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幕間 アリーチェの知らないヒロインの話・後編
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ダニエーレと北の山に登ったあたしは、まだドラゴンがいないため危険な目に遭うこともなく薬草を採取して帰った。
本当は一度ホーンラビットに襲われたけど、ダニエーレが助けてくれた。
下町に住むあたし達は高価な回復魔法なんか頼めないから、ダニエーレが腕に負った傷は生涯残るかもしれない。なのに彼は、あたしが無事で良かったと笑った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
三年後、あたしが十五歳になってもお母さんは亡くならなかった。
疫病自体が発生しなかったのだ。
北の山にドラゴンも来てない。もしかして疫病はドラゴンの影響で発生してて、そのドラゴンが来たのは薬草に惹かれたからだったり?
実はドラゴンと戦うときの選択肢で生えている草を投げるというのがあったのだ。投げた草(=薬草)がぶつかると、ドラゴンは混乱というか、マタタビを嗅いだ猫みたいになる。
頭の心配をされるだろうからゲームのことはだれにも話せないけど、ダニエーレが上手く話を考えてくれて、冒険者ギルドに薬草を調べてもらうことが出来た。
ドラゴンがいないから証明は出来なかったものの、は虫類系のモンスターには効果があったみたい。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さらに三年が経って、ゲームなら学園を卒業するころに北の山へドラゴンが来た。
薬草はかなり根の長い植物だったし、六年前のあたし達は子どもだったから根こそぎ薬草を採取することは出来なかった。
残った薬草と根っこがまた増えて、ドラゴンを呼んだのかもしれない。疫病は少しだけ発生したが、あたし達が持って帰った薬草を繁殖させていたので被害はほとんど出なかった。
学園の卒業式の後、ドラゴンの討伐作戦が決行された。
あたしも冒険者として参加する。夫のダニエーレと一緒にね。こないだ、あたしの十八歳の誕生日に結婚したのだ。
冒険者ギルドのマスターになったお義父さんのジョルジョさんやお母さんに止められても参加する。あたしはみんなを守りたい。
「今度はあたしがダニエーレを守るからね! 魔法の才能を見込まれて、冒険者ギルドで修業つけてもらえたし!」
ゲームの学園でのように基礎は学んでいないが、ギルドが呼び寄せてくれた魔法使いに実践的な魔法の使い方を教えてもらったのだ。
ダニエーレがあたしの髪をくしゃりとかき混ぜて言う。
「バーカ。今度も俺がお前を助けるに決まってるだろ。魔法を使えるようになったからって、お前が俺の世界で一番大事な女だってことに変わりはないんだから」
「そうなの?」
「ん?」
「あたしの言うことが役に立つから助けてくれたんじゃなかったの?」
「なんだ、それ。お前の言うことが役に立ってきたのは事実だが……助けたのも妙なことに付き合ってきたのも好きだからだよ」
「そっか」
「そうだよ。てか、なんで好きでもない女と結婚するんだよ。好きだから結婚したに決まってんだろ」
「そっか、ふふっ」
この世界に転生して、『微笑んでシュクレ』の記憶があって本当に良かった。
大好きな人達、大切な人達を助けることが出来たんだもの。
そしてなにより、ダニエーレと出会えて愛し愛されることが出来たんだもの。
──余談になるけれど、あたしの父親の男爵はあたしの異母姉である正妻さんの娘さんの結婚後、お婿さんに過去の悪事を暴かれて罰を受けた。
お母さんの恋人やお母さんにしたことについても、ちゃんと裁きを受けたのだ。
十二歳のときに北の山の薬草を採取してて良かった。十五歳のときに疫病が発生しなかったから、正妻さんと娘さんも亡くならなかったんだものね。うん、ゲームのヒロインとはまるで違う人生になっちゃったけど、ゲームのときより多くの人を助けられたんじゃないかな?
本当は一度ホーンラビットに襲われたけど、ダニエーレが助けてくれた。
下町に住むあたし達は高価な回復魔法なんか頼めないから、ダニエーレが腕に負った傷は生涯残るかもしれない。なのに彼は、あたしが無事で良かったと笑った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
三年後、あたしが十五歳になってもお母さんは亡くならなかった。
疫病自体が発生しなかったのだ。
北の山にドラゴンも来てない。もしかして疫病はドラゴンの影響で発生してて、そのドラゴンが来たのは薬草に惹かれたからだったり?
実はドラゴンと戦うときの選択肢で生えている草を投げるというのがあったのだ。投げた草(=薬草)がぶつかると、ドラゴンは混乱というか、マタタビを嗅いだ猫みたいになる。
頭の心配をされるだろうからゲームのことはだれにも話せないけど、ダニエーレが上手く話を考えてくれて、冒険者ギルドに薬草を調べてもらうことが出来た。
ドラゴンがいないから証明は出来なかったものの、は虫類系のモンスターには効果があったみたい。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さらに三年が経って、ゲームなら学園を卒業するころに北の山へドラゴンが来た。
薬草はかなり根の長い植物だったし、六年前のあたし達は子どもだったから根こそぎ薬草を採取することは出来なかった。
残った薬草と根っこがまた増えて、ドラゴンを呼んだのかもしれない。疫病は少しだけ発生したが、あたし達が持って帰った薬草を繁殖させていたので被害はほとんど出なかった。
学園の卒業式の後、ドラゴンの討伐作戦が決行された。
あたしも冒険者として参加する。夫のダニエーレと一緒にね。こないだ、あたしの十八歳の誕生日に結婚したのだ。
冒険者ギルドのマスターになったお義父さんのジョルジョさんやお母さんに止められても参加する。あたしはみんなを守りたい。
「今度はあたしがダニエーレを守るからね! 魔法の才能を見込まれて、冒険者ギルドで修業つけてもらえたし!」
ゲームの学園でのように基礎は学んでいないが、ギルドが呼び寄せてくれた魔法使いに実践的な魔法の使い方を教えてもらったのだ。
ダニエーレがあたしの髪をくしゃりとかき混ぜて言う。
「バーカ。今度も俺がお前を助けるに決まってるだろ。魔法を使えるようになったからって、お前が俺の世界で一番大事な女だってことに変わりはないんだから」
「そうなの?」
「ん?」
「あたしの言うことが役に立つから助けてくれたんじゃなかったの?」
「なんだ、それ。お前の言うことが役に立ってきたのは事実だが……助けたのも妙なことに付き合ってきたのも好きだからだよ」
「そっか」
「そうだよ。てか、なんで好きでもない女と結婚するんだよ。好きだから結婚したに決まってんだろ」
「そっか、ふふっ」
この世界に転生して、『微笑んでシュクレ』の記憶があって本当に良かった。
大好きな人達、大切な人達を助けることが出来たんだもの。
そしてなにより、ダニエーレと出会えて愛し愛されることが出来たんだもの。
──余談になるけれど、あたしの父親の男爵はあたしの異母姉である正妻さんの娘さんの結婚後、お婿さんに過去の悪事を暴かれて罰を受けた。
お母さんの恋人やお母さんにしたことについても、ちゃんと裁きを受けたのだ。
十二歳のときに北の山の薬草を採取してて良かった。十五歳のときに疫病が発生しなかったから、正妻さんと娘さんも亡くならなかったんだものね。うん、ゲームのヒロインとはまるで違う人生になっちゃったけど、ゲームのときより多くの人を助けられたんじゃないかな?
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