等だ。
 平等だからこそ、ミーヌ村の村長のように自分の主神を優先することも許される。
 その辺りが難しい問題だった。
 実際は自分の主神以外に噛みつく人は多いしね。
 ただ主神を理由に住居を追い出したりすることは、明らかな法律違反になる。
 わたしの場合は……家族を失って頭が真っ白になっていたところを言いくるめられたから、村長を訴えたりすることはできないと思う。
 追い出しの理由は星の神さまの信徒じゃないからではなかったし、家の売買は銀貨十枚を渡されたから同意の上ってことにされるだろうし。
 ……月の女神信徒だったお隣のアメリーおばさんは大丈夫かなあ。

 神々の信徒には、神さまを崇めて寄進をするだけの人々と神さまの力を借りて人間を救う聖職者がいる。
 聖職者は神殿内での位階によって見習い、神官、司祭、大神官に分けることができる。
 最高権力者の大神官はひとりだけで、三年に一度の選挙で決められる。
 大神官選挙で投票できるのは、優れた功績(多額の寄進やモンスター退治、病人の治療など)を挙げた司祭から選ばれる代表司祭だ。
 立候補できるのも代表司祭だけだった。
 選挙で選ばれた大神官は各地にある神殿を巡礼後、本神殿に入って全体に指示を出す。
 大神官の考えで、その神殿の方針が変わるのだ。
 かつて女性の聖職者しか認めなかった月の神殿が男性を受け入れるようになったのも、逆に男性の聖職者しか認めなかった太陽の神殿が女性を受け入れるようになったのも、何代か前の大神官による方向転換だ。
 星の神殿は今も、獣化族以外の男性で魔法が使えないものしか聖職者として認めない。

 魔法が使えない聖職者がモンスターを退治するには、ふたつの方法がある。
 ひとつは体を鍛えること。
 どこの神殿にも有名な武術があり、聖職者にならなくても神殿に通えば教えてもらえた。
 月の神殿なら棒術が有名だ。
 お隣のアメリーおばさんもよく箒の柄で、酔っぱらった旦那さんを懲らしめてたなあ。
 太陽の神殿は爪術で知られている。
 片手につけた金属の爪で戦う格闘術の一種だ。
 星の神殿は──星球武器。
 昨日わたしを襲ったときのように、持ち手から伸びた鎖の先にあるトゲのついた星形の球体で攻撃する術だ。
 ……本当に、あれはなんだったんだろう。どう考えたらいいんだろう。
 思い出しただけで全身が硬直して、背筋が凍りついた。
 でも……悩んでいても仕方がない。

 そして、モンスターを退治するふたつ目の方法が神獣の力を借りること。
 優れた功績を挙げた聖職者は、神さまから守護者を授かることができるのだ。
 確か……月の女神さまからは猫に似た神獣、太陽の神さまからは鳥に似た神獣、星の神さまからは虫に似た神獣をいただけるはずだ。
 見習いはさすがに無理だけど、神官でも授かる人がいるし、大神官でも授かっていない人がいるという。

「すごいですね、オオカミさん」

 わたしが言うと、彼は恥ずかしそうに首を振った。

「同じく月の司祭だった母のエレーヌが長年この村のために尽力してきたことが加算されているだけだ。俺の力じゃない」
「そんなこたぁないと思うがねえ。十五年前、そのエレーヌが病に倒れたとき、数十年に一度の大寒波で吹雪が吹き荒れていた中を交流のなかったミーヌ村まで走って薬をもらってきたのはルー坊やじゃないか」

 イネスさんに言われて、オオカミさんはますます恥ずかしそうに首を振る。

「あれは……病気が流行っている村からヨソの村へ行くなんて考えのない行動だった。それなのに助けてくれたあちらの人が偉いんだ」
「そうは言っても月の神殿に薬がなかったんだから仕方ないじゃないか。その後、ミーヌ村で病が流行ったという話も聞かないよ、ねえ?」

 イネスさんに見つめられて、わたしは頷いた。
 そんな話、聞いたこともなかった。
 十五年前だとわたしは四歳。
 冒険者だった両親はすでになく、おばあちゃんに引き取られていたころだ。
 オオカミさんは何歳くらいだったんだろう。
 獣化が解けたときの姿からすると、二十代前半くらいな気がするんだけど。
 そう、夢で見たロークンと同じくらいだ。
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