オオカミさんといっしょ!

豆狸

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第四話 オオカミさんを守りたい。

※4・レオンは元気かな。(狐のルナール視点④)

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 太陽の神殿の代表司祭である俺、狐のルナールは赤き刃団の底辺冒険者兼、冒険者ギルドが神殿に逆らわないことを確認するための見張り役のようなもの。
 神殿のほうの都合があって簡単に抜けられないのをいいことに、ギルドマスターにはいいように使われている。
 絶対にヤバイとわかっていても見栄があって逃げられない冒険者たちを動かすには、危なくなったら逃げる主義の俺の存在が役に立つってわけだ。
 実際、全力で命を懸けて戦うことにはなんの意味もないと思ってるしね。
 途中で死んだら問題解決できないじゃん。
 新米冒険者の命を守るために俺を補佐につけるギルドマスターはともかく、逃げた理由を全部俺に被せて悪者扱いしてくる輩にはムカつく。
 そういう輩のせいで、自主的に仕事受けたときに仲間が集まらないし。
 レオンみたく、俺みたいなのの価値をわかってくれるヤツもいるからいいんだけどさ。

「確かにエスクロ男爵家では星の神を信仰していますけど……」

 冒険者ギルドと実家の宗教の違いについての質問に対して口籠ったレネット嬢に、俺は微笑んだ。

「まあ護衛として失格でしたって俺が報告したら、入団試験不合格ってことで赤き刃団に所属しなくて良くなるから安心してね」
「な……っ! 冗談じゃありませんわ。ちゃんと護衛の任を果たして合格してから、あたくし自身で入団を撤回いたします!……あ」
「あはは、いいよいいよ。最初からミーヌ村へ行きたくて護衛に立候補したってわかってるし」

 レネット嬢は真っ赤になって俯いた。
 彼女は、レオンにモンスター密売の契約書を奪われたことにまだ気づいてないらしい。
 俺が神獣裁判でミーヌ村へ向かうと聞いたら、護衛として同行するとまで言い出してついて来たんだもんな。
 よっぽどレオンに会いたいんだろう。

「そんなに会いたいの?」
「……ええ、二年ぶりですもの……」
「二年?」
「あ、いえ、その……ミーヌ村にいるという星の司祭は、どんな罪を犯したんですの?」
「罪っていうか、ミーヌ村にある神殿の所有権が三柱の神殿すべてにあることを知っていたかどうかを追及されるんだ。まだ若い司祭みたいだし、上役に派遣されただけでなにも知らなかった可能性もあるだろうね」
「そうですの……あの、神獣裁判ではきちんと真実が明かされるんですのよね。上役の罪をその司祭が被らされるようなことはありませんわよね?」
「そのための神獣裁判だよ。人間なら騙されたり誤魔化されたりするかもしれないけど、神獣を通して判断するのは神さまだからね」
「……もし、もしその司祭に余罪があったとしたら……」
「余罪?」
「あ、いえ、なんでもありませんわ。……あら」

 レネット嬢は話を切り上げて立ち上がり、空を見て首を傾げた。

「どうしたの?」
「雨雲でしょうか、空のあそこに黒い……」

 俺は、レネット嬢が指差すものを見た。
 ふたりがいる眠りの森の北、尖った葉っぱの木々が生い茂る針の森との境目に黒い塊が浮かんでいる。それほど大きいものではないのだが、極北から続く空が一面の白い雲に覆われているので、よく目立つ。

「闇バチの群れじゃないかな。定期馬車がオングル村へ寄ったとき月の神殿で聞いたけど、ミーヌ村の廃鉱山に闇バチが戻って来てるらしい」
「……闇バチ……」
「巣に押し入ったりしなければ、おとなしいモンスターだよ。敵に回ると怖いけどね、毒の匂いを追って全員で襲ってくるから。狩場は巣から遠いっていうから、極北へ狩りに行って帰るところなのかもね」

 今あの位置なら、夜には巣についているかもしれない。

「ク……クロ村はどちらの方角ですの?」
「あっち。闇バチはたぶん、こういう感じで」

 言いながら俺は、頭上に伸ばした腕を動かしてみせた。

「移動していく。廃鉱山があるのはミーヌ村の北東だからね」
「急げばすれ違わずにすみそうですわね」

 彼女の言葉に頷いて、俺も立ち上がって歩き始めた。
 ああ、そうか。
 レネット嬢は俺と違って鼻が利かない。
 道のない森の中、オングル村で見た適当な地図を支えに進むのも辛かったんだな。
 彼女みたいに狼の獣化族というだけで白い目で見る人間がいるから、クロ村は街道を外れたわかりにくい場所にあるんだけどさ。
 太陽が輝いているうちは、俺の神獣を飛ばして目印にしても良かったかな。
 でもちょっとしたことで機嫌損ねて、神獣裁判のときに召喚できなくなったりしたら困るし。

 ……そういえばレオン、どうしてるだろう。
 太陽の神殿から神獣裁判への出席要請の手紙が来たころには、アイツはミーヌ村に着いていたのかな。
 案の定アイツがいなくなった翌日から、黄金の鷹亭はガラッガラになった。
 虜女子たち、どこでレオンの帰郷を聞きつけたんだか。
 そのせいでギルドマスターが、レネット嬢が入団試験として俺の護衛をするって話に飛びついたんだ。まあ入団試験料として金貨一袋も渡されたら断れないよね。
 レオンのヤツ、俺が選んでやった髪飾り、ちゃんと幼なじみのナントカちゃんに渡してるといいんだけど。
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