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第一話 オオカミさんに助けられ
10・わたしの事情②
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「ここら辺りは王領だから、ミーヌ村も獣化族の村々も都に税を収めに行くってのは知ってるよね? あたしもクロ村の代表として農産物を運んだことがある。そこであのガマガエルみたいな村長を見たのさ。税を収めた残りの農産物を売った金だけじゃ、あんな贅沢三昧はできるわけないと思ってたら、案の定べつの儲け口があったわけかい」
村長……都に行ってなにしてたんだろう。
イネスさんの言葉に、オオカミさんが頷いた。
「冒険者のようにモンスター退治を正業として届け出れば、国からの援助もあるが儲けたときの税金も発生する。あくまで迷惑モンスターの駆除という名目で退治し、偶然手に入ったことにして私腹を肥やしていたんだな。……ノワ。申し訳ないが、このことは月の神殿に報告させてもらう。場合によっては証言をお願いしてもいいだろうか」
「は、はい。あの……自警団のみんなは、そんなこと知らないと思います。みんな村のために一所懸命戦って、手足が千切れかけた人までいて……」
一番の被害者は、村長の息子でもあるレオンだ。
自警団の頭だった彼はいつも率先して戦い、団員を庇って怪我をしていた。
幼なじみなのに思春期になって冷たくなった、なんて思っていたけれど、命を懸けて戦っていたのだから、村でのんびり暮らしていたわたしとは考え方が変わってしまうのも仕方がないことだったのかもしれない。
彼が父親である村長の所業を知った上で、友達でもある団員たちを危険なモンスター退治に駆り出していたとは思えなかった。
「だろうな。俺は月の司祭の役目として近隣の野獣やモンスターの生息状況を調査している。昨日君に会ったのも調査の途中だった。ミーヌ村の自警団と直接話したことはないが、何度か遠目に見たことがある。彼らにモンスター売買の収入が流れていたら、もう少しマトモな装備をしていたはずだ」
「魔法使いの孫娘ってことは、ノワさんもなにか魔法が使えるのかい? 魔法の素養ってのは遺伝するって聞くんだけどね」
「あ、はい。お母さんのお腹にいるとき、両親が倒したモンスターから習得したらしくって、生まれたときから回復魔法が使えます。子どものころは一回使っただけで魔法力が尽きて眠っちゃってたんですけど、今は一日に二回なら使えます」
二回目は足りない魔法力を体力で補うので、やっぱり疲れて眠ってしまうことは言わなかった。
わたしの力が必要なら、気にせず頼ってもらいたい。
もっともオオカミさんが魔法や魔具を研究してて、昨日の死にかけだったわたしを治療してくれたくらいだから、この村で役に立てることはないのかもしれない。
あ、でも──
「わたしの回復魔法は魔法力の消費が大きい代わりに応用が効くんです。ある程度までの範囲なら毒ウサギに汚染された畑の毒抜きもできますし、寿命で壊れた魔具も直せます。……魔具は自己回復能力がないので修理しても数回使ったらまた寿命が来ますが」
四百年近く昔、魔法が封じられる前に作られた魔具は今でも利用されている。
しかし当然のことながら、多くの魔具が寿命を迎えていた。
魔法を封印したときの意識では、人間が使う魔法は世界を流れる魔力を使用するので環境に悪い、魔具の魔法は内部に込めた燃料魔力を使用するから環境に良い、というものだったらしい。
けれど実際は、人間の魔法は術者の内部にある魔力──魔法力を使用するものだったし、魔法が封印された状態では壊れた魔具を修理することも新しい魔具を作ることもできなかった。
魔法が封印されたのは、当時世界の魔力が減少していて、このまま自由に魔法を使っていたら世界が滅びてしまうという不安が人々の間に満ちたからだといわれている。
もっとも世界魔力が減少していたのは冬に寒くなるのと同じようなことで、すぐに春が来て世界魔力は増幅した。
今は夏に向かっているのか世界魔力の増幅が著しく、それに比例してモンスターも強力になっている。
すべての魔法の封印は世界を案じた人間の総意ではなく、自分たちだけで魔法を独占したかった一部の魔法使いと、モンスター退治の栄光を奪われたくなかった神殿の過激派による凶行だったのではないかという考えが、最近の主流だ。
……と、お隣のアメリーおばさんが教えてくれたっけ。
敬虔な信徒としてオングル村の月の神殿に通っていたおばさんは、そこに集まる各地の人々から新しい知識や考えを仕入れて、村の子どもたちに教えてくれてたのよね。
おばあちゃんが村の子どもに文字や計算を教えて、おばさんがこういう話もあるよって聞かせてくれて。
外の話を嫌う村長に、ふたりともよく睨まれてた。……アメリーおばさん、本当に大丈夫かな。
村長……都に行ってなにしてたんだろう。
イネスさんの言葉に、オオカミさんが頷いた。
「冒険者のようにモンスター退治を正業として届け出れば、国からの援助もあるが儲けたときの税金も発生する。あくまで迷惑モンスターの駆除という名目で退治し、偶然手に入ったことにして私腹を肥やしていたんだな。……ノワ。申し訳ないが、このことは月の神殿に報告させてもらう。場合によっては証言をお願いしてもいいだろうか」
「は、はい。あの……自警団のみんなは、そんなこと知らないと思います。みんな村のために一所懸命戦って、手足が千切れかけた人までいて……」
一番の被害者は、村長の息子でもあるレオンだ。
自警団の頭だった彼はいつも率先して戦い、団員を庇って怪我をしていた。
幼なじみなのに思春期になって冷たくなった、なんて思っていたけれど、命を懸けて戦っていたのだから、村でのんびり暮らしていたわたしとは考え方が変わってしまうのも仕方がないことだったのかもしれない。
彼が父親である村長の所業を知った上で、友達でもある団員たちを危険なモンスター退治に駆り出していたとは思えなかった。
「だろうな。俺は月の司祭の役目として近隣の野獣やモンスターの生息状況を調査している。昨日君に会ったのも調査の途中だった。ミーヌ村の自警団と直接話したことはないが、何度か遠目に見たことがある。彼らにモンスター売買の収入が流れていたら、もう少しマトモな装備をしていたはずだ」
「魔法使いの孫娘ってことは、ノワさんもなにか魔法が使えるのかい? 魔法の素養ってのは遺伝するって聞くんだけどね」
「あ、はい。お母さんのお腹にいるとき、両親が倒したモンスターから習得したらしくって、生まれたときから回復魔法が使えます。子どものころは一回使っただけで魔法力が尽きて眠っちゃってたんですけど、今は一日に二回なら使えます」
二回目は足りない魔法力を体力で補うので、やっぱり疲れて眠ってしまうことは言わなかった。
わたしの力が必要なら、気にせず頼ってもらいたい。
もっともオオカミさんが魔法や魔具を研究してて、昨日の死にかけだったわたしを治療してくれたくらいだから、この村で役に立てることはないのかもしれない。
あ、でも──
「わたしの回復魔法は魔法力の消費が大きい代わりに応用が効くんです。ある程度までの範囲なら毒ウサギに汚染された畑の毒抜きもできますし、寿命で壊れた魔具も直せます。……魔具は自己回復能力がないので修理しても数回使ったらまた寿命が来ますが」
四百年近く昔、魔法が封じられる前に作られた魔具は今でも利用されている。
しかし当然のことながら、多くの魔具が寿命を迎えていた。
魔法を封印したときの意識では、人間が使う魔法は世界を流れる魔力を使用するので環境に悪い、魔具の魔法は内部に込めた燃料魔力を使用するから環境に良い、というものだったらしい。
けれど実際は、人間の魔法は術者の内部にある魔力──魔法力を使用するものだったし、魔法が封印された状態では壊れた魔具を修理することも新しい魔具を作ることもできなかった。
魔法が封印されたのは、当時世界の魔力が減少していて、このまま自由に魔法を使っていたら世界が滅びてしまうという不安が人々の間に満ちたからだといわれている。
もっとも世界魔力が減少していたのは冬に寒くなるのと同じようなことで、すぐに春が来て世界魔力は増幅した。
今は夏に向かっているのか世界魔力の増幅が著しく、それに比例してモンスターも強力になっている。
すべての魔法の封印は世界を案じた人間の総意ではなく、自分たちだけで魔法を独占したかった一部の魔法使いと、モンスター退治の栄光を奪われたくなかった神殿の過激派による凶行だったのではないかという考えが、最近の主流だ。
……と、お隣のアメリーおばさんが教えてくれたっけ。
敬虔な信徒としてオングル村の月の神殿に通っていたおばさんは、そこに集まる各地の人々から新しい知識や考えを仕入れて、村の子どもたちに教えてくれてたのよね。
おばあちゃんが村の子どもに文字や計算を教えて、おばさんがこういう話もあるよって聞かせてくれて。
外の話を嫌う村長に、ふたりともよく睨まれてた。……アメリーおばさん、本当に大丈夫かな。
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