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葉菜花、帰ってきました編
48・部活帰りのDKセットとおかずパンとオヤツパン
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「ラーメンうめー!」
「酢じょう油とラー油ってどっちが美味い?」
「どっちも美味しいです。ラー油はピリ辛ですよー」
「わふー」
「じゃあ両方食おうかな」
「チャーハン美味い」
「お米には七柱の神様が宿ってるから、こぼさないでくださいね」
「わふわふ」
「七柱? ヌエバ様とアルバ様で二柱だろ?」
「ラース帝国の竜神教の竜神が五柱いるんじゃないか?」
今日は部活帰りのDKセットAにしてみました。
お米の七柱の神様については、世界が違うから言わないほうが良かったかな。
ガルグイユ騎士団の団員は、基本的にラトニー王国の貴族の子弟達。
ラトニーの聖剣に選ばれた団長以外は十五歳以上二十五歳までの男子と決まっていて、二十五歳を過ぎると爵位を継いで領地へ戻ったり、王軍に入ったり近衛に選定されたりするとのこと。
いわゆる士官学校の役割も兼ねているとか。
女性は王軍に女性のみの騎士隊があるそうです。
あとラトニー王軍には、訓練されたシャドウウルフで構成される軍獣隊もあるんだって。
騎士団は毎日体を鍛えている若い男の人の集団だからか、食欲がハンパない。
ラーメンのお鍋とチャーハンおにぎりとギョーザの大皿から自由に取ってもらう形式なのだけど、あっという間になくなるので追加を作るだけで手いっぱいだった。
今は交代前の昼番団員用のメニュー。
交代が終わったら、帰って行く朝番の団員にお土産のパンを配ります。
お土産のパンはアリの巣殲滅のときに配るパンの試作品です。
「……葉菜花、ラーメンがなくなった」
「わかった。すぐ作るけど、ベルちゃんはもうつまみ食いしちゃダメだよ?」
「わふ!」
「……そんな、酷い」
酷くないと思う。
ベルちゃんは手伝いと称して、わたしの横でつまみ食いをしてるのだ。
いや、きちんと手伝いもしてくれてるんだけど、つまみ食いのイメージのほうが強いんだよね。
空の……スープも全部ない……お鍋にダンジョンアントの魔石を入れて、変成。
最初はダンジョンの側に張られているテントの中で作って、テント前に設置した長机まで運んでいたのだけれど、正直そんなゆとりがあったのは最初の一回だけだった。
まあダンジョンアントの魔石を錬金術で変成できること自体は秘密でもなんでもないので、最初の料理が一瞬でなくなったあとは団員の前で魔石ごはんを作っている。
料理を運ぶ役目だったシオン君と副団長のセルジオさんは、少し離れたところで団員の様子を観察していた。
ふたりとも全身鎧を纏っていて見てるだけで暑そうだ。
ほかの団員は部分鎧を着ている。
門番のアレコスさんとカルロスさんと違って、革ではなく金属製だった。
このダンジョンも神獣ダンジョンと一緒で森に囲まれている。
入り口に嵌められた金属の扉が真新しい。
これはダンジョン発見後に人間がつけるものだそうです。
「団長、あれは……」
「さっき言わなかったか? ラーメンとチャーハンと焼きギョーザ。部活帰りのDKセットAだ」
「それは覚えております。そうではなくて……昼番と交代をしたら、我ら朝番もあれをいただけるのかをお聞きしたいのです」
「貴様らはパンだ」
「パン……ですか?」
魔石の変成にもすっかり慣れて、あまり頭を使わなくてもできるようになった。
話しているふたりの声がよく聞こえる。
セルジオさんはお土産がパンだと聞いて、露骨にがっかりしているようだ。
「ラトニーのパンは美味しいですが、その、今配られている料理と比べると……」
「今の料理を交代後の貴様らに出したら際限なく食い続けるだろうが」
「……否定はできません」
「だから貴様らは持ち帰って食えるようにパン、おかずパンとオヤツパンだ」
「おかずパンとオヤツパン?」
シオン君は歌うように語り始めた。
「カレーパン、激辛カレーパン、ウインナーパン、コーンマヨパン、ピザパン、ハムチーズパン……などがおかずパンだ」
カレーパンとウインナーパンは攻撃、激辛カレーパンはHP自然回復率、コーンマヨパンとピザパンとハムチーズパンは防御が上昇します。
「おおっ! あまり聞き覚えのない名前ですが、美味しそうだということはわかりますぞ!」
「オヤツパンは甘いパンだ。あんパン、ジャムパン、クリームパン、チョココロネ、クリームコロネ、メロンパンといったところかな。ほかにもあるが、持ち運びできるものを優先した」
あんパンは精神、ジャムパンは集中、クリームパンは知力、チョココロネは魔攻、クリームコロネは魔防、メロンパンはMP自然回復率が上昇します。
もちろん付与効果については秘密だけどね。
クリームパンとクリームコロネの効果が違うのは、クリームコロネの表面にホワイトチョコがかかっているからかもしれない。
「ほほう。ジャムとクリームはわかりますが、チョコというのは初めて聞きますな」
「黒くて泥のような物体だ。しかし匂いは芳しく、味は甘くて苦い」
「甘くて、苦い……」
セルジオさんはピンとこなかったようで、怪訝そうに顎を捻っている。
というかシオン君、チョコのこと泥みたいだと思ってたんだね。
なんのためらいもなく食べてるように見えたのに。
「……葉菜花」
「ああ、ギョーザのお皿が空いたね。すぐ作るよ」
「……違う。ホットドッグや焼きそばパンは作らないの?」
「コッペパン系は持って帰る途中で具がこぼれちゃいそうだから」
サンドイッチやハンバーガーも崩れそうだから、おかずパンとオヤツパンにすることにしたのだ。
作ったパンは好きなものを五個、布に包んで持ち帰ってもらうことになっている。
メニューは話し合って決めたんだけど、シオン君も最後までチリドッグとナポリタンパンにこだわってたなあ。
いや、絶対具がこぼれちゃうって!
そしてベルちゃん、わたしがシオン君と話し合ってたとき一緒にいたよね?
「だからベルちゃん、作った横からつまみ食いしないで」
「……これはつまみ食いじゃない。……味見」
「わふー……」
ラケルが呆れたような声を上げる。
そうだったね。
わたし達が話し合ってたときも、ベルちゃんは喜色満面で試作品の魔石ごはんを味見してたよね。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
──やがて昼番の交代時間になって、部活帰りのDKセットAを食べていた団員達が担当の位置へ移動していく。
シオン君の号令が響いた途端、みんなキリッとした顔になったのはすごかったなあ。
ちょうどお鍋もお皿も空っぽになったところだったのもすごかった。
食器を『浄化』して、お鍋を片付けてお皿をもう一枚出す。
長机のスペース的に大皿三枚が限界なのだ。
わたしの役目は、交代前の昼番にセットメニュー、交代後の朝番にお土産のパンを作ること。
夕方になったら交代前の夜番と交代後の昼番のための魔石ごはんを作って帰る。
『聖域』を張れるのは聖女のベルちゃんと大神官のサンドラさんのふたりしかいないから二交代だけど、警護の団員は朝・昼・夜・深夜の四交代制だった。
シオン君は朝・昼連続だけどね。
それぞれ二十人配置されていて、べつの場所でほかの仕事をしている団員もいる。
ガルグイユ騎士団は大所帯なのだ。
「おかずパンとオヤツパン、どっちが人気出るかなあ」
三枚のお皿を前に首を傾げる。
「……大丈夫、葉菜花。おかずパンとオヤツパンが重なって味が混ざるのに不満が出たら、私がその分を食べてあげる」
「わふー……」
ラケルがそっとフォークやスプーンを出してくれたので、わたしは真ん中のお皿の中心に置いて仕切りを作った。
でもたぶん本当は、この人達は混ざってても気にしない。
酢じょう油ギョーザとラー油ギョーザを同じお皿に載せてたけど不満は出なかったし。
「ああっ!……わたしに食べさせないようにして、葉菜花は酷い」
昼番の団員は昼番用の分、朝番の団員は朝番用の分しか食べないのに、ベルちゃんは全部食べる気満々じゃないですか。
「少しならつまみ食いしてもいいけど、食べ過ぎないでね」
「……わかった」
「わふわふ」
「……一種類に付き一個なら食べてもいい?」
ひとり五個までだよ。
シオン君が合図をして、今度は交代後の朝番団員が長机に群がる。
「右側がおかずパン、左側が甘いオヤツパンです。この表面がガサガサしたカレーパンと激辛カレーパンは辛いので気をつけてくださいね」
「わふふ」
最近は焼きカレーパンとかもあったと思うけど、わたしが作ったのは揚げパンだ。
「おお、腸詰が入っているな。表面の赤いのはなんだ?」
「ケチャップという調味料です」
「わふ!」
残念ながら調味料だけは作れません。
トングまでは用意できなかったので、団員には『浄化』後の素手でパンを選んでもらっています。
触ったのは戻さないでね。
「左側が甘いパンだったな。この黒いのと白いのは味が違うのか?」
「黒いほうは苦みがあって白いほうはまろやかです」
「わふー」
「この格子柄のはなにが入ってるんだ?」
「……なにも入っていない。……でも美味しい」
「おおっ! 聖女様が直々にお言葉を!」
普段のベルちゃんは団員達とはあまり話さないらしい。
シオン君と話すようになったのも、わたしがこの世界に来てからなんだって。
「なあなあ。俺甘いの五個選ぶから、お前おかずパンての五個選んで半分こしようぜ?」
「ふむ。貴殿にも知性というものがあったようだ」
小さく切って味見できるようにしても良かったかな。
……うん。ずっと味見してて終わりそうにないね。
今回はひとり五個と決まっているので、お皿に載りきらなかった分を一度追加しただけで終わった。
「ここで食うな! なんのために布に包ませたと思っている。家か宿舎に戻ってから食え!」
シオン君の怒号を受けて、朝番の団員達が帰って行く。
長机をテントに入れて前半終わり──ではなく、朝昼通しのためここで休憩を取るシオン君に魔石ごはんを作る仕事が待っている。
散々味見をしていたベルちゃんの分も。
ほかの団員もこまめに小休憩を取っているようです。
一日の儲けは金貨二枚。
傭兵隊『闇夜の疾風』の食事係をしてたときより安いけど、旅のときは拘束時間が長かったし、お金持ちのロンバルディ商会がスポンサーだったからこんなものかな。
というか、どちらももらい過ぎな気もします。
「酢じょう油とラー油ってどっちが美味い?」
「どっちも美味しいです。ラー油はピリ辛ですよー」
「わふー」
「じゃあ両方食おうかな」
「チャーハン美味い」
「お米には七柱の神様が宿ってるから、こぼさないでくださいね」
「わふわふ」
「七柱? ヌエバ様とアルバ様で二柱だろ?」
「ラース帝国の竜神教の竜神が五柱いるんじゃないか?」
今日は部活帰りのDKセットAにしてみました。
お米の七柱の神様については、世界が違うから言わないほうが良かったかな。
ガルグイユ騎士団の団員は、基本的にラトニー王国の貴族の子弟達。
ラトニーの聖剣に選ばれた団長以外は十五歳以上二十五歳までの男子と決まっていて、二十五歳を過ぎると爵位を継いで領地へ戻ったり、王軍に入ったり近衛に選定されたりするとのこと。
いわゆる士官学校の役割も兼ねているとか。
女性は王軍に女性のみの騎士隊があるそうです。
あとラトニー王軍には、訓練されたシャドウウルフで構成される軍獣隊もあるんだって。
騎士団は毎日体を鍛えている若い男の人の集団だからか、食欲がハンパない。
ラーメンのお鍋とチャーハンおにぎりとギョーザの大皿から自由に取ってもらう形式なのだけど、あっという間になくなるので追加を作るだけで手いっぱいだった。
今は交代前の昼番団員用のメニュー。
交代が終わったら、帰って行く朝番の団員にお土産のパンを配ります。
お土産のパンはアリの巣殲滅のときに配るパンの試作品です。
「……葉菜花、ラーメンがなくなった」
「わかった。すぐ作るけど、ベルちゃんはもうつまみ食いしちゃダメだよ?」
「わふ!」
「……そんな、酷い」
酷くないと思う。
ベルちゃんは手伝いと称して、わたしの横でつまみ食いをしてるのだ。
いや、きちんと手伝いもしてくれてるんだけど、つまみ食いのイメージのほうが強いんだよね。
空の……スープも全部ない……お鍋にダンジョンアントの魔石を入れて、変成。
最初はダンジョンの側に張られているテントの中で作って、テント前に設置した長机まで運んでいたのだけれど、正直そんなゆとりがあったのは最初の一回だけだった。
まあダンジョンアントの魔石を錬金術で変成できること自体は秘密でもなんでもないので、最初の料理が一瞬でなくなったあとは団員の前で魔石ごはんを作っている。
料理を運ぶ役目だったシオン君と副団長のセルジオさんは、少し離れたところで団員の様子を観察していた。
ふたりとも全身鎧を纏っていて見てるだけで暑そうだ。
ほかの団員は部分鎧を着ている。
門番のアレコスさんとカルロスさんと違って、革ではなく金属製だった。
このダンジョンも神獣ダンジョンと一緒で森に囲まれている。
入り口に嵌められた金属の扉が真新しい。
これはダンジョン発見後に人間がつけるものだそうです。
「団長、あれは……」
「さっき言わなかったか? ラーメンとチャーハンと焼きギョーザ。部活帰りのDKセットAだ」
「それは覚えております。そうではなくて……昼番と交代をしたら、我ら朝番もあれをいただけるのかをお聞きしたいのです」
「貴様らはパンだ」
「パン……ですか?」
魔石の変成にもすっかり慣れて、あまり頭を使わなくてもできるようになった。
話しているふたりの声がよく聞こえる。
セルジオさんはお土産がパンだと聞いて、露骨にがっかりしているようだ。
「ラトニーのパンは美味しいですが、その、今配られている料理と比べると……」
「今の料理を交代後の貴様らに出したら際限なく食い続けるだろうが」
「……否定はできません」
「だから貴様らは持ち帰って食えるようにパン、おかずパンとオヤツパンだ」
「おかずパンとオヤツパン?」
シオン君は歌うように語り始めた。
「カレーパン、激辛カレーパン、ウインナーパン、コーンマヨパン、ピザパン、ハムチーズパン……などがおかずパンだ」
カレーパンとウインナーパンは攻撃、激辛カレーパンはHP自然回復率、コーンマヨパンとピザパンとハムチーズパンは防御が上昇します。
「おおっ! あまり聞き覚えのない名前ですが、美味しそうだということはわかりますぞ!」
「オヤツパンは甘いパンだ。あんパン、ジャムパン、クリームパン、チョココロネ、クリームコロネ、メロンパンといったところかな。ほかにもあるが、持ち運びできるものを優先した」
あんパンは精神、ジャムパンは集中、クリームパンは知力、チョココロネは魔攻、クリームコロネは魔防、メロンパンはMP自然回復率が上昇します。
もちろん付与効果については秘密だけどね。
クリームパンとクリームコロネの効果が違うのは、クリームコロネの表面にホワイトチョコがかかっているからかもしれない。
「ほほう。ジャムとクリームはわかりますが、チョコというのは初めて聞きますな」
「黒くて泥のような物体だ。しかし匂いは芳しく、味は甘くて苦い」
「甘くて、苦い……」
セルジオさんはピンとこなかったようで、怪訝そうに顎を捻っている。
というかシオン君、チョコのこと泥みたいだと思ってたんだね。
なんのためらいもなく食べてるように見えたのに。
「……葉菜花」
「ああ、ギョーザのお皿が空いたね。すぐ作るよ」
「……違う。ホットドッグや焼きそばパンは作らないの?」
「コッペパン系は持って帰る途中で具がこぼれちゃいそうだから」
サンドイッチやハンバーガーも崩れそうだから、おかずパンとオヤツパンにすることにしたのだ。
作ったパンは好きなものを五個、布に包んで持ち帰ってもらうことになっている。
メニューは話し合って決めたんだけど、シオン君も最後までチリドッグとナポリタンパンにこだわってたなあ。
いや、絶対具がこぼれちゃうって!
そしてベルちゃん、わたしがシオン君と話し合ってたとき一緒にいたよね?
「だからベルちゃん、作った横からつまみ食いしないで」
「……これはつまみ食いじゃない。……味見」
「わふー……」
ラケルが呆れたような声を上げる。
そうだったね。
わたし達が話し合ってたときも、ベルちゃんは喜色満面で試作品の魔石ごはんを味見してたよね。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
──やがて昼番の交代時間になって、部活帰りのDKセットAを食べていた団員達が担当の位置へ移動していく。
シオン君の号令が響いた途端、みんなキリッとした顔になったのはすごかったなあ。
ちょうどお鍋もお皿も空っぽになったところだったのもすごかった。
食器を『浄化』して、お鍋を片付けてお皿をもう一枚出す。
長机のスペース的に大皿三枚が限界なのだ。
わたしの役目は、交代前の昼番にセットメニュー、交代後の朝番にお土産のパンを作ること。
夕方になったら交代前の夜番と交代後の昼番のための魔石ごはんを作って帰る。
『聖域』を張れるのは聖女のベルちゃんと大神官のサンドラさんのふたりしかいないから二交代だけど、警護の団員は朝・昼・夜・深夜の四交代制だった。
シオン君は朝・昼連続だけどね。
それぞれ二十人配置されていて、べつの場所でほかの仕事をしている団員もいる。
ガルグイユ騎士団は大所帯なのだ。
「おかずパンとオヤツパン、どっちが人気出るかなあ」
三枚のお皿を前に首を傾げる。
「……大丈夫、葉菜花。おかずパンとオヤツパンが重なって味が混ざるのに不満が出たら、私がその分を食べてあげる」
「わふー……」
ラケルがそっとフォークやスプーンを出してくれたので、わたしは真ん中のお皿の中心に置いて仕切りを作った。
でもたぶん本当は、この人達は混ざってても気にしない。
酢じょう油ギョーザとラー油ギョーザを同じお皿に載せてたけど不満は出なかったし。
「ああっ!……わたしに食べさせないようにして、葉菜花は酷い」
昼番の団員は昼番用の分、朝番の団員は朝番用の分しか食べないのに、ベルちゃんは全部食べる気満々じゃないですか。
「少しならつまみ食いしてもいいけど、食べ過ぎないでね」
「……わかった」
「わふわふ」
「……一種類に付き一個なら食べてもいい?」
ひとり五個までだよ。
シオン君が合図をして、今度は交代後の朝番団員が長机に群がる。
「右側がおかずパン、左側が甘いオヤツパンです。この表面がガサガサしたカレーパンと激辛カレーパンは辛いので気をつけてくださいね」
「わふふ」
最近は焼きカレーパンとかもあったと思うけど、わたしが作ったのは揚げパンだ。
「おお、腸詰が入っているな。表面の赤いのはなんだ?」
「ケチャップという調味料です」
「わふ!」
残念ながら調味料だけは作れません。
トングまでは用意できなかったので、団員には『浄化』後の素手でパンを選んでもらっています。
触ったのは戻さないでね。
「左側が甘いパンだったな。この黒いのと白いのは味が違うのか?」
「黒いほうは苦みがあって白いほうはまろやかです」
「わふー」
「この格子柄のはなにが入ってるんだ?」
「……なにも入っていない。……でも美味しい」
「おおっ! 聖女様が直々にお言葉を!」
普段のベルちゃんは団員達とはあまり話さないらしい。
シオン君と話すようになったのも、わたしがこの世界に来てからなんだって。
「なあなあ。俺甘いの五個選ぶから、お前おかずパンての五個選んで半分こしようぜ?」
「ふむ。貴殿にも知性というものがあったようだ」
小さく切って味見できるようにしても良かったかな。
……うん。ずっと味見してて終わりそうにないね。
今回はひとり五個と決まっているので、お皿に載りきらなかった分を一度追加しただけで終わった。
「ここで食うな! なんのために布に包ませたと思っている。家か宿舎に戻ってから食え!」
シオン君の怒号を受けて、朝番の団員達が帰って行く。
長机をテントに入れて前半終わり──ではなく、朝昼通しのためここで休憩を取るシオン君に魔石ごはんを作る仕事が待っている。
散々味見をしていたベルちゃんの分も。
ほかの団員もこまめに小休憩を取っているようです。
一日の儲けは金貨二枚。
傭兵隊『闇夜の疾風』の食事係をしてたときより安いけど、旅のときは拘束時間が長かったし、お金持ちのロンバルディ商会がスポンサーだったからこんなものかな。
というか、どちらももらい過ぎな気もします。
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