オオカミさんといっしょ!

豆狸

文字の大きさ
29 / 65
第二話 オオカミさんと暮らしてみれば

※14・見知らぬNPC(星のラクテ視点②)

しおりを挟む
 NPCも殺せないヌルいクソゲー世界に転生したことに気づいて舌打ちすると、目の前に立っていた父上が顔色を変えた。
 若い後妻に殺されかけたことを訴えても怒鳴って黙らせ、頑張った末に寝込んでいた僕の部屋に来て役立たずと吐き捨てて去っていった父上がだよ?
 自分が話してる途中で息子が舌打ちするなんて、想像もしてなかったんだろうね。
 僕がゲーム知識の利用法を考えてるっていうのに、ギャーギャーうるさく話しかけてきたから、獣化魔法を発動させて毛むくじゃらの腕で殴りつけてやった。
 壁に叩きつけられて、父上はやっと黙ったよ。
 ゲームのアバターに設定する初期魔法が、僕は狼の獣化魔法だったんだよね。
 この世界での獣化魔法は、魔法封印後も血によって受け継がれている。
 父上が冷たかったのは僕を母上の不義の子だと思っていたからかもしれない。
 もっとも獣化族は獣化した姿で生まれるから、魔法として発動する僕とは違うんだけど。
 叩きつけられた衝撃で内臓に傷でもついたのか、口から血を吐いている父上を見て、僕は思ったよ。

 ここならNPC殺せそうだな、って。

 僕の生殺与奪権を握った、世界で一番認めてほしい人だった父上は、前世を思い出した瞬間ただのNPCに成り下がった。
 僕が獣化魔法を持って生まれたことは秘密にされていたから、僕が獣化魔法を発動して異母弟を殺しても、後妻を殺しても、父上はなにも言えなかった。
 姉上は薄々気づいていたかもしれない。
 優しい姉上は、なにも言わないでくれたけど。
 十五歳になった僕は、父上という設定のNPCに言われた通り星の神殿へ入った。

 ……家督? 姉上が婿養子でも迎えて継ぐんじゃない?

 星の神殿に入ったころにはもう、僕はゲーム知識の利用方法を決めていた。
 すべての女王モンスターを倒して封印のかけらを奪う。
 だけど封印自体は解かない。
 この世界で僕だけがすべての魔法を使えるようにするんだ。
 封印のかけらを奪えるのはゲームの主人公だけの特性。
 すなわち転生者だけの特権だ。
 主人公は同時に全属性の魔法を習得できるという特性も持っていた。
 僕が最初に持っていた狼の獣化魔法以外の属性の魔法も習得できることは、見習いとしての修行中にちゃんと確認している。……魔法は、持っている人間を殺しても習得できた。
 強大な女王モンスターを倒すのは先の話だけど、僕は新米神官としてモンスター退治に勤しみ、司祭に昇格した。
 もらった神獣がハエだったのは最悪だね。
 元のゲームでも神獣はランダム決定だった。

 本当にクソゲー。

 とはいえ太陽の神殿の鳥や月の神殿の猫は見た目が良くて強力な反面弱点がある。
 鳥神獣は昼、猫神獣は夜しか召喚できないんだ。
 星の神殿の虫神獣はいつでも召喚できるもんね……ハエだけど。
 まあ群れで召喚できるし、いろいろ役立つ部分もあるから今のところは許してやるか。
 最終的には僕以外の魔法使いを全部殺して、世界の支配者になってもいいよなー。
 なんて、のん気に思いながら暮らしていたとき、僕は彼の存在を知った。

 ──クロ村の狼獣化族、ルー。

 ゲーム知識をどんなに掘り返しても存在しないNPCで、風属性の魔法をすべて持っている。月の女神に仕える司祭でもあり、神獣も授かっているという。
 彼も『転生者』なのかもしれない。
 実を言うと、これまでもゲーム知識の中にいないNPCは結構いた。
 複数の属性の魔法を習得していることが多かったから、結構すぐわかるんだよね。
 もちろん隙を見て殺してきた。
 だって封印のかけらを横取りされたら僕の計画が台無しになる。
 僕と同じように主人公特性を持つ転生者は、みんな全属性の魔法を集められるし封印のかけらを手にできるはずなんだから。
 主人公以外は女王モンスターを倒しても封印のかけらを奪えない。
 おまけに封印のかけらを媒体にして、女王モンスターは復活しちゃう。
 逆を言えば、主人公が倒せば女王モンスターは復活しないんだ。
 女王モンスターの居場所は固定だけど、人間はどこへ行くかわからない。
 効率が悪いのは嫌いなんだよね。
 そういえば、殺したヤツらはみんな前世の記憶を持っているようには見えなかった。

 ……僕だけが神に、世界に選ばれているのかもしれないね、あははっ。
 だったらハエ以外の神獣を寄こせって思うけど。
 まあ舐めるハエじゃなくて刺すハエだっただけマシかなあ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。

黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。 明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。 そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。 ………何でこんな事になったっけ?

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...