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24・たとえ血塗れだとしても
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病人ユーノの魔力の鱗が消えました。
荒かった息も落ち着いていきます。
鱗が消えて現れた美しい顔は発熱で紅潮していましたが、少しずつ赤みが薄れていきました。熱で汗をかいたのでしょう。白金の髪が頬に張り付いています。ずっと彼女を見つめていたルキウスが、私達のほうへ視線を向けてきます。
「汗を……ユーノの汗を拭いてやってもいいですか?」
「ええ。彼女の病気はもう大丈夫だと思うけれど……ソティリオス様、近衛騎士隊に回復魔導を使える方はいらっしゃいますか? 彼の傷を癒してあげたいのです」
「俺が使えます。ルキウス殿、手を貸していただけますか?」
「僕は……いえ、そうですね。こんな血塗れじゃユーノに心配されてしまう」
ソティリオス様は、ルキウス達に付き添って離宮へ来て、今は談話室の外で控えていた近衛騎士達にルキウスの着替えとユーノのためのスープを持ってくるよう命じました。
確かにどちらも必要なものです。
農家のご夫婦も息子に傷を見せないよう長袖を着ていましたし、何日も病気で意識のなかったユーノは衰弱してお腹を空かせていることでしょう。病気と一緒で、衰弱にも回復魔導は効きません。
気配りの出来ない自分が恥ずかしくなりました。
八年間牢で過ごしていたから、なんて言い訳になりません。
そもそもソティリオス様はオレステス様と交代した後で私との食事に付き合ってくださって、帰る間際にルキウス達が来たのでそのまま私の付き添いをしてくれているのです。
こんなに気を配ってくださるソティリオス様と彼を私の護衛にしてくださった竜王陛下に感謝しなくてはなりませんね。
思いながら私は、ソティリオス様がルキウスに回復魔導を使うのを見つめていました。
私の闇の魔力は魔導を発動しても目視出来ませんが、ソティリオス様の光の魔力はご自身の髪と同じ白銀色の煌めきを放ちます。月光のように優しく静かな輝きがルキウスの腕を包み、傷を癒していきます。
「申し訳ありません、ルキウス殿。今あった傷は治せましたが、繰り返し傷ついて痕になったところは……」
「はい。これでも魔道具職人の端くれなので魔導の限界はわかっています。痕が残るのは仕方がありません。傷を癒してくださってありがとうございます」
「お礼なら妃殿下にお伝えください。俺は妃殿下の命で動いただけです」
慌てて否定したい気持ちになりましたが、形だけでも王妃ともあろうものが慌てる姿を見せるわけにはいきません。
「ありがとうございます、王妃様」
「おふたりともご無事で良かったです」
お礼を言ってくれるルキウスに微笑んだときでした。
「……ルキウス?」
ユーノの意識が戻ったようです。ルキウスを目にして体を起こそうとしています。
いくら竜人族でも、夏の初めに発病して夏の終わりの今まで病床だったのだから体が衰弱しています。どんなに短く見ても一ヶ月は越えているのです。か弱いヒト族なら死んでいたでしょう。頑健と言われる獣人族でも生き延びられるかどうか──
彼女はソティリオス様を睨みつけました。
「あんたがルキウスを血塗れにしたの? 許さな……」
長椅子から立ち上がろうとした彼女は、そのまま崩れ落ちました。
やはり体が衰弱しきっているのです。
けれども彼女が床に転がることはありませんでした。ルキウスが戻って支えたのです。衰弱していても血塗れのルキウスを案じるユーノと、彼女の行動に気づいて支えるルキウス。ご夫婦とは聞いていませんが、お互いに心から思い合っていることは間違いないようです。
荒かった息も落ち着いていきます。
鱗が消えて現れた美しい顔は発熱で紅潮していましたが、少しずつ赤みが薄れていきました。熱で汗をかいたのでしょう。白金の髪が頬に張り付いています。ずっと彼女を見つめていたルキウスが、私達のほうへ視線を向けてきます。
「汗を……ユーノの汗を拭いてやってもいいですか?」
「ええ。彼女の病気はもう大丈夫だと思うけれど……ソティリオス様、近衛騎士隊に回復魔導を使える方はいらっしゃいますか? 彼の傷を癒してあげたいのです」
「俺が使えます。ルキウス殿、手を貸していただけますか?」
「僕は……いえ、そうですね。こんな血塗れじゃユーノに心配されてしまう」
ソティリオス様は、ルキウス達に付き添って離宮へ来て、今は談話室の外で控えていた近衛騎士達にルキウスの着替えとユーノのためのスープを持ってくるよう命じました。
確かにどちらも必要なものです。
農家のご夫婦も息子に傷を見せないよう長袖を着ていましたし、何日も病気で意識のなかったユーノは衰弱してお腹を空かせていることでしょう。病気と一緒で、衰弱にも回復魔導は効きません。
気配りの出来ない自分が恥ずかしくなりました。
八年間牢で過ごしていたから、なんて言い訳になりません。
そもそもソティリオス様はオレステス様と交代した後で私との食事に付き合ってくださって、帰る間際にルキウス達が来たのでそのまま私の付き添いをしてくれているのです。
こんなに気を配ってくださるソティリオス様と彼を私の護衛にしてくださった竜王陛下に感謝しなくてはなりませんね。
思いながら私は、ソティリオス様がルキウスに回復魔導を使うのを見つめていました。
私の闇の魔力は魔導を発動しても目視出来ませんが、ソティリオス様の光の魔力はご自身の髪と同じ白銀色の煌めきを放ちます。月光のように優しく静かな輝きがルキウスの腕を包み、傷を癒していきます。
「申し訳ありません、ルキウス殿。今あった傷は治せましたが、繰り返し傷ついて痕になったところは……」
「はい。これでも魔道具職人の端くれなので魔導の限界はわかっています。痕が残るのは仕方がありません。傷を癒してくださってありがとうございます」
「お礼なら妃殿下にお伝えください。俺は妃殿下の命で動いただけです」
慌てて否定したい気持ちになりましたが、形だけでも王妃ともあろうものが慌てる姿を見せるわけにはいきません。
「ありがとうございます、王妃様」
「おふたりともご無事で良かったです」
お礼を言ってくれるルキウスに微笑んだときでした。
「……ルキウス?」
ユーノの意識が戻ったようです。ルキウスを目にして体を起こそうとしています。
いくら竜人族でも、夏の初めに発病して夏の終わりの今まで病床だったのだから体が衰弱しています。どんなに短く見ても一ヶ月は越えているのです。か弱いヒト族なら死んでいたでしょう。頑健と言われる獣人族でも生き延びられるかどうか──
彼女はソティリオス様を睨みつけました。
「あんたがルキウスを血塗れにしたの? 許さな……」
長椅子から立ち上がろうとした彼女は、そのまま崩れ落ちました。
やはり体が衰弱しきっているのです。
けれども彼女が床に転がることはありませんでした。ルキウスが戻って支えたのです。衰弱していても血塗れのルキウスを案じるユーノと、彼女の行動に気づいて支えるルキウス。ご夫婦とは聞いていませんが、お互いに心から思い合っていることは間違いないようです。
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