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第二話 恋は空回り
1・裏川、裏を知る①
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──土曜日の夜。
忍野くんと映画館をハシゴして、夕飯を食べた後で帰ったアパートで、わたしはスマホを取り出して電話をかけた。
電話口で事の顛末を告げると、高校時代からの親友、友枝茜ちゃんは言った。
「驚いた」
「でしょう? 忍野くん、なにか悩みがあるのかな」
かすかな溜息の後で、彼女が呆れたような声を出す。
高校時代美術部だった彼女は美大に進学し、卒業後はネットを窓口にして地元でイラストレーターとして活動している。
美大の先輩と結婚したのは早かったが、子どもができたのは最近だった。
「あたしが驚いたのは、あんたが忍野を友達だとさえ思っていなかったこと」
「……ああ、確かに酷いよね。でも茜ちゃん、反論してもいい?」
「してみなさい」
「同じ高校だったんだからわかるでしょ。あのころの忍野くんを知っている身では、彼を信頼することはできないって」
少し間があって、茜ちゃんが言う。
「キャットファイト事件とか?」
きっと今、首を傾げているんだろうな。
高校時代の教室で毎日おしゃべりに興じていたころの光景を思い出して、なんだか懐かしい気持ちになる。
この前の年末年始にも顔は合わせていたけれど、出産直後の産院だったからお祝いを渡すだけで帰ったのよね。
遠く離れていてもすぐ目の前にいるような気分になって、わたしは頷いた。
「そうそう」
「……それなんだけど」
「どうかしたの?」
「ほら、うちの兄も同じ高校だったじゃない? みっつ上だから一緒に通ったことはないけど」
「そうだったねー」
お兄さんは大柄で、妹思いの優しい人だった。
わたし相手だからこうして積極的に話してくれているものの、普段の茜ちゃんは寡黙だ。
親しくない人と話すより、ひとりでイラストを描いているほうが楽しいのだと、高校のころから言っていた。
お兄さんはそれを心配していたんだろうな。
実際は高校時代から大人びた美人だった茜ちゃんは、無口で冷たげなところがさらにいいと、男子(&一部の女子)に大人気だったんだよね。
「あの女教師たち、兄のころからイケメン男子はべらせるので有名だったみたい。こないだ実家に帰ったら、なんとなくそんな話になって……」
「へーえ」
「昔は片方が運動部の顧問をしてたから棲み分けできてたらしいんだけど、学校の合宿所を使わずに自分のマンションに男子生徒を泊まらせてたことがバレて顧問辞めさせられて、それからフリーのイケメン男子巡って争うようになったって」
「お、おう。すごい事件だね」
「男性教師が女生徒を、なら事件になったかもしれないけど、女教師と男子生徒だからか有耶無耶になったの。年齢的に男子がホイホイ捕まらなくなったところに、忍野狙いがかぶっちゃって積年の対抗心がむき出しになったんじゃない?」
「忍野くんも被害者か……」
哀れに思いながら呟くと、茜ちゃんは食い気味に否定してきた。
「と言っても、男子生徒が口を噤んだのは結局イイ思いしたからでしょ」
そ、それはそうかもしれないけど。
「茜ちゃん、忍野くんを庇いたいわけじゃないの?」
「庇う気はないわ。ただ思い込みだけじゃ悪いかと思って」
「まあね。そういえば合宿の女子部員対決については、彼女たちの思い込みのせいだってどっかで聞いたよ」
「……それ、裏があったのかも」
忍野くんと映画館をハシゴして、夕飯を食べた後で帰ったアパートで、わたしはスマホを取り出して電話をかけた。
電話口で事の顛末を告げると、高校時代からの親友、友枝茜ちゃんは言った。
「驚いた」
「でしょう? 忍野くん、なにか悩みがあるのかな」
かすかな溜息の後で、彼女が呆れたような声を出す。
高校時代美術部だった彼女は美大に進学し、卒業後はネットを窓口にして地元でイラストレーターとして活動している。
美大の先輩と結婚したのは早かったが、子どもができたのは最近だった。
「あたしが驚いたのは、あんたが忍野を友達だとさえ思っていなかったこと」
「……ああ、確かに酷いよね。でも茜ちゃん、反論してもいい?」
「してみなさい」
「同じ高校だったんだからわかるでしょ。あのころの忍野くんを知っている身では、彼を信頼することはできないって」
少し間があって、茜ちゃんが言う。
「キャットファイト事件とか?」
きっと今、首を傾げているんだろうな。
高校時代の教室で毎日おしゃべりに興じていたころの光景を思い出して、なんだか懐かしい気持ちになる。
この前の年末年始にも顔は合わせていたけれど、出産直後の産院だったからお祝いを渡すだけで帰ったのよね。
遠く離れていてもすぐ目の前にいるような気分になって、わたしは頷いた。
「そうそう」
「……それなんだけど」
「どうかしたの?」
「ほら、うちの兄も同じ高校だったじゃない? みっつ上だから一緒に通ったことはないけど」
「そうだったねー」
お兄さんは大柄で、妹思いの優しい人だった。
わたし相手だからこうして積極的に話してくれているものの、普段の茜ちゃんは寡黙だ。
親しくない人と話すより、ひとりでイラストを描いているほうが楽しいのだと、高校のころから言っていた。
お兄さんはそれを心配していたんだろうな。
実際は高校時代から大人びた美人だった茜ちゃんは、無口で冷たげなところがさらにいいと、男子(&一部の女子)に大人気だったんだよね。
「あの女教師たち、兄のころからイケメン男子はべらせるので有名だったみたい。こないだ実家に帰ったら、なんとなくそんな話になって……」
「へーえ」
「昔は片方が運動部の顧問をしてたから棲み分けできてたらしいんだけど、学校の合宿所を使わずに自分のマンションに男子生徒を泊まらせてたことがバレて顧問辞めさせられて、それからフリーのイケメン男子巡って争うようになったって」
「お、おう。すごい事件だね」
「男性教師が女生徒を、なら事件になったかもしれないけど、女教師と男子生徒だからか有耶無耶になったの。年齢的に男子がホイホイ捕まらなくなったところに、忍野狙いがかぶっちゃって積年の対抗心がむき出しになったんじゃない?」
「忍野くんも被害者か……」
哀れに思いながら呟くと、茜ちゃんは食い気味に否定してきた。
「と言っても、男子生徒が口を噤んだのは結局イイ思いしたからでしょ」
そ、それはそうかもしれないけど。
「茜ちゃん、忍野くんを庇いたいわけじゃないの?」
「庇う気はないわ。ただ思い込みだけじゃ悪いかと思って」
「まあね。そういえば合宿の女子部員対決については、彼女たちの思い込みのせいだってどっかで聞いたよ」
「……それ、裏があったのかも」
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