49 / 65
第四話 オオカミさんを守りたい。
※4・レオンは元気かな。(狐のルナール視点④)
しおりを挟む
太陽の神殿の代表司祭である俺、狐のルナールは赤き刃団の底辺冒険者兼、冒険者ギルドが神殿に逆らわないことを確認するための見張り役のようなもの。
神殿のほうの都合があって簡単に抜けられないのをいいことに、ギルドマスターにはいいように使われている。
絶対にヤバイとわかっていても見栄があって逃げられない冒険者たちを動かすには、危なくなったら逃げる主義の俺の存在が役に立つってわけだ。
実際、全力で命を懸けて戦うことにはなんの意味もないと思ってるしね。
途中で死んだら問題解決できないじゃん。
新米冒険者の命を守るために俺を補佐につけるギルドマスターはともかく、逃げた理由を全部俺に被せて悪者扱いしてくる輩にはムカつく。
そういう輩のせいで、自主的に仕事受けたときに仲間が集まらないし。
レオンみたく、俺みたいなのの価値をわかってくれるヤツもいるからいいんだけどさ。
「確かにエスクロ男爵家では星の神を信仰していますけど……」
冒険者ギルドと実家の宗教の違いについての質問に対して口籠ったレネット嬢に、俺は微笑んだ。
「まあ護衛として失格でしたって俺が報告したら、入団試験不合格ってことで赤き刃団に所属しなくて良くなるから安心してね」
「な……っ! 冗談じゃありませんわ。ちゃんと護衛の任を果たして合格してから、あたくし自身で入団を撤回いたします!……あ」
「あはは、いいよいいよ。最初からミーヌ村へ行きたくて護衛に立候補したってわかってるし」
レネット嬢は真っ赤になって俯いた。
彼女は、レオンにモンスター密売の契約書を奪われたことにまだ気づいてないらしい。
俺が神獣裁判でミーヌ村へ向かうと聞いたら、護衛として同行するとまで言い出してついて来たんだもんな。
よっぽどレオンに会いたいんだろう。
「そんなに会いたいの?」
「……ええ、二年ぶりですもの……」
「二年?」
「あ、いえ、その……ミーヌ村にいるという星の司祭は、どんな罪を犯したんですの?」
「罪っていうか、ミーヌ村にある神殿の所有権が三柱の神殿すべてにあることを知っていたかどうかを追及されるんだ。まだ若い司祭みたいだし、上役に派遣されただけでなにも知らなかった可能性もあるだろうね」
「そうですの……あの、神獣裁判ではきちんと真実が明かされるんですのよね。上役の罪をその司祭が被らされるようなことはありませんわよね?」
「そのための神獣裁判だよ。人間なら騙されたり誤魔化されたりするかもしれないけど、神獣を通して判断するのは神さまだからね」
「……もし、もしその司祭に余罪があったとしたら……」
「余罪?」
「あ、いえ、なんでもありませんわ。……あら」
レネット嬢は話を切り上げて立ち上がり、空を見て首を傾げた。
「どうしたの?」
「雨雲でしょうか、空のあそこに黒い……」
俺は、レネット嬢が指差すものを見た。
ふたりがいる眠りの森の北、尖った葉っぱの木々が生い茂る針の森との境目に黒い塊が浮かんでいる。それほど大きいものではないのだが、極北から続く空が一面の白い雲に覆われているので、よく目立つ。
「闇バチの群れじゃないかな。定期馬車がオングル村へ寄ったとき月の神殿で聞いたけど、ミーヌ村の廃鉱山に闇バチが戻って来てるらしい」
「……闇バチ……」
「巣に押し入ったりしなければ、おとなしいモンスターだよ。敵に回ると怖いけどね、毒の匂いを追って全員で襲ってくるから。狩場は巣から遠いっていうから、極北へ狩りに行って帰るところなのかもね」
今あの位置なら、夜には巣についているかもしれない。
「ク……クロ村はどちらの方角ですの?」
「あっち。闇バチはたぶん、こういう感じで」
言いながら俺は、頭上に伸ばした腕を動かしてみせた。
「移動していく。廃鉱山があるのはミーヌ村の北東だからね」
「急げばすれ違わずにすみそうですわね」
彼女の言葉に頷いて、俺も立ち上がって歩き始めた。
ああ、そうか。
レネット嬢は俺と違って鼻が利かない。
道のない森の中、オングル村で見た適当な地図を支えに進むのも辛かったんだな。
彼女みたいに狼の獣化族というだけで白い目で見る人間がいるから、クロ村は街道を外れたわかりにくい場所にあるんだけどさ。
太陽が輝いているうちは、俺の神獣を飛ばして目印にしても良かったかな。
でもちょっとしたことで機嫌損ねて、神獣裁判のときに召喚できなくなったりしたら困るし。
……そういえばレオン、どうしてるだろう。
太陽の神殿から神獣裁判への出席要請の手紙が来たころには、アイツはミーヌ村に着いていたのかな。
案の定アイツがいなくなった翌日から、黄金の鷹亭はガラッガラになった。
虜女子たち、どこでレオンの帰郷を聞きつけたんだか。
そのせいでギルドマスターが、レネット嬢が入団試験として俺の護衛をするって話に飛びついたんだ。まあ入団試験料として金貨一袋も渡されたら断れないよね。
レオンのヤツ、俺が選んでやった髪飾り、ちゃんと幼なじみのナントカちゃんに渡してるといいんだけど。
神殿のほうの都合があって簡単に抜けられないのをいいことに、ギルドマスターにはいいように使われている。
絶対にヤバイとわかっていても見栄があって逃げられない冒険者たちを動かすには、危なくなったら逃げる主義の俺の存在が役に立つってわけだ。
実際、全力で命を懸けて戦うことにはなんの意味もないと思ってるしね。
途中で死んだら問題解決できないじゃん。
新米冒険者の命を守るために俺を補佐につけるギルドマスターはともかく、逃げた理由を全部俺に被せて悪者扱いしてくる輩にはムカつく。
そういう輩のせいで、自主的に仕事受けたときに仲間が集まらないし。
レオンみたく、俺みたいなのの価値をわかってくれるヤツもいるからいいんだけどさ。
「確かにエスクロ男爵家では星の神を信仰していますけど……」
冒険者ギルドと実家の宗教の違いについての質問に対して口籠ったレネット嬢に、俺は微笑んだ。
「まあ護衛として失格でしたって俺が報告したら、入団試験不合格ってことで赤き刃団に所属しなくて良くなるから安心してね」
「な……っ! 冗談じゃありませんわ。ちゃんと護衛の任を果たして合格してから、あたくし自身で入団を撤回いたします!……あ」
「あはは、いいよいいよ。最初からミーヌ村へ行きたくて護衛に立候補したってわかってるし」
レネット嬢は真っ赤になって俯いた。
彼女は、レオンにモンスター密売の契約書を奪われたことにまだ気づいてないらしい。
俺が神獣裁判でミーヌ村へ向かうと聞いたら、護衛として同行するとまで言い出してついて来たんだもんな。
よっぽどレオンに会いたいんだろう。
「そんなに会いたいの?」
「……ええ、二年ぶりですもの……」
「二年?」
「あ、いえ、その……ミーヌ村にいるという星の司祭は、どんな罪を犯したんですの?」
「罪っていうか、ミーヌ村にある神殿の所有権が三柱の神殿すべてにあることを知っていたかどうかを追及されるんだ。まだ若い司祭みたいだし、上役に派遣されただけでなにも知らなかった可能性もあるだろうね」
「そうですの……あの、神獣裁判ではきちんと真実が明かされるんですのよね。上役の罪をその司祭が被らされるようなことはありませんわよね?」
「そのための神獣裁判だよ。人間なら騙されたり誤魔化されたりするかもしれないけど、神獣を通して判断するのは神さまだからね」
「……もし、もしその司祭に余罪があったとしたら……」
「余罪?」
「あ、いえ、なんでもありませんわ。……あら」
レネット嬢は話を切り上げて立ち上がり、空を見て首を傾げた。
「どうしたの?」
「雨雲でしょうか、空のあそこに黒い……」
俺は、レネット嬢が指差すものを見た。
ふたりがいる眠りの森の北、尖った葉っぱの木々が生い茂る針の森との境目に黒い塊が浮かんでいる。それほど大きいものではないのだが、極北から続く空が一面の白い雲に覆われているので、よく目立つ。
「闇バチの群れじゃないかな。定期馬車がオングル村へ寄ったとき月の神殿で聞いたけど、ミーヌ村の廃鉱山に闇バチが戻って来てるらしい」
「……闇バチ……」
「巣に押し入ったりしなければ、おとなしいモンスターだよ。敵に回ると怖いけどね、毒の匂いを追って全員で襲ってくるから。狩場は巣から遠いっていうから、極北へ狩りに行って帰るところなのかもね」
今あの位置なら、夜には巣についているかもしれない。
「ク……クロ村はどちらの方角ですの?」
「あっち。闇バチはたぶん、こういう感じで」
言いながら俺は、頭上に伸ばした腕を動かしてみせた。
「移動していく。廃鉱山があるのはミーヌ村の北東だからね」
「急げばすれ違わずにすみそうですわね」
彼女の言葉に頷いて、俺も立ち上がって歩き始めた。
ああ、そうか。
レネット嬢は俺と違って鼻が利かない。
道のない森の中、オングル村で見た適当な地図を支えに進むのも辛かったんだな。
彼女みたいに狼の獣化族というだけで白い目で見る人間がいるから、クロ村は街道を外れたわかりにくい場所にあるんだけどさ。
太陽が輝いているうちは、俺の神獣を飛ばして目印にしても良かったかな。
でもちょっとしたことで機嫌損ねて、神獣裁判のときに召喚できなくなったりしたら困るし。
……そういえばレオン、どうしてるだろう。
太陽の神殿から神獣裁判への出席要請の手紙が来たころには、アイツはミーヌ村に着いていたのかな。
案の定アイツがいなくなった翌日から、黄金の鷹亭はガラッガラになった。
虜女子たち、どこでレオンの帰郷を聞きつけたんだか。
そのせいでギルドマスターが、レネット嬢が入団試験として俺の護衛をするって話に飛びついたんだ。まあ入団試験料として金貨一袋も渡されたら断れないよね。
レオンのヤツ、俺が選んでやった髪飾り、ちゃんと幼なじみのナントカちゃんに渡してるといいんだけど。
11
あなたにおすすめの小説
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。
黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。
明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。
そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。
………何でこんな事になったっけ?
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる